七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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ハリーのファンとロックハートの授業?

 昼食の時間になり、パチュリーとハリー達は大広間で食事をしていた。ハーマイオニーは先程の変身術の授業で作った完璧なコートのボタンをいくつもハリーとロンに見せつけており、杖が真っ二つに折れたロンは物凄く不機嫌になっていた。パチュリーは既に食べ終えて紅茶を片手に魔法書を読んでいる為、ハリーが慌ててハーマイオニーの自慢話から話題を変えた。

 

 

「そ、そう言えば午後の授業なんだったっけ?」

 

「闇の魔術に対する防衛術よ」

 

 

 ハリーの問いにハーマイオニーはマクゴナガル先生から渡された時間割表を見ながらすぐに答えた。ロンはハーマイオニーから時間割表を取り上げて確認すると、「ん?」と首を傾げながら時間割表を指差してハーマイオニーに質問した。

 

 

「ねぇ、君、ロックハートの授業を全部小さいハートで囲んであるけど、どうして?」

 

「へ?・・・・・ッ!!!!///」

 

 

 ハーマイオニーは一瞬気の抜けた返事をしてからリンゴの様に顔を真っ赤にしてロンから時間割表を引ったくった。ロンやハリーは何故ハーマイオニーがそうなっているのか訳が分からない様子だったが、流石に200年以上生きているパチュリーには理由がすぐに分かった。

 ハーマイオニーったら・・・そんなにあの男のファンになったの?まぁ精々学生がテレビのアイドルが好きになったレベルの事ではあるけれど、あの男の何処にそんな好意を持てるか分からないわね。ハートで囲むって・・・・。

 パチュリーは聞かなかった事にしようと魔法書に視線を落とし、3人が出て行くのに合わせて曇り空の中庭に出た。ハーマイオニーは石階段に腰掛けてロックハートの教科書を夢中になって読み始め、パチュリーは隣に座って読書。ハリーとロンはクィディッチの事について立ち話を始めた。しばらくパチュリーが読書を続けていると、薄茶色の髪をした小柄な少年がマグルのカメラをしっかり持ってハリーと興奮した様子で話をしていた。

 

 

「ハリー、元気?僕・・・僕、コリン・クリービーと言います。僕もグリフィンドールです。あの・・・もし、構わなかったら、写真を撮ってもいいですか?」

 

「写真?・・・」

 

 

 コリンと名乗る少年はカメラを持ち上げながらハリーに許可を求め、ハリーは何故写真なのか分からずつい鸚鵡返しに聞き返した。コリンはジワリジワリと近寄りながら熱っぽく理由を語る。

 

 

「僕、貴方の事はなんでも知ってます。みんなに聞きました。『例のあの人』が貴方を殺そうとしたのに生き残ったとか、『あの人』が消えてしまったとか、今でも貴方の額に稲妻形の傷があるとか!同じ部屋の友達が写真をちゃんとした薬で現像したら写真が動くって教えてくれたんです」

 

(うわぁ、その内ストーカーじみた事したりしないでしょうね?この子。ハリーも面倒な子に懐かれたわねぇ)

 

 

 パチュリーはハリーに向かって熱く興奮した様子で語り続けるコリンを少し引き気味に観察しながらそんな事を考えた。コリンの勢いに押されて少し仰け反っているハリーに少しの同情を覚えた。

 

 

「貴方の友達に撮ってもらえるなら、僕が貴方と並んで立ってもいいですか?それから写真にサインしてくれますか?」

 

「あら、サインですって。ハリー、貴方随分と有名なスターになれたわね。おめでとう。祝いの品は百味ビーンズでいいかしら?」

 

「パチュリー、頼むから今はからかわないでくれないかな?出来れば助けて欲しいんだけど?僕サインなんかした事ないし・・・」

 

「サイン入り写真?ポッター、君はサイン入り写真を配っているのかい?」

 

 

 パチュリーがサインと言う単語を聞いてクスリと笑ってハリーをからかっていると、マルフォイがクラッブとゴイルの2人を従えて痛烈な声でハリーに絡み始めた。

 

 

「あら、ドラコじゃない。ダイアゴン横丁以来ね」

 

「やぁパチュリー。君も相変わらず元気そうだね。また難しい魔法書を読んだりして・・・っと、それよりもみんな並べよ!ハリー・ポッターがサイン入り写真を配るそうだ!」

 

「僕はそんな事していないぞ!マルフォイ、黙れ!」

 

 

 マルフォイはパチュリーに軽く挨拶をしてからいつのまにか周りに群がっていた生徒達に呼びかけ、ハリーは握り拳を握りながら怒鳴り声を上げる。更にはコリンとロンまで参戦するが、マルフォイは気にした様子も無く、甲高い突き刺す様な声色で「今度ちょっとでも規則を破ってごらん!」と、吼えメールの真似をしてロンを挑発する。遂にロンがテープでくっつけた杖をサッと取り出したが、そこにロックハートが「いったい何事かな?」と大股で歩いて来た。パチュリーはロックハートの登場に顔を顰め、ハリー達から距離を取った。

 

 

「サイン入り写真を配っているのは誰かな?聞くまでもなかった!ハリー、また逢ったね!」

 

 

 ハリーはロックハートに羽交い締めにされ、「さぁ、撮りたまえ!」とコリンにニッコリ微笑見ながら写真を撮る様促す。コリンは慌ててカメラを構え、カシャッとシャッターを下ろして写真を撮ったちょうどその時、午後の授業が始まる合図のベルが鳴った。パチュリーは魔法書に紫の栞を挟んでハリーに心の中で『まぁ、頑張れ』と告げてサッサと教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 パチュリーはハリー達より一足先に教室に入り、1番後ろの端の席に座った。次第にクラスメート達がドタバタと入室し、1番最後辺りにロックハートに捕まっていたハリーと、ロンとハーマイオニーが入って来た。ハリー達も1番後ろの席にハリーを中心に座り、机の上にロックハートの教科書全7冊をおいた。クラス全員が席に着くと、ロックハートは大きく咳払いをし、ネビルの机にあった教科書を1冊取り上げて、ウインクしている自身の写真を高々と掲げて同じ様にウインクしながらロックハートは「私だ」と言った。

 

 

「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員、そして『週刊魔女』5回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞。・・・・もっとも、私はそんな話をするつもりではありませんよ?バンドンの泣き妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」

 

 

 ロックハートはドヤ顔で笑いを待ったが、数人が曖昧に笑っただけだった。パチュリーは大丈夫かこの教師?とかな〜り不安になったが、一応表情に出さない様にした。

 

 

「全員が私の本を全巻揃えた様だね?大変よろしい。今日は最初にちょっとミニテストをやろうと思います。心配ご無用・・・君達がどのぐらい私の本を読んでいるか、どのぐらい覚えているかをチェックするだけですからね・・・・・では、30分です。よーい、始め!」

 

 

 ロックハートは全員にテストペーパーを配り終え、教室の前の席に戻って合図した。パチュリーは羽根ペンを手に持って問題を読む。

 

 

問1.ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?

 

問2.ギルデロイ・ロックハートのひそかな大望は何?

 

問3.現時点までのギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が1番偉大だと思うか?

問54.ギルデロイ・ロックハートの誕生日はいつで、理想的な贈り物は何?

 

「・・・・・・・・フンッ!」

バリィッ!!

 

 

 パチュリーは問題を全て読み終えると、テストペーパーを両手で持って真っ二つに引き裂いた。念の為防音の魔法で音が聞こえない様にしていたが、隣の机に座っていたロンはパチュリーが無表情でテストペーパーを引き裂いたのを見て「わぉ・・」と呟いていた。パチュリーはすぐに我に返ってテストペーパーを直したが、問題は1問も解かず、自分の魔法書に自分だけに見えるように設定した不可視の魔法をかけて読み始めた。

 30分経過して、ロックハートはテストペーパーを全て回収し終えて全員の前でバラバラとめくった。

 

 

「チッチッチ・・・私の好きな色はライラック色だと言う事をほとんど誰も覚えていない様だね。『雪男とゆっくり一年』の中でそう言っているのに。『狼男との大いなる山歩き』をもう少し読まなければならない子も何人かいる様だ・・・第12章でハッキリ書いている様に私の誕生日の理想的な贈り物は、魔法界と非魔法界のハーモニーですね!・・・もっとも、オグデンのオールド・ファイア・ウィスキーの大瓶でもお断りはしませんよ!」

 

 

 ロックハートはいたずらっぽくウインクしながら次々と指摘していく。ハーマイオニーはそんなロックハートの言葉にうっとり聞き入っており、突然ロックハートがハーマイオニーの名前を呼んだ時は肩をビクゥ!と震わせた。

 

 

「・・・・ところが、ミス・ハーマイオニー・グレンジャーは私のひそかな大望を知ってましたね。この世界から悪を追い払い、ロックハート・ブランドの整髪剤を売り出す事だとね・・・良く出来ました!それに・・・・満点です!まったく素晴らしい!グリフィンドールに10点あげましょう!」

 

 

 ロックハートの言葉にハーマイオニーは頭がオーバーヒートするのではないかと心配になる程顔を真っ赤にし、他の生徒達はやっぱりかと言う様な目線でハーマイオニーを見ていた。少しだけ騒ついた教室だが、ロックハートの「ですが・・・」と言う言葉を聞いて静かになった。

 

 

「このクラスに1人だけ、1問も解けるどころか手を付けられなかった者がいます。何故、白紙なのかな?ミス・パチュリー・ノーレッジ?」

 

 

 パチュリーの名前を聞いて全員が『まさか!!?』と思いながらバッとパチュリーの方を見た。それもその筈、現在グリフィンドールどころか、ホグワーツの生徒の中で1番成績が良いのはパチュリーなのだ。試験すら満点だった彼女が0点を取ったのが信じられなかった。パチュリーはチラッとロックハートを見てから口を開いて理由を述べた。

 

 

「やる必要が無かったから。以上よ」

 

「は?・・・ゴホンッ!え〜っと?それはどう言う事かn・・・」

 

「そのままの意味よ。貴方の個人情報なんて私の知識に入れる価値どころか、授業で学ぶ価値すら無いから覚える必要はないわ」

 

「ッ!?はぁ、私は君に失望しましたよ。グリフィンドールから5点減点だ。・・・・・では、授業ですが・・・」

 

 

 ロックハートはそう言いながら机の後ろに屈みこんでいるが、生徒達はパチュリーを凝視していた。しかし、ハーマイオニーを除いてその目は批難している訳ではない。むしろロックハートに堂々とした態度で言い切った事を口や動作に出さずに賞賛していた。ロックハートが覆いのかかった籠を持ち上げて机の上に置いたのと同時に生徒達は前を向いた。

 

 

「さぁ!気を付けて!魔法界の中で最も穢れた生き物と戦う術を授けるのが私の役目なのです!この教室で君達はこれまでにない恐ろしい目に遭うことになるでしょう。ただし、私がここにいる限り、何物も君達に危害を加えるものはないと思いたまえ。落ち着いているよう、それだけをお願いしておきましょう。・・・・どうか、叫ばないようお願いしたい。連中を挑発してしまうかもしれないのでね」

 

 

 ロックハートは低い声で言いながら、全員が息を殺したのを見てからバッと覆いを取り払った。籠の中には20cm程の群青色で、とんがった頭をしてキーキー鳴きながら羽根を使ってビュンビュン飛び回る小さな小妖精がいた。ロックハートはそれらを見せる様にしながら芝居染みた声を出した。

 

 

「捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精!!・・・・・ん?どうしたのかね?」

 

「あの、こいつらがその・・・そんなに〜・・・えっと、危険、なんですか?」

 

 

 恐怖の叫びを期待していたロックハートは笑い掛けながら吹き出したシェーマス・フィネガンに質問し、シェーマスは笑いを殺すのにむせ返りながらも疑問を口にした。ロックハートはたしなめる様に指を振りながら「思い込みはいけません!」と注意した。

 

 

「連中は厄介で危険な小悪魔になりえますぞ!」

 

(私の小悪魔はピクシー小妖精なんかみたいにバカじゃないし、ピクシー小妖精は悪魔にならないわよ)

 

 

 パチュリーはロックハートをジト目で睨みつけるが、ロックハートは全く気付く事なく、ピクシー小妖精が入っている籠の戸に手を掛けた。

・・・・は?ちょっと待ちなさい。貴方まさか・・?

 

 

「さぁ、それでは・・・君達がピクシーをどう扱うか・・やってみましょう!!!」

 

 

 ロックハートは声を張り上げながら籠の戸を開けた。途端にピクシー小妖精達は教室で暴れまわる。ネビルをシャンデリアに引っ掛けるわ、インクを撒き散らすわ、本やノートを引き裂くわと、その暴れようは嵐の様だった。ロックハートが仕方ないなぁと杖を取り出して呪文を唱えるが、魔法は不発し、杖はピクシー小妖精に取られて窓の外に捨てられてしまった。終業のベルが鳴り響き、生徒達が我先にと扉から逃げ出して行き、反射防御魔法でピクシー小妖精を跳ね返していたパチュリーとハリー達も教室から出ようとすると、ロックハートが呼び止めた。

 

 

「さぁ、その4人にお願いしよう。その辺に残っているピクシーをつまんで、籠に戻しておきなさい」

 

 

 そう言い残してロックハートはスルリと逃げる様にパチュリー達の間を通って後ろ手で扉を閉めて去って行った。ロンは「耳を疑うぜ」と呟きながら隣を見てギョッとし、反対側にいたハリーとハーマイオニーの肩をチョンチョンと叩いた。何事かとロンの方を見ると、怒りのオーラ的な物を纏って青筋を浮かべているパチュリーを見てロン同様にギョッとした。

 

 

「ぱ・・・・パチュリー?」

 

「や・・・や・・・・やってられるかぁー!!!木符『シルフィホルン』!!」

 

 

 パチュリーが宣言すると、葉っぱの様な緑色の弾幕が教室を飛び回るピクシー小妖精達に襲い掛かり、その全てを迎撃してしまった。パチュリーは教室の隅で縮こまっているハリー達を見ながら「後はよろしく」と言い残して出て行った。ハリーとロンとハーマイオニー、ついでにシャンデリアに引っ掛かったネビルは、この時心の中でパチュリーを怒らせない様にしようと誓い、弾幕によって全滅したピクシー小妖精達を籠の中に戻した。


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