11時の学校にあるクィディッチ競技場。そこには現在学校中の生徒や先生達が観客席に詰めかけていた。双眼鏡を持ち出している生徒達も沢山いる。今日はスリザリンとグリフィンドールの選手達によるクィディッチの試合だった。勿論魔法書を読んだり新しい魔法の実験に力を入れていたパチュリーは試合には全く興味はなく、自室のトランクから直接大図書館に戻って実験をしようとしていたのだが・・・・
「なんで私はこんな場所にいるのかしら?ハーマイオニー・グレンジャー?」
「だ、だってハリーが出るクィディッチの試合よ?それにスリザリンの連中を叩きのめす光景になるかも知れない・・・分かったわ!謝る!謝るからその振り上げた分厚い魔法書を下ろしてちょうだい!」
ハーマイオニーは振り上げられた分厚い魔法書を見て直ぐにパチュリーに謝った。実はパチュリーは朝食を大広間で食べた帰りにハーマイオニーにバッタリ出くわし、いつかの列車内と同じ様に半強制的にクィディッチ競技場の観客席に連れてこられたのである。
「全く貴女は・・・いい加減に人の用事を考えないで強要するのはやめなさい。私は寮に戻って魔法書を読んだりしたかったのに・・・後何その旗は?」
「あぁ、いいだろこれ?スキャバーズがダメにしたシーツで作ったんだ。ハリーの奴ビックリするぜ?」
パチュリーはロンとディーンが持ち上げた『ハリー・ポッターを大統領に』と書かれた巨大な旗を見て絶対に自分ならやられたくないわねと真剣に思った。そうこうしていると真紅のローブを着たハリー達グリフィンドールの選手達と緑のローブを着たスリザリンの選手達がグラウンドに出て来た。審判はマダム・フーチが務めるらしい。
「さぁ、皆さん、正々堂々戦いましょう。よーい、箒に乗って」
マダム・フーチの指示に両チームが箒に跨る。そしてマダム・フーチの銀の笛が鳴り響き、15本の箒は宙を舞った。
「さて、クアッフルはたちまちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが取りました!なんて素晴らしいチェイサーでしょう!その上かなり魅力的であります」
「ジョーダン!!」
「失礼しました、先生」
双子のウィーズリーの仲間のリー・ジョーダンがマクゴナガル先生の監視の下実況放送をしている。
実はパチュリーは双子のウィーズリー達と仲が意外に良かったりする。切っ掛けはフレッドがパチュリーが落とした失敗作の魔道具を拾った事だ。偶々それがフレッドの悪戯にドストライクだった様で、それからフレッドとジョージの2人がパチュリーにこんな物を作ってくれと依頼しに来たりするのだ。普通ならパチュリーはそんな事無視するのだが、偶にパチュリーにとっても興味深い依頼が来るので引き受けており、そんな事が続いて今ではパチュリーも隠れ悪戯支持者になっていたりする。
と、そんな事を説明している内にグリフィンドールが先取点を取った。すると髭面の大柄の男性・・・ハグリッドがやって来た。
「ちょいと詰めてくれや」
「ハグリッド!」
「俺も小屋から見ておったんだが・・・やっぱり、観客の中で見るのとはまた違うのでな。スニッチはまだ現れんか?え?」
ハグリッドは双眼鏡を覗いてハリーを見た。ハリーは未だにスニッチを探している様で、グラウンドをキョロキョロ見渡している。その間もジョーダンの実況放送は続いている。
「チェイサーのベルを躱して、もの凄い勢いでゴ・・・・ちょっと待ってください。あれはスニッチか?」
その瞬間ハリーはスニッチを見つけた様で飛び回るスニッチを追って急降下した。スリザリンのシーカーも見つけた様で途端にシーカー同士の競争が始まった。周りの生徒達は猛スピードで飛ぶ両選手に興奮している。パチュリーもハリーの箒のスピードを見たが・・・・思ったより遅いと感じた。あれなら自分で飛んだ方が速い。そんな時、ハリーの行動をスリザリンの選手が邪魔をしてグリフィンドールの席から怒りの声が上がった。実況席でもジョーダンがスリザリンにボロクソ言い始めてマクゴナガル先生に叱られていた。
「あの野郎!ブラッジャーに叩き落とされちまえ!」
「ロン貴方段々口が悪くなってきてない?」
パチュリーがロンにそう突っ込みを入れ、再びハリーに視線を戻すと、ハリーは今にも箒に振り落とされそうになっていた。
「いったいハリーは何をしとるんだ?」
「私には箒が急に暴れ始めてハリーを落とそうとしている様に見えるけど?」
「フリントがぶつかった時、どうかしちゃったのかな?」
パチュリーは双眼鏡を覗くハグリッドに自分の意見を伝え、近くに座っていたシェーマスが呟くも、ハグリッドは否定した。
「そんなこたぁない。強力な闇の魔術以外、箒に悪さはできん。チビどもなんぞ、ニンバス2000にそんな手出しは出来ん」
ハグリッドのブルブル震える言葉を聞いてハーマイオニーが双眼鏡をひったくって観客席を見回した。しばらく何かを探していると息を飲んだ。
「思った通りだわ。スネイプよ・・・・見てごらんなさい」
ハーマイオニーに渡された双眼鏡を覗いてロンが見たのはハリーから目を離さずブツブツ絶え間無く呟くスネイプ先生の姿だった。
「何かしてる・・・・箒に呪いをかけてる」
「僕達、どうすりゃいいんだ?」
ロンの言葉を聞いてハーマイオニーが私に任せてと人混みに姿を消した。パチュリーもロンに「見てみろよ」と双眼鏡を渡されてスネイプ先生を見た。パチュリーは確かにブツブツ呪文を唱えているスネイプ先生を見つけたが、直ぐにスネイプが唱えているのは呪いの反対呪文だと見破った。パチュリーは視線を外してハリーを見てみるが、もうそろそろ限界のようだった。
「そうねぇ・・・・ロン?」
「なんだい?今は君に構っている場合じゃあ・・・・」
「貸し2に増やしときなさいよ?サービスしてあげるわ」
パチュリーがローブから真新しい間に合わせの杖を取り出してハリーの方に向けて2回程振る。パチュリーが使用したのは防御魔法だ。魔法は瞬時に発動されハリーの周りを透明な球体の様にバリアを張った。するとハリーの箒は正常に戻り、ハリーは箒に乗り直した。ロンがそれを見てパチュリーを驚愕の目で見る。その直後スネイプ先生のいる観客席から悲鳴が上がった。
・・・・ハーマイオニーったら。何やらかしたのよ。
その後体勢を立て直したハリーがスニッチを飲み込むと言う珍し過ぎる取り方をし、グリフィンドールが170対60でスリザリンに勝利した。
★
「お待たせしましたパチュリー様。紅茶です」
「ありがとうこぁ。・・・・フゥ、それにしてもハーマイオニーの性格はどうにかならないのかしら?」
クィディッチがグリフィンドールの勝利に終わってからグリフィンドールの談話室はお祭り騒ぎだ。そのお陰でパチュリーは自室に戻り、小悪魔の淹れた紅茶を味わいながら魔法書に新たな魔法を書き足している。後数十ページも書けば完成する。
「無理じゃないですかねぇ〜?話を聞く限り入学前からその性格だと思います。それだと難しいと思いますよ?」
「望み薄ね。こぁは最近どうかしら?」
「パチュリー様のお役に立てないので寂しく感じますねぇ。もうホグワーツ飛び級で卒業してヴワル大魔法図書館に帰りませんか?」
小悪魔がそんな事を言ってくる。やはりパチュリーと会える時間が激減した事にかなりの不満を抱いている様だ。
「そんな事言わないの。クリスマス休暇には向こうに帰れるから」
「むぅ・・・仕方ないですね。あ、パチュリー様。紅茶のお代わりはいかがですか?」
「えぇいただくわ。帰ったら新しい魔法の開発に協力してね?」
「はい!パチュリー様!お任せ下さい!」
小悪魔は頼られる事が嬉しいのか満面の笑みを浮かべた。パチュリーはそんな小悪魔が可愛く思ってクスリと微笑んだ。
それからは特に何事も無くクリスマス休暇を迎えた。パチュリーは小悪魔を先にトランクでヴワル大魔法図書館に送り、自分は怪しまれないようにホグワーツ特急に乗って戻った。駅のホームに着くと柱の影に隠れて空間転移魔法でヴワル大魔法図書館の入口がある花畑へ転移した。
「ふぅ、久しぶりにこの扉を見たわね。ホグワーツに行ってからはトランクを使っての移動だったものね」
パチュリーは扉を開き、大図書館に入った。入ってすぐ小悪魔が背中の羽根をパタパタと羽ばたかせてパチュリーを迎え入れた。
「お帰りなさいませ!パチュリー様!トランクをお持ちしますね♪」
「えぇ、お願いするわ。トランクを片付けたら早速新魔法を開発するわよ」
「了解しました!私にドーンとお任せ下さい!」
小悪魔は自分の胸を叩きながら言った。それからクリスマス休暇はずっと研究や実験の日々が続いた。それにより歴代の魔法使いや魔女が驚愕し、魔法界に発表したら数々の賞がもらえる事間違いなしの新魔法の数々が誰にも知られずひっそりとパチュリーの手によってヴワル大魔法図書館で生まれた。
★
クリスマス休暇が終わり、ホグワーツに戻って来たパチュリーの表情はいつもよりホクホク顔だった。この休暇中にかなりの数の便利な魔法や新しい魔法を開発出来た上、大図書館の本を読む事が出来た。今ならダンブルドア先生に「ヴォルデモートの勢力を全滅させてくれ」と言われても引き受ける気すらしている。
そんなある日、パチュリーが入学式から度々貸し出すようになっていた魔法書をマクゴナガル先生から返却してもらってグリフィンドール塔に帰っている途中、奇妙なものを見つけた。両足をピッタリくっ付ける『足縛りの呪い』と呼ばれる呪いをかけられてウサギ跳びをしているネビルだった。
「ネビル?貴方何やってるの?呪いをかけられたみたいだけど?」
「あ、パ・・パチュリー。マルフォイが・・・図書室の外で会ったの。呪文を試して見たかったからって・・・」
「なんで先生に言わなかったのかしら?ちょっと待ちなさい。『解除』」
パチュリーがネビルの足に手を向けて呪いを解除しながら質問した。流石にパチュリーと言えど今回マルフォイは庇えない。するとネビルは首を横に振った。
「もうこれ以上面倒は嫌だ。やっぱり僕はグリフィンドールに相応しくないのかな?」
「ドラコに言われたのね?大丈夫よネビル。貴方は組分け帽子に選ばれたのよ?あれは私達の記憶や感情を読んで組分けをするの。だから貴方は他の寮の生徒達より勇気があるわ。だから安心なさい」
パチュリーは先程の魔法書のお礼とマクゴナガル先生に頂いたお菓子をネビルに渡しながら言った。ネビルは半泣きになりながらもパチュリーにお礼を言い、一緒にグリフィンドール塔の談話室に戻った。ネビルはもう寝ると言って男子寮に入って行った。パチュリーは魔法をかけてページを増やした魔法書に新たな魔法を書き足して時間を潰していると、ハリー達3人組がパチュリーに近寄って来た。ハリー達は前のクィディッチの試合から図書館で何かを調べている。パチュリーは原作ではどうだったかしらと考えながら日々を過ごしていたのである。
「パチュリー、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかい?」
「あら?ハリーじゃない。それに2人も・・・私に何か用かしら?」
ハリーは遠慮しがちにロンとハーマイオニーを見てからパチュリーに用件を述べた。
「物知りの君なら分かるかもと思ってね。えっと・・・・ニコラス・フラメルって言う人の事を何か知らないかい?」
「ニコラス・フラメル?ダンブルドア先生の錬金術共同研究のパートナーの事じゃない。詳しく話しましょうか?」
ハリー達はその言葉に驚愕した。まさかこんな近くに答えがあるとは思わなかったからである。パチュリーはニコラス・フラメルの名前を聞いてその人物を探していたのかと今更ながら思い出した。
「な?最初からパチュリーに聞けば良かったんだよ。頼んでいい?」
「いいわよ?ニコラス・フラメルで有名なのは錬金術。錬金術は『賢者の石』と呼ばれる伝説の物質を創造する事に関わる古代の学問であり、比較的科学に近いものよ。ニコラス・フラメルは魔法界で唯一その賢者の石を作り出した人物なのよ」
「賢者の石?なんだいそれ?」
パチュリーの説明にハリーとロンが首を傾げる。ハーマイオニーは何処かで聞いたと言う表情だが、分からないようだ。
「賢者の石はあらゆる物質を黄金に変えたり、錬金術の能力を向上させる謂わば魔法使いが使う魔法の杖のような物よ。それと同時に調合して飲めば不老不死となる『命の水』の源でもあるわ。ニコラス・フラメルはそれを飲んで昨年辺りに665歳になったわ。それと賢者の石を上手く使うと、人の体を捨てて半永久的な命を得る事が出来るのよ。・・・・どう?役に立ったかしら?」
「驚いたなぁ!本当に最初からパチュリーに聞いとけば良かったぜ」
ロンとハリー、ハーマイオニーはパチュリーの博識さに驚愕しまくっていた。そしてパチュリーに礼を言って3人でコソコソ話し始めた・・・・が、何もパチュリーの目の前で話さなくてもいいと思う。
「ね?あの犬はフラメルの賢者の石を守っているに違いないわ!フラメルがダンブルドアに保管してくれって頼んだのよ。だって2人は友達だし、フラメルは誰かが狙っているのを知っていたのね。だからグリンゴッツから石を移して欲しかったんだわ!」
「金を作る石、不老不死にする石、錬金術の能力を向上させる石!スネイプが狙うのも無理ないよ。誰だって欲しいもの」
「それに『魔法界における最近の進歩に関する研究』に載っていなかったわけだ。だって665歳じゃ厳密には最近とは言えないよな」
ハーマイオニー、ハリー、ロンの順で話された会話は全てパチュリーの耳に入っていた。3人の今後がなんとなく心配になってきたパチュリーはとりあえず1つだけ注意する事にした。
「貴方達?ダンブルドア先生とフラメル氏、それとスネイプ先生よ。ちゃんと年上は敬いなさい。礼儀はどの世界でも大切よ」
「ヴッ!!?き、聞こえてたのかい?全部」
「えぇ、バッチリ全部。内緒話は人気の無い場所で小さな声でする物よ。3人共?」
パチュリーの呆れを通り越して笑うしかなくなった笑みを見て3人はやってしまったと頭を抱え、パチュリーに誰にも言わないでとお願いした。