七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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紅茶占いと死神犬

 翌日、パチュリーは大広間で朝食を取った後、『占い学』が行われる北塔の天辺にある教室前にやって来ていた。道中気絶したハリーの真似をして笑いを取っていたマルフォイ達や、道中にあった鎧兜をガチャつかせたカドガン卿と言う肖像画の絵が騒がしかったりしたが、なんとか早めに到着することが出来た。何故教室前なのかと言うと、生徒達が集まらなければ小さな踊り場の天井にある丸い撥ね扉が開かない様なのだ。その為パチュリーは踊り場の隅で魔法書を読んで時間を潰していた。しばらく読み続けていると、少しずつ生徒達がゼェハァ言いながら踊り場に登って来た。そして大体の生徒達が集まった所でハリー達も息を切らしながらやって来た。

 

 

「ハァ・・ハァ・・あ!パチュリー!先に来てたんだ。・・・あれ?教室の入り口は?」

 

 

 ハリーの質問にパチュリーは無言で撥ね扉がある天井を指差し、ハリー達3人は指の先を見て「あぁ〜」と頷きながら納得した。ハリーはその撥ね扉に付いている真鍮の表札を見つけてそれを読み上げた。

 

 

「シビル・トレローニー、『占い学』教授・・・ここで間違い無いみたいだけど・・・どうやってあそこに行くんだろう?」

 

「生徒達が集まれば開くんでしょ。私はかなり前からここで待ってるけどまだ開いてないわ・・・・っと、揃ったようね」

 

 

 

 天井の撥ね扉が開き、銀色の梯子がハリーのすぐ足元に下りてきた。みんなが突然の事にシーンと静まり返っていると、ロンが「お先にどうぞ」とニヤリと笑いながらハリーに言い、ハリーは梯子を上って行った。その後にロン、パチュリーと次々上って行き、生徒達は『占い学』の教室に入った。

 そこはこれまで見た事がない奇妙な教室で、屋根裏部屋と昔風の紅茶専門店を掛け合わせた様な部屋だった。小さな丸テーブルが20卓以上所狭しと並べられ、それぞれのテーブルにはフカフカの丸椅子や繻子張りの肘掛椅子が置かれている。全ての窓のカーテンは閉め切られ、暗赤色のスカーフで覆われたランプがほの暗い灯りを放っている。生徒達がそんな奇妙な教室についてヒソヒソ話していると、突然暗がりの中からか細い声がした。

 

 

「ようこそ。この現世(うつしよ)で、とうとう皆様にお目にかかれて嬉しゅうございますわ。・・・おかけなさい。あたくしの子供達よ。さぁ」

 

 

 暖炉の灯りの中に進み出た大きな眼鏡をしたトレローニー先生の指示に生徒達はおずおずと椅子に座った。ハリーとロン、ハーマイオニーは同じテーブルに座り、パチュリーは少し離れたテーブルに他の生徒2人と座った。全員が席に着くと、トレローニー先生は暖炉の前の背もたれの高いゆったりした肘掛椅子に座り、挨拶を始めた。

 

 

「『占い学』にようこそ。あたくしがトレローニー教授です。たぶん、あたくしの姿を見た事がないでしょうね。学校の俗世の騒がしさの中にしばしば下りて参られますと、あたくしの『心眼』が曇ってしまいますの」

 

「「「「・・・・?」」」」

 

 

 トレローニー先生の言っている事にほとんどの生徒が疑問符を浮かべた。トレローニー先生はたおやかにショールをかけ直し、話を続けた。

 

 

「皆様がお選びになったのは『占い学』。魔法の学問の中で1番難しいものですわ。初めにお断りしておきましょう。『眼力』の備わっていない方には、あたくしがお教えすることはほとんどありませんのよ。この学問では、書物はあるところまでしか教えてくれませんの」

 

 

 トレローニー先生の言葉を聞いてハリーとロンはニヤッと笑いながら同時にハーマイオニーを見た。書物がこの学科ではあまり役に立たないのを聞いてハーマイオニーはひどく驚いた様子だった。

 

 

 

「1年間、占いの基本的な方法をお勉強いたしましょう。今学期はお茶の葉を読む事に専念いたします。来学期は手相学に進みましょう。ところで、あなた。赤毛の男子にお気をつけあそばせ」

 

 

 見据えられたパーバティ・パチルはロンの方を見ると椅子を引いてロンから距離を取った。ロンはそれを見て不満そうにしている。

 

 

「夏の学期には、水晶玉に進みましょう。・・・ただし、炎の呪いを乗りきられたらでございますよ。つまり、不幸な事に2月にこのクラスは性質の悪い流感で中断される事になり、あたくし自身も声が出なくなりますの。イースターの頃、クラスの誰かと永久にお別れをする事になりますわ。・・・・あなた、よろしいかしら?1番大きな銀のティーポットを取っていただけないこと?」

 

 

 トレローニー先生の予告で生徒達の間に沈黙が流れたが、トレローニー先生は気にかける様子もなく、今度は1番近くにいたラベンダー・ブラウンに声を掛けた。ラベンダーは少し安心した様子で棚からティーポットを取って来てトレローニー先生に渡した。

 

 

「まぁ、ありがとう。ところで、あなたの恐れている事ですけれど、10月16日の金曜日に起こりますよ?」

 

(上げて落とすわねこの先生・・・)

 

 

 震えながら席に戻るラベンダーを見ながらパチュリーはそんな感想を抱く。それからもトレローニー先生の話は続き、紅茶占いの授業が始まった。やり方は意外に簡単だ。まず紅茶を椅子に座って滓が残るところまで飲む。次に左手でカップを持ち、滓をカップの内側に沿って三度回す。最後にカップを受け皿の上に伏せる。今回は2人1組になって行うため、自分のカップを相手に渡して読んでもらう。パチュリーは手順通りにやり終え、ペアになったグリフィンドール寮生のレビィ・リンクスに渡し、彼女のカップを受け取って読んだ。

 

 

「ふむ・・・亀、木、太陽ね。へぇ?中々いいのが出たじゃない。場所からして・・・数ヶ月先の未来ね。つまりは地道な努力をすれば希望が叶い、明るい未来が数ヶ月先に来るって訳ね」

 

「本当!?本当にそう出てるの!!?」

 

「えぇ、本当よ。私がここで嘘を言う意味なんてないもの。・・・それより私のカップには何が見えたのかしら?」

 

 

 嬉しそうにしているレビィはハッとした様子で手に持っているパチュリーのカップを覗き込んだ。しばらく教科書とカップの中身を見比べていたが、首を傾げる一方で、全く答えが返ってこない。

 

 

「レビィ?そんなに酷い内容なのかしら?」

 

「う〜〜ん、ハッキリ言って意味が分からないのよ。と言うか、教科書のイラストと茶葉の形が違い過ぎて分からない・・・」

 

「あ〜〜・・・それは仕方ないわね。ちょっとカップちょうだい。私が見てみるわ」

 

 

 

 レビィはコクリと頷くとパチュリーにカップを返した。戻って来た自分のカップを覗き込んだパチュリーは滓を読み始めた。

 

 

(あるのは・・・流れ星と笑顔?場所からして数ヶ月以上先の未来・・・。流れ星なら『驚きの知らせ』か『予期せぬ訪問者』だから・・・・う〜〜ん?数ヶ月先の未来で何か驚く事が起きて笑顔になる?)

 

「どうパチュリー?何か分かった?」

「多分、数ヶ月先の未来で何か驚く事が起きて、笑顔になるって意味だと思うわ。まぁ、何が起こるか分からないから気長に待ちましょう」

 

 

 パチュリーはそう言ってカップを置いた。パチュリーは少し先程の占いについて思考しながらもハリー達を見た。今はロンがハリーのカップを読んでいるようで、ロンはずっと教科書を凝視している。

 

 

「なんか動物みたい。ウン、これが頭なら・・・カバかな?・・・いや、羊かも・・・」

 

「あたくしが見てみましょうね」

 

 

 ロンがウンウン唸っているとトレローニー先生がスーッと近付いてロンからカップを取り上げた。そのまま時計の逆回りにカップを回してカップを読む。

 

 

「隼・・・まぁ、あなたは恐ろしい敵をお持ちね」

 

「でも、誰でもそんなこと知ってるわ」

 

 

 トレローニー先生の言葉を聞いてハーマイオニーが聞こえよがしに囁いた。トレローニー先生がキッとハーマイオニーを睨んだ。

 

 

「だって、そうなんですもの。ハリーと『例のあの人』の事はみんな知っているわ」

 

「・・・・・。棍棒・・・攻撃。おや、まぁ。これは幸せなカップではありませんわね。それに髑髏・・・行く手に危険が。まぁ、あなた・・・ッ!」

 

 

 カップを見ていたトレローニー先生がハッと息を呑み、悲鳴をあげた。トレローニー先生は空いていた肘掛椅子に身を沈め、手を胸に当てて目を閉じた。

 

 

「おぉ、可哀想な子・・・いいえ、言わない方がよろしいわ。えぇ、お聞きにならないでちょうだい」

 

「先生!どういう事ですか?」

 

「ディーン、貴方今『聞かないで』と言われたのに何普通に聞いてるのよ?」

 

「いや、だって気になったから・・・」

 

 

 パチュリーがディーンをジト目で見ている内に他の生徒達はハリーのカップの中が気になり、ハリー達のテーブルに集まった。トレローニー先生はしばらく黙っていたが、カッ!と閉じていた目が開かれハリーを見た。

 

 

「あなたにはグリムが取り憑いています」

 

「何がですって?」

 

「グリムよハリー。墓場に取り憑く巨大な亡霊犬よ。この場合のグリムは不吉の予兆、大凶の前兆、死の前兆ね」

 

 

 パチュリーの説明にハリーは顔を蒼ざめ、数歩後ずさった。周りの生徒達は口を手で押さえたり、目を見開いたり、口をポカンと開けてハリーに注目した。しかし1人だけ、ハーマイオニーだけは立ち上がってトレローニー先生の椅子の後ろに回ってカップを見た。

 

 

死神犬(グリム)には見えないと思うわ」

 

 

 ハーマイオニーの容赦ない言葉に反応し、トレローニー先生は嫌悪感を募らせてハーマイオニーをジロリと品定めした。

 

 

「こんな事を言ってごめんあそばせ。あなたにはほとんどオーラが感じられませんのよ。未来の響きへの感受性というものがほとんどございませんわ」

 

「こうやって見ると死神犬に見えるよ。・・・あ、でもこっちから見るとむしろロバみたいに見えるな」

 

「僕が死ぬか死なないか、さっさと決めたらいいだろう!!」

 

 

 ハーマイオニーやトレローニー先生達の話を黙って聞いていたハリーは周りがビクッと肩を震わせる程の声で怒鳴った。確かに自分が死ぬか死なないかで話し合っていたら不快な気持ちになるだろう。

 

 

「あのねハリー?グリムが出たと言ってもそれはあくまで前兆なの。それに『グリム=死』ではなくて、大凶や不幸な事が起きるという考えもあるのよ?それにこれは正確に当たりやすい水晶占いと違って幾つかの選択が出来るのよ。だから正確な答えは出ない」

 

「選択?それってどういう意味なの?」

 

「例えばこの占いに『明日まで努力すれば良い事が起きる』と出たとして、努力を全くしないでその明日が過ぎれば良い事は起こらない・・・みたいな感じよ」

 

「・・・・・?」

 

 

 パチュリーの説明にハリーは首を傾げた。おそらく・・・というか絶対に内容を理解していないのだろう。パチュリーがハァと溜息を吐くと終業のベルが鳴り響き、トレローニー先生は霧の彼方のような声で片付けの指示を出し、授業を終了した。

 

 

 

 

 

 

 パチュリー達は次の授業である変身術のクラスに向かった。パチュリーは普通にマクゴナガル先生の授業を受けているが、他の生徒達はハリーがいつ死ぬか分からないと言わんばかりにチラチラとハリーを盗み見ていた。マクゴナガル先生は『動物もどき(アニメーガス)』と自由に動物に変身できる魔法を説明し、自身も眼鏡と同じ縞模様があるトラ猫に変身して見せるも全く見もしない生徒達に顔をしかめた。

 

 

「まったく、今日はみんなどうしたんですか?さっきから真面目に授業を受けているのはミス・ノーレッジだけですよ?別に構いませんが、私の変身がクラスの拍手を浴びなかったのはこれが初めてです」

 

 

 ちょっとションボリした様子のマクゴナガル先生の言葉にクラスの生徒達(パチュリーを除く)はハリーの方を振り向いたが、誰も口にしようとしなかった。しばらく沈黙が教室を支配したが、ハーマイオニーが手を挙げて理由を言った。

 

 

「先生、私達、『占い学』の最初のクラスを受けて来たばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで・・・・」

 

「あぁ、そういう事ですか。ミス・グレンジャー、それ以上は言わなくて結構です。今年はいったい誰が死ぬ事になったのですか?」

 

 

 マクゴナガル先生の言葉を聞いてクラスの生徒達(パチュリーを含む)が先生を見つめた。しばらくしてハリーが「僕です」と答えるとマクゴナガル先生は「分かりました」と小さく言ってからしっかりとハリーを見た。

 

 

「では、ポッター、教えておきましょう。シビル・トレローニーは本校に着任してからというもの、1年に1人の生徒の死を予言して来ました。いまだに誰1人として死んではいません。死の前兆を予言するのは、新しいクラスを迎える時のあの方のお気に入りの流儀です。私は同僚の先生の悪口は決して言いません。それでなければ・・・・」

 

 

 マクゴナガル先生はここで一瞬言葉を切った。生徒達はジーッとマクゴナガル先生を見つめており、それから先生は少し落ち着きを取り戻して話を続けた。

 

 

「『占い学』は魔法の中でも1番不正確な分野の1つです。真の予言者は滅多にいません。ポッター、私の見るところ、貴方は健康そのものです。ですから、今日の宿題を免除したりしませんのでそのつもりで。もし死んだら提出しなくても結構です」

 

 

 マクゴナガル先生の話を聞いてクラスの何人かの生徒は吹き出した。ハリーはちょっぴり気分が良くなった様子だが、全員がマクゴナガル先生の言う通りだと思った訳ではなく、パチュリーもその内に入っていた。何故ならば、パチュリーがハリーのカップを覗いた時、茶葉の形がグリムだったのを見ていたからである。ハリーがたとえ死ななくても、何かあるとパチュリーは思っていた。

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