七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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最初の犠牲者とロックハートの部屋

「ありがとうございますパチュリー!!もう死んでから長い間ゴーストをしていましたが、こんなにも幸せな絶命日パーティーのプレゼントは初めてですよ♪何か困った事があればいつでも相談して下さい。お手伝いしますよ」

 

「気にしないで頂戴。じゃあハリー達が寒さと空腹で限界みたいだから私達はこれで失礼するわ。新しい首無し生活を楽しみなさい。それじゃ」

 

「えぇ、えぇ、本当にありがとうございました。お休みなさい皆さん」

 

 

 首の離れたニックは大喜びし、パーティーも一層盛り上がったのだが、その熱気に対して会場はグングン気温が下がり続け、地下牢は真冬並みの寒さになった。パチュリーはすぐ自分に耐寒魔法をかけて防いだが、ハリーとロン、ハーマイオニー達3人は唇を青くしてガタガタ震えだした為、頃合いだろうと寮に戻る事になった。ニックもそれは仕方ないと感じており、態々会場の扉を開けて微笑みながら見送ってくれた。暗いロウソクが立ち並ぶ廊下をパチュリー達はコツコツと足音を立てながら元来た方へと歩みを進めた。

 

 

「ゴーストって、興奮すると冷気が出るんだね・・・」

 

「私も知らなかったわ・・・パチュリーはなんで平気なの?」

 

「ん?自分に耐寒魔法をかけたからむしろ快適だったわ」

 

「それ僕達にもかけて欲しかったな。大広間に行こう。まだデザートが残っているかも知れない」

 

 

 玄関ホールに出る階段への道を先頭を切って進むロンが祈るように言った。パチュリーは自室に戻れば小悪魔が美味しい料理を作ってくれるから別にデザートは無くても構わないと思いながら歩いていたが、突然立ち止まって辺りをキョロキョロ見回すハリーに気付いて自分も立ち止まった。ハリーは目を細めながらほの暗い通路を隅から隅までじっと見渡し、ハーマイオニーとロンもそんな事をしているハリーに気付いて歩みを止める。

 

 

「ハリー?いったい何を?・・・」

 

「またあの声なんだ・・・ちょっと黙ってて・・・・」

 

「・・・・声?」

 

 

 パチュリーも耳を澄ましてみるが、声など全く聞こえて来ず、代わりに何かが這う様な音とシャーシャーと言う何かの音が微かに聞こえただけだった。その間にもハリーには声が聞こえているらしく、「ほら、聞こえる!!」と通路の上の方を見ながら急き込んで言い、ハーマイオニーとロンはハリーを見つめ、その場に凍りついた様になった。

 

 

(私やハーマイオニー達には聞こえず、ハリーにだけ聞こえる声・・・似た様な事が図書館にあった筈だけど、確かあれは・・・・あぁ、成る程。バジリスクの声ね?)

 

 

 パチュリーはヴワル大魔法図書館の一階の34番目の棚の下から7段目にある『生物の言語についての研究記録・初級』に載っていた蛇の類と意思疎通が出来る者・・・『パーセルタング』の事を思い出した。そして少しだけ原作を思い出し、ハリーはバジリスクの声を聞き取れる事を思い出した。因みに余談だが、この魔法書には『最上級』まであって、そこにはドラゴンやクラーケンの鳴き声の翻訳方法などが載っている。実際に他国のドラゴンで試してみたが、基本『腹減った』とか、『何故雲は白いのか?』とか意味が分からない事を言っていた。中には『我はドラゴンである。名前は未だに無い』とどこかで聞いた様な事を言っているのも居た。

 話が逸れたが、ハリーは今度はじっと暗い天井を見つめ続け、突然「こっちだ!」と叫ぶと階段を駆け上がって玄関ホールに出て行った。パチュリー達も少し遅れてハリーを追って階段を駆け上がった。玄関ホールに出るとハロウィーン・パーティのお喋りが大広間から響き渡っており、ハリーは一瞬困惑するもすぐ大理石の階段を駆け上がって二階に出た。パチュリー達もそれに続き、ロンは少し息を切らしながらハリーに質問する。

 

 

「はぁ・・はぁ・・ハリー、いったい僕達何を・・・・」

 

「シーッ!!!静かにして!!」

 

 

 ハリーはロンにそう言って耳をそばだてた。パチュリーも耳を澄ますが、パーセルタングは知識で習得出来る物ではない為、パーセルマウスでない彼女の耳にはバジリスクが這う音と蛇の鳴き声以外は聞こえなかった。するとハリーはバジリスクの声を聞き取ったのか「誰かを殺すつもりだ!」と叫ぶなり当惑したロンとハーマイオニーを無視して三階に上がり、パチュリーは1人にさせるとまた何かをしでかすかも知れない為すぐに後を追った。三階をしばらく走り回って誰もいない廊下に出たとき、ハリーはやっと止まり、ハーマイオニー達も息を切らしながら追いついて来た。

 

 

「はぁ・・はぁ・・ハリー、いったいこれはどういう事だい?僕には何も聞こえなかった」

 

「私も・・・・ッ!!見て!!」

 

 

 ハーマイオニーが指を差す方向を見ると、チラチラと松明の明かりを反射する何かが壁に付いていた。パチュリー達はゆっくりとそれに近付いてよく見てみると、窓と窓の間の壁に高さ30cm程の高さの文字が壁に塗りつけられ、それが松明の明かりに照らされてチラチラと鈍い光を放っていた。

 

 

『秘密の部屋は開かれたり

 

継承者の敵よ、気をつけよ』

 

 

 壁にはそう書かれており、近付いて行くと松明の腕木に何かがぶら下がっているのにロンが気付いた。

 

 

「なんだろう・・・・下にぶら下がっているのは?」

 

「ん?確かに何かぶら下がっているけど・・・よく見えないわね」

 

「もう少し近寄ってみ・・・うわっ!!?」

 

 

 ハリーが足を踏み出すと、足を滑らして転びそうになったが、ハーマイオニーとロンが受け止めた為転びはしなかった。パチュリーが足下を見てみると大きな水溜りが出来ており、ハリーはこれで足を滑らせたのだ。気を取り直して松明に近付いて行ったが、ハリー達3人はぶら下がっている物が何か分かった途端にのけぞる様に飛び退き、水溜りの水を跳ね上げた。ぶら下がっていたのは管理人フィルチの飼い猫、ミセス・ノリスだった。パチュリーもロックハートの授業に行く途中、偶に猫缶をあげたり撫でたりしていたが、今はまるで木像の様に硬直し、目をカッ!と見開いて松明の腕木に固まった尻尾を引っ掛けていた。パチュリーはミセス・ノリスを下ろそうと近付いて行ったが、ロンは逆に後退りした。

 

 

「ここを離れよう」

 

「え?助けてあげるべきじゃないかな・・・・」

 

「パチュリーに任せとけば大丈夫さ。僕のいう通りにして。ここにいるところを見られない方がいい」

 

(ロン、今度罰として貴方でジョージ発案の『背後人形』の実験台にしてあげるから覚えておきなさい・・・・っと、取れた)

 

 

 パチュリーは置いて逃げようとしたロンにそう心の中で宣言しながらミセス・ノリスを下ろして抱き抱えた。『背後人形』とは、ジョージが発案した背中に張り付いて『ママ・・おんぶして?』と言うだけの赤ん坊の人形である。一見何がロンの罰になるかは分からないだろうが、実はこの人形・・・自分以外には姿が見えず声も聞こえない。剥がそうにも溶接したかの様に離れないし、無理に外そうとすると泣きながら『ママ・・ママ・・?』とカタカタ言ってくる。外すには貼り付けた人が「もういいよ」と言えばポテッと落ちる。ジョージが発案したにしてはある意味怖い人形である。

ハリー達が踵を返して逃げようとしたが既に遅く、パーティを終えた生徒達が廊下の両側から歩いて来て、壁の文字とハリー達、そしてまるで死んでいる様に動かないパチュリーの腕の中にいる猫を見つけてシンと静かになり、その場に立ち止まった。するとマルフォイが人垣を押し退けて最前列に出てニヤッと笑いながら壁の文字を読んだ。

 

 

「後継者の敵よ、気をつけよ!次はお前達の番だぞ、『穢れた血』め!」

 

 

 マルフォイがいつもより興奮した様子でそう言い放った。

 『穢れた血』・・・・確か両親がマグル生まれの魔法使いや魔女を指す最低な侮辱の呼び方だったかしら?はぁ・・・ドラコったら、流石にそれは言い過ぎよ。この学校にマグル生まれの魔法使いや魔女が何人いるか分かって言っているのかしら?

 パチュリーは片手で頭を押さえてマルフォイの子供の様な(子供だけど)発言に溜め息を吐いた。彼はこれで学校の多数の生徒を敵に回しただろう。少しするとマルフォイの声に引き寄せられたのか管理人、アーガス・フィルチが肩で人混みを押し分けてやって来た。

 

 

「なんだ、なんだ?何事だ?ん?・・・・ッ!!!私の猫だ!私の猫だ!ミセス・ノリスに何が起こったと言うんだ!?」

 

「フィルチさん。あ、一応言っておきますが私じゃないわよ?私は腕木に引っ掛かっていたこの子を下ろしただけ」

 

 

 フィルチは慌ててパチュリーの抱えるミセス・ノリスに駆け寄って抱き抱える。パチュリーはその際自分の無実を訴えた。パチュリーに疑いの目を向けていたフィルチは「じゃあ誰が?」と辺りを見渡して固まったままのハリーを見つけた。

 

 

「お前だな!!?お前だ!!お前が私の猫を殺したんだ!!この子を殺したのはお前だ!!俺がお前を殺してやる!!俺が・・・」

 

「ちょっとフィルチさん!落ち着きなさい!」

 

 

 パチュリーが肩を掴んで落ち着くように言うがフィルチは怒鳴り続け、パチュリーが魔法で眠らせようとする直前にダンブルドア先生が他の教師達を連れて現場に到着した。ダンブルドア先生は現場を見渡して「ふむ・・」と頷いてパチュリー達を見た。

 

 

「アーガス、一緒に来なさい。ポッター君、ウィーズリー君、グレンジャーさん、ノーレッジさん。君達もおいで」

 

「校長先生、私の部屋が1番近いです。・・・すぐ上です。・・・どうぞご自由に・・・」

 

「ありがとう、ギルデロイ」

 

 

 ダンブルドア先生はパチュリー達を呼び掛け、ロックハートが自分の部屋を使うよういそいそと進み出た。ハリー達は頷いたがパチュリーは物凄く嫌そうな顔をした。

 

 

「ダンブルドア先生、私もそこのロックハートの部屋に行かなければならないのかしら?」

 

「そうしてくれるとありがたいのじゃが・・・何か不都合でもあるのかね?」

 

「せめて別の部屋にして頂戴。ロックハートの部屋は入りたくないわ」

 

 

 パチュリーが堂々と宣言すると、ロックハートは浮かべていた笑みを痙攣らせ、ダンブルドア先生は困ったような顔をする。周りの生徒や教師達はロックハートのファンを除いて『相変わらず凄いなぁ』と感心した様子でパチュリーを見ていた。

 

 

「ふむ・・・そこをなんとか我慢してくれんか?ここから1番近いのはギルデロイの部屋なんじゃ。他の部屋は今鍵が掛かっておる。それにロックハートではない。ロックハート先生じゃ。君らしくないと思うのじゃがのう?」

 

「私はロックハートを教師として見ていないわ。いくら貴方でもこれだけは絶対に譲れない」

 

「むむむ・・・そこをどうにかして欲しい。急いどるんじゃ・・」

 

「・・・・・・はぁ〜、仕方ないわね。今回だけよ?授業以外では近寄るのも嫌なのに」

 

 

 パチュリーは渋々承知し、ダンブルドア先生はホッと息を吐いて歩き出したが、ロックハートはパチュリーを一瞬睨みつけるもすぐに表情を笑みに変えて先導して行った。歩いている途中もパチュリーはブツブツ文句を言いながらピクシー小妖精の時に出したオーラに似た不機嫌そうなオーラを出し続けており、近くを歩いていたハリーとロン、そして偶々近くを歩いていたマクゴナガル先生とスネイプ先生はサッと目を逸らしながら少しづつ距離を取って行った。ロックハートはダンブルドア先生の役に立っている事に興奮しているのか気付いていないが、ダンブルドア先生はパチュリーのロックハート嫌いを直接見て『かなり重症じゃのう・・・』と思っていた。流石に空気が重くなり過ぎてきた為、マクゴナガル先生がパチュリーに質問した。

 

 

「そ、そう言えば、ミス・ノーレッジ?貴女は何故彼をそう毛嫌いしているのですか?」

 

「ロックハートの授業はホグワーツに入ってから今まで受けて来たどの授業よりも無駄だったからよ。一度の授業の平均でウインクしながら歯を見せて笑うドヤ顔の回数162回、同じ内容の自慢話19回、自身の好きな物を授業中に何か当てるよう指示を出す事25回。あんな物を授業とは絶対に認めない。アレなら去年のクィレルの授業の方がまだ生徒の為になる授業を行なっていたわ。他にも挙げれば幾つか理由があるけれど・・・・今全て言いましょうか?」

 

 

「い、いいえ!私は遠慮しておきます。ほほ、ほら!もうすぐ彼の部屋ですよ?」

 

「あら、もう着いてしまうのね。じゃあもう帰っていいかしら?」

 

(((((どれだけ嫌っているんだ?)))))

 

 

 踵を返して本気で帰ろうとするパチュリーをなんとか引き止め、更に不機嫌になったパチュリーを連れてロックハートの部屋に入った。灯りが消えたロックハートの部屋の中は壁面で何かがあたふたと動いた。ハリー達が壁に目をやると壁一面に沢山飾られた写真の中のロックハートが何人か頭にカーラーを巻いたまま物陰に隠れた。パチュリーはその多数の写真を一瞥してからダンブルドア先生の肩をチョンチョンと叩いた。

 

 

「ん?どうしたのかね?ノーレッジ嬢?」

 

「ダンブルドア先生、この部屋消し炭にしてもいいかしら?」

 

「ダメじゃ」

 

 

 ダンブルドア先生の答えにパチュリーは再び小さく舌打ちをして右手に出していた小さな火の玉を握りつぶす様に消火した。


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