ようこそ朝霧海斗のいる教室へ   作:お豆腐

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日間ランキングで一桁行ってて本当にびっくりしました(汗)


第6話 いざ、実力至上主義の教室へ

あれから数日が過ぎた。

ここ最近質のいい睡眠がとれていない。原因はひとつ、現在進行形で俺のベッドで寝ているこいつのせいだ。

俺は軽く有栖の頭を叩いた。

「……海斗くん、どうしましたか?」

有栖が頭だけこちらに向けてくる。

「いや、お前がどうしたんだ?明日から学校なんだから今日ぐらいはベッドで寝させろ」

「私はここを退きませんよ?海斗くんもベッドに入ればすべて解決です」

「お前の脳みそは豆腐か何かでできてるんじゃないのか?一度病院で診察してもらった方がいいぞ」

「相変わらず海斗くんは辛辣ですね」

そう言いつつもこいつは退く気が無いらしい。また枕に顔を沈めると静かな寝息をたて始めた。

「もういっそ二度と目が覚めないように沈めてやろうか?」

「…………」

「ったく」

俺は仕方なく部屋にあるソファーに横になった。

「海斗くん」

「なんだよ?退く気になったのか?」

「いえ」

「じゃあなんだよ?」

「学校が始まって、もし私と海斗くんが敵対するようなことになっても……こうして構っていただけますか?」

有栖の声が若干震えている。こいつは普段から自分の弱さを見せない。俺が唯一見たのはあのショッピングモールでだけだ。

「…………」

「もし、私がピンチになったら……あの時みたいに助けてくれますか?」

「…………」

何て答えるのが正解なのか。間違いなく言えること――

それは真っ当に生きてきたこいつが俺なんかに関わるべきじゃないってことだ。

「……だめ、でしょうか?」

「……ま、気が向いたらな」

「……私は、高度育成高等学校で退屈なんてしたくありませんでした。誰でもよかったんです、私を楽しませてくれる人なら……でも」

「『有栖ぅ~、有栖たぁ~ん!』って素っ裸で息荒げながら追いかけてくるようなおっさんでも?」

「……すみません、常識的に考えてせめて普通の方にしてくれませんか?」

「俺にはそれが常識なんだ。自分の常識が他者にとっての非常識であることは多々ある。だから、自分の価値観で全てを推し量れると思ったら大間違いだ」

「……はぁ、海斗くんはそうやっていつものらりくらりとやり過ごしますね。でも核心を付いたことも言ってくる。正直卑怯だと思います」

「狙ってやってるからな」

「それで、先ほどのこたえですが」

これ以上長引くとめんどくせーな。

「……ま、お前には『育成方針殺人事件』を読ませてもらったからな。本当にピンチの時はマッパで駆けつけてやるよ」

「ますます私がピンチになるので服を着てマッハで来てください」

「……」

「……ふふ、ありがとうございます。お休みなさい海斗くん」

有栖は再び寝息をたて始めた。

 

 

 

しかし、まさかまた学校に通うことになるとは思わなかったな。

――高度育成高等学校

実態は知らんが名前と有栖が入学するという時点で普通の学校ではなさそうだ。

身体能力はともかく頭脳に関して言えば有栖はこちらの世界ではかなり上の方だろう。

憐桜学園も退屈はしなかったがこっちも期待できそうだ。

とは言え実力を出して変に注目されるのもめんどくさいな。あくまで平均に位置するくらいがいい……。

憐桜学園時代、俺は学園の汚点だった。佐竹に実力を隠すように言われたがこちらの世界の平均がどのくらいか解らなかった。

身体能力テストの時、俺の前にいたやつより少し下くらいでやったらそいつがかなり下だったらしくそれ以来俺は落ちこぼれを演じてきた。

まあけど上位に行くとそれなりにめんどくさそうだしな。

気楽にやるのが一番か……

気づくと俺の口角はやや吊り上がっていた。自分でもわかる。どうやら思いの外、俺は楽しみにしているみたいだな。

俺は新たな学園生活に期待を膨らませ隣を見た。そこには胸が膨らんでない有栖がいて静かな寝息をたてている。

それにつられるかのように明るい部屋でおれも意識を手放した。

 

 

 

 

 

次の日、玄関にはおっさんが見送りに来ていた。

「いよいよ今日から学校だね。有栖、海斗くん、頑張ってきなさい」

「はい、お父様」

「世話になったな」

「とは言っても私も頻繁に学校に行くからね。海斗君の活躍を期待しているよ」

「娘の活躍を期待してやれ」

「それはもちろん、有栖もね。おっともうこんな時間だ」

時計を見ると時刻は7時30分を過ぎたところだ。車で学校がある敷地の入り口まで行き、そこからはバスで移動する。入学式に間に合うように行くなら時間的にはちょうどいいだろう。

「それじゃあ行ってらっしゃい」

「ああ」

「行ってきます、お父様」

俺はおっさんが用意してくれた車に乗り込んだ。

「有栖!」

有栖が車に乗ろうとした時、おっさんが有栖を呼び止めた。

有栖はおっさんと何か話をしているようだったが内容はわからない。まあ俺には関係のないことか。

話を終えると有栖が笑顔で車に乗り込んできた。有栖がシートベルトを締めると車をゆっくりと動き出した。

「なにかいいことでもあったのか?」

「ええ。教えてほしいですか?」

「いや、まったく」

「……」

「そーいや荷物すくねーけど服とかはどうなったんだ?」

「それは先に寮に送りました」

「そうか」

「学校楽しみですか?」

「まあ、少しはな」

「一緒のクラスになれるといいですね」

「そうだな」

「まったくそうは思っていなさそうですね」

「お前はついに俺の思考を読めるようになったのか」

「なんだかんだ海斗君とは一カ月近く生活してましたからね」

「そうか。一カ月も性活してたのか」

「……それ字が違います」

「着くまで寝るわ」

「眠いんですか?」

「どっかの誰かがベッドを占領してたからあまり寝れなくてね!」

「ひどい人も居るものですね」

「……」

こいつは本当にいい性格してるな。30分ほどだが寝るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海斗君、起きてください」

有栖の声で目を覚ました。車が動いている感覚はない。どうやら目的の場所についたようだ。

「おはようございます」

「着いたのか?」

「はい、ここからバスに乗ります」

「わかった」

車を降りると門のようなものが見えた。ここから先は車ではいけないようだ。そういえばおっさんが外と連絡が取れないみたいなことを言っていたな。

有栖が先に門をくぐった。俺もそれに続く。

すると不意に有栖が振り返った。

「今日から同じ学校の生徒です。よろしくお願いしますね」

有栖が軽く頭を下げる。初めて会った時のように、でもあの時とは違った表情で。

そんな有栖に俺もつられて笑う。

「……行くぞ」

「はい」

俺たちは歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――第一部完――

 




というわけで第一部はこれにて終了です。
次話からよう実の原作部分に突入します。
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