七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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夜の決闘の罠とハロウィンの夜

 飛行訓練があった日の夜。夕食を終え、パチュリーは寮の談話室の椅子に座って作成中の魔法書にペンを走らせていた。やはりハリーはクィディッチのシーカーに選ばれたらしく、久々に参加した大広間の夕食でハリーとロン達が盛り上がっていた。久々にとは普段パチュリーは自室で小悪魔の料理を食べていたからだ。その後ハリー達は原作通りにマルフォイ達とトロフィー室で決闘する事になった。

 でも普通に考えて罠だって分かるわよねぇ?正直止まるとは思ってないけど忠告だけはしておくためにいるけど・・・来たわね。

パチュリーが書く手を止めて螺旋階段から降りて来た2人の人影に視線を向けた。予想通りハリーとロンだ。

 

 

「やっぱりマルフォイ達との決闘に行くのね?2人共」

 

「ッ!!?パチュリー!!まだ起きてたの!!?」

 

「なんの用だ裏切り者め!先生にでもチクる気か!?」

 

 

 2人はパチュリーを見つけると驚愕した。もう全員寝ていると思ったのだろうが、実を言うとまだ起きている人はいた。その為こっそりパチュリーが眠りの魔法を軽めにかけて全員眠らしたのだ。

 

 

「別に何も言わないし止めないわ。私はただ忠告に来たのよ。・・・ドラコ・マルフォイは決闘には来ないわ」

 

「フンッ!どうせそうやって来なかった僕等を明日の朝コケにするんだろう?行こうぜハリー」

 

 

 ロンがハリーを引っ張って肖像画の穴に入ろうとしていると今度はハーマイオニーがランプを持って現れた。ロンは今度はハーマイオニーに怒り始めるが、埒があかないと肖像画の穴を潜り抜けた。ハーマイオニーは怒りながらハリー達を追いかけて外に出て行った。

 あ〜らら行っちゃった。まぁ戻ってくるのを待ちましょう。

 私が再び魔法書に色々書き足している事約1、2時間。再び肖像画の穴が開いてハリーとロン、ハーマイオニー、そしてネビルが息を切らしながら転がり込んで来た。私は本をパタンと閉じて4人の元に近づいて行く。

 

 

「あらお帰りなさい。ドラコ達はちゃんと来たかしら?」

 

「はぁ・・はぁ・・パ、パチュリー・・君は本当にいったいどっちの味方なんだい?マルフォイの奴の味方じゃないのか?」

 

「まず私は誰の味方になったつもりはないわよ。そもそも貴方達が勝手にやり始めた勢力争いに私を加えないでほしいわね」

 

 

 その言葉にハリーは思う所があったのか押し黙り、ロンも申し訳なさそうに視線を逸らし、違う話題に変えた。やはりあの部屋に入ったようね。そんな2人をハーマイオニーが怒り睨みつけながら女子寮に入って行った。私達はその様子を見送った。

 

 

 

 

 

 

 あれからかなりの時間が過ぎた。ハリーにはニンバス2000とか言う箒が与えられ、ロンはパチュリーへの認識を考え直してましな対応を取り、ハリー達とマルフォイとの仲が一目で分かる程悪くなった。ニンバスを手に入れてから新たにシーカーとなったハリーは週3回クィディッチの練習をして居た。そしてハロウィンの日がやって来た。今パチュリー達は『妖精魔法』の授業に参加している。担当教師のフリットウィック先生がそろそろ物を飛ばす練習をしましょうと言い出したので生徒達はワクワクとしながら授業を受けていた。

 

 

「ビューン、ヒョイですよ。呪文を正確に、これもまた大切ですよ。覚えてますね?あの魔法使いバルッフィオは『f』ではなく『s』の発音をしたため、気がついたら自分は床に寝転んでバッファローが自分の胸に乗っかっていましたね」

 

 

 いったいどんな呪文の間違い方をしたらそんな状況になるのか非常に興味があったが、今は授業に集中することにした。とは言っても自分は既に羽根ペンを宙に浮かせているので隣にいるペアのネビルに教えている。

 

 

「そうよ。じゃ、もう少し早く言ってみなさい」

 

「うん。ウィンガ〜ディアム、レビオ〜サ!」

 

 

 ネビルが杖を振りながら唱えるも少し羽根ペンが動いただけだった。パチュリーの教えがいいのかネビルの記憶力がいいのか・・・絶対前者がいいようで、ネビルは着々と魔法が使えていった。

 

 

「惜しいわね。レビじゃなくてレヴィよ。そこに注意しながら言ってみなさい。杖は小振りに振ること」

 

「うん、分かった。ウィンガ〜ディアム、レヴィオ〜サ!」

 

 

 するとネビルの羽根ペンは宙を舞い始め、ネビル自身は成功した事に感激し、他の生徒達はネビルが成功した事に驚愕していた。パチュリーはそれに満足し、飛ばした羽根ペンにプラスして制作中の魔法書を飛ばして空中でサラサラと書いていく。その様子にフリットウィック先生は大喜びしてグリフィンドールに5点与えてくれた。

 授業が終わり、パチュリーが魔法書を読みながら歩いていると後ろからハーマイオニーが足早に追い越して行った。しかも涙を流しながら。何事かと振り返るとハリーとロンの2人と目が合った。

 

 

「・・・・・・貴方達、幾ら何でも女の子を泣かすのはどうかと思うわよ?」

 

「い、いや!別に僕は何も言ってないよ!!」

 

「となるとロン貴方ね?全く貴方達は何してるのよ」

 

 

 パチュリーが呆れた様子で溜息を吐いているとロンが噛み付いてきたがパチュリーはのらりくらりと受け流し次の授業を受けに行った。結局、その後の授業にハーマイオニーが参加する事はなく、他の生徒達の話によると女子トイレで泣いていたらしい。そして今パチュリーはハロウィンの飾り付けがされた大広間にてパンプキンパイを食べていた。

 

 

「確か今日よね?学校内にトロールが現れるのは?私はどうしようかしらねぇ?ネビルの時とかスネイプ先生の時みたいに多少原作が違う所があるから迷うのよねぇ・・・一応様子だけでも見に行きましょうか。あ、このパイ美味しいわね。今度こぁにパイを焼いてもらいましょう」

 

 

 パチュリーが美味しそうにパンプキンパイを食べていると大広間の扉が開いて慌てた様子でクィレル先生が入って来た。パチュリーはクィレル先生が何者か知っているので中々見事な演技力だなと思いつつ眺めているが、生徒達は恐怖に引きつった顔のクィレル先生に驚いている。

 

 

「トロールが・・・地下室に・・・・お知らせしなくてはと思って・・・・」

 

 

 クィレル先生はその場でバッタリと気絶した。生徒達はそれに大混乱した。そこでダンブルドア先生が杖先から紫の爆竹を何度か鳴らしてやっと静かになった。大広間にダンブルドア先生の声が重々しく響く。

 

 

「監督生よ。すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように」

 

 

 その言葉に各寮の監督生達は自分の寮の生徒達を引率し始め、次々と順番に大広間を出て行った。パチュリーも途中までついて行ったが、隙を見て姿を消してハーマイオニー捜索を開始した。走っているより飛んだ方が速いので廊下から10cm程浮いて滑る様に飛んで探す。しばらく飛んでいると正面からこちらに向かって走ってくる2つの人影を見つけた。ハリーとロンだ。2人はやってやったぜと言わんばかりに清々しい笑顔だったが、パチュリーを見つけてちょっと歪んだ。

 

 

「貴方達、無事だったのね?」

 

「あぁ、ハーマイオニーを探しに来たんだ。そしたらトロールが現れて部屋に入って行ったから、鍵をかけて閉じ込めたんだ!」

 

「どうだいパチュリー?君にこんな頭のいい方法が思いつくかい?」

 

 

 ロンは自慢げにパチュリーを挑発するが、パチュリーは相変わらず無表情・・・いや、少し苦々しい表情で質問した。

 

 

「貴方達ちゃんとそこがなんの部屋か確認して閉じ込めたの?」

 

「?なんでそんな事を聞くのさ?確認はしてないけど・・・」

 

「この先にある部屋で鍵がついている部屋はハーマイオニーがいる女子トイレしか知らないからよ・・・」

 

 

 パチュリーの返事が終わった時、かん高い恐怖で立ちすくんだ様な女性の悲鳴が鳴り響き、ハリーとロンはしまった!と言いたげな表情で振り返った。パチュリーは頭を抱えながら女子トイレを目指した。

 

 

「分かっていたけど・・・本当にロクな事しないわね貴方達は!!」

 

「うぐっ!か、返す言葉が見つからないよ」

 

「安心しろよハリー。僕もだ」

 

「安心してるんじゃないわよバカコンビ」

 

「「ごめんなさい・・・」」

 

 

 パチュリー達は女子トイレに到着し扉を破壊しながら中に入る。パチュリーは臭って来た悪臭に顔を歪めた。目の前には4m程のトロールがおり、ハーマイオニーは奥の方の壁に張り付いて縮み上がっている。トロールは次々と洗面台をなぎ倒しながらハーマイオニーに近付いて行く。

 

 

「こっちに引きつけろ!!」

 

 

 ハリーが無我夢中にロンに指示を出しながら近くに落ちていた蛇口をトロールに投げつけた。蛇口は壁にぶつかり音を立てて落ちた。トロールは立ち止まってなんの音かとこちらを見た。すると今度は反対側に回ったロンが鉄パイプを投げつけながら叫んだ。

 

 

「やーい!ウスノロ!」

 

「それ絶対このトロールは意味を分かってないわよ?」

 

 

 パチュリーの正確な突っ込みが入るも叫び声は聞こえていた様で今度はロンの方にトロールが視線を向ける。その内にハリーがハーマイオニーを連れ出そうとするもハーマイオニーは固まったまま動けないでいた。その時のハリーの声に反応してロンに向かって棍棒を振り上げた。そこにパチュリーの放った魔力を使った弾幕が数発命中し、よろよろと後ずさった。そこにハリーが何を思ったのかトロールの首に自分の腕を巻き付けた。その際ハリーの握っていた杖がトロールの鼻に突き刺さり、トロールはジタバタと暴れ始めた。ロンは自分の杖を取り出して1番最近習った魔法を唱えた。

 

 

「ウィンガ〜ディアム、レヴィオ〜サ!」

 

 

 ロンの呪文は成功し、トロールの手から棍棒が飛び出して空中高く飛び上がり、ゆっくり一回転してからちょうど棍棒を探して上を向いた持ち主であるトロールの頭に命中してトロールは倒れて気絶した。ハリーはプルプルと杖をトロールの鼻から抜きながら立ち上がり、ロンは杖を突き出したまま突っ立って、ハーマイオニーはしばらく固まっていたが、やがて口を開いた。

 

 

「ねぇこれ・・・・死んだの?」

 

「いいえ。息もあるし心臓も動いているから死んではいないわ。ただ気絶しているだけよ」

 

 

 パチュリーがトロールを調べ、ハリーがトロールの鼻から抜いた杖をトロールのズボンで拭いていると、破壊された扉からマクゴナガル先生とスネイプ先生、その後にクィレル先生が入って来た。しかしクィレル先生はトロールを見て弱々しく座り込んだ。

 

 

「いったい全体あなた方はどういうつもりなんですか!?殺されなかったのは運が良かった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」

 

 

 先生方の視線にハリー達はうつむいた。パチュリーはそんな視線を気にせず魔法書を開いて新しい魔法を書き足していく。すると暗がりから小さな声がした。

 

 

「マクゴナガル先生聞いてください・・・・3人共私を探しに来たんです」

 

「ミス・グレンジャー!!?」

 

 

 ハーマイオニーの声にマクゴナガル先生が驚いて視線を向ける。

 

 

「私がトロールを探しに来たんです。私・・・私1人でやっつけられると思いました。・・・・あの、本で読んでトロールについてはいろんな事を知っていたので・・・。もし3人が見つけてくれなかったら私、今頃死んでいました。3人共誰かを呼びに行く時間が無かったんです」

 

「まぁ、そういう事でしたら・・・・。ミス・グレンジャー、なんと愚かしい事を。たった1人で野生のトロールを捕まえようと考えるなんて、そんな事をどうして考えたのですか?」

 

 

 パチュリーは少しだけハーマイオニーを見直した。頭は良かったが必ずどこか抜けている彼女だったが中々勇気がある。流石はグリフィンドール寮生。

 

 

「ミス・グレンジャー、グリフィンドールから5点減点です。貴女には失望しました。怪我がないならグリフィンドール塔に戻った方が良いでしょう。生徒達がさっき中断したパーティーの続きをしています」

 

 

 ハーマイオニーはそれを聞いてトボトボトイレを出て帰って行った。そしてマクゴナガル先生がパチュリー達に向き直った時、パチュリーが心配していた事が起きた。

 

 

「先程も言いましたが・・・ッ!!?ポッター!ウィーズリー!」

 

「「・・・・ッ!!?」」

 

 

 突然トロールが目を覚まして近くにいた2人に殴りかかった。2人はそれに驚いて動けずにおり、マクゴナガル先生とスネイプ先生は反応が遅れ、クィレル先生は座り込んだまま動かない。普通ならこのままハリーとロンは殴り殺されるだろう。しかし・・・それは叶わなかった。

 

 

「スペルカード!火符『アグニシャイン』!!」

 

 

 パチュリーの魔法書がひとりでにパラパラと開き、炎の渦が発生してトロールを襲った。凄まじい熱風にハリーとロンは顔を腕で覆い、マクゴナガル先生とスネイプ先生はその火力に驚愕し、クィレル先生は信じられない物を見たかのように燃えるトロールを見ていた。パチュリーが本をパタンと閉じると炎も収まり、後には全身火傷し地に倒れ伏したトロールが残った。

 

 

「警戒していて良かったわ。手加減したから死んではいないはずよ」

 

「ミ、ミス・ノーレッジ?なんですか今の炎は?」

 

「私のオリジナル魔法です。さて、私はもう疲れたので戻ってもよろしいでしょうか?」

 

 

 先生方は驚愕した顔をしていたが、すぐに気を取り直してマクゴナガル先生が話を再開した。

 

 

「まぁ2人が助かったから感謝します。先程も言いましたが貴方達は運が良かった。でも大人の野生のトロールに勝て、ましてやあの様な炎を魔法で作る事が出来る魔法使いや魔女はそういません。よって2人に5点ずつ、ミス・ノーレッジには2人の命を助けたので10点をあげましょう。ダンブルドア先生に報告しておきます。帰ってよろしい」

 

 

 それを聞いてパチュリー達3人はグリフィンドール塔に戻った。戻る途中2人はパチュリーに礼を言ったが、パチュリーは「じゃ、貸し1ね?」と言って自分の部屋にサッサと戻って行った。翌日には、ハリーとロン、ハーマイオニーの3人が友人になっていた。パチュリーは魔法書を読みながら3人の様子を少し笑いながら離れた場所から眺めていた。


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