「なんてことなの!!」
ハーマイオニーの絶叫に、ルーピン先生はシリウスを離し、彼女の方を見た。ハーマイオニーは床から腰を上げ、目をランランと光らせ、ルーピン先生を指差した。
「先生も──先生も──!その人とグルなんだわ!」
「ハーマイオニー、落ち着きなさい──」
「私、誰にも言わなかったのに!信じてたのに!」
ハーマイオニーは宥めようとするルーピン先生の言葉を無視して叫び続ける。やがてハリーの体は震え出した。殺されそうになっている恐怖からでは無く、信じていた先生に裏切られたと言う新たな怒りからだった。
「僕も先生を信じてた・・・・それなのに、先生はずっとブラックの友達だったんだ!」
「それは違う!この十二年間、わたしはシリウスの友ではなかった。しかし、今はそうだ・・・頼むから、説明させてくれ・・・・」
「だめよハリー!騙されないで!この人もパチュリーと一緒にブラックが城に入る手引きをしたのよ!この人も貴方の死を願ってるんだわ!この人、狼人間なのよ!!」
痛い様な沈黙が流れた。いまや全ての目がルーピン先生に集まっており、ルーピン先生は青ざめてはいたが、驚く程落ち着いた様子だった。
パチュリーは小さく溜め息を吐くと、ハーマイオニーに話しかけた。
「ハーマイオニー、貴女の言葉は三問中一問しか合ってないわ。確かに彼は狼人間だし、それは間違ってないわ。でも手引きをしたのは私で、ルーピン先生は何もしていないわ。それに今見た様子だと、シリウスと同じでハリーの死を願ってないわよ?もちろん私もね」
実はパチュリーはかなり前にルーピン先生が狼人間だと見抜いていた。と言ってもそれは本当に偶然で、偶々夜に改良した探索魔法の試運転をした時に、スネイプ先生が脱狼薬を持ってルーピン先生の部屋に入って行ったのを探知したので、状況的にルーピン先生が狼人間だと分かったのである。
「その口振りだと、やはり君は気付いていたのか・・・・確かにわたしは狼人間だ。それは否定しない。だがわたしはシリウスを手引きしていないし、ハリーの死を望んでなんかいない!」
「やっぱりそうだったんだ!パチュリーもルーピン先生もシリウス・ブラックの仲間だったんだ!この裏切り者め!僕を殺す気だったんだな!?」
怒りの余り今の話を聞いていなかったのか、ハリーはパチュリーとルーピン先生を睨み付けながら怒鳴った。そんな彼を見てパチュリーとルーピン先生は肩を竦めた。
「ハリー、いいか?よく聞くんだ。君は大きな誤解をしている。わたしは君を殺そうなんて思っていない。それにわたしが狼人間だと言う事は先生方は知っている。ダンブルドア先生は、わたしが信用出来る教師だと他の先生方を説得してくれたんだ」
「そして、ダンブルドアは間違っていたんだ!!」
「落ち着くんだ。ミス・ノーレッジ、杖を仕舞ってハリー達を出してあげてくれ。シリウス、君も杖をハリー達に返すんだ」
ルーピン先生にそう言われ、パチュリーは仕方なく結界を解除して杖を仕舞った。シリウスも3人に杖を投げ返し、ルーピン先生は「ほーら」とハリー達に見える様に自分の杖をベルトに挟み込んだ。
「君達には武器がある。わたし達は丸腰だ。頼む、わたし達の話を聞いてくれるかい?」
杖を返された3人は訳が分からないと言った表情になった。取り敢えず杖を拾った3人はそれぞれ杖先をパチュリー達に向け、罠かと警戒しつつも、一先ずルーピン先生達の話を聞く事にした。
そしてルーピン先生とシリウスは、ハリー達に分かりやすい様に、ゆっくりと、1つずつ話し始めた。
ルーピン先生がこの『叫びの屋敷』へ来れた理由。
自分達が『忍びの地図』と言うパチュリーも少し興味が湧いた魔道具の制作者である事。
ロンのスキャバーズが『
その正体がピーター・ペティグリューと言う男で、そいつがシリウスに濡れ衣を着せた事。
ルーピン先生とシリウスは1つずつ説明しながら、時折りハリー達から出される質問に答えて行った。やがて一通りの説明を終えると、ルーピン先生は今度はパチュリーの方を向いた。
「次は君が話してくれ。わたしも君がどう言った経緯でシリウスの協力者になったのかは分からないからね」
「・・・・別に答えても良いのだけれど」
パチュリーはそう言うとチラリとルーピン先生の背後の壁の辺りを見た。ハリー達も何かあるのか?と壁の方を向くが、特に何かある訳でも無い。
「・・・・うん、そうね。先生には悪いけれど、しばらく寝てて貰いましょうか」
「ッ!エクスペr「お休みなさい」う・・・ぐぅ」
何処からか男の声がしたかと思うと、次の瞬間にはドスン!と言う音が床から聞こえ、パチュリーが見ていた壁の前の床で埃が舞い上がった。
パチュリー以外の全員が何が何だか分からず固まっていると、パチュリーはその音がした辺りに歩み寄って手を伸ばした。そして何かを掴む動作をすると、そのまま握った手を引いた。
「ス、スネイプ先生!?」
するとそこに眠っているスネイプ先生が現れた。パチュリーの手にはハリーの『透明マント』が握られている。
「取り敢えずコレ返すわね」
「え、あ・・・・どうも」
パチュリーが『透明マント』を差し出すと、ハリーはオロオロしつつも受け取った。
「私がシリウスと初めて会ったのは・・・」
「いやいやいやいや・・・ちょっと待ってくれ」
まるで何事も無かったかの様に話し始めたパチュリーを、ルーピン先生が止めた。
「どうかしました?」
「いや、『どうかしました?』じゃないよミス・ノーレッジ。色々言いたい事はあるが、取り敢えず・・・・スネイプ先生はいつからここに?」
「ルーピン先生がこの部屋に飛び込んで来たすぐ後から」
「今の魔法は杖を使わなかった様に見えたのだが?」
「簡単な眠りの魔法くらい杖が無くても使える人は居るでしょう?」
「よく『透明マント』を着たスネイプ先生が居る事に気付けたね?」
「何処かのバカ犬が私が作った『透明マント』でミスした時から常に目と耳に魔法を掛けていたので」
そこまで言うとルーピン先生は顔に手を当てながら天を仰いだ。シリウスはそんなルーピン先生の肩をポンポンと優しく叩いた。
「分かるぞ、リーマス。でも彼女の異常さはこんなものじゃないぞ?」
「・・・と言う事は、他にも何かあるのかい?」
「ディメンターにも見つからない高性能の『透明マント』を貸してもらった。彼女が作った試作品らしいがな」
「他の先生方が彼女を『優秀過ぎる程優秀な魔女』と言っていた意味が今分かった気がするよ」
何やら疲れた様子で話す2人をパチュリーはしばらく見ていたが、もう良いだろうと自分とシリウスが初めて会った時の事を話した。小悪魔の事は言わない方が楽だったのだが、既にシリウスが小悪魔が作った料理を食べていた事を喋ってしまったので、なるべく辻褄が合う様にしながら事実を捻じ曲げて話した。
大きく変えた点として、小悪魔は家から『姿現し』でここへ料理を運び、パチュリーはハリー達が通って来た抜け道を通ってここへ通っていた事にした。そうしないとホグワーツの自室でいつも一緒に過ごしている事がバレて、後々少し面倒な事になりそうだったからだ。扉に掛けた認識阻害の魔法のお陰で、運良く1人部屋だが空きが無いと先生方が勘違いしているのに、これで調べられて別の生徒と同室になるなんて事は避けたい。
「さて、私の話はこれで終わり。それで?この後はどうするのかしら?」
「ネズミを元の姿に戻す。そうすればハリー達も納得するだろう。ロン、ネズミを渡してくれ」
ルーピン先生はロンにネズミを渡すよう言うが、ロンはネズミに化けたピーターが入っているポケットを押さえながら、数歩後退った。
「冗談はやめてくれ!スキャバーズなんかに手を下す為に、態々アズカバンを脱獄したって言うのかい?ネズミなんか何万匹もいるじゃないか!何でスキャバーズだって分かるんだよ!」
「・・・確かに、それはわたしも疑問だった。シリウス、君はあいつの居場所をどうやって見つけ出したんだい?」
ルーピン先生が問い掛けると、シリウスはローブから例のロンの家族の写真が載っている『日刊予言者新聞』の切れ端を取り出し、それを突き出してみんなに見せた。
「去年、アズカバンの視察に来たファッジがくれた新聞だ。ピーターがそこに居た・・・見間違えたりしない。こいつが変身するのを何回見たと思う?」
「ロン、貴方のスキャバーズ、指が一本足りないわよね?それにクマネズミは普通長くても3年で寿命で死ぬ筈なのに、スキャバーズは何年生きているのかしら?」
「ゆ、指は他のネズミと喧嘩したかなんかだよ!寿命だって、僕達がちゃんと世話してたから・・・・!」
ロンは青褪めた顔で首を横に振って、意地でも認めようとしない。いや、信じたくない様だった。
「はぁ・・・時間の無駄ね。ロン、今からスキャバーズの魔法を強制的に解くわ。服をダメにしたくなかったら、今すぐにスキャバーズを渡しなさい」
「う、動くな!パチュリー!」
杖を取り出してロンの方へ向けたパチュリーに、ハリー達は一斉に杖先を向けた。
「・・・・渡すつもりは無いって事でいいかしら?」
「幾ら君が相手でも、3対1ならこっちが有利だ!早くその杖を・・・」
「『解除』」
「「おい!?」」
何の躊躇いも無く杖を振ったパチュリーに、シリウスとルーピン先生は驚きの声を上げた。するとロンのポケットが一気に膨れ上がり、ビリビリと音を立てて破れて、色褪せた髪にネズミの様な尖った鼻と小さな目が特徴的な小柄な男がドスン!と音を立てて床に落ちた。
ハリー達は目を見開いて男から距離を取り、シリウスは殺気立って杖を抜き、ルーピン先生はそんなシリウスの杖を下に降ろさせつつ自分の杖に手を添えた。
「やあ、ピーター。しばらくだったね」
「リ、リーマス・・・シ、シリウス・・・・」
ピーターと呼ばれたその男は、キーキーとネズミ声でシリウス達の名を呼んだ。
「友よ・・・懐かしの友よ・・・・」
「この・・・ッ!!」
「落ち着け、シリウス!」
濡れ衣を着せたくせに自分を友と呼んだピーターにシリウスは今にも飛び掛かりそうだったが、ルーピン先生に止められた。
「さて、ピーター。君には話して貰いたい事がある。何を聞こうとしているかは、分かるね?」
「な、何の事だか・・・わたしにはさっぱりだ。リーマス・・・き、君はブラックの言う事を信じたりしないだろうね?あ、あいつは・・・わたしを殺そうとしたんだ!」
「あぁ、そう聞いていたよ。そこで二つ、三つ・・・すっきりさせておきたい事があるんだが、君がもし───」
ルーピン先生が続けて話そうとすると、突如としてピーターは叫び出した。自分は被害者だ!シリウスは自分を殺す為にやって来た!シリウスは『例のあの人』のスパイだ!自分は3年間ハリーに手を出さなかった!自分は何もやっていない!金切り声で必死にそう叫ぶピーターは、あまりにも怪し過ぎた。頻繁にこの部屋の出口を見ているのも、怪しさに拍車をかけていた。
やがて質問と言うより尋問に近い形で話は進み、自分の言葉が全く信用されていないと悟ったピーターは、今度は膝を折ってこの部屋に居る全員に自分を擁護してくれるよう必死に懇願し始めた。
「ロ、ロン!わたしは良い友達・・・良いペットだったろう?わたしを殺させないでくれ。情け深いご主人様・・・お願いだ・・・君はわたしの味方だろう?」
「自分のベッドにお前を寝かせていただなんて!」
ロンに拒絶されたピーターは、膝を折ったまま向きを変え、今度はハーマイオニーの方を向いた。
「優しいお嬢さん・・・賢いお嬢さん・・・貴女は──貴女ならそんな事させないでしょう?助けて・・・」
「近寄らないで!」
怯えきった顔で壁際まで下がったハーマイオニーを見て、ピーターは止めなく震えながら跪き、ハリーに向かってゆっくりと顔を上げた。
「ハリー・・・ハリー・・・君はお父さんに生き写しだ。そっくりだ。君のお父さんなら、わたしが殺される事を望まなかった筈だ・・・」
「ハリーに話し掛けるとは、どう言う神経だ!?どの面下げてハリーにジェームズの事を話してるんだ!?」
シリウスに怒鳴られて蹴飛ばされたピーターは、悲鳴を上げながら今度はパチュリーの前にやって来た。
「お、お嬢さん・・・聡明なお嬢さん。貴女は今まで会った魔女の中で1番天才だ。あ、貴女なら、これがどんなに間違っている事か分かるだろう?」
「・・・・・」
パチュリーは懇願するピーターを見て
「この
「パチュリー!?何を言ってるんだ!?」
「良いから、黙って見てなさい」
突然のパチュリーの行動にハリー達は驚きの声を上げるが、パチュリーにそう言われて、一先ずは様子を見守る事にした。
一方ピーターは余程焦っていたのか、明らかに怪しいその
「ほ、ほら!言われた通り貼ったぞ!た、助け『こんな事で助かるなら安いものだ。この娘を味方に付けて、隙を見て逃げ出そう』・・・へ?」
突然聞こえて来た自分の声に、ピーターはまるで石化したかの様に固まった。
『ネズミに変身出来さえすればこっちのモノだ。もう日が沈む。森へ逃げ込めばこいつ等は追って来れない』
ピーターはハッ!として自分の頬を押さえる。その声は自分の頬・・・正確には頬に貼った
「パ、パチュリー。この声って、もしかして・・・?」
「ご想像の通り、ピーター・ペティグリューの
そう言ってパチュリーはシートに残っている残りのシールをハリー達に見せた。
「ウィーズリー兄弟考案の『暴露シール』。顔の何処かにコレを貼ると、貼られた人間の本心や秘密をその人間の声でシールが話し始めるの」
「あの2人は何て物を君に作らせてたんだ!?」
ロンが自分の兄である双子に慄いている間にも、シールはピーターの心の声を喋り続ける。
『わたしは何も悪くない。わたしはご主人様の命令に従っただけだ。そうしなければわたしが殺されていた。ジェームズ達は自業自得だった。大人しくご主人様に従っていれば良かったものを』
「あ、あぁ・・・!止まれ、止まってくれ・・・・!」
ピーターは何とかシールを引き剥がそうとするが、シールはピッタリと引っ付いていて全く剥がれない。
『シリウスもシリウスだ。大人しくアズカバンでくたばっていれば良かったのに、脱獄してまでわたしを殺しに来るなんて』
「クソ!クソ!は、剥がれない・・・・!」
ガリガリと血が出る程シールが貼られた自分の頬を掻き毟るピーターに、ハリー達は怒りを込めた目を向ける。
『こんな事になるくらいなら、さっさとハリー・ポッターをぶっ殺しておけば良かったなぁ』
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
到頭ピーターはシールを自分の皮膚ごと剥がし、床に叩き付けるとドスンドスンと踏み付けた。ボロボロになって行くシールを見て、パチュリーは勿体無いと思った。
「そんな事しなくても、水を掛ければ簡単に剥がせたのだけど・・・・まぁ、良いわ。一応実験は成功したし」
「はぁ・・・!はぁ・・・!な、何て事を・・・!」
「それで?貴方達は彼をどうするのかしら?もちろん私は助けるなんて事はしないけど」
ハッ!とピーターはハリー達の方を向き、顔を真っ青にしてガタガタと震え始めた。
「ち、違う!今のはわたしの心の声じゃない!この娘が仕込んだ罠だ!この娘はブラックの共犯者なんだぞ!?」
「今更お前の言葉を信じると思ったのか?」
「お前は気付くべきだったな。ヴォルデモートがお前を殺さなければ、我々が殺すと」
シリウスとルーピン先生が肩を並べて立ち、ピーターに杖を向けた。ピーターは悲鳴を上げて後退り、ハーマイオニーは両手で顔を覆い、壁の方を向いた。
「ピーター、さらばだ」
「やめて!!」
今まさに魔法が放たれそうになっていたピーターの前に何故かハリーが立ち塞がり、杖に向き合った。
「殺しちゃダメだ。こいつは城まで連れて行って、僕達の手でディメンターに引き渡すんだ。こいつはアズカバンに行けば良い・・・・父さんだって、親友がこんな奴の為に殺人者になる事は、望まないと思う」
ハリーの言葉を聞いてシリウスとルーピン先生は互いに顔を見合わせ、それから2人同時に杖を下ろした。
「ハリー、君だけが決める権利がある。君の判断に従おう。しかし、もしピーターが変身したり、怪しい動きをすれば・・・やはり殺す。いいね?ハリー?」
コクリと頷くハリーを見て、ルーピン先生は杖から細い紐を出すとそれでピーターを拘束した。そして拘束した紐の先はルーピン先生とロンが持ち、シリウスが眠ったままのスネイプ先生を魔法で宙吊りにして運ぶ事になり、クルックシャンクスを先頭にみんなで抜け道のトンネルを進んだ。
「そう言えば、貴方いつからクルックシャンクスと知り合ったの?」
瓶洗いブラシの様な尻尾を誇らしげに上げて先頭を進むクルックシャンクスを見ながら、パチュリーがシリウスに聞いた。シリウスはそう言えば話してなかったなと、自分とクルックシャンクスの事を話し始めた。
「実はまだ犬に変身してホグワーツに出入りしてた時に、すぐに正体を見破られてね。ピーターの事にも気付いていて、私の所へピーターを連れて来ようとしていたんだ。とても賢い猫だよ。ピーターを食べたって思われていた猫があの子だとは思わなかったがね」
「へぇ・・・『
「おいおい・・・」
「・・・・・冗談よ」
冗談に聞こえないぞとシリウス達はジト目でパチュリーを見た。心なしかクルックシャンクスの足が速くなった気がするのは気のせいだろうか?
「あぁ、そうだ。ハリー、ペティグリューを引き渡した後の事なんだが・・・・私の汚名が晴れたら、その・・・・一緒に、暮らさないか?」
「・・・え?」
しばらく歩いていると、思い出したかの様にシリウスがハリーに話し掛けた。
「知っているかも知れないが、私は君の名付け親だ。つまり・・・君の両親が私を君の後見人に決めたのだ。もし自分達の身に何かあればと・・・」
「ダーズリー一家と別れて、貴方と暮らすの?」
ハリーは思わず頭を上げて天井から突き出している岩にぶつけた。しかしその顔には笑みが溢れている。
「勿論、君がこのままおじさん達と一緒に暮らしたいなら、別にいいのだが・・・・」
「とんでもない!ダーズリーの所なんか出たいです!住む家はありますか!?僕、いつ引っ越せますか!?」
興奮した様子で話すハリーを、シリウスはくるりと振り返って見た。その際スネイプ先生の頭が天井をゴリゴリ擦っていたが、気にも留めない様子だ。
「そうしたいのかい?本気で?」
「はい!本気です!」
その返事を聞いてげっそりしていたシリウスの顔が、急に笑顔になった。それから誰も話さずに出口に辿り着き、暴れ柳の根元から地上に出た。校庭は既に日が沈んで真っ暗になっていた。
「変な真似はするなよ?ピーター」
そう脅す様に言ってピーターの胸に杖を突き付けるルーピン先生とロン。これで一件落着だと誰もが思っていると、夜の校庭が一気に明るくなった。全員が慌てて空を見上げると、そこには見事な満月が浮かんでいた。
突然ルーピン先生の体がブルブルと震え出し、恐ろしい唸り声を上げ始めた。
「ま、まさか!リーマス!薬を飲んでいないのか!?」
「ロン!ルーピン先生から離れて!先生は今日、脱狼薬を飲んでいないんだわ!」
ルーピン先生の姿がみるみるうちに変化して行く。身長が伸び、背中は盛り上がり、全身に毛が生え、手は丸まって鉤爪が生えた。顔も口が伸びて牙が生え始めた。
「逃げろ!逃げるんだ!ここは私に任せて!───早く逃げるんだ!!」
「今日はとことん付いてないわね!」
シリウスは黒い犬に変身し、パチュリーは魔法書を開いて構えた。そしてついに────、
「アォォオオォォォォォンッ!!」
少し長くなってしまいました。