たったひとつのSunshine Story   作:Kohya S.

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16. でも、大丈夫

 最後の練習には梨子ちゃんが一緒に行ってくれて、私は梨子ちゃんに感謝した。

 

 この前、梨子ちゃんと話して、私が考えていたようなこと――西村くんと梨子ちゃんが、その、どうとか――は、ないってわかった。

 でも、それなら西村くんの気持ちがたしかめられたかというと、そんなこともなかった。

 

 だから私は、西村くんと二人きりになったら、どんな顔をすればいいのか、なにを言えばいいのか、すっかりわからなくなっていた。

 

 そんな私に西村くんはいつも通りに接してくれて、私はぐっと気持ちが楽になった。

 

 梨子ちゃんと西村くんは仲良く話をしているのだけれど、どうしてだろう、ふたりのあいだには特別な何かがある感じはしなくて――梨子ちゃんと曜ちゃんみたいだなって思って、私は安心して見ていられた。

 

 そして私の心はまた、元のように彼のことを考え始めているのだった。

 

 最後の練習、沼津南高校のみんなの演奏は本当に良くなっていた。こう言っては悪いけれど、最初とは大違いだった。

 梨子ちゃんもすごく感動していた。

 本番が楽しみでならなかった。

 

 練習が終わってバス停まで送ってもらうとき、私はこうやって西村くんに送ってもらうのも最後だって気づく。

 彼と二人きりになれたらいいなってちらっと思ってしまって、私は心のなかで、梨子ちゃんに謝った。

 

        ・

 

 最後の練習から本番までは、あっという間だった。

 

 本番当日、私はいつも学校に行くのと同じ時間に起きた。さわやかな目覚めだった。

 部屋から廊下に出て、さらに窓を開けて外を眺める。東の空が明るくなり始めていた。冬の冷たい空気が私をなでて、すこしだけ残っていた眠気を吹き飛ばす。今日もいい天気になりそうだった。

 私はさすがに寒くて、すぐに窓を閉めた。

 

 朝食を食べていると、Aqoursのみんなもそれぞれ予定があるはずなのに、次々にメールが届いた。みんな私を激励してくれていた。

 

 私のあとから起きてきた美渡姉(みとねえ)に行儀が悪いっていわれたけれど、普段から食事中にテレビを見ている美渡姉は、あまり人のこと言えないんじゃないかな。

 

 私は衣装などを用意してから、集合の時間に間にあうように家を出て、バスに乗った。

 

 会場の文化センターは沼津南高校のすぐ近くだった。おかげで迷わずに行くことができた。

 

 控室に行くと部員のみんなはもう揃っていた。私は西村くんと奈良橋くんを見つけて駆け寄る。

 西村くんは道に迷わなかったか心配してくれた。ちょっとしたことだけれど嬉しかった。

 

 私は女子更衣室の場所を教えてもらい、ロッカーに衣装を入れてきた。

 

 先生から簡単な挨拶があったあとステージを見られるということなので私はついて行った。

 曜ちゃんと話した通りの大きさで、ダンスは問題なさそうだった。

 

 それからリハーサルまではすこし時間があった。

 私は最初控室にいたのだけれど、トイレに行ったり、あたりを探検したりしているうちに、西村くんと奈良橋くんはいつの間にかいなくなっていた。

 

 私はホールのロビーのほうへ行ってみる。

 ロビーのすみで西村くんを見つけた。

 

「西村くん」

 

 そう呼びかけると彼は驚いたようすで振り返った。びっくりさせてしまって申し訳なく思う。

 西村くんは――そんなふうには見えなかったけれど――緊張してるって話した。

 

 緊張しているのは私も同じだった。でも、もしそう見えないのだとしたら、それはみんながいるからだと思う。たとえ離れていても、つながっている。もちろん西村くんだってその一人だ。

 

 私がそう言うと彼は納得してくれたみたいだった。

 そして彼は右手を差し出す。

 

「高海さん、よろしく」

 

 と。私は嬉しい驚きに包まれた。もちろんすぐに私も握り返した。

 

「こちらこそ、よろしく」

 

 彼は右手に力を込める。私の手を包む、大きくて温かい手。

 

 はっと気づいて私は手を離した。急に彼のことを見ていられなくなって、目をそらす。胸がドキドキして、しばらくおさまらなかった。

 

        ・

 

 それから他校の演奏が始まった。私の知らない曲も、聴いたことのある曲もあった。

 ホールのようすを見に行ったりするうちに時間になったらしい。私はみんなと一緒にリハーサル室へ移動した。

 

 そこでみんなはめいめい、勝手知ったるように楽器を鳴らし始めた。たしかチューニングというもので、楽器の音程をあわせるための作業だ。

 よくこんなに音があふれているなかで、自分の音がわかるものだと思う。私は見ていて飽きなかった。

 

 先生に言われて、私は自分の声もあわせてみる。きれいなユニゾンが部屋にあふれて、これからの演奏への期待を高めてくれた。

 

 そしてすこしだけ練習をして、私も声を出した。調子は悪くないようだった。

 

 やがて係の人が呼びに来た。いよいよ本番だ。

 西村くんと最後に目があって、私は勇気をもらった。

 

 更衣室は控室と同じ廊下の、一番端の部屋だった。他校の女子生徒も使うらしいけれどいまは誰もいなかった。

 

 私はロッカーから衣装を取り出す。みんなの前で――西村くんの前で着るのは初めてだった。

 ここには曜ちゃんの思いが詰まっている。曲だってそうだ。梨子ちゃんと西村くん。それに奈良橋くんと部員たち。

 

 絶対に成功させる。私は気合いを入れ直した。

 

        ・

 

 衣装に着替えて化粧をして、私は舞台袖へ向かった。

 

 係の人に案内され、ステージの上が見える位置で私は待った。

 顧問の先生が指揮をした曲が終わって、奈良橋くんに交代した。私の出番? と一瞬あせる。でも、違った。私の曲を指揮するのは西村くんだ。

 

 ほっとした次の瞬間。私は耳を疑った。

 

「Aqoursの曲から、『君のこころは輝いてるかい?』を吹奏楽アレンジでお送りします」

 

 そんなこと、ひとことも聞いていなかった。

 

 私があっけにとられていると、奈良橋くんが華麗に――そういう表現がぴったりだった――右手を振って、曲が始まった。

 

 梨子ちゃんと曜ちゃんと私で、一晩で作った曲。その旋律がホールを満たす。

 

 結局、浦の星の廃校は()められなかったけれど、こういう形で、こういう形でも、私たちが作った曲はずっと生き続けるのかもしれなかった。

 私は思わず歌詞を口ずさむ。歌いながら、涙が出そうになった。

 

 曲の中盤、私と梨子ちゃんが歌うところ。たしかに西村くんと、目があった気がした。

 

 そして気づく。西村くんがどうして、梨子ちゃんの連絡先を知りたがったのか。私がどう思うか、きっと知っていたはずなのに。梨子ちゃんじゃなきゃ、だめだったんだ。

 

 こんな、こんな、私をちょっと、驚かせるだけのために。

 

 そう、たしかに私は驚いた。今度は私が、みんなに(こた)える番だった。

 

 観客席からの拍手にあわせて、私もちいさな拍手をした。

 

        ・

 

 アナウンスが流れて、私はステージに足を踏み出した。何度目になるかわからないけれどいつも緊張する。

 いや、今日は違う。今日は、隣に誰もいない。初めての経験だった。

 

 でも、大丈夫。

 

 観客席へ向かって頭を下げた。席はほぼ埋まっていた。

 

 私は部員のみんなの席の斜め前、観客席と指揮台が両方見える位置に立った。

 西村くんが私にうなずきかける。彼は緊張しているように見えたけれど、それと同じくらい――ううん、それよりもずっと、熱意にあふれていた。

 私はそれを分けてもらって、うなずき返した。

 

 彼は一礼して指揮台に上がる。観客席が静まり返り、私は次の瞬間を待った。

 

 右手が二度、小さく動いてから大きく振り下ろされた。

 シンバルが口火を切り、ピッコロが軽快にあとに続いた。木管が引き継いで、期待を盛り上げるように金管が重なっていく。それらをコントラバスが支えた。

 

 大きく息を吸い込んで、私は歌い始めた。

 演奏は私と会話するように、あるいは寄りそうように続いた。Bメロはホルンが優しく私を包む。

 私のセリフのあいだ、一瞬、演奏が止まった。

 そしてサビへ。金管と木管が交互に、あるいは一緒に盛り上げた。

 

 間奏に入る。

 西村くんが奈良橋くんを見た。奈良橋くんはすばやく楽器を持ち変えて立ち上がる。バイオリンが私のかわりに歌い出した。

 

 私は思わず「いえぃっ!」と叫ぶ。

 

 奈良橋くんは楽しそうに体を揺らしながら(かな)でた。それは私に伝染して、私は笑いながらステージを歩く。

 観客席にお辞儀をして、部員のみんなに微笑み、西村くんと視線を交わした。

 

 間奏の終わりに、奈良橋くんは私に向かって右手を体の前で曲げて、優雅にお辞儀をした。私もスカートのすそをつまんで、ひざを曲げて返礼した。観客席がわっと()いた。

 

 奈良橋くんが椅子に座り、二番が始まった。

 二番は一番以上の盛り上がりで進んでいく。

 

 テンポが遅くなりリズムが変わって、サビからCメロへ。私は傘を手にした。

 

 ステージの照明が暗くなり、私だけにスポットライトが当たった。

 

 体のうしろに傘を持ちながらゆっくりと歩く。行ったり来たり、自分にいい聞かせるように。

 続いて傘を開いて肩に掛け、観客席に向けて語りかけた。

 そして、ひとつずつ重なり厚みを増していく金管と木管に乗せて歌い上げる。

 

「……Yes!!」

 

 私は傘を回し、自分がくるっと回り、飛び跳ねて……まさにいまの心、そのままに踊った。

 大きく手と足を開いて、観客席の上を見上げる。私はたしかにそこに、まぶしい太陽の光を見た。

 

 ステージの照明が戻った。

 

 傘を置いて、締めの大サビをみんなといっしょに作っていく。観客席も盛り上がっているのがわかった。会場を包み込む一体感。

 金管も木管もバスもパーカッションも、すべての楽器がぴたりとあっていた。

 

 私の声が広い会場に吸い込まれていった。曲は名残を惜しむようにもう一度、イントロの旋律を再現して――余韻を持って終わった。

 

 部員たちみんなが帽子を天井高く放り投げた。

 

 一瞬の静寂のあと、割れんばかりの拍手が会場を満たした。

 

 私は肩で息をしていた。西村くんと視線が交錯して、彼はいつか見た、はにかむような笑顔を浮かべた。

 

 西村くんは思い出したように指揮台を下りて観客席に向けてお辞儀をした。もちろん私も一緒に。

 

「千歌ーっ!」と声がして、私はそちらに目を向ける。一番上の段、一番端に、金髪の子が座っているのが小さく見えた。

 

 まさか――でも、間違いなかった。

 

 鞠莉ちゃん。その隣には果南ちゃんとダイヤちゃん。梨子ちゃんと曜ちゃんもいる。前の列には、花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃん。

 

 みんな来てくれたんだ。

 

 それに、そのまわりに見えるのは、私服だからわからないけれど浦の星の生徒たちに違いなかった。

 

        ・

 

 緞帳(どんちょう)が下りても会場の拍手はなかなか鳴りやまなかった。

 だんだんと拍手は手拍子に変わっていった。アンコールだ。

 

 部員たちの前で奈良橋くんと西村くんが話している。アナウンスをしていた放送部員の子と、係の人も一緒になった。

 

 いったん放送部員の子が離れて、「少々、お待ちください」とあわてたようにアナウンスした。

 

 どうしたんだろう、と私が近づくと西村くんが困ったように言った。

 

「アンコールの曲、用意してないんだ。こんなこと、なかったから」

 

 私は悪いけれど吹き出しそうになる。

 

「時間は余裕がありますけど、どうしますか」と係の人。

 

「こんなこともあろうかと、本当に念のため、楽譜は持ってきたんですけどね」

 

 奈良橋くんは右手でメガネを上げた。

 

「ただ、満足いく演奏になるかどうか」

「え、どういうことだ?」と西村くん。

「『異世界ロマンティーク』の『かつてないほどの恋』、やれますか、みなさん?」

 

 奈良橋くんは部員たちに向けて言った。

 たしか、文化祭でやっていた曲だ。顔を見あわせる部員たち。でもみんな悩んでたのは一瞬だった。

 口々に「行けるけど」「余裕でしょ」と声をあげた。

 

 西村くんはあきれたように私に微笑んだ。そして冗談めかして言う。

 

「もしかして、高海さん、歌えたりしないよね?」

「えっと、ぜんぜん練習してないから、うまくは歌えないと思うけど」

 

 西村くんが、えっという顔をする。

 

「この前、みんなでカラオケに行って、善子ちゃんの一押(いちお)しの曲で……なんどもリピートしたんだ」

 

 まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。

 

「一応、歌詞もあります」と奈良橋くんが顔を出した。にやっと笑って続ける。「気楽に歌っていただいてかまわないので、お願いできますか?」

 

 部員たちの期待の目。西村くんは心配そうだけれど。

 私は期待に応えたくなって、うなずいた。

 

 奈良橋くんは舞台袖に走っていった。

 

 西村くんが係の人に話す。

 

「それでは、一曲、やらせてもらっていいですか?」

「わかりました」

 

 急ぎ足で去っていく係の人。放送部員はステージ脇のマイクへ。このあいだもずっと、手拍子は続いていた。

 

「お待たせいたしました。温かいご声援、ありがとうございます」

 

 手拍子がまた拍手に変わった。奈良橋くんは楽譜を配っていく。

 

「それではアンコールにお(こた)えして、アニメ『異世界ロマンティーク』から『かつてないほどの恋』です」

 

 指揮台に上がった奈良橋くんが振り始める。

 部員たちはこの曲はひさしぶりなのかもしれないが、きっと練習の効果だろう、難なく演奏した。

 イントロが終わって私も歌を乗せた。

 

「One More Sunshine Story」よりもシンプルな曲でよかったと思う。

 異世界に飛ばされてそこで恋に落ちる。そんな歌詞に、私は自分の想いを乗せて歌うことができた。異世界に飛ばされたのが、私なのか、西村くんなのか、それはわからなかったけれど。

 

 曲が終わると、また盛大な拍手が上がった。

 

 部員はともかく私は、まったく練習せずに歌ってしまって、失礼にならなかったかどうかは心配だった。

 

「ありがとうございました。以上で沼津南高校の演奏を終わらせていただきます。ご声援、本当に……」

 

 私たちが頭を下げるなか緞帳がゆっくりと下りていく。

 

 緞帳が下りきった瞬間、部員たちは無言でガッツポーズをした。もちろん、私も一緒に。

 

        ・

 

 部員のみんなは三校の合奏のためにステージに残り、私はひとり、更衣室へ戻った。

 

 着替えている途中、演奏が聞こえてきた。

 

 さっきまでの興奮は、ずっと私の胸にとどまっていた。

 素晴らしい演奏だったと思う。きっと私たちは輝いていたと思う。私だけでなくて、西村くんも、奈良橋くんも、部員のみんなも。

 

 西村くんは、とても素敵だった。シルクハットがよく似合っていて、指揮もすごく堂々としていた。

 奈良橋くんも格好良かったけど、西村くんだって負けていなかった。

 

 それに、わざわざ来てくれたAqoursのみんな。予定のほうは大丈夫だったのだろうか。どんな感想を持っただろう。明日、聞いてみるのが楽しみだった。

 

 制服に着替えると、ようやくすこし心が落ち着いてきた。

 衣装を鞄にしまおうとして、思う。

 

 西村くん、この衣装、気に入ってくれたかな。

 私のことを、可愛いって思ってくれたかな――。

 

 演奏が終わって、アナウンスが流れて、観客たちが帰りだす気配がした。

 これで終わってしまうんだ、っていう残念な気持ちがあふれてきた。でも、次につなげなきゃって思った。

 

 私は更衣室から控室に戻って待つことにした。みんなに挨拶をしてから帰ろう。

 

 もしかしたら、西村くんと二人きりになれるだろうか。そうしたら、お礼を言って、そして――。

 そう思ったとき、西村くんが控室の入り口から顔を出した。私はドキッとする。

 

「西村くん」

「高海さん、お疲れさま。えっと……」

 

 彼はなにか言いかけてからいったん口を閉ざし、首を振って続けた。

 

「……最後の挨拶、一緒に行こうか?」

 

 挨拶がなんなのかわからなかったけど、私は西村くんについていった。

 

 ステージへ行くと三つの高校の部員、それに顧問の先生がそろっていた。部員たちは学校の垣根を越えて話している。

 私に話しかけてくれる子もいた。「とっても素敵だったわ」って。

 

 ひとりの男子生徒が指揮台に上って注目を集めると、話し出した。

 

「えー、みなさん、お疲れさまでした」

 

「沼津第一高校の部長だよ」と西村くんがささやく。

 

「おかげさまで、若干のアクシデントはありましたが、無事に定期演奏会を終えることができました」

 

 みんなから起きる笑い声。もしかして、私たちのことかな。

 

「素晴らしい演奏、ありがとうございました」

 

 なんとなく起きる拍手。それはだんだんと大きくなった。

 そうか、と思う。ほかの学校のみんなも、当たり前だけど、こうやってそれぞれがんばってるんだ。

 

「来年もまた、よろしくお願いします。それでは一本締めで。よーおっ!」

 

 さすが吹奏楽部員。全員の拍手が、ぴたりとあった。

 

        ・

 

「高海さん、打ち上げ、来てくれるでしょ」

 

 ステージからみんなと一緒に控室に戻る途中、西村くんが言う。

 

「私、出てもいいのかな?」

「もちろん。部員たちだって、来ると思ってるし」

「それじゃ、お言葉に甘えて……。あっ、でも私、バスがあるから、あまり長くいられないかも」

「それは、今日に限っては大丈夫かな」

 

 西村くんがにこっと笑った。

 

「奈良橋が、タクシー使っていいって。入場者が思ってた以上に多かったらしい」

「わざわざ私のために、使わなくても」

「お車代(くるまだい)、だってさ。部員だって、高海さんがいてくれるほうが嬉しいと思う」

 

 本当にいいのだろうか。悩んでいる私に西村くんは続けた。

 

「むしろ、俺が怒られるから」

「うん、それじゃ、お願いします」

 

 打ち上げに参加できるってわかって、もうすこしだけこの楽しさが続くってわかって、私は嬉しくなった。

 

 部員のみんなが控室に集まると、奈良橋くんが話し始めた。

 

「みなさん、お疲れさまでした。打ち上げの会場には、ここの大会議室を予約してあります」

 

 おおーっと上がる声。

 

「これから移動して、六時から開始です。この部屋には戻ってこないので、忘れ物がないように気を付けてください」

 

 そのとき、ドアにノックの音がした。奈良橋くんはいったん黙り、近くにいた部員がドアを開けた。

 

「失礼しまーす」

 

 曜ちゃんと梨子ちゃんが顔を出した。

 

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