Yes!ウサギもやって来ました♪   作:白結雪羽

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すすまなーい


Yes、やはり白ちゃん様は頼りになるのです。

「――とまあ。簡単にですが、私の素性は今説明させて頂いた通りなのですよ。understand(ご理解頂けましたか)?」

「はぁ……概ね理解したよ。帝釈天の御旗まで示されてしまってはな……まあ一応納得はしておこう」

 

 

 長いようでそうでもない黒ウサギの身元説明――異なる箱庭の説明を聞き終えた白夜叉は、言葉に対して少々気が滅入ったようであった。それもこれも説明の合間悉く煽り兎の煽り口調を挟まれたのが原因である。むしろ最後までよく平静を保ったと言うべきだろう。

 そんな彼女の心労をおそらく察知しているだろう黒ウサギは思わず殴りたくなる笑みをこれでもかと浮かべていた。

 

 

YesYes(ありがとうございます)♪ 本来なら日天鎧(カルナ)とか梵釈槍(ブラフマーストラ)とか月界神殿(チャンドラ)とか金剛杵(ヴァジュラ)とか見せて手早くご理解してもらうのがよかったのですが、生憎此方の箱庭に飛ばされる際に没収されてしまったようでして。まあ無くても然して困りはしないのですが、こう言う身元証明し難いのは厄介ですねー」

「おんしちと神格級ギフトの認識が緩すぎないか? オリジナルには敵わないとは言えその威力は絶大なのだぞ」

「神格級ギフト四つを全力で使ったのに瞬殺された可哀想な兎の話を聞きます?」

「その兎は一体どこに喧嘩を売ったのだろうな……」

 

 

 箱庭広し、黒ウサギ以上の実力者は上層に行く程安易に存在する。ただ、軽々しく喧嘩を売るにはいずれも危険度が文字通り桁違い、とてもじゃないがこうも調子好くも語れる相手は限られてくる……の以前に。この黒ウサギの性格では多方面の琴線に触れてそうだというのは考えない方が精神的に優しいとスルーする白夜叉であった。

 因みに黒ウサギの言う瞬殺された相手とはナフェの主たるサトリ、その内側に存在している()()()()()()の方だったりする。

 

 

「やはは。――さて、経緯も粗方話しましたし。ちゃちゃっと本題の方に入っちゃいましょうか。あ、シリアスとかそういうの無しで単刀直入に言っちゃいますとね? 私達今根無し草なのでございますよ、お話から当然ご理解頂けるでしょうが。そこで白ちゃん様にどこか都合の……面白そうなコミュニティに居候の計らいをしてもらいたいのです!」

「おう、厚かましくもぶっちゃけたなおんし。一応私らは初対面なのだがな」

「でも真剣に考えてくれている素振りが見受けられた辺り白ちゃん様も人がよろしいですね♪」

「そら……面白そうだからの!」

 

 

 グッと親指を立て握り拳を合わせる黒ウサギと白夜叉。今回散々振り回した側と振り回された側。しかしながらこの二人、本質的には奇遇にも似てしまっており、基本は振り回す側で俗に言うトラブルメーカーである。短いやり取りの最中ある程度の波長は掴みあってしまったのだった。

 ナフェの頭痛が加速する、表に出て止めるつもりはないが。

 

 

「あっと、そうでした。何かとお世話になってしまう訳ですし、序でに私のツレの紹介もさせてもらいましょうか!」

『おいクソウサギ』

 

 

 出るつもりは無かったのだが、そうは問屋が卸してくれなかった。悉く意に反する黒ウサギにナフェ額に青筋が浮かぶ。

 

 

「なぬ。ツレが居ったのか? ……そう言えば今さらりと〝私達〟と言っておったかの」

Yes(はいな)。お話のどこに挟もうかと最初に悩んでいたらうっかりと忘れていました♪

――って訳でお出でなさいませですよーナフェさnふぎっ!?」

 

 

 腕輪を外し指先で器用に回していた黒ウサギが、ソレを宙に軽く跳ばして呼び掛けた。そして次の瞬間に巨大な機巧の手に押し潰された。

 本人としては、回転する腕輪から閃光が奔りそこからナフェが荘厳に現れる――なんてかっこつけた登場をイメージしての一連の動作だったが、ナフェにとっては要らん気遣いでしかなかった。

 

 

「ねえクソウサギ。達磨にされて私のウサギ達の射撃の的になんのと、その辺の獣の為にハンバーグになんのどっちがいい?」

「どちらもノーセンキューなのでこざいたい痛い痛い!? ちょ、ちょっとこれは流石に理不尽なのですよ!! ナフェさんがいィイッくら面倒事に関わり合いたくなァアッいとは言っても、私とご一緒してる時点でそんなの無ゥッ!? 理な訳ですから! それに隠れててもいずれ居ることバレちゃいますしィギャッ――」

 

 

 黒ウサギの弁明を聞くだけ聞き流し適当な制裁と言う名の八つ当たりを終えたナフェは、心底嫌そうな顔をしながらも白夜叉と向き合う。八つ当たりの弊害で部屋が荒れないようにしていた辺りまだ理性的な彼女である。出張らされた以上はちゃんと話もつける。

 

 

「これは……巷に聞く〝メカ娘〟と言うやつかの?」

「余計な風呂敷広げようってんならあんたもしばき倒してあげようか?」

「ははっ、随分と気の短い娘っ子が出てきたな。差し詰そちらの黒ウサギのお目付け役とでも言うか」

「……不本意ながらね」

 

 

 苦虫を噛み潰したように口許を歪めそっぽを向くナフェ。それだけで白夜叉は彼女の苦労をだいたい察し、細やかに同情の視線を送るのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 話をつけるとは言ったが、概ねの事情は黒ウサギから説明されているので、ナフェの言うことといえば簡潔な自己紹介と溜まりに溜まった愚痴くらいなものだった。尤も、元の箱庭の白夜叉ともそこまで交流があったわけでもなく、況して此方の彼女は初対面。精々遂溢す程度のものだが。

 

 

「――こんな所。コイツ(黒ウサギ)があんまりにもはっちゃけ過ぎた時は私も全力で潰しに掛かるけど、その時以外は此方の(箱庭の)奴等にお任せって感じ」

「とんだ厄介払いだな……普通なら強引に押し返されても文句は言えんぞ」

「だろうねー。ま、コレも野放しにされてるからって分別が着いてない訳じゃないし? 餌付けさえしとけばまだ扱いやすいでしょ」

「それはまあ……改めて考えてみれば、此方の黒ウサギのような奔放者は箱庭の上層でも珍しくないしな」

「うっわー……マジか」

 

 

 解ってはいてもこれから先にあろう気苦労案件にげんなりするナフェである。もういっそ自分も好き勝手暴れてやろうかと一時逡巡していた。

 仮に黒ウサギを放るなり便乗するなりに彼女も自由にし始めれば収拾着かなくなる事間違いなしだ。その場合……彼女の主も出張ってより状況が支離滅裂な事になるだろう。

 

 

「ちょっとお二人さーん? 幼い気な美少女ウサギさんが死に体なのに無視は酷くはありませんかー?」

 

 

 ぼろ雑巾にされて部屋の隅に転がされてた黒ウサギから抗議の視線が送られる。しかしナフェと、多少は慣れたのか白夜叉の両名とも、一瞥もくれずこれをスルー。

 

 

「で、私が聞くってのも何だけど……コイツの引き取り当てってあんの?」

「そうだのう……月の兎が授かる〝審判権限〟がないのが懸念ではあるが、先の話を掻い摘まむに実力は申し分ないのだろう? それなら引く手はそれなりに約束はされるな。なんなら私の下で面倒見るのも吝かではないぞ? 二人とも小柄ながら、黒ウサギは出るとこは出て引っ込むところは引っ込んどるし、おんしも――のわぁ!?」

 

 

 ナフェの鉄拳が容赦なく降り下ろされるも白夜叉、これを懐から瞬時に取り出した鉄扇で防ぐ。見事な手並みだった。

 それは兎も角、一見して言葉を最後まで聞かぬまま暴挙に出たナフェだが、こめかみに薄ら青筋を浮かべてる所から見て気に触った所があったのだろう……と言うかあった。

 

 

「別にさあ、容姿を褒めてくれんのはいいんだけどねー。実際私……とそこのクソウサギも見た目は上の上だし? おだてられて悪い気はしないし?

――でもなんかそのキッショイ目で言われんのは超ムカつく……ってかアンタがクソウサギと似たタイプってだけで腹立ってきた」

「それはちと理不尽ではないか!? ワタシナニモワルクナイ!」

「脳ミソ捏ね直してでもやらない限り存在悪よ」

「何故私は初対面の娘に人格否定されておるのだ……」

「野蛮で粗暴で理不尽がナフェさんの専売特許ですからねー、っぶない!?」

 

 

 キレ芸がもう板に着いてきたナフェ。尤も煽ったり余計な下心を見せなければよかった話である。

 

 茶々を入れた黒ウサギを潰し損ねつつ、乱暴に上げた腰を下ろしてナフェ視線をより鋭くする。意を汲むに「さっさと答えろ」とのことだ。とてもじゃないがお願いしている側の態度ではない。

 

 

「さてな、おんしらの引き取り手だが……取り敢えず無難なところが二つある。一つは先も言った通り、私の保護の下〝サウザンドアイズ〟に席を置くだ。こちらは他の者へ便宜を図らねばならんし、あくまで暫定的な面が強い。が、まあその辺は私が何とかしよう」

「至れり尽くせりですねー。なんだか申し訳なくなってきたのですよ」

「思ってもないこと言うなっての。……で、残りの一つはなんなの? 先に良さ気なの提げてきたって事は、信頼置いてるけど十中八九訳有りなんでしょ」

 

 

 あまりにも好条件、ならば残る選択肢に警戒するのは少なくともナフェにとっては当然であった。無論考え過ぎという事もあり得たが――予想を口にされ控えめに唸った白夜叉の様子を見るに正鵠を射ていたようだ。

 二匹のウサギからは正反対の反応が顕れた。

 

 

「ほうほう、訳有りですか! 旧来のよしみで白ちゃん様がご贔屓してなんとか食い扶持を繋いでいる崖っぷちコミュニティとかそんな感じですか!?」

「……ああ、その通りだよ。もう一つはつい三年前まで東区最強と謳われていたコミュニティだ。そして――この世界の黒ウサギが所属しているコミュニティでもある」

「ふーん? こっちのコレ(黒ウサギ)がいる、ねぇ…」

 

 

 今居る箱庭の黒ウサギについては、先の話合いの最中背丈といい性格といいナフェの知る黒ウサギとは対照的な者だと聞いている。実力は申し分ないようだがそこはこの際重要じゃない(とうでもいい)

 その彼女が所属する元最強箱庭クラスで現存続綱渡り状態のコミュニティに就いてくれないかと暗に白夜叉は言った。その意味するところは、最早想像するに易い。

 

 

「結局決めるのはそこの駄ウサギだから私はどっちでもいい…ぶっちゃけるなら前者の方がいいんだけど。アンタはどうすんの?」

「ムムム、要するに此方の(黒ウサギ)のお手伝いをーってことですよね! それに元東区画最強のコミュニティって、もしかしなくても〝   〟ですよね?」

「! 知っておったか」

「はいな。私達の居た箱庭の時間軸は此方でいう100年程遡った箇所が近似してます。〝   〟は数多に存在するコミュニティの中でも一際頭角を示してきた優良株なのですよ。因みにそこの参謀を務めていらっしゃる金糸雀おば様とは結構仲良くさせて頂いてました♪」

「……そうか。金糸雀とも……世界が違えども変わらぬ縁もある、か」

 

 

 過去を顧みるように少しの間目を伏せる白夜叉。

 一方で黒ウサギはニコやかな笑顔を絶やさないものの、元の世界での金糸雀とのやり取りを想起していた。一時は共に戦線に臨んだこともあり、些細な出来事から衝突しあったこともある間柄。そして彼女はまだ健在で〝   〟で己の務めを果たしている。

 対して此方は? 人としての差異はあれどコミュニティの練度としての差はそこまでないと考える黒ウサギ。金糸雀含む強者揃いで他との交遊関係も厚いだろうのコミュニティが壊滅するなど、内輪の不和を除けば一つ位しか思い浮かばない。

 

 

「〝   (彼ら)〟を下す程の〝魔王〟、ですか……フフ、俄然興味が湧いてきましたねェ」

「私も信頼を寄せ一目置いていた彼奴らが名、肌、コミュニティの同士達すら剥奪した下手人だ。易々とはいかんぞ?」

YesYes(結構結構)、寧ろ張り合いがないと面白くありません。それに〝   〟――いえ、今までのニュアンス的に現〝ノーネーム(名無し)〟でしょうか? 文字通りの最底辺からの再起とは私も初体験です。あぁ…どれ程素敵で刺激的な経験ができるのてしょうかね!」

 

 

 湧いてくる高揚感を抑える為か体を抱き締め熱い息を吐く黒ウサギ。新に変態の称号でも授かりそうだ。

 その変態を横目にナフェは投げ遣り気味に首を振り、

 

 

「……ま、返答はわざわざいらないでしょ」

「みたいだな……。事情は此方からおおまかに伝えて「あ、それはお構いなくです。私達が独自で接触してみます。いわゆるサプライズジョインってやつです♪」

そ、そうか? おんしがそれで良いなら私も何も言わないが、不足の事態が起きれば遠慮なく言ってくれ。可能な限り手を貸そう。それと……あまり羽目を外してくれんようにな」

「善処するのです♪」

 

 

 黒ウサギの当初の目的、白夜叉とのファーストコンタクト及び身元の保障は無事達成された。お互い出逢ってまだ少し、信頼関係が芽生えてたというにはまだまだ早い段階だが、利害関係の取引の観点から見れば結果は上々だろう。たとえ白夜叉が懸念を抱き目を光らせようと、黒ウサギとナフェは何も侵略しにきたり謀略を巡らせ人々を陥れる為に来たのではない。殆ど自由にされてはいるが、これは羽目を外しすぎた黒ウサギへの一時的島流し()なのだ。

 

 

「んでー? 話はスムーズ過ぎるくらいあっさり着いたけど。この後どうすんの? 早速此方のアンタ(黒ウサギ)に突撃でもかますの?」

「それも有りではありますけど、折角此方の白ちゃん様と友好を深められる機会なのです。もう少しお話でもしましょう♪ 白ちゃん様もよろしいでしょうか?」

「私は構わぬぞ。そちらの箱庭の歴や私の活躍とか興味が尽きんしな。後だな、ここ最近骨のある若造が中々居らんで退屈してたところだ――おんしなら付き合ってくれるだろう?」

「ほうほう? まさか白ちゃん様から誘ってくれる日が来ようとは――それはもう、是非!」

「やるなら勝手にやっててよね。巻き込んだら殺ス」

 

 

 罰、なのだ。一応。

 

 

 

 

 




戦闘回省略されそうな〆方になったけど次は恐らく戦闘回(たぶん短い
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