七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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七曜の転生者と賢者の石
七曜の転生者と新しい世界


「・・・ゥん・・・?」

 

 目が覚めると見知らぬ天井があった。一瞬酔った勢いで友人の家で爆睡してしまったのかと考えたが、まず自分に酒を飲み交わす友人が1人もいないのを思い出してそれはないと結論を出した。だとしたらここはどこだ?

 

 

「・・・・・・?」

 

 

 不思議に思い体をふかふかのベッドから起こし部屋を見渡した。部屋は洋式で、今自分が座っているキングサイズベットが赤いカーペットの上にあり、クローゼットの隣に姿鏡があるぐらいで、どうやらここは寝室のようだ。だが、こんな綺麗な洋式の寝室はうちには無い。そもそも私の家は和式・・・・あれ?わ・・私?

 

 

「私の一人称は俺・・・ッ!?こ、声が!?」

 

 

 一人称が俺の筈だったので疑問に思ったが、すぐに自分から発せられる声に驚愕した。30代の男性だった私の声が少女らしい綺麗な女性の声になっていたのだから当然だ。驚いて自分の体を見ると体が石化したかのように固まった。服は薄紫色の女性服になっており、男性には無い胸があった。恐る恐るとある場所に白く綺麗な肌の私?の腕を伸ばして確認したが、すぐにガックリと肩を落とした。

 

 

「な、なんで私が女になってるのよ?・・・って、口調まで女になってるし・・・・ッ!!そうだ!!鏡!!!」

 

 

 私はすぐにベッドから飛び降りてクローゼットの隣に立てられた姿鏡の中を覗いた。私の期待を裏切るように、そこには驚愕した表情の少女の姿が写っていた。私が手足を動かすと鏡の中の少女も同じように動かす。間違いない・・・・この少女は私だ。

だが、私は鏡に映る自分の容姿に見覚えがあった。

 

 

「あれ?この姿・・・・パチュリー・ノーレッジ?」

 

 

 薄紫に紫色の縦縞が入った服の上にリボンが付いた薄紫の服を着用し、長い紫色の髪に赤と青のリボンを付け、頭には三日月の飾りと赤と青のリボンが付いたドアキャップの様な帽子を被っていた。これらは私が好きだったゲームに出て来るキャラクターに似ている・・・いや、瓜二つだった。

 なぜ自分がパチュリーになっているのか考えていると、ベッドの方からシャランッ・・・と、鈴のような音がし、パサッと何かが落ちた音がした。慌てて振り返ると、先ほどはなかった筈のベッドの上に、1つの封筒があった。手に取るとそこには[パチュリー・ノーレッジ様へ]と書かれており、恐る恐る中の文を読んだ。

 

 

『パチュリー・ノーレッジ様へ

 

 いきなりの状況に混乱しているじゃろうが、まず儂は君に謝らなければならん。実は我々の手違いで君を殺してしまったのじゃ。本当に申し訳無かった。

そのお詫びと言ってはなんじゃが、我々は君を転生させることにしたのじゃ。体については生前の物が消滅してしまった為、君の記憶からその世界で1番役に立つ物にしておいたぞ。喘息も起きないし、知識や能力とやらについては手紙を読み終わったら君の頭に送ろう。今君がいる場所は儂からのプレゼントじゃ。実は儂もそのゲームは好きじゃからのう。

  最後にこの手紙は読み終わると燃えて消える。では、新しき人生を好きに生きてくれ。

 

全知全能を司る神・ゼウスより

 

 

 ふむ、手紙から察するに私は神々の手違いで死んでしまったらしい。能力や知識が手紙を読み終わると頭に送るとか神様がゲーム好きと言うのが気になるが、まぁいいだろう。両親は既に他界しているし、兄弟もいなかったから問題ない。しかもかの有名なゼウス様からの手紙だからね。なぜ信じているのかと問われるとそれ以外に現状が説明できないからよ。パチュリーの体が役に立つ世界という事はここはあのゲームの世界なのかしら?・・・・あら?追伸?

 

 

追伸。その・・・また手違いでハリー・ポッターと言う世界に送ってしまった。原作が終わったらちゃんとどうにかするから許してちょんまげ』

バリィッ!!!

 

 

 無意識で手紙を引き裂いた瞬間、今まで感じたことのないような激しい頭痛が襲って来た。私はそれに耐え切れず、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 いったいどのくらい時間が経ったのだろうか、私は目を覚ましてフラフラする頭を手で押さえながら立ち上がり、ベッドに腰掛けた。少しの間そうしていると、自分の頭の中に凄まじい量の知識があるのに気が付いた。私が知らない筈の知識が全て頭に入っており、好きな時にその知識を引き出せる。

 

 

「成る程ね。これがパチュリーの・・・・いえ、私の知識。私が集めて来た知識の結晶というわけね」

 

 

  私の頭に入って来た知識。数学、言語、歴史、魔法、医療などの知識を目を閉じて見て回っていると、私の能力についての知識を見つけた。

 

 

「『火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力』。西洋魔術の四大元素と東洋魔術の五大元素、それと日と月の属性の魔法を使える七曜の魔女・・・か。確かに、ハリー・ポッターの世界ではチート過ぎる体だわ」

 

 

 一通り知識と能力についてを調べ終え、閉じていた目を開ける。自分の体を見回して立ち上がり、体の調子を確かめた。生前よりも体が軽い。今なら世界大会の全ての競技にだって金メダル獲る自信がある。パチュリーの弱点である喘息についても問題なさそうだ。あまり動いてはいないがわかる。ウンウンと頷いて、顔を上げると部屋の隅に木製の扉があった。そう言えば確か手紙に私が今いる場所はプレゼントだと書いてあった。と、いう事は?

  私はワクワクと部屋の隅にある扉に近付き、木製の扉を開いて寝室を出た。

 

 

「おぉぉ!これは有難いわ。やっぱりパチュリーと言えばここよね」

 

 

 扉を潜ると、そこにはとてつもなく広い場所に無数に並ぶ本棚が並んでおり、その全てに本がギッシリ詰まっている。所々に照明代わりの装飾された光る結晶がフヨフヨと浮いて部屋を照らしている。二階建てになっているようで、中央の広めの通路からは二階の様子が吹き抜けで見えている。ここはまさに、大魔法図書館と呼ばれるに相応しい場所だった。近くの本棚から適当に1冊取り出して開いてみる。これは空間魔法第1段の中級編の魔法書のようね。既に頭の中に内容は全て入っているけど読み直すと面白いわね。作者は・・・・私になってるわね。

 しばらく魔法書を読んでいるとふと気が付いた。

 

 

「そう言えばまだ魔法やスペルカードを試してないわね。試してみましょうか」

 

 

 手始めに知識に従って図書館に結界を張った。思ったより簡単だったわね。一瞬何かが抜ける様な感じがしたけどすぐ消えたし。これが魔力ね?自分でも引くくらいの量ね。さて、これで本棚や床、天井にはダメージが行かなくなったわ。これならある程度は試せるわね。

 

 

「まずは飛んでみましょうか。比較的簡単に出来るみたいだし、空が飛べたらかなり便利だしね。・・・・ふむ、イメージすれば良いのね?・・・・・・キャッ!ほ、本当に出来ちゃった」

 

 

 自分が自由に空を飛ぶイメージをすると、体が床から30cmぐらい浮いた。魔力も正確には減ってはいるが、微々たるものだし回復するのが早いからプラマイ0。・・・・・キャッ!って、本当に女の子になっちゃったんだなぁ。

フヨフヨと飛び回りながら改めて女の子になったのを実感した。

 

 

「ま、過ぎた事考えてもしょうがないわね。次は・・・・日符『ロイヤルフレア』!」

 

 

 手始めにやってみたら突き出した手の前に私がすっぽり入るぐらいの炎の塊が出現した。それはまるで小さな太陽の様で、それから衝撃波の様に全方位攻撃が繰り出された。熱は感じないが、結界が無かったら今頃辺り一面火の海になる事は間違いなかった。火力が強かったみたいね。結界がヒビだらけになってしまったわ。

 

 

「しばらく練習しましょうか。これじゃハリー達が・・・・待って、そう言えば私秘密の部屋までしか読んだ事ないわね。それよりここはいったいどこの国なのかしら?そもそも今の日付はどうなってるのかしら?」

 

 

 ここで疑問や問題が発生した。まず私はハリー・ポッターは秘密の部屋までしか読んだことがない。それに今の日付もわからない。いつ魔法学校に入学するのかしら?

 

 

「ちょっと外に出てみましょう。町に行けば新聞なりなんなり見れるでしょう」

 

 

 私はボロボロになった結界を解除し、中央の通路を通って出口を探した。少しの間飛び回って出口を見つけ、外に出た。大図書館は中からでは分からなかったが強力な空間魔法がかかっていて、振り向くとそこには大図書館にあった扉しかなく、綺麗な花畑の中心に建っていた。念の為扉に魔法を掛けて私以外の人が開けるどころか見つける事も近づく事すら出来なくした。これから先世話になる為強力な魔法を使った。

 

 

「こんなものかしらね?さて、情報収集といきましょうか」

 

 

 私は自分に不可視の魔法を掛け、空を飛んで近くの町を目指した。

 

 

 

 

 

 

数時間後・・・・

 

 

 私は今大図書館の机に座って頭を抱えている。何故頭を抱えているのかと言うと、ここはハリー・ポッターが生まれる約200年前の世界だとわかったからよ。ここはホグワーツがある国で実際にホグワーツ見に行ったんだけど、なんか映画で見たのより全体的に綺麗なのよね。1000年位の歴史がある割には・・・・。

 私が疑問に思っているとまた鈴が鳴る様な音がして空から手紙が降って来たのよ。内容は、

 

 

『転生を担当した神がメーター間違えて原作の約200年前に転生させちゃったけど許してね。お詫びに大図書館に多額のお金を贈るからチャラでよろ』

ボッ!!!

 

 

 で、その時は無意識の内に火の魔法で灰にしたのよ。まぁ、確かに大図書館を調べたら新しく部屋が出来ていて中に使い切れるかわからない程の金貨や札束があったし、無一文脱出したから今回は許すけれど、私がこの世界でやる魔法の研究目標に『ゼウスにスペルカードを全弾ぶち込む』を入れることにするわ。

 

 

「さてと、あの神様の手紙にあったことによれば私は原作が始まる頃には校長様の年齢を軽く超えちゃっているみたいね。原作が始まるまでの200年間私は生きていけるのかしら?とりあえずは寿命を消す為の魔法の研究を急ぎましょう。それが出来れば魔法をいつでも好きなように使える様に修行ね。もし寿命を消すことが出来た時に歳をとりすぎていたら若返りの魔法か薬でも作って肉体年齢を戻しましょう」

 

 

 確か寿命や魂、生死についての魔法書は2階の入り口から28番目の棚にあった筈。さて、早く完成させて神様にスペルを撃ち込む研究をしましょう!

こうして、私の新しい世界での生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 私がパチュリーになって早くも150年経った。いきなり早過ぎるだろうと思うかもしれないが、不老の魔法は研究を始めてから29年後に完成し、肉体年齢を薬を使って転生した時まで戻した。やはり体がパチュリーになったからか、研究や実験をしたりして知識を求めるのが好きになった。あ、因みに図書館には『ヴワル大魔法図書館』と名付けた。

 

 

「これで良し、次は・・・・この部分ね」

 

 

 そして今何をしているのかと言うと、悪魔を召喚する魔法陣を大図書館の床にチョークで書いている。そう、私が今からやろうとしているのは『小悪魔の召喚』である。ハリー・ポッターの世界ならば居ないだろうと思って神様に一矢報いる為の研究に力を入れていたら、つい先日マジで完成しそうだったのか、ゼウスから手紙で『ごめんなさい!小悪魔を召喚出来るようにするからその研究を今すぐやめて下さい!』と、いつになく本気らしい文面と一緒に小悪魔を召喚する為の魔法陣について詳しく書かれた魔法書が送られて来た。それで渋々行なって居た研究を中止し、すぐさま小悪魔の召喚の準備をしている。

 

 

「ふぅ、出来たわ。さて、後は魔法書に書かれた呪文を唱えるだけね。もし出て来なかったらゼウスに10分おきに腕立て伏せ120回を2分以内にやり切らないと死ぬ呪いを掛けてやるわ」

 

 

 書いていた魔法陣が完成し、そんな物騒な事を呟きながら魔法書を開いて配置に着く。私は魔法陣に自分の魔力を流し、発動するのに十分な量になるまで送り続ける。今までスペルカードや様々な魔法を使って来たが、ここまで魔力を使った事は無い。数分間魔法陣に魔力を送り続けてやっと発動するのに十分な量になった。

 

 

「かなりの魔力を使うわね。流石は召喚魔法。さぁ、始めましょうか!!」

 

 

 私は魔法書に書かれている呪文を唱える。魔法書10ページ分の呪文を唱え切ると魔法陣が光りだし、とても目を開けることができなくなる程まで光が強くなっていった。周囲に風が吹き荒れ、普通ならば酔って体調を崩す程の魔力の余波が大図書館を覆う。そして光が治ると・・・・。

 

 

ドサッ!!!

「・・・・・・・・え?」

 

 

 私は魔法が失敗したのかと思った。何故ならそこには確かに腰まであるような赤い髪、蝙蝠のような羽が背中に生え、頭にも小さなものが生え、特徴的な悪魔の尻尾も生えている原作通りの小悪魔がそこに居たが、服は麻の袋に穴を開けたようなもので、体のあちこちに痣や傷があり、床に倒れて気絶していた。私はすぐに魔法書を投げ捨てて気絶している小悪魔の治療を行った。

 

 

 

 

 

小悪魔side・・・

 

 

 私は悪魔だ。悪魔と言っても人間達が本や図鑑に描いたような禍々しい姿をしていない。悪魔は魔力を多く持っている程人間に近い容姿になる。私の家は悪魔の世界でかなり上の位にある貴族で、生まれた時には既に人間に近い容姿だった。その為私のお父様とお母様はとても喜んでくれたが、生まれてから20年経った時に行う魔力を測る儀式に参加した時に、私の生活はガラリと変わった。魔力を測る道具が壊れたのだ。道具が壊れた時は昔からよくあるが、そのどれもが魔力が少な過ぎて測ることが出来ず、無い物を無理矢理測ろうとして壊れたと言う物だった。私に魔力がないと知るとお父様とお母様は私をゴミを見るような目で見るようになった。

 それからは毎日毎日私は家事をやらされ、暇潰しにお父様とお母様、遂には仲の良かった友達からも殴られたり魔法の的にされた。そしてつい4日前、私は家を追い出されて路頭に迷っていた。空腹でフラフラしており、躓いて転んでも起きる気力がなかった。私は涙を流しながら乾いた口から一言だけ喋った。

 

 

「どうして・・・・こんな事になっちゃったんだろう?・・・・」

 

 

 そして私の下に魔法陣が浮かび上がり、光を発すると同時に私の意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・うん・・あれ?・・・なんで私?」

 

 

 ふと目が覚めると知らない天井が広がっていた。少し呆然としていたが、慌てて体を起こすと、少々痛みがあったが自分の体に包帯が巻かれ、服も麻袋じゃなくて生地の良いパジャマになっているのに気が付いた。あまりの状況に混乱していると・・・。

 

 

「あら?気が付いたのね。調子はどう?」

 

 

 私が振り向くとそこには紫色の髪をした綺麗な女の人がいた。手にはシチューとパンを乗せたお盆を持っており、心配そうに私を見ていた。私は彼女に差し出された食事を受け取り、おずおずと食べだした。久しぶりの美味しい食事に涙を流しながら食べていると、彼女は私が気絶している時の話をしてくれた。彼女はパチュリーと言うらしく、どうして私があんなにボロボロだったのか質問してきた。私はポツリポツリと理由を話して行き、パチュリーは黙って聞いてくれている。話終わると、なんとパチュリーは私を抱きしめて来た。

 

 

「え?・・・・・・」

 

「辛かったわね。でももう大丈夫よ。もう貴女を傷付ける者はいないし、私が貴女を守ってあげる。だから今は泣きなさい」

 

「あ・・あぁ・・・ひっぐ、う・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

 

 まるで優しかった時のお母様に抱かれている時みたいに安心出来る温もりに我慢出来なくなり、私は生まれて初めて大声で泣き疲れるまで泣き続けた。

そして今では・・・・・・。

 

 

「こぁ〜〜!悪いけどこの魔法書を42番目の棚の上から4段目の所に仕舞って来てくれるかしら?」

 

「はい!畏まりました!パチュリー様♪」

 

 

 私は新しく白いシャツに黒のベストとスカートを着込み、ヴワル大魔法図書館でパチュリー様と毎日を楽しく過ごしています♪


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