七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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決闘クラブともう1人の自分

 ハリーの右腕が無事に完治してからしばらく経った。パチュリーがいつもの様に談話室で魔法書を読んでいるとハーマイオニーとロン、そして目の下にクッキリと隈を作ってゾンビの様にフラフラになっているハリーがやって来た。一応言っておくがコレは別に骨を治すのが大変だったとか薬の副作用などではない。実は1週間程前の魔法薬学の授業で『ふくれ薬』を作っている最中に何を血迷ったのかハリーは花火をパチュリーとマルフォイのペアの隣で薬を作っていたゴイルの大鍋に投げ入れて爆発させたのだ。パチュリーはなんとか反射防御魔法が身を守ってくれたが、マルフォイは鼻を風船の様に膨らませ、1番近くにいたゴイルは目を大皿の様に大きくさせていた。他の生徒達にも薬は降り掛かり、地下牢は大パニックになった。勿論スネイプ先生はカンカンにブチ切れた。そして10分後に終業のベルが鳴り、地下牢を出た瞬間に走り出したハリー達をパチュリーが偶々目撃し、自分に不可視の魔法をかけて後を追った。そしたらハリーが花火を入れた犯人だった為、つい昨日までロンと同じ様に『背後人形』の実験台2号機になって貰ったのである。

 

 

「あら?ハリー達じゃない。ハリー?背中のお化けとやらはどうなったのかしら?」

 

「あぁ・・・パチュリー。うん、朝起きたら居なくなってた」

 

「やっぱりアレは人に乗り移りながら移動してるのかな?」

 

「2人共しっかりしなさいよ。貴方達が言うような生き物は図鑑にも載ってなかったのよ?それよりパチュリーに話があるの」

 

 

 『背後人形』の事を思い出してガタガタ震え出したハリーとロンはハーマイオニーに注意された。図鑑に載っていないのは当たり前だ。アレは今年作ったばかりの人形だし、まだフレッドとジョージには完成した事も伝えておらず、5日後に渡す予定なのだ。図鑑に載っていたらおかしいどころか怖い。

 

 

「ねぇパチュリー。私達と一緒に『決闘クラブ』に行かない?」

 

「決闘クラブ?何よそれ?そんな物あったかしら?」

 

「今日掲示板に書いてあったのよ。今夜8時・・・後2時間後に大広間で行われるの。先生は誰かが言っていたんだけどフリットウィック先生らしいわ」

 

「ロックハートじゃないなら参加するわ。最近どこぞのロックハートの所為でストレスが溜まっていたのよ」

 

「名前言ってるわよパチュリー?」

 

 

 パチュリーの言葉にハーマイオニーは少し不機嫌になる。余程ロックハートの事が好きなのだろう。パチュリーはロックハートが教えるのではなければ誰でもいいと思ってストレス発散の為に参加する事にした。

 そして2時間後、机を片付けられた大広間には一方の壁に沿って金色の舞台が設置されており、その舞台の上には・・・生徒達に手を振って「静粛に」と言っているロックハートと何処と無く不機嫌そうなスネイプ先生がいた。パチュリーは隣にいるハーマイオニーをギロッといつもよりキツく睨み付け、ハーマイオニーは絶対に目を合わせまいと反対方向を向いていた。次の『背後人形』の実験台が決まった瞬間だった。

 

 

「ダンブルドア校長先生から、私がこの小さな決闘クラブを始めるお許しをいただきました。私自身が、数え切れないほど経験してきたように、自らを護る必要が生じた万一の場合に備えて、みなさんをしっかり鍛え上げる為にです。・・・・詳しくは、私の著書を読んでください。では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」

 

(鍛え上げるなら貴方自身が一から教えなさい。何さりげなく自分の本を読めと言っているのよ?それになんでスネイプ先生が助手を?・・・・って、あれは多分嫌々やっているわね。滅茶苦茶ロックハートを睨んでる)

 

 

 ロックハートは満面の笑みを浮かべて隣に立っているスネイプ先生を紹介するが、スネイプ先生はロックハートを視線だけで殺せそうな程の目で睨んでいる。余程ロックハートが気に食わないのだろう。

 

 

「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘について極僅かご存知らしい。訓練を始めるにあたり、短い模範演技をするのに勇敢にも手伝ってくださると言うご了承をいただきました。さてさて、お若いみなさんにご心配をおかけしたくありません。私と彼が手合わせした後でも、みなさんの魔法薬学の先生はちゃんと存在します。ご心配めさるな!!」

 

「相討ちで両方やられっちまえばいいと思わないか?」

 

「私的にはスネイプ先生がロックハートを消し炭にしてくれる事を願うわ」

 

「パチュリー止めて。今僕、君を物凄く怖く感じる」

 

 

 パチュリーの堂々とした返答にハリーとロンは少しパチュリーから距離を取った。ロックハートはスネイプ先生に向き合って腕を振り上げ、くねくね回しながら体の前に持ってきて大袈裟な礼をした。スネイプ先生は不機嫌そうにグイッと首を下げただけだった。2人が礼を終えると杖を剣のように前に突き出して構えた。

 

 

「ご覧のように、私達は作法に従って杖を構えています。3つ数えて最初の術をかけます。勿論、どちらも相手を殺すつもりはありません」

 

 

 ロックハートが静かになった観衆にそう説明する。パチュリーはスネイプ先生の方を見ているとふと目が合い、スネイプ先生はニヤリと笑った。パチュリーはそれを見てニコリと笑う。

 

 

「それでは!・・・1・・・2・・・3!!」

 

「エクスペリアームズ!!武器よ去れ!!」

 

 

 スネイプ先生の杖から紅の閃光が走り、ロックハートは舞台から吹っ飛んで壁に激突して壁伝いにズルズル滑り落ち、無様に大の字になって倒れた。マルフォイや数人のスリザリン生が歓声を上げ、パチュリーはスネイプ先生に拍手を送った。ハーマイオニーは顔を手で覆って「先生、大丈夫かしら?」と悲痛な声を上げるが、ハリーとロンに「知るもんか!!」と言われてしまった。ロックハートはフラフラと立ち上がって壇上に戻る。

 

 

「あれが『武装解除の術』です・・・スネイプ先生、確かに生徒にあの術を見せようとしたのは素晴らしいお考えです。しかし遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をしようとしたかが、あまりにも見え透いていましたね。それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし生徒に見せた方が教育的に良いと思いましてね・・・・。さぁ!模範演技はこれで十分!これからみなさんの所へ降りて行って2人ずつ組にします。スネイプ先生、お手伝い願えますか?」

 

 

 2人は生徒の群れに入り、2人ずつ組ませて行き、スネイプ先生はパチュリー達の所にやって来た。パチュリーはスネイプ先生にニコリと笑いながら先程の決闘を賞賛した。

 

 

「素晴らしい決闘だったわスネイプ先生。とてもいい物を見れたわ」

 

「フンッ。あの様な輩に我輩が遅れをとる訳が無かろう。さて、どうやら名コンビもお別れの時が来た様だな?ウィーズリー、君はフィネガンと組みたまえ。

ポッターは・・・・そうはいかん。マルフォイ君、来たまえ。かの有名なポッターを君がどう捌くのか拝見しよう。それに君、ミス・グレンジャー・・・君はミス・ブルストロードと組みたまえ」

 

 

 スネイプ先生はハリーがハーマイオニーの方に寄って行くのを冷笑して引き止め、2人共別々に組ませた。マルフォイはニヤニヤしながらハリーの方へ向かい、ハーマイオニーの方には鬼婆の様な大柄な女子生徒が向かった。スネイプ先生はそれをニヤリと笑いながら眺めてパチュリーに向き直った。

 

 

「さて、ミス・ノーレッジ。君とは誰を組ませたものか・・・既に他の生徒は組を作ってしまっている。少しの間見学でもするかね?」

 

「その事だけど、私今どうしても組みたい人がいるのよ」

 

「ほう?それはいったい誰かね?」

 

 

 パチュリーの言葉にスネイプ先生は誰と組みたいのかを聞く。パチュリーはニコリと笑いながら壇上に戻ろうとしているロックハートを見る。

 

 

「ロックハートと私は決闘したいわ」

 

 

 パチュリーの言葉に生徒達はバッ!とパチュリーを見てからロックハートに視線を向ける。ロックハートは目を見開いて驚いており、スネイプ先生は面白そうにパチュリーを観察した。

 

 

「成る程。との事ですがロックハート先生?如何致しますかな?」

 

「そ、それはいけませんよミス・ノーレッジ。私に教えて貰いたい生徒は他にも沢山いるのです。君だけ特別と言うのは・・・」

 

「あら?私の様な生徒の指名に逃げるのかしら?」

 

「なっ!!?い、いいでしょう!さぁ、舞台に上がりなさい!心配無用です。ちゃんと手加減して上げますとも!」

 

 

 ロックハートはパチュリーの挑発にまんまと乗り、パチュリーを舞台へ上がる様に言う。周りの生徒達はパチュリーとロックハートが決闘すると聞いて舞台に目を向ける。学年トップの成績を持つ女子生徒と闇の魔術に対する防衛術の教師が決闘するのだ。スネイプ先生も興味深げに舞台に上がって向かい合う2人を見る。

 

 

「では先ず、向かい合って!礼!」

 

 

 ロックハートの号令にパチュリーは綺麗に一礼する。そしてロックハートは杖を構え、パチュリーは完成した戦闘用の魔法書を片手に杖を構えた。それを見てロックハートは「フンッ」と鼻で笑った。

 

 

「本を見ながらでないと魔法が撃てないのかね?そんな状態でよく私に決闘を申し込んだものだ」

 

「あら?この魔法書は舞台から外に魔法の影響がいかない様に結界を張るために持っているだけよ。私が使おうと思っている魔法は広範囲にダメージを与えるから」

 

 

 スネイプ先生はパチュリーの話を聞いて舞台の上に手を伸ばそうとしたがバチンッ!と手を弾かれて驚いていた。ロックハートはそれを見てかなり驚いていた様だが、すぐに気を取り直して杖を構え直した。

 

 

「それでは・・1・・・2・・・3!!エクスペリアームズ!武器よ去れ!」

 

 

 ロックハートの杖から紅の閃光が走りパチュリー目掛けて飛んで行く。しかしパチュリーは慌てる様子もなく杖を振って搔き消した。まさか生徒に掻き消されるとは思ってもみなかったロックハートは顔を驚愕の色に染めた。パチュリーはロックハートを睨みながらクスリと笑った。

 

 

「さて、ロックハート?手加減してあげるから安心してマダム・ポンフリーに治療してもらいなさい。大丈夫、死にはしないわ」

 

「ッ!!!エクスペリアームズ!武器よ去れ!!」

 

「水符『プリンセスウンディネ』」

 

 

 ロックハートは身の危険を感じて再び紅の閃光を放つが、それはパチュリーが放った泡の様な弾幕によって相殺された。しかし弾幕は複数放たれており、ゆっくりと接近してくる弾幕とパチュリーが狙って放ったレーザーをロックハートは躱し切る事が出来ずにレーザーが直撃して結界を突き破りながら吹き飛んだ。今は手加減している為死にはしないが、骨は何本か折っただろう。しばらく生徒達はその光景に固まっていたが、次の瞬間生徒達の歓声とロックハートファンの悲鳴が大広間中に響き渡った。パチュリーはスッキリした様子で舞台を降り、スネイプ先生に歩み寄った。

 

 

「スネイプ先生、ロックハートを医務室へお願いしてもいいかしら?私は今のでスッキリしたので寮へ戻るわ」

 

「あ、あぁ。承知した。しかしミス・ノーレッジ?あの魔法はいったい何かね?」

 

「私のオリジナル魔法よ。ではまた次の授業で・・」

 

 

 パチュリーはスネイプ先生がロックハートのファンと思われる女子生徒にロックハートを医務室に運ぶよう指示を出すのをチラッと見てからいつもよりご機嫌な様子で自室に戻り、小悪魔と小さなパーティーを開いた。

 

 

 

 

 

 

 翌日の大吹雪の日、バジリスクの新たな犠牲者が現れた。犠牲者は2人、ハッフルパフの生徒のジャスティンと言う男の子と、本当の首無しになったニックだった。これだけならばまだ良かったのだが、第1発見者が問題だった。先日のパチュリーが去ってからも行われた決闘クラブでパーセルマウスと判明したハリーだった。

 お陰で2人が襲われた日から生徒達はパニック状態に陥った。ジャスティンと言う少年ならまだパニックにはならなかっただろうが、ゴーストであるニックまでも石にされた事は生徒達に恐怖を与えた。それによりクリスマスに帰宅しようとする生徒達が我先にとホグワーツ特急の予約を入れた。パチュリーもヴワル大魔法図書館に帰宅しようと思ったが、態々混みまくっている列車に乗る気もなかったので今年は居残り組の方へ入った。別に急いで研究する物もなかったし、何か研究したいと思ったらトランクで戻ればいいから問題ない。

 そしてクリスマスの日、パチュリーはクリスマス・ディナーをしていた大広間から寮へ戻る為に暗い廊下を歩いていた。

 

 

(う〜ん、次はなんの研究をしようかしら?フレッド達の魔道具も作り終えちゃったし・・・こぁに何か作ってプレゼントしようかしらね?)

 

 

 パチュリーはそんな事を考えながら廊下を歩いていると、角を曲がった所でドンッ!と誰かとぶつかってよろめいた。

 

 

「おっと!ごめんなさい。少し考え事を・・・なっ!!?」

 

 

 パチュリーが謝りながら相手を見ると、そこには驚いた表情をしたもう1人のパチュリー(・・・・・)が居た。パチュリーは突然現れたもう1人の自分に強めの弾幕を数発撃ち込んで吹き飛ばしてから魔法書を開き、スペルを発動しようと構えた。

 

 

「火符『アグニシャ・・・」

 

「パチュリー!!ストップ!!撃っちゃダメ!!」

 

 

 パチュリーが突然掛けられた声に振り返ると何故かダボダボのスリザリンの制服を着たハリーとロンが現れた。パチュリーは何故2人がそんな格好をしているのか疑問に思ったが、ふと原作で『ポリジュース薬』を使うシーンを思い出したパチュリーは『まさか!?』と思いながらもう1人の自分の方を見た。そこには蹲っていた自分の姿は無く、スペルを放とうとするパチュリーをガタガタ震えながら涙目で見ているハーマイオニーの姿があった。パチュリーは思わず右手を額に当てて天を仰いだ。

 

 

(何やってるのよこの問題児達は・・・・)


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