七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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新たな教師と教師達の疑問

 パチュリー達が乗った汽車は10分程するとホグズミード駅で停車し、生徒達が下車するのでひと騒動だった。生徒達の梟や猫達が鳴き声をあげ、生徒達は先程の件について話している。狭いプラットホームは凍る様な冷たさで、氷の様な雨が叩きつけている。パチュリーもトランクを片手に持って下車すると、生徒の群れの向こうからハグリッドの声が聞こえて来た。

 

 

「イッチ年生はこっちだ!イッチ年生はこっち!・・・おぉ!三人とも元気かー?」

 

「あ!ハグリッドだ!おーーい!!」

 

 

 ハリーとロンとハーマイオニーの3人はハグリッドに手を振りはしたが、周りの人並みにホームからそれる方向へ押し流されてしまい、話しかける機会は無かった。パチュリーは大人しく流れについて行った。少しすると凸凹のぬかるんだ馬車道に出た。そこにはざっと100台の馬車が並んでおり、骨ばった黒い馬にドラゴンの様な羽が生えた天馬に繋がれていた。その天馬はセストラルと呼ばれており、死を目の当たりにしなければ目にする事が出来ない肉食の天馬で、高速で移動する事が出来、乗馬している人間の行きたい場所を心で察し、迷う事なく連れて行く事が出来る面白い天馬である。

 200年の時を生きたパチュリーは死を目の当たりにする事は何度かあり、今では普通に見る事が出来る。

 

 

(まぁまさか大図書館の出入り口の近くの森に沢山住んでいるとは思わなかったけどね。あの時はビックリしたわ)

 

 

 パチュリーが昔の事を思い出しながらセストラルをこっそり優しく撫でると、セストラルは気持ち良さそうにブルルと鳴いた。クスリと笑ってからそのセストラルが引く馬車に乗り込むと、パチュリーは魔法書を開いて読書を再開した。すると馬車は扉が閉まると同時に走り出し、ガタゴトと揺れながら隊列を組んで進み始めた。馬車に揺られながらも魔法書を読んでいると、辺りの気温が段々と下がり始めた。パチュリーは魔法書から顔を上げると、馬車はちょうど壮大な鋳鉄の門を抜けるところで、その門の両脇を警護しているディメンターが目に入った。

 

 

(ディメンターねぇ・・・・そう言えばさっきのディメンターはなんで私を見ていたのかしら?)

 

 

 パチュリーはそんな疑問を抱きながらも視線を魔法書に戻して読書を再開した。城に続く長い上り坂を馬車は更に速度を上げて行った。しばらく読んでいるとひと揺れして馬車が停止した為、パチュリーは魔法書に栞を挟んで馬車を降りた。パチュリーはググッと伸びをしてから城に続く石階段の方へ歩いて行ったが、石階段の前ではハリーとマルフォイ達が睨み合っていた。

 

 

「ポッター、気絶したんだって?ロングボトムは本当の事を言っているのかな?ウィーズリー、君も気絶したのか?」

 

「失せろマルフォイ!!」

 

「あの怖〜いディメンターで、ウィーズリー、君も縮み上がったのかい?」

 

 

 マルフォイはニンマリしながらハリー達を挑発し、ハリーとロンは物凄く嫌そうな顔で怒鳴る。パチュリーは正直言ってハリー達が喧嘩していようが別に構わないのだが、流石に城に繋がる石階段を塞がれては邪魔でしかないので話に割って入ることにした。

 

 

「ちょっと貴方達、喧嘩するのは構わないけれど他人の邪魔にならない場所でやってくれないかしら?」

 

「おや?パチュリー!久し振りだね。ねぇ、ハリーがディメンターで気絶したって本当かい?」

 

「まぁ間違ってはいないわね。すぐに新しい教師のお陰でディメンターは追い返されたけど」

 

 

 正直に答えるパチュリーにマルフォイは「へぇ〜?」とニンマリ笑いながらハリーに目をやり、ハリー達はパチュリーを睨み付けた。パチュリーはそんなハリー達を見て肩を竦めた。

 

 

「別にいいじゃない?本当の事なんだから。今ここで誤魔化してもすぐにバレるわよ」

 

「それは・・・そうだけどさ」

 

「ん?君達、どうかしたのかい?」

 

 

 声のした方を見るとルーピン教授が馬車から降りて来てハリー達を見ていた。マルフォイはルーピン教授に気付くと横柄な目つきでルーピン教授をジロジロ観察した。その目でルーピン教授のローブの継ぎ接ぎやボロボロのカバンをしばらく眺めた後、「ふ〜ん?」と頷いた。

 

 

「いいえ、何も。えーと・・・先生?」

 

 

 マルフォイの声には微かに皮肉が込められており、背後のクラッブとゴイルに向かってニンマリ笑い、2人を連れてマルフォイは石段を登った。ルーピン教授は「自分の顔に何か付いていたのか?」と首を傾げながらも続いて石段を登り、パチュリー達もそれに続いて石段を登って行った。長い石段を登り終えると、正面玄関の巨大な樫の扉を通り、広々とした玄関ホールに入った。パチュリー達は右の方にある大広間への扉に向かう途中、ハリーとハーマイオニーがマクゴナガル先生に呼ばれた。

 

 

 

「ポッターとグレンジャー!2人共私の所においでなさい!」

 

「えっ!?僕何かやらかしたかな?」

 

「大丈夫じゃない?貴方は多分来る時のディメンターの件よ。ハーマイオニーは知らないけど」

 

「あ〜〜・・・だったら私にも心当たりがあるわ。行きましょうハリー。ロンは悪いけど私達の分の席を取っておいてくれない?」

 

「うん、分かった。2人共後でね」

 

 

 ハリーとハーマイオニーは生徒達を掻き分けながらマクゴナガル先生の下へ向かい、ロンは2人の背中を見送ってから生徒の群れに紛れ込んだ。パチュリーもそれに続いて大広間に入って行った。

 

 

 

 

 

 

パチパチパチパチパチパチ!!!

 

「これにて、組み分けを終了します」

 

 

 

 新しく入学した1年生の最後の1人がハッフルパフの寮生達に歓迎されながら長テーブルについた。古めかしい見た目の『組み分け帽子』をフリットウィック先生が3本足の丸椅子と一緒に片付けていく。パチュリーは組み分け中も魔法書を読んでいたが、ふと大広間の後ろの方がザワザワと少し騒がしくなり、ハリーとハーマイオニーがやって来てロンの両脇に座った。ロンがいったい何の用事だったのかをハリーに聞き、ハリーはロンに耳打ちで説明しようとするが、その前にダンブルドア先生が挨拶をする為に立ち上がったので中断した。ダンブルドア先生はニッコリと笑いながら生徒達を見渡して挨拶を始めた。

 

 

 

「おめでとう!!新学期おめでとう!皆に幾つかお知らせがある。1つはとても深刻な問題じゃから、皆がご馳走でボーッとなる前に片付けてしまう方が良かろうの・・・・ゴホンッ!ホグワーツ特急での捜査があったから、皆も知っての通り、我が校はただいまアズカバンの吸魂鬼、つまりディメンター達を受け入れておる。魔法省の御用でここに来ておるのじゃ」

 

 

 

 ダンブルドア先生は僅かにその笑顔を歪ませながらも言葉を続けた。どうやらダンブルドア先生はディメンターが学校を警備するのを快く思っていない様子だ。

 

 

 

「ディメンター達は学校への入口という入口を固めておる。あの者達がここにいるかぎり、はっきり言うておくが、誰も許可なしで学校を離れてはならんぞ。ディメンターはいたずらや変装に引っかかるようなシロモノではない・・・・『透明マント』でさえムダじゃ」

 

 

 ダンブルドア先生がさらりと付け加えた言葉にハリーはピクリと反応し、隣のロンと目を見交わした。パチュリーも最後の言葉はハリーに言っている事は理解出来たが、同時に自分が作った『幽霊マント』はどうなのだろうと気になり、近い内に実験してみようと考えた。

 

「言い訳やお願いを聞いてもらおうとしても、ディメンターには生来できない相談じゃ。それじゃから、一人一人に注意しておく。あの者達が皆に危害を加えるような口実を与えるではないぞ。監督生よ、男子、女子それぞれの新任の首席よ、頼みましたぞ。誰一人としてディメンターといざこざを起こす事のないよう気をつけるのじゃぞ」

 

 

 ダンブルドア先生の言葉に今度は離れた席のパーシーが反応し、胸を張りながらもったいぶって周りを見回した。ダンブルドア先生は言葉を切り、深刻そのものの顔つきで大広間をグルッと見渡した。生徒達は誰一人身動きもせず、声も出さなかった。

 

 

「では、楽しい話に移ろうかの。今学期から、嬉しいことに新任の先生を二人、お迎えする事になった。先ず、ルーピン先生。ありがたい事に空席になっている『闇の魔術に対する防衛術』の担当をお引き受け下さった」

 

 

 パチュリーは普通に拍手をしたが、周りの生徒達からはパラパラとあまり気のない拍手が起こった。ハリー達やコンパートメントで居合わせた一部の生徒達は大きな拍手をした。するとロンが何かに気付いてハリーに小声で話し掛けた。ハリーとロンが見る方向をパチュリーも見てみると、ルーピン先生を教職員テーブルの向こう側から睨んでいるスネイプ先生を見つけた。それはもう怒りを通り越して憎しみの表情でルーピン先生を睨んでいた。ルーピン先生へのパッとしない拍手が止むのを待ってダンブルドア先生は話を続ける。

 

 

「ケトルバーン先生は『魔法生物飼育学』の先生じゃったが、残念ながら前年末をもって退職なされる事になった。手足が一本でも残っている内に余生を楽しまれたいとのことじゃ。そこで後任じゃが、嬉しい事に、他ならぬルビウス・ハグリッドが、現職の森番役に加えて教鞭をとってくださる事になった」

 

 

 パチュリーはケトルバーン先生に何があったのか気になりはしたが、取り敢えず周りのみんなと一緒に拍手した。ハグリッドと仲の良いグリフィンドール寮生達からの拍手は割れんばかりだった。ハグリッドは夕日のように顔を真っ赤にして自分の巨大な手を見つめており、嬉しそうに綻んだ顔は彼のひげに埋もれていた。ロンはテーブルを叩きながら叫んだ。

 

 

「そうだったのか!!噛み付く本を教科書に指定するなんてハグリッド以外にいないよな?」

 

「そうでもないわよ?昔ホグワーツとは別の魔法学校で『爆発的で芸術的な魔法薬の本』なんて言う刺激を与えると爆発する本が教科書に指定された事があるわ。因みにその年は学校中で爆発事故が多発したらしいわ。だから案外ハグリッドじゃなくても指定するかもしれないわよ?」

 

 

 パチュリーの話を聞いて周りの生徒達は苦笑いを浮かべた。当然の反応だろう。その事故は新聞にも載り、負傷者が多数続出した為魔法省は爆発する本の作成は禁止する程のもので、パチュリーも偶々その新聞を読んだ時はつい「バカじゃないの?」と口に出してしまった程である。そんな話がグリフィンドールのテーブルの一部で話されてるとは知らず、ハグリッドはテーブルクロスで流した嬉し涙を拭っていた。

 

 

「さて、これで大切な話はみな終わった。・・・さぁ、宴じゃ!!」

 

 

 ダンブルドア先生がそう宣言した直後、各テーブルの上に乗っていた金の皿、金の杯に食べ物や飲み物が現れた。パチュリーも開いていたページに栞を挟み、魔法書を片付けてそれらの料理を堪能し始めた。宴が始まると大広間には話し声や笑い声、ナイフやフォークの触れ合う音が賑やかに響き渡った。パチュリーはこの後小悪魔と食事の約束をしている為、軽く食べるだけにして、後は読書で時間を潰した。しばらくするとダンブルドア先生がみんな寝る時間だと宣言し、生徒達はそれぞれ監督生達の後に続いて寮へ向かった。階段を登っては廊下を進み、また階段を登るを繰り返していると、グリフィンドール塔の秘密の入口に辿り着いた。ピンクのドレスを着た『太った婦人(レディ)』の大きな肖像画が先頭の生徒に尋ねた。

 

 

「合言葉は?」

 

 

「あ!ちょっと道を開けて、道を開けて!あ、足踏んだゴメン。・・・ふぅ、新しい合言葉は『フォルチュ・マジョール。たなぼた』!」

 

 

 監督生のパーシーの合言葉を聞いて偶々隣にいたネビルが「あーぁ」と悲しげな声を出した。彼はパチュリーに偶に勉強を見てもらったりしたことがある為原作よりも少し頭は良くはなっているが、まだ長い合言葉を覚えるのは苦手なのである。開いた穴を抜けて談話室を横切り、パチュリーは最早自分専用の部屋と化している女子寮の部屋に入った。

 

 

 

 

 

 

「なんじゃと?ノーレッジ嬢にディメンターが?」

 

「えぇ、私も信じられませんが、ルーピン先生のふくろう便には確かにそう書かれておりました」

 

 

 パチュリーが小悪魔と食事をしている一方、ホグワーツの校長室にて、3人の教師が話し合っていた。1人は魔法薬学の教師、スネイプ先生。もう1人は変身術の先生にして副校長、マクゴナガル先生。そして最後にホグワーツの校長、ダンブルドア先生である。3人が話し合っているのは列車内にて起きた1人のディメンターの奇妙な行動である。

 

 

「しかし、彼等は今回、ホグワーツの警備をする為に居るはず。脱獄囚でも死喰い人(デスイーター)でもないミス・ノーレッジに何故自分から近付き、触れようとしたのだ?」

 

「それは儂にも分からぬ。しかし、彼女はホグワーツに来てから儂等の予想を遥かに上回る結果をだしておる」

 

「えぇ。見た事のない魔法、並みの魔法使い以上の頭脳、私達すら知らない知識、そして・・・」

 

「魔法省どころか、魔法界の研究者達が喉から手が出る程欲しがる知識の詰まった魔法書・・・じゃな?」

 

 

 ダンブルドア先生の言葉にマクゴナガル先生は黙って頷いた。ダンブルドア先生は長い髭を撫でながら思考を巡らすが、考えれば考えるほどパチュリー・ノーレッジという少女に疑問を抱くだけであった。

 

 

「いかがなさいますか?校長先生」

 

「ふむ・・・取り敢えずは事の詳細をルーピン先生に聞いた方が良いじゃろう。彼女は確かに謎の多い少女ではあるが、あの子は儂等の敵ではない様な気がするのじゃ。

・・・まぁ儂の勘じゃがな?彼女については今は様子見といこうかのう」

 

「・・・では、この話はまた別の日にしましょう。私達はこれで・・・」

 

 

 マクゴナガル先生とスネイプ先生は校長室を出て行き、後にはダンブルドア先生だけが残された。1人残されたダンブルドア先生は自身が飼っている不死鳥のフォークスを撫でながらパチュリーの事を考えていた。

 

 

「ノーレッジ嬢、お主はいったい何者なのかのう?」


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