七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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ルーピンの代わりとニンバスの亡骸

 肖像画がシリウス・ブラックに滅多切りにされたその日の夜、グリフィンドールのみならず、ハッフルパフとレイブンクロー、そしてスリザリンの全生徒達は大広間に集められ、そこで一晩を過ごした。先生達は城中を隅々まで捜したが、結局、シリウス・ブラックを見つける事は出来なかった。

 それから数日というもの、学校中がシリウス・ブラックの話題でもちきりだった。どうやって城に侵入したのか?何が目的だったのか?生徒達の間で話は尾ひれがついてドンドン大きくなっていった。挙げ句の果てにはシリウス・ブラックは花の咲く灌木に変身出来るだの、ゴーストの様に壁を擦り抜けられるだのと言う生徒まで現れた程には尾ひれがつきまくった。

 切り刻まれた『太った婦人』の肖像画がグリフィンドールの入り口から取り外され、代わりにずんぐりした灰色のポニーに跨った『カドガン卿』の肖像画が取り付けられた。これにはグリフィンドール生達は大弱りだった。『カドガン卿』は誰彼構わず・・・それこそパチュリーにまで決闘を挑み、とてつもなく複雑で長い合言葉をひねり出すのに余念が掛かった。パチュリーが知る限り、1日に最低2回は合言葉が変わっている。何人かの生徒は『カドガン卿』にうんざりしてもっとマシな人に変えてくれと監督生のパーシーに訴えたが、『太った婦人』の二の舞いになる事を恐れて誰もやってくれないのでその要求は却下された。

 そしてある日の事、パチュリーはいつも通り次の「闇の魔術に対する防衛術」の授業に遅れないよう、皆より一足早く教室に入った。いつもならばルーピン教授が「やぁ、ミス・ノーレッジ」なんて笑顔で挨拶しながら今日行われる授業に必要な魔法生物を準備しているのだが、今日はルーピン教授も魔法生物も姿は無く、代わりにスネイプ先生が教壇に立っていた。

 

 

「あら?スネイプ先生。今日は貴方が授業を?」

 

「ルーピン先生は今日は気分が悪く、教えられないとのことで、我輩が教える事となった」

 

 

 パチュリーは「そう」とルーピン教授がいない事に納得すると、いつも通り机に座り、授業が始まるまで魔法書を読む。やがてガヤガヤと楽しげな雰囲気のグリフィンドール生徒達が教室に入り、教壇に立つスネイプ先生を見つけると、さっきまでの騒がしさは消え、皆黙って席に着いた。そして授業が時間通りに始まってから10分後、教室の扉が開いて荒い息をしたハリーが入って来た。遅刻である。

 

 

「遅れてすみません!ルーピン先生、僕・・・・!?」

 

「授業は10分前に始まったぞ、ポッター。であるからグリフィンドールは10点減点とする。座れ」

 

 

 スネイプ先生はハリーに座るよう命じたが、ハリーはその場から動かなかった。

 

 

「ルーピン先生は?ルーピン先生はどうなさったんですか?」

 

「彼は今日は気分が悪く、教えられないとのこと。それより我輩は座れと言ったはずだが?グリフィンドール、さらに5点減点。もう一度我輩に『座れ』と言わせたら、50点減点とする」

 

 

 そこまで言われてやっとハリーはのろのろと自分の席に着いた。ハリーが座ったのを確認すると、スネイプはクラスをズイと見回した。

 

 

「ポッターが邪魔をする前に話していた事であるが、ルーピン先生はこれまでどのような内容を教えたのか、まったく記録を残していないからして・・・・」

 

「先生、これまでやったのは、まね妖怪(ボガート)赤帽鬼(レッドキャップ)河童(かっぱ)水魔(グリンデロー)です。これからやる予定だったのは「黙れ」ッ・・・」

 

 

スネイプが話しているのを遮ってこれまでやった授業内容を一気に答えたハーマイオニーは、スネイプに睨まれて口を閉じた。

 

 

「教えてくれと言ったわけではない。我輩はただ、ルーピン先生のだらしなさを指摘しただけである」

 

「ルーピン先生はこれまでの『闇の魔術に対する防衛術』の先生の中で1番よい先生です!!」

 

 

 トーマスの勇敢な発言を、クラス中(パチュリーを除く)がガヤガヤと支持した。だがスネイプ先生の顔が一層威嚇的になったのでシンと静まり返る。

 

 

「点のあまいことよ。ルーピンは諸君に対して著しく厳しさに欠ける……赤帽鬼や水魔など、一年坊主でもできることだろう。我々が今日学ぶのは・・・・人狼(じんろう)だ」

 

 

 スネイプ先生は教科書を1番後ろまでページをめくり、ニヤリと薄く笑みを浮かべた。これにハーマイオニーは我慢する事が出来ず再び発言する。

 

 

「でも、先生。まだ狼人間までやる予定ではありません。これからやる予定なのは、ヒンキーパンクで・・・!」

 

「ミス・グレンジャー。この授業は我輩が教えているのであり、君ではない筈だが?その我輩が、諸君に394ページをめくるようにと言っているのだ。我輩が見たところ、大人しくめくっているのはミス・ノーレッジのみだが?」

 

 

 それを聞いてクラスの全員は「嘘だろ!?」とでも言いたげな表情でパチュリーの方を見た。実際パチュリーは既に教科書を開いており、人狼についての部分を黙読し始めていた。

 ロックハートの授業で滅茶苦茶不機嫌だったパチュリーなら今回の授業もまともに受けないだろうとハリー達は思っていたが、アレはロックハートそのものが授業をせずに自慢話をしていたからであって、やる予定の場所が変わった程度ではパチュリーは何も言わないのである。彼女の隣の机に座っていたロンはパチュリーを裏切り者を見るかのような目で見ていた。

 その後、人狼の見分け方についての問題でスネイプ先生がまた当てられていないのに発言したハーマイオニーの答えを「知ったかぶりだ」と言って更に5点減点したり、更にそのことに怒ったロンがスネイプ先生に口答えして処罰を受けたりしたが、パチュリーは普段と変わらずの様子で授業を終えた。

 

 

 

 

 

 

 翌日、クィディッチの試合が行われるこの日は最悪の天気と言っても過言ではなかった。風はまともに立っていられない程吹き荒れ、雷鳴が轟き、激しい雨が降り続けているが、ホグワーツでは大人気イベントの1つであるクィディッチの試合を観るために今回も沢山の生徒達が競技場に足を運んだ。こんな天気でもクィディッチは予定通り開催されるからだ。

 だが今回は非常に珍しい事に、今回は観客席ではないが、競技場の端に難しい顔をしている『幽霊マント』を纏ったパチュリーが立っていた。マントや帽子が全く濡れていないのでおそらくは防水の魔法を使っているのだろう。

 

 

(今の所は特に問題は無し。でもこれから何が起こるかが問題ね……)

 

 

 パチュリーはジッと上空を飛び回るグリフィンドールとハッフルパフの選手達・・・正確には土砂降りの中必死に目を凝らして金のスニッチを探しているハリーを見ながら4日前の事を思い出していた。

 実は今から4日前、授業を終えて自室に戻ったパチュリーは、暇潰しに水晶による占いをしていた。その時水晶に映ったのは、土砂降りの雨の中、意識を失って箒から落ちて重傷を負ったハリーの姿だった。

 

 

「(アレが今日の出来事を予知したなら、ハリーはこれから箒から落ちて重傷を負う。原因は分からないけれど、可能性としては雷に撃たれる。ブラッジャーが運悪く頭部に直撃して気絶。スリザリン寮生の悪質な悪戯による妨害ってところかしらね)はぁ〜・・・本当なら、今頃部屋で魔法書を読みながらこぁと一緒にお茶を飲んでいたのに。こんな事なら、暇潰しで占いなんてするんじゃなかったわね。失敗だわ・・・・・あら?」

 

 

 パチュリーが過去の過ちに深い溜息を吐いていると、急に辺りの気温が下がり始め、背後から何者かの気配を感じた。念の為自作の魔法書を広げて警戒しながらゆっくりと振り向くと、そこには一体の吸魂鬼(ディメンター)が亡霊の様に佇んでいた。マントの能力で姿は見えない筈だが、やはりディメンターにはバレてしまっている様だ。

 

 

「・・・・・・・・」

 

「あなたもしかして・・・・・列車の中にいた?」

 

 

 ジッとパチュリーを見続けるその様子に見覚えがあったパチュリーは、ホグワーツ特急でハリーを気絶させたディメンターではないかと思い、話し掛けた。ディメンターは言葉こそ返さなかったが、ゆっくりと縦に頷いた。するとディメンターはス〜ッと空中を滑る様にしてパチュリーの方へ近付いて来た。

 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・ふむ。列車の中ではあまりよく見れなかったけれど、面白い体をしているのね」

 

 

 パチュリーは近寄って来たディメンターの体をじっくりと観察し、更には実際にディメンターの体に触れたりしだした。魔法界にいる魔法使いや魔女達が今のパチュリーを見たら悲鳴を上げてディメンターから引き剥がすだろうが、競技場にいる者達は現在上空で行われているクィディッチの試合に釘付けなので、そんな事は起こらない。

 しばらく興味深げに観察を続けていたパチュリーであったが、ふとある事に気が付いた。

 

 

(・・・・・ちょっと待って。どうしてホグワーツの出入り口を警備している筈のディメンターがこんな所にいるの?この子が私に会いに来たというのなら、もっと前に私に接触している筈)

 

 

 するとパチュリーはディメンターについて書かれていた本のとある一文を思い出した。『ディメンターは目が見えず、人間の幸福感や希望などのプラスの感情に反応する』という一文を・・・・。

 

 

「ッ!!まさか!!?」

 

 

 パチュリーは嫌な予感がしてディメンターから競技場上空に目を向けた。パチュリーの予感は的中し、上空には少なくとも100以上のディメンター達が漂っており、その中心には金のスニッチを追い掛けていたらしいハリーの姿が見えた。競技場にいる生徒達はディメンター達を指差して騒めき、先生達は驚愕に顔を染め、フーチ先生は試合を中止する為にホイッスルを鳴らしている。

 そう、ディメンター達は、この競技場に集まった生徒達の興奮した感情に反応して自分の仕事を忘れてやって来たのだ。ハリーはディメンター達の間を縫う様にして飛び回っていたが、やがて気を失ったのか力無く箒から滑り落ち、地面に向かって頭から落下した。

 

 

「不味い!!」

 

 

 パチュリーは慌ててハリーの落下地点の地面に向けて、以前ネビルが箒から落下した時と同じ様に魔法書を開き、魔法を発動させた。ハリーの落下地点に緑色の魔法陣が出現し、嵐に負けない程の突風が吹いた。だが、流石に落ちた高さがあり過ぎた様で、落下スピードは少ししか落ちなかった。

 

 

「だったら!!」

 

 

 パチュリーは魔法陣から吹く風を更に強くした。普通ならば成人男性が10m以上は中に浮く程の突風。正直不自然すぎる光景になってしまうが、今パチュリーの姿は誰にも見えないので、誰がやったかまでは先生達も分からないだろう。ハリーは風を受けてゆっくりと地面に落ち、選手達は大慌てでハリーの下に駆け寄った。パチュリーは続いて上空のディメンターをどうにかしようと魔法書を開いたが、先生達が座っているスタンドから銀色の光が空に飛んで行き、ディメンターを追い払った。

 

 

「守護霊の呪文・・・この威力と魔力はダンブルドア先生ね?どうやらハリーは生きているみたいだし、私はどこかに飛んで行ったハリーの箒を探しに行きましょうか」

 

 

 パチュリーはホッと息を吐くと踵を返して競技場を後にした。あのディメンターはダンブルドア先生の呪文で居なくなっていたが、機会があればまた会うのもいいかも知れないとパチュリーは思っていた。

 

 

 

 

 

 

 ハリーの箒・・・ニンバス2000はパチュリーが思ったより簡単に見つかった。だがパチュリーは顔をひくつかせ、箒を持ってハリーが運び込まれた医務室に入る事が出来ず、扉の前で佇んでいた。

 

 

「ど、どうしましょう?コレ・・・」

 

 

 何故ならパチュリーの手には粉々に砕かれまくった元ニンバス2000の見るも無残な姿となった木片が入った袋があった。実はハリーが箒から落ちた後、この箒は選りに選ってちょっとぶつかるだけで暴れ回る凶暴な暴れ柳にぶつかり、この様な変わり果てた姿になってしまったのだ。

 パチュリーなら簡単に直せるのではないか?と思われるだろうが、普通の箒を直すならともかく、特別な工程で作られている魔法の箒を直すとなると、どうしても性能が落ちてしまうのだ。真っ二つに折られたならまだなんとかなったが、こうも粉々にさせると精々5m程の高さしか飛ばなくなってしまうのだ。

 

 

「はぁ〜〜〜・・・行くしかないわね」

 

 

 パチュリーは気を引き締めて医務室の扉を開ける。中では泥だらけになっているグリフィンドールのクィディッチ選手達とロンとハーマイオニーがハリーが寝ているベッドを取り囲んでいた。ハリーはもう目が覚めているらしく、パチュリーに話し掛けた。

 

 

「あ、パチュリー。君もお見舞いに来てくれたの?」

 

「えっと・・・貴方の箒を見つけて持って来たのだけれど・・・」

 

「本当かい!?よかった!何処を探しても見つからないから明日改めて探しに行こうと思ってたんだ!それで?僕の箒は何処?」

 

 

 ハリーはパチュリーの「箒を見つけて持って来た」という言葉を聞いて顔を明るくした。その笑顔を見てパチュリーは非常に申し訳なく感じ、つい顔をそらしてしまった。いつもと様子が違うパチュリーを見て、ハーマイオニーは首を傾げた。

 

 

「パチュリー?具合でも悪いの?それにハリーの箒は?」

 

「いやその・・・・こ、コレ・・・」

 

 

 パチュリーは顔を合わせない様に必死に明後日の方向を向きながら袋の中身をハリー達に見せた。中に入っていたニンバスの亡骸を見てハーマイオニー達は絶句し、ハリーは先程の明るさは完全に消え失せ、絶望の表情を浮かべた。

パチュリーは非常に申し訳ない気持ちに陥った。

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