七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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七曜の魔女と秘密の部屋

 マクゴナガル先生の放送を聞き、パチュリーと生徒達はザワザワと騒ぎながらもそれぞれの寮に戻って行った。パチュリーが談話室に戻る頃には下級生から上級生まで既に戻って来ており、皆それぞれ「何があったんだろう?」とか、「また誰かが襲われたんだ!!」などと話し合っている。パチュリーはそこに交ざらずにまっすぐ自室に戻り、小悪魔に軽く状況を説明してから机の椅子に座って魔法書を読み始めた。日没近くまで読み続けているといつの間にか談話室の方が静かになっており、魔法書に栞を挟んで閉じてから談話室の様子を見に行った。談話室に着くとそこはまるでお通夜の様な雰囲気に包まれており、特にハリー、ロン、フレッド、ジョージ達がいる談話室の片隅の方はかなり暗い雰囲気にも包まれていた。

 

 

「ちょっと貴方達、いったいどうしたのよ?何かあったの?」

 

「なんだ、パチュリーか・・・先生の話を聞いてなかったのかい?俺達の妹が・・・ジニーが、秘密の部屋の怪物に攫われたんだ」

 

「あぁ、そう言う事。・・・パーシーはどうしたの?」

 

「パーシーならパパとママにふくろう便を飛ばしてから部屋に引き篭もっちゃったよ」

 

 

 パチュリーの問いにいつもの元気を失くしたフレッドとジョージが答えた。2人はその後じっとしているのがたまらなくなってトボトボと寝室に戻って行き、パチュリーはそれを見送ってから近くにあった椅子に座り、魔法書を開いて再び読み始めた。しばらく読んでいると今まで一言も喋らなかったロンが口を開いた。

 

 

「ジニーは何か知っていたんだよ、ハリー。だから連れて行かれたんだ。パーシーのバカバカしい何かの話じゃなかったんだ。何か『秘密の部屋』に関する事を見つけたんだ。きっとそのせいでジニーは・・・」

 

 

 ロンは激しく目をこすりながら話を続ける。しかしハリーは窓の外の夕日を眺めて何かを一生懸命考えている様で、話を聞いている様子がない。

 

 

「ハリー・・・ほんの僅かでも可能性があるだろうか。つまり・・・ジニーがまだ・・・・ッ!!そうだ!ロックハートに会いに行くべきじゃないかな?」

 

 

 この言葉にハリーは反応してロンに向き直り、パチュリーはチッ!と大きく舌打ちをした。

 

 

「僕達の知っている事を教えてやるんだ。ロックハートはなんとかして『秘密の部屋』に入ろうとしているんだ。それがどこにあるのか、僕達の考えを話して、バジリスクがそこに居るって教えてあげよう!」

 

「・・・そう、だね。よし、行こう」

 

 

 ハリーもロンの案に賛成し、談話室を横切って肖像画の出入り口から出て行った。すっかり落ち込んでいる他の生徒達は2人を止める事はウィーズリー兄弟が気の毒で出来なかった。パチュリーは2人が出て行くのを見てから自室に戻り、小悪魔に少し話してから数ヶ月前に完成させた透明マントの上位互換である『幽霊マント』を着てハリー達を追い掛けた。ハリーの透明マントに対抗するために作ったこのマントだが、普通の透明マントと違う所は、壁や扉をすり抜ける事が出来、更に着ていると声や足音を消してくれるのである。パチュリーは『幽霊マント』で姿を消してから肖像画をすり抜け、ハリー達を追ってゴミk・・・ゴホン!ロックハートの部屋に向かった。普通なら廊下にパチュリーの足音が響くのだが、全く響いていない。

 

 

(偶には自分で動くのもいいものね。しかも壁をすり抜けるのがなんだか面白いわ。ゴースト達はいつもこんな感じなのかしらね・・・・っと!あれは)

 

「ほら!早く歩いて!逃げようとしないでくださいよ?」

 

「わ、分かっているとも。しかし本当に『秘密の部屋』の入り口はこっちなのかい?」

 

 

 正面方向からハリーとロンに杖を突き付けられて歩いてくるロックハートを見つけた。ハリー達に睨み付けられているロックハートはいつもより弱気に見える。

 どう言う状況かしら?見た所逃げようとしたロックハートがハリー達に捕まって『秘密の部屋』に向かっているように見えるけれど。

首を傾げながらハリー達を見ているパチュリーの予想はほとんど合っていた。

 

 

(まぁとりあえず・・・・・フンッ!!)ドスッ!!!

 

「ブゲラッ!!?き、君達!いきなり蹴る事はないだろう!?」

 

「?何言ってるのか分かりませんが、さっさと歩いて下さい」

 

 

 

 

 

 

 ハリーとロン、そしてお尻をさすっているロックハートと『幽霊マント』を着たパチュリーは、マートルの取り憑いている女子トイレの中に入った。ハリーがロックハートをロンに任せてトイレの中を調べていると、1番奥のトイレからマートルがやって来た。

 

 

「あら、あんただったの。今度はなんの用?」

 

「君が死んだ時の様子を聞きたいんだ」

 

 

 ハリーの質問にマートルは顔つきを変え、こんなにも誇らしく、嬉しい質問をされた事がないという顔をした。こんな嬉しそうな彼女はパチュリーがゴースト用のお菓子をあげた時以来である。

 

 

「オォォゥ、怖かったわ。まさにここだったの。この小部屋で死んだのよ。眼鏡の事をからかわれて鍵を掛けて泣いていたら、誰か入って来たの。なんか変な事を言っていたんだけど、喋っていたのが男子だったから『出てってよ!』って言おうとして、それで・・・死んだの」

 

「どうやって?」

 

「分からないわ。覚えているのは大きな黄色い目玉が2つ・・・・あの辺りで見たの」

 

 

 マートルが指差したのは手洗い台だった。ハリー達は手洗い台を隅々まで調べたが、見つけたのは蛇の形が彫られた壊れた蛇口のみだけで、入り口らしきものは見つからなかった。するとロンがハリーに蛇語で何か言ってみてよと提案し、ハリーはシュ〜シュ〜と言う声を発すると、手洗い台が動き出して大人1人滑り込める程の太さのパイプが出現した。ハリーはパイプを覗きこみながら腹を括った。

 

 

「僕はここを降りて行く」

 

「・・・ぼ、僕も行く」

 

「さて、私はほとんど必要無いようですね。では私はこれで・・・」

 

(貴方が先に行きなさい。大人でしょうに)ドスッ!!!

 

「いったあ〝ぁ〝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」

 

 

 パチュリーは帰ろうとしたロックハートに蹴りを食らわせてパイプの中に突き落とした。ロックハートは悲鳴を上げながらパイプを滑って行き、ハリーとロンは滑り落ちて行くロックハートを奇妙な物を見たとばかりに顔を見合わせている。

 

 

「・・・驚いたなぁ。僕てっきり逃げると思ってた」

 

「僕もさ。早く行こうロン」

 

 

 ハリーとロンはロックハートを追ってパイプの中に入って行った。パチュリーもフワリと飛びながらパイプの中に入って行った。しばらく降りて行くと全身ベトベトの3人が足元に広がる小さな動物の骨を見て顔を青くしていた。ハリーはブンブンと頭を振ってから暗いトンネルのカーブを2人を引き連れて歩いて行った。パチュリーも辺りを警戒しながら飛んでついて行くと、6m近くもある巨大な蛇の抜け殻を発見した。十中八九バジリスクの物だろう。パチュリーが興味深そうに抜け殻を観察し、後で採取しようと考えていると背後で物音がした。バジリスクかと警戒して探索魔法で確認し、バジリスクでないと分かって振り返ると、ロックハートがハリーの杖(・・・・・)を奪って2人に向けていた。

 

 

「坊や達、お遊びはこれでお終いだ!私はこの皮を少し学校に持って帰り、女の子を救うには遅過ぎたとみんなに言おう。君達2人はズタズタになった無残な死骸を見て哀れにも(・・・・)気が狂ったと言っておこう。こう見えて忘却魔法は得意中の得意でね。さぁ、記憶に別れを告げるがいい!!」

 

 

 ロックハートは杖を振って呪文を唱える。ロックハートの魔法が2人の記憶を消そうと襲い掛かる準備をする。

 

 

「オブリビエイト、忘れよ!・・・グボホォッ!!?」

 

「「ッ!!?」」

 

 

 しかしパチュリーが放った弾幕が、ロックハートが撃った魔法に見事に命中し、小型爆弾並みの爆発を起こした。爆風に吹き飛ばされたロックハートは気を失い、彼の手から離れた杖はハリーがキャッチした。2人共訳が分からず固まっていたが、ロンがロックハートに近付いて様子を見ようとすると突然天井が崩れた。ハリーは慌てて避難すると、落石によりロンと気絶したロックハートとパチュリーと分断されてしまった。

 

 

「ローン!!大丈夫か?ロン!」

 

「僕は大丈夫だよ!でもどうする?こっちからは行けないよ。何年も掛かってしまう」

 

「・・・・そこでロックハートと一緒に待ってて、僕が先に進む」

 

「・・・分かった。僕は少しでもこの岩石を取り崩してみるよ。そうすれば君が帰りにここを通れる。だからハリー・・・」

 

「それじゃ、また後でね」

 

 

 ハリーの声はそれっきり聞こえて来なくなった。ロンはこうなった原因であるロックハートの脛を蹴飛ばしてからこっそりパチュリーが岩を変身魔法で変えておいた縄を見つけ、それを使ってロックハートの手足を縛った。

と言うかロン、貴方もう少し疑うという事をしなさい。普通こんな場所にそんな真新しい縄は無いわよ?

 パチュリーは少し呆れながらロンがロックハートをキチンと拘束するのを見守った。ついでにロックハートに異常がないか嫌々調べ、異常がないのを確認してから空間魔法で取り寄せた改良型『背後人形』を取り付けておいた。

 

 

(ふふふ♪精々泣き叫びなさい若造。さて、ハリーの方へ向かいましょうか・・・・あら?)

 

 

 パチュリーがハリーの下に向かおうとすると、入り口の方から美しい紅の羽根を持った鳥・・・不死鳥が組分け帽子を足で掴んで飛んで来て、岩の間を通り抜ける様に飛んで行った。ロンは頭上を飛んで行った不死鳥を目を見開いて眺め、パチュリーも不死鳥を観察していたがすぐに気を取り直して岩をすり抜けてハリーの下へ飛んで行った。探索魔法にバジリスクらしき反応があった為目を閉じて安全な場所に移動する。

 

 

(さぁて、参ったわね。今下手に出て行っても邪魔になるだけね。一応原作では勝っているけれど、さっきみたいな事があるかもしれないわね。でも探索魔法では辺りの地形は正確には分からないし、目を閉じて中に入ってスペル発動って手もあるけど、下手したらバジリスクが追い掛けているハリーやさっきから動かないジニーも巻き添えを食らっちゃうからコレは却下ね。次からは地形も正確に分かるように改良しときましょう)

 

 

 探索魔法でバジリスクとハリー、そしておそらくジニーとリドルの日記らしき反応を見ながらどうするか考えていた。ハリーがバジリスクから離れてくれたら助かるのだがと少し考えていると、少し離れていたハリーとバジリスクの反応が戻って来た。しばらくバジリスクとハリーの反応が動き回った後、バジリスクの反応が消失し、離れた場所で旋回していた先程の不死鳥の反応がハリーの側で停止した。

 

 

(あら、問題無く勝てたのね。どれどれ?・・・)

 

 

 パチュリーが広間を覗いてみると、ちょうどハリーがリドルの日記にバジリスクの牙を突き刺している所だった。耳をつんざく様な悲鳴をリドルが残して消えていき、ハリーは目を覚まして混乱しているジニーを連れてパチュリーの下を通って外に出て行った。それを見送ってからパチュリーは地面に降り立ち、その場に残されたバジリスクの死体とハリーが忘れて行ったリドルの日記を観察した。

 

 

「全く、ハリーったらよく魔法を使わずにバジリスクに勝てたわね・・・って、バジリスクの目潰されてるじゃない。はぁ・・・悩んでた私がバカみたいだわ。取り敢えずバジリスクの牙と毒と鱗・・・後一応リドルの日記と目も持って行きましょう」

 

 

 パチュリーは近くの小石を瓶に変えて中に牙と毒と目を入れ、剥ぎ取った鱗と日記を纏めてヴワル大魔法図書館の研究室の倉庫に転移させた。最後にバジリスクの抜け殻を転移させてから自分も小悪魔が待つ自室に空間転移で戻って行った。その後、先生方に説明するのにハリーが相当困ったのはパチュリーの知った事ではない。

 

 

 

 

 

 

 パチュリーは大広間で行われている宴会に参加せずに小悪魔と一緒に自室でパーティーを開いていた。向かい合う様に座り、テーブルの上には小悪魔が作ったステーキやスープなどが美味しそうな香りを漂わせている。

 

 

「パチュリー様、大広間の宴会には行かなくて良かったんですか?」

 

「いいのよ。それともこぁは私と食事をするのは嫌?」

 

「い、いえ!!全然嫌ではないです!!寧ろ嬉しいと思ってま・・・あ」///

 

 

 顔を真っ赤にして俯く小悪魔を見てパチュリーはクスクス笑った。今のパチュリーはとても機嫌が良い。しかし別にグリフィンドールに400点が入って寮対抗優勝杯を2年連続獲得や、学校から事件解決のお祝いに期末試験がキャンセルされたりした事で機嫌が良い訳ではない。パチュリーにとって何より喜ばしいのは、ロックハートが学校を去る事になった事である。原作通りに入院する事になったのだが、理由がちょっと違う。記憶を失ったのではなく、『背後人形』の所為でまぁ・・・色々ヤバい事になっている為、精神科にて入院するらしい。しかしパチュリーは可哀想とは思わなかった。寧ろ心の中で「ザマァ」と言っている程である。まぁそう言う訳で現在パチュリー達はパーティーを開いているのだ。

 

 

(さてと、ロックハートが学校を去る事は嬉しいけれど・・・これで私の持つ原作知識は終わりね。これから先どうなるか・・・・ふふ、楽しみだわ)

 

 

 パチュリーは窓の外に浮かぶ月を眺めながらそんな事を考えクスリと笑った。こうしてホグワーツ魔法学校の秘密の部屋事件は幕を閉じたのである。


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