千「織斑千冬だ」
山「今回は皆さんに、我楽娯兵の考えた勝手なシールド設定の紹介になります」
千「前書きでやる必要はあるのか?」
山「本編で書くのが面倒だったそうです。それでは説明を始めますよ」
山「シールドとはISに初めから搭載されている搭乗者を物理的な外傷から保護する不可視のエネルギー保護膜になります。こちらはIS 〈インフィニット・ストラトス〉を御存知の方は知ってますね? そしてもしもシールドが消費するエネルギーが切れたり、生命保全の絶対領域であるシールド内に異物が侵入した場合は二枚目のシールド、『絶対防御』が発動します」
千「こいつが無ければ死人が山ほど出るな」
山「そうです。そしてここからが本題です! 我楽がいいたい。超絶簡単シールド突破方法です!」
千「力押しだろう」
山「脳筋ですね織斑先生は」
千「何か言ったか」
山「い、いえなにも。……それで突破方法ですが。一つとして織斑くんの『白式』の単一能力、零落白夜による対消滅エネルギー攻撃によるエネルギー消滅現象ですね。そして織斑先生の言ったように有無を言わさない力押し作戦もその一つです。そして――もう一つ我楽が設定したシールドバリアー突破の方法があるんです」
千「この前書きでは私が小ボケ役だ。なんでしょうかそれは」
山「それは、ISのシールドに割かれている演算処理能力を超過させることです」
千「皆意味が分らんな。私も分らん」
山「シールドには攻撃一つ一つに働く防御演算と云うものが存在し、弾丸の一発一発にそれに掛かっている慣性、熱エネルギー、音、光などあらゆる物理現象を演算し相殺するエネルギーを起こす事でシールドバリアーとしての体をなしているわけです。しかしながらそれはISのもともと持つ演算能力があってこそ。第三世代や単一能力など後足しで演算を割かれているISはシールドに割かれる演算スロットが少ないわけです」
山「もしも、ISの防御演算を超える攻撃を加えられたら? 皆さんどうなるとおもいます?」
千「絶対防御が発動するな」
山「その通り! 生命保全機構の『絶対防御』が発動し、あらゆる演算能力がそれに割かれてしまいます。結果としてIS側の負けとなります」
千「簡潔に言えば劔冑の陰義はISのシールドバリアーの防御演算など軽く超えた威力があるという事だぞ」
朝日差すジムのリング。
一人の少女が珠たる汗を散らせスパーリング相手のプロテクター目掛け鋭い回し蹴りを放った。
痛々しい音が空気を震わせ、その場にいる一人を除きすべてのものを震え上がらせた。
「甘いッ! 今だ
スパーリング相手の女性は強く叱責した。
その女性は彼女にとって第二の師であり、越えるべき壁であった。
タイ代表シンチャイ・プラモート。『王の御剣』の名を襲名した怪物だった。
「――ッシ!」
左下段の蹴りを踝に目掛け打とうとするが、スルリと左に回りこむ。
蛇の如く、滑らかで軽やか、そして寒気を誘う。
左手の甲が振り上げられる。自然に頭が痒いから振り上げるかのような型のない動き。
手の甲は私の顎を打ち抜き脳の全体を揺さぶり、意識を飛ばされそうになった。
膝から崩れ落ちそうになるが、強く一歩踏み込み引き締めを図った。
「っく」
左ストレートの殴打。しかし彼女には届かない。
パンチがではない実力として、力が及ばない。
私の一撃の終わりを見極め「抑える」、そして打ち初めを「止め」られる。
拳は止めようとするから「打たれる」。その本質を気づいている彼女だから出来る芸当だった。
あまりにも異種格闘過ぎる。私の得意とするムエタイを封じ込み、無理やり違う土俵、即ちボクシングの場に引っ張り出しているのだから。
ムエタイにおいて、拳の重要性は極めて低い。試合での拳はポイントに殆どならない。
その上に首相撲の発達でパンチ主体では不利になるからだ。
それを踏まえてムエタイは、肘打ち膝蹴り回し蹴りが重要視されている。
だが考えてみてくれ。
世界最強と名高い格闘技ムエタイであるが、実戦ではどうだろう?。
相手がもし受けに強いプロレスラーだったのなら。神速の打ちを放つボクサーだったら。総合格闘の王者であったのなら。
状況は変わってこよう。
足を使えない、肘を使えない、首を押さえれない。
そうなれば手数が減るどころではない。
そう、これはムエタイの訓練ではない。
――超実践的組討戦闘訓練だった。
「こんどは
懐に飛び込むかのように身を屈めて腹に飛びつかれる。
それはレスリングのタックルのようでありながら、日本古来のスモウにも似た突撃。
鳩尾に突き刺さる頭部が腹の底からすべての空気を押し抜くかのような感覚をもたらす。
「ガッ――」
息が詰り前進の筋肉が緩んだ。
それを狙っていたのだろう。足を取られ、彼女の左腕が右脇を抑え込まれ投げ飛ばされた。
――戦闘不能。誰の目に見てもそう見えた。
私自身もそう思えた。
「ヴィシュヌ。まだまだであるの」
「………は、はい」
立ち上がる気力はとうに尽き果てていた。
勝てる気がしない。『王の御剣』タイ代表シンチャイ・プラモート。
二代目『ブリュンヒルデ』には。
「まだまだよの。あの鬼に振られすぎている」
「自覚はあります、見に染み付いた澱を取り除くよう努力も」
「その努力、概は見えた。あのボクシングスタイル。ムエタイの拳の軽視を読み取っての事だろう?」
何もかもお見通し。そういった様子でシンチャイはポンポンと肩を叩いた。
「主の母とは顔見知りであるがの、
ヴィシュヌは顔を下に落した。
母、私の母。よい母、だったのだろうか。
強く、厳しく、頼りがいのある母親だった。知人であったシンチャイには母の教育は行き過ぎていて虐待だと口論になっていたのをよく見ていた。
しかし今はその影はない。
「病の容態はどうだの?」
「無理は今のとこしておりません」
「そうか良いことだ。無理に動かれては骨が粉になりうる」
母は病に伏せている。初めは軽い腎疾患であった筈だ、発見が遅れてしまい骨軟化症を併発した。
ムエタイチャンピオンは体を動かす機会が多く、その上強い衝撃を伴う競技だ。
結果として両足の骨の粉砕骨折という事態になった。
それ以来老け込んでしまい、未だに病は治っていない。
「床の上で嘆いておろうの。酒でも馳走してくれようか」
「喜びますが、お控えを願います」
「そうだなあ。ブランデーもいいかもな、どう思う
「そうだな死ね」
ふいに後ろに容赦のない蹴りが放たれ肉を打つ音が響く。
痛みで転げまわる男性が居た。
「
「痛くしたのだ。痛くて当たり前よの。国王陛下」
にっこりと優しげに笑った青年。その屈託のない笑顔は誰もの緊張を緩和させる。
白の軍服にいくつもの階級章やらワッペンを着けている。
ラーマ11世。またの名をチョームクット。現在のタイ王国の政を勤める男であり、タイ軍の総帥である。
「
「…………」
「答えにくい質問をヴィシュヌに振るな。困っているであろう」
「ははははっ」
楽しげに笑う陛下。
シンチャイと非常に親しげ、というのも親しい理由はある。
我が后、と呼ぶようにラーマ11世とシンチャイは夫婦関係にある。
タイ最強の武力を持つ女性。タイ最高地位にいる男。否応なしに顔を合わせる機会は訪れる。
そして彼らはすべからく恋仲に、とはならなかったそうだ。
シンチャイ曰く、八回ほど陛下に恋慕を告げられたが跳ね続け、九回目で折れてやったそうな。
その割には仲は非常にいい。
出会いがしらの蹴りも戯れのそれだ。
「さてと、戯れもほどほどに。皆の者よ、僅かばかり席を外してくれまいか?」
ジムにいる誰にも聞える声で陛下は言った。
人間はジムより抜けていき、そこに残ったのは私、シンチャイと陛下だけだった。
「ふむ、ヴィシュヌよ。少々手間を掛けさせるが、我の頼みを聞いてくれぬか?」
「何なりと陛下」
腰を落ち着かせたラーマ11世は言いにくそうな様子で思想する。
「ヴィシュヌよ。君はアメリカの新型ISの暴走事件についてどの程度の知識がある?」
「はっ。ハワイ沖で暴走後、超音速航行で逃亡、日本近海にて野外研修中であったIS学園の生徒たちによって撃破と」
「ふむ。軍部のほうからは?」
「似たような。ただ一機だけ国籍不明のISがほかのISたちと連隊を組んでいたと」
「うむ、そうか。そうかそうか」
噛み含めるように受け答えた陛下。
そうして言う。
「ではあの場に本当の意味での
「はぁ、所属不明です……か」
「知らないよな。どの国も伏せておるからな」
陛下は軍服の下より携帯タブレットを取り出し画面を操作した。
そして陛下の言う『所属不明の機』の画像を取り出した。
「これは……IS?」
「ヴィシュヌ、君の目にもそれは疑問に思うか?」
「はい、スラスターが見えません。それにこれは……ジェットの軌跡ですか?」
画像だけでは詳しく分らなかったが、ISにしては余りにも無骨。
飛行ユニットなどはISのような反重力システムのようなものは積んでいないように見えた。
それに僅かばかりISより小さいように思える。
そしてこれはISを撃墜している。
「この機体はどこからともなく現れよった。周辺にISを搭載した空母や基地などの存在は確認できない。潜水艦などの可能性も探っているがそれもないだろう」
「ではこの機は?」
「全くの不明機。かの天才篠ノ之束殿の差し金やも知れぬが。妙に引っかかってな」
タブレットを操作し浜辺の画像を取り出した。
「この画像を見て君はどう思う?」
「男性……? 衛星画像ですので判断しかねますが」
「いや、恐らくそれであっておる。周囲を見る限りでは学園の生徒に拘束されている。これを踏まえればアメリカやイスラエルの線は消える」
「中国、ロシア、EU圏は」
「てんやわんやだ。どこもかしこも大忙し、恐らくどの国も我と同じ状況だ」
「……」
どの国も知りえない機体。
篠ノ之束博士の作り上げる新型機体だとしても、これまで世界を騒がせたISを無に還す様な機体を作るだろうか?。
いや、天才ならそのような事もやりかねない。
他人の迷惑も考えない者が
「ヴィシュヌよ。女性である君だから頼むのだが――」
陛下は迷うような様子であった、言う。
「この男、篭絡せよ」
「篭絡、ですか」
「男として恥ずかしい限りよ。このようにしか軍備を固めようなどと」
反論できなかった。
確かに今のタイ軍はどの国よりも極めてISの技術力が低い。
現在も中国と技術提供などさまざまな向上を目指しているが、それでも差は埋まらないのが現状。
どのようにしても戦力的優位がほしいのが今のタイ軍なのだ。
「他の国に奪われるならば搭乗者諸共この機体を破壊しても構わん。学園からの逃亡の手筈は整えよう。だが出来る事ならその手を血に染めず平和的に済ませてくれ。我が御国の為にも民草のためにも」
「
「調子はどうだ村正」
《ぜんぜん不調よ。でも、あの変な部屋にいるよりはましよ》
不満げな
人の背を優に超える紅色の大蜘蛛の頭に手を乗せなでる。
《な、なによ?》
「この冷たさも懐かしくある。いつ振りか……」
たった一ヶ月。矢の如く過ぎるときの流れに翻弄された。
他次元の世界情勢や生活スタイルに戸惑い、それに適応しおうと足掻く日々に疲弊していたところであった。そんな日のときに
《私はあの息苦しい部屋から抜け出せただけで御の字よ》
「どんな検査を受けたのだ?」
《手の触れないものが殆どよ。視線の嵐っていえばいいの?》
「X線のようなものか」
《多分ね。私の知る技術外のものよ》
鋼鉄を優しく撫で上げ、その冷たさを肌で感じ心地よさを思い起こしていた。
《湊斗先生。準備は良いか?》
アリーナのスピーカーより織斑千冬教諭の声が届く。
急かしたいのだろう。仕方もないことだと理解はしているがもう少し待ってほしかったものだ。
「村正。装甲するぞ」
《ええ、いつでもいいわ》
顔を手で隠し装甲の構えを取った。
声に乗せる詔。歌のように、そして詩の様に。
呪詛でもあり、言祝ぎの歌を諳んじる。
「――鬼に逢うては鬼を斬り 仏に逢うては仏を斬る ツルギの理ここに在り――」
「相変わらず奇怪だな」
千冬は管制室でモニターに映し出された
「まさか、湊斗先生があの機体の操縦者だったんですか?」
山田先生は告げていなかった真実に少々たじろいだ様子であった。
それもその筈で朝の職員会議で新人が入るといわれ、男の教員が入るなど珍しいくらいにしか思っていなかっただろう。轡木の縁故で親戚の類と思っていれば、よりにもよって『劔冑』の操縦者だ。
驚いて当然だし、なにより意外性しかない。
千冬の目から見ても、湊斗景明はスター性というものに欠けている。
それ相応の偉業を成し遂げたもの、それに向かう途中というものには否応なしに雰囲気として現れる気迫と云うものがある筈なのだが、あれにはそれが一切見当たらない不思議さ。
どこにでも居そうな一般人というのは千冬の見解だ。
「順序としては飛行テスト、その後最大速度の測定と急着陸、そして本題の戦闘テストですね」
「ああ、更識にIS展開準備の合図を」
「はい分りました。――それでは飛行テスト開始します。湊斗先生? 聞えますか?」
《はい、
「了解です。飛行領域に通過マーカーと撃墜デコイを設置しますのでデコイのほうを可能な限り撃破しながらアリーナに戻ってきて下さい」
《諒解致しました》
「それでは開始します。……3…2…1…GO」
山田先生の合図に爆音がアリーナに木霊する。
ジェットの金切り声が耳を劈き、音が体を震わせる。
モニター、スピーカー越しからでも分る爆発的なエネルギーの流動の力強さ。
その音から分ってしまう。
「凶器、だな」
「村正、離陸しました。……思っているほど速度が出ませんね」
「重力制御装置がない。重力と慣性に囚われている。飛行機と同じだ」
「そうですね。……デコイを一機破壊しました。ふぅん……展開武装もないようですね、あの三本の刀が主装備のようですね」
刀で切りつける。姿から形、すべて室町時代に戦場を駆けた鎧武者のようだ。
デコイを切り裂き、突き穿ち、ときにはその体に掛かる全速度と体重を乗せた体当たりで粉砕していく。
禍々しい。見るに悍ましいその姿は妖怪の類にも思える。
「湊斗先生? 最大速度の測定領域です。加速をお願いします」
《諒解です》
冷静に受け答える景明は静かに独り言のように話し出した。
《村正。磁力飛行、重力飛行をするぞ》
「重力飛行だと!?」
何ものかに景明は話しかけている。恐らく、劔冑のOSのようなものに話しかけているのかもしれないがそれ以上にあの劔冑の構造で重力制御が行える事は出来ない。
《
力強い声で唱えた途端に村正を駆る景明は想像を絶する速度になる。
「超音速巡航!?」
私自身理不尽すぎる現実に声を漏らしてしまった。
ジェットエンジンで超音速巡航を可能とするモノはスクラムジェットであり、村正が使用している推進器、ラムジェットではない。
あの推進器ではこの世界の歴史上で亜音速までしか速度が出ない事が実証済み。
だがあれはそれを容易に突破している。
村正は重力保持機を内蔵している? いや、構造はエックス線や赤外線、あらゆる最先端技術の粋を集められているここでは丸裸同然のはずだ。
それではなにか、あれは我々の認知を超える何かを持ちえているのか?。
どう考えようが答えは出ない。
村正は荒々しくアリーナに降り立っていた
土埃を払い除け仕合う相手を臨んだ。
水色の鎧を身に纏った更識楯無生徒会長だった。
「それが、貴方の機体。いえ、劔冑だったかしら? 貴方の世界では」
「湊斗景明。流儀、吉野御流合戦礼法。村正と共にお相手致す」
「あら? まるで辻斬りのそれね」
楯無は空に手を躍らせる。その手に光の粒子は溢れる。
(資料には読んだが。あれが量子再構成技術か)
俺の世界にもあの頃よりももっと先の時代になれば産まれるかもしれないが、こちらの世界にはなかった。
光の粒は形を成し、その手に収まる。
「槍、欧州の
「ご賢察の通り。でもね、これは突くだけが特技じゃないのよ」
「形状から察するに、銃火器類を内蔵しているのですか?」
「……察しがよすぎるのも困りものね。はぁー、正攻法で――っ」
強く踏み込み鋭い一突き。
腹に向かい放たれた槍の穂先を野太刀で受ける。
無論それは楯無も予想していた。追撃の二の突き。
柄の中ほどを握り小回りを真下ランスは一回目の突きよりも早く撃たれる。
だがそれは俺も当然予想の範疇、この程度戯れ合いのそれと変わらない。
切り上げ、槍を打ち上げる。
楯無の腕は大きく天を仰ぎ、少し驚いた表情が窺える。
これは模擬仕合だが、仕合は仕合。取りに行った。
未を僅かに低く、そして地をしっかりと踏みしめるように構え左肩を楯無の腹へと向ける。
身を任せ、押されるがままに
「っ?!」
これは楯無も予想外だったのだろう。顰めた顔で村正の顔を睨みつけた。
「ここでそのジェット、合当理だったかしら? それを吹かしてくるなんて」
「吉野御流合戦礼法組討《追風》にて」
静かにそしてしっかりと技を教えた。
景明の修める吉野御流合戦礼法の甲冑刀法に大別される技だった。
本来は刀が破損、使い物にならなくなったときに使われる組討術であり、当然ながら的は得物を持ちえた状況を想定されている。
その技は景明こそしらないが、その実動きそのものはレスリングのタックルに非常に近く、敵を地面に熨し付けるのに非常に適していた。
幾ら相手が劔冑を纏った武者であろうとも、劔冑の突撃、しかも合当理を吹かし地に降りた状態であれば体勢は崩され転げさせる事は充分可能なのだ。
しかしながらこれは異種戦闘。対敵者は武者にあらず。
ISという意思もたぬ先鋭機械であり劔冑にはない技術で構成され地に
今の突撃も苦い表情を楯無は浮かべているが景明にとっては豆腐でも砕け散らしているかと思うほど手応えがない。
「いいわ、私も本気で――っ!」
槍の穂先が鋭く地を穿つ。
力任せに土を掘り返し、土煙を浴びせかけてきた。
目晦まし。
降り注ぐ土を打ち崩しながら穂先が土色の霧を突き抜けてきた。
上段より野太刀を振り下ろし切り落とす。
一歩下がり、野太刀を水平に鳩尾の高さに構えた。
左手を野太刀の中ほどに、親指と人差し指で刀身を挟み込むようにした。
微かに空気を丹田に落し、力を練る。
指に伝達させたその力は雷と変貌を遂げ放たれる。
反発力、磁力。――即ち陰義。
これは鞘でやる技の簡略版。だがその速度は勝るとも劣らない一撃に変貌を容易に遂げた。
横振りの神速の一刀が土煙諸共吹き払い、楯無を切り飛ばした。
「ホント無茶苦茶ね。劔冑は」
「こちらでは平常。常にこの様なものです」
「嫌味ね。攻めにくし」
攻めあぐねている様子、ならば。
「こちらから参る!」
走り出し、共に
悟られぬように脇差しの鯉口を切り、左手をすぐさま野太刀の柄頭に戻した。
左足を地に踏み込み、野太刀を上段にて
楯無はそれを見切り、右に滑るように避ける。
(――やはり)
ISは背後も見えている。
今までの攻め受けで既にアリーナの端まで迫りつつあったのだ。
このまま楯無は背中でアリーナの壁を叩くのかと思うほどの回避を見せていたが、そんなことはなかったようだ。
(先鋭の機械なだけはある)
機械を劔冑のように纏うのであれば背後の警戒は容易。
そして今までの楯無の身のこなしから見て武道は充分に修めているようだった。
ならばこの野太刀の一振りで左に逃げるのは無謀と十二分に承知している。
右しか道はないのだ。
左腕を腰の脇差しに回し、右に逃げた楯無に向け投擲した。
「!?」
得物を投げるとは思っても居なかったのだろう。
当たり前だ。この様な所業憚られるのが通。だがこれは非常時に際した業。
――吉野御流合戦礼法 岐路。
槍で払い除けようとするが間に合わず。肌に接するかと思われるが弾かれた。
「シールドでしたか」
「身を守るのにはもってこいよ。貴方のそれとは違って」
皮肉のつもりだろうが。そのシールドでは過不足だろう。
シールドを破る方法は既にこの世界の科学者が理論立てて解き明かしていた。
そしてその方法は、その科学者たちには実現不可能だが、
――村正には出来る芸当だ。
鞘に野太刀を戻す。
「村正、陰義で決めるぞ」
《殺しちゃうわ》
「ISには絶対防御という機構がある。仕手を外部からのあらゆる外傷を防ぐ機能だ」
《そんな都合のいい機能があるわけ?》
「あるからここまで祭り上げられているのだろう。やるぞ村正」
《……わかったわ》
大きく息を吸い込み、全身にその空気を力として巡らせる。
弾ける稲妻。轟く雷鳴。
手元で唸る静電の哮りが腕に振動を伝える。
反発と吸着の双方が、織り成す絶技。並みの武人ならば自滅を招く破壊的な技。
「吉野御流合戦礼法“
地を割るほどの強い一踏み。
肩に担ぐように納刀された野太刀が神速の速度で打ち出される。
雷を纏った刀身は――シールドを破り、二枚目の絶対防御に接した瞬間、閃光と成り弾き返された。
それと同時にブザーが鳴った。仕合の終わりだった。
「御相手、誠に有難う御座います」
赤い紅い体。この体は、この鎧は――人々の血で染め上げられた呪われた妖甲。
腕が震えた。決断をしながら、今更ながら自身の無謀さに。
絶対防御があるからといえ、それがまともに働くなどと甘えた考えに縋った。
俺はそれ以上何かを話すことはなかった。
一夏
箒 ■
セシリア
鈴音
シャルロット
ラウラ
刀奈 ■
簪
本音
乱音
ヴィシュヌ
ロランツィーネ
ファニール
オニール
ベルベット
クーリェ
麻耶
他
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アーキタイプのヒロイン候補に山田先生が追加されていた。
こんなの……入れるしかないじゃないっ!!
感想などで三世が候補にないとありますが、村正死んだら景明何もできないじゃん。
だから候補から外しまーす。
活動報告でちょっとしたアンケートをしてまーす。
誤字脱字報告。感想、意見、要求などはどんどん受け付けます。