七曜の転生者と魔法学校   作:☆桜椛★

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七曜の魔女と賢者の石

 その日の夜、パチュリーは自身に不可視の魔法をかけて談話室の隅の椅子に座ってハリー達が動き出すまで魔法書を読んでいた。やはり150点も減点したハリー達に関わる者はおらず、次第に談話室の寮生は次々と寝室に向かって行った。リー・ジョーダンが伸びをして欠伸をしながら寝室に向かった頃、3人が動き出した。ハリーが階段を駆け上がって1度寝室に向かい、マントらしき物を持って戻って来た。

 

 

(へぇ?あれが透明マントね?確かに一般的なマントより完璧に近い状態で不可視の魔法がかかっているわ。私の魔法並の性能とは思わなかったわ)

 

 

 パチュリーはハリーの持つ透明マントを観察してそんな事を思っている。そのマントを見て今やっている研究が済んだら壁もすり抜ける透明マントを開発してみようと、またも魔法界中が驚愕する様な事を考えていた。

 

 

「ここでマントを着てみた方がいいな。3人全員隠れられるか試してみよう・・・・もしも足1本だけはみ出して歩き回っているのをフィルチにでも見つかったら・・・・」

 

「君達、何してるの?」

 

 

 3人とパチュリーは部屋の隅の肘掛け椅子の影からネビルが現れた。パチュリーの反対側の部屋の隅だ。手にヒキガエルのトレバーを掴んでいると言う事はまた自由を求めてネビルの元から脱走したのだろう。ハリーは急いで透明マントを後ろに隠して誤魔化した。

 

 

「なんでもないよ、ネビル。なんでもない」

 

「また外に出るんだろ?」

 

 

 意外に鋭いネビルに3人は後ろめたそうな顔をし、ネビルはそれを見つめていた。ハリーが柱時計をチラチラ見ているから恐らくスネイプ先生が賢者の石を盗むかも知れないとでも考えているのだろう。まぁ真犯人はクィレル先生ではあるが。

 

 

「ううん。違う、違うわよ。出てなんか行かないわ。ネビル、もう寝たら?」

 

「外に出てはいけないよ。また見つかったら、グリフィンドールはもっと大変な事になる」

 

「君には分からない事だけど、これはとても重要な事なんだ」

 

 

 ハリーの言葉を聞いても「行かせるもんか!」とネビルは急いで肖像画の前に立ち塞がった。普段のネビルからは考えられない行動だろう。

 

 

「僕、僕・・・君達と戦う!」

 

「ネビル!!そこをどけよ。バカはよせ・・・・」

 

「バカ呼ばわりするな!もうこれ以上規則を破ってはいけない!恐れずに立ち向かえと言ったのは君じゃないか!やるならやってみろ!!殴れよ!!いつでもかかって来い!!」

 

 

 原作で知ってはいたけど実際に見るとかなり必死になっているわね。やっぱりネビルはグリフィンドールで正解だわ。

 パチュリーがネビルに感心していたらハリーが弱り果ててハーマイオニーに頼り、ハーマイオニーは前に出た。

 

 

「ネビル、ほんとに、ほんとにごめんなさい。ペトリフィカス・トタルス、石になれ!」

 

 

 ハーマイオニーがネビルに全身金縛りの呪いをかけた。ネビルは両手両足をパチッと閉じ、一枚板の様にうつ伏せに倒れた。3人はネビルをそのままにして透明マントをかぶり、談話室を出て行った。パチュリーは仕方ないと思いながらネビルに浮遊魔法をかけて宙に浮かせ、近くのソファに寝かせた。突然の出来事にネビルは目に恐怖の色を浮かべる。

 

 

「安心しなさいネビル。今はゆっくり眠っていなさい」

 

 

 パチュリーはネビルに眠りの魔法をかけて眠らせてから呪いを解き、近くのクッションに変身魔法をかけて毛布に変えてネビルにかけた。

 

 

「全くハーマイオニーったら、『早く寝たら?』なんてあの状況じゃ『外に行くのに邪魔だから寝ててくれない?』って行ってる様なものよ?本当に抜けてるんだから・・・・その内とんでもない事しでかさないでしょうね?」

 

 

 パチュリーはハーマイオニーの言動に呆れながら先生方にバレないように学校中に探索魔法をかけた。

 ふむふむ、運良くフィルチはハリー達とは全く関係ない場所を歩き回っているわね。あ、ピーブスに出くわしているわね。まぁなんとかなるでしょう。問題のクィレル先生は?・・・・あらら?まだフリットウィック先生の部屋で飛び回っているわね。

 

 

「まだ鍵を見つけられていないのね?まぁ頑張りなさいとしか言えないけど」

 

 

 パチュリーは空間転移魔法で一気に賢者の石があった部屋に転移した。部屋は前とは違い、机は消えて代わりに大きな鏡があった。これが人の心の底にある強い望みを映し出す鏡・・・『みぞの鏡』である。

 

 

「みぞの鏡ねぇ・・・私にはいったい何を映し出してくれるのかしら?」

 

 

 パチュリーはみぞの鏡をチラリと見てからポケットから羊皮紙を1枚出し、変身魔法で木製の椅子に変えて魔法書を読み始めた。魔法書を読み続ける事約10分、みぞの鏡がある部屋の扉が開かれ、頭のターバンが特徴のクィレル先生が入って来た。彼は賢者の石を早く見つけようと部屋を見渡したが、パチュリーの姿を見つけて杖を構えた。

 

 

「お前は・・・パチュリー・ノーレッジか?何故君がこの部屋にいる?」

 

「あら?お芝居は辞めたのね。まぁ理由は特にないわ。あるとすれば・・・まだ見ていないみぞの鏡に何が映るかね」

 

「みぞの鏡?」

 

 

 クィレル先生はパチュリーの隣にあるみぞの鏡を見る。今この部屋にはパチュリーと椅子、そしてみぞの鏡だけだ。あるとしたらパチュリーが持っているかみぞの鏡に何かあるかの二択。しかしクィレル先生はダンブルドア先生が生徒に石を任せる筈が無いと一般論に基づいてパチュリーに命令する。

 

 

「そこをどきたまえノーレッジ。その鏡に用がある」

 

「えぇ、いいわよ?どうぞ好きなだけ用を済ましてちょうだい」

 

 

 パチュリーは大人しく魔法書を読みながらスタスタとみぞの鏡から離れた。大人しく従うパチュリーにクィレル先生は警戒したが、杖も出していない為すぐにみぞの鏡を観察し始めた。探しているとクィレル先生は鏡に自分の望みを見たらしく、鏡を凝視している。

 

 

「石が見える・・・ご主人様にそれを渡しているのが見える・・・しかしいったい石はどこだ?・・・ノーレッジ、君がみぞの鏡の前に立ちたまえ」

 

 

 しばらく鏡を調べていたクィレルは再びパチュリーに振り向き、今度はパチュリーに鏡の前に立つように言った。ちょうどパチュリーはそろそろ鏡の中を見たいと考えていたので魔法書を閉じ、鏡の前に立った。

 

 

「・・・・・そう。これが私の心の底から望む物なのね?」

 

 

 パチュリーがみぞの鏡の前に立つと、鏡の中にはヴワル大魔法図書館が写り、パチュリーが机に座って本を読んでいる。近くには小悪魔もいる。

 しかし、それだけではなかった。水色っぽい髪をし、背中に蝙蝠の様な翼を生やした小さな吸血鬼がニコニコ笑いながらパチュリーの本を覗き込み、パチュリーに水色っぽい髪をした吸血鬼にそっくりな金髪の吸血鬼が宝石の様な羽をパタパタ動かして背後から抱き着いている。銀髪のメイド服を着た少女もそれを微笑ましく見守り、本棚の側に赤髪の中国の武闘家の様な服を着てグリーンベレーをかぶった妖怪が立ったまま幸せそうに寝ていた。

 パチュリーはその光景を見てクスリと笑った。自分が望む物はてっきり新たな知識の数々か、新たな魔法の研究だと思っていたのに。意外にいい望みではないか。

 そんな風に思っていると、鏡の中のパチュリーがこちらを見て、ポケットから賢者の石を取り出した。そしてウインクをしてから再びポケットに戻す。するとパチュリーのポケットに重みを感じ、パチュリーがそれを取り出すと、中からパチュリーが魔法をかけた偽賢者の石が出て来た。

 

 

(う〜ん、これを見れたのは嬉しいけれど・・・自分が作った爆弾石を渡されても困るのだけれど?)

 

「そ、それは賢者の石!!ノーレッジ!!それを私に渡せ!!」

 

「え?あ、そう?じゃあどうぞ」

 

 

 パチュリーはクィレル先生に爆弾石を差し出した。クィレル先生はパチュリーのアッサリとした行動にキョトンとした。

 

 

「・・・・は?そんな簡単に渡していいのかね?」

 

「私は賢者の石なんかに興味は無いし、持っていても邪魔だから(というか早くこの爆弾石持って遠くに行ってほしいわ)」

 

 

 パチュリーはそんな風に考えながらどうぞと賢者の石を差し出す。普通ならヴォルデモートに開心術で心を読まれるかも知れないが、そこはパチュリー。完璧過ぎる閉心術に更に自作の魔法を重ねがけして全く読ませない。

 

 

「・・・・いいだろう。その聞き分けの良さに免じて君は殺さないでいてやる。では賢者の石を頂くとしよう」

 

 

 クィレル先生は差し出された賢者の石に手を伸ばし、パチュリーは賢者の石にクィレル先生が手を乗せたのに内心ホッとした。時限式の爆裂魔法が作動し、爆発まで後1時間。しかしパチュリーは念の為に時間を早め、爆発まで後30分にバレないように設定を変えた。これでOKと内心喜んでいると・・・

 

 

「ま、まさか貴方が!!?パチュリー君まで!!!スネイプだとばかり思っていたのに・・・」

 

 

 タイミング悪い事にハリーが部屋に入って来た。ハリーから見たらパチュリーがクィレル先生に賢者の石を渡している様に見えるだろう。

 

 

「やぁポッター。遅かったね。賢者の石は今ノーレッジから貰ったよ」

 

「パチュリー!!君まで『あの人』の仲間だったのか!!?友達だと思っていたのに!!!」

 

「いや、私は貴方達と友達になった覚えは無・・・あ、しまった」

 

 

 パチュリーはつい自分の本音を喋ってしまった。パチュリーからしたらハリー達はただの子供だ。大人の女性が幼稚園児に付き合っているようなものだ。まぁ「友達になって」と言われたら友達にはなるが、ハリー達からは何も言われていないから関係的にはハリー達の世話役?みたいな感じである。しかしパチュリーの言葉はハリーの怒りに触れたようで、ハリーは杖を2人に向けた。

 

 

「この裏切り者め!!賢者の石をこっちに渡せ!!」

 

「なんでこうなるのよ・・・貴方の所為よ?サッサと消えなさい」

 

「これは私の所為かね?まぁいいだろう。賢者の石は手に入った。私はこれで失礼しよう・・・・さらばだ」

 

 

 クィレル先・・・クィレルは懐から小さな箱を取り出し、蓋を開けた中からは蒼白い炎に可愛い目が2つある生物が出て来て、それを握り締めたクィレルごと自身を蒼炎で包み、部屋から消えた。

 ウィル・オ・ウィスプね?外敵に攻撃されると炎を出して遠くに転移する生物。確かにこれならホグワーツから姿現し擬きが出来るわね。

 パチュリーがクィレルの考えに少し感心していると、ハリーが杖を振って光の玉を飛ばして来た。なんの特殊効果もないが、当たれば大人でも吹っ飛ばせるだろう。パチュリーは魔法書を開いて防御魔法を展開して身を守る。

 

 

「君の!君の所為で!!ヴォルデモートが復活してしまう!!奴が何をやったか君は知らない訳じゃないだろう!!?」

 

「えぇ知っているわよ?でもあんな石ころ渡したぐらいで魔法を私に撃たないでくれないかしら?」

 

「気が狂ったか!?あの石がどんなものか教えた癖に!ヴォルデモートが復活すれば僕が殺されるんだぞ!!?」

 

「あ〜はいはい。分かってるわよ。・・・貴方も見てないでハリーを止めてくれないかしら?」

 

 

 パチュリーが扉の向こうに声を掛けると、扉が開いてダンブルドア先生が入って来た。ハリーは魔法を放つのを止め、ダンブルドア先生に駆け寄った。

 

 

「先生!!パチュリーが、パチュリーがクィレルに賢者の石を・・・」

 

「分かっておるよハリー。さて、パチュリー・ノーレッジ嬢?何故、クィレルに石を渡したのかね?お主は自分の意思で渡したんじゃろう?」

 

「当たり前よ。あんな石を守る為にハリーは命賭けるでしょうし?それなら渡した方がメリットがあるわ」

 

「ふむ、確かにハリーの命には変えられんじゃろう。しかし、ならば尚更あの石を渡すべきではなかった。その場で破壊するなりすれば良かったじゃろう」

 

 

 パチュリーの言葉に納得したが、賢者の石を渡した事にダンブルドア先生は咎めた。しかしパチュリーは涼しい顔をしながら前もって持って来ていた本物の賢者の石を別のポケットから取り出してダンブルドア先生に投げ渡した。

 

 

「それが本物の賢者の石よ。私がクィレルに渡したのは偽物の賢者の石。たかが変身魔法がかかった羽根ペンに命を賭けるべきじゃないわ」

 

 

 ハリーはダンブルドア先生の手にある石を凝視し、ダンブルドア先生は本物だと確認するとニッコリ微笑んで優しい目をパチュリーに向ける。

 

 

「ようやったノーレッジ嬢。なかなか面白い事をしてくれたのう」

 

「ふふっ、それじゃあ私は寮に戻るわ。お休みなさいお2人さん」

 

 

 パチュリーはクスリと笑いながら扉を潜って小悪魔のいる自分の部屋を目指して歩き出した。

 ・・・・話は変わるが、これから約25分後に、イギリスのとある廃墟が突然大爆発を起こし、焼け跡から1人の男性の遺体が見つかり、イギリス中でテロ事件だとしばらく話題になった。

 

 

 

 

 

 

 数日後の夜、スリザリンのカラーで飾られた大広間でパチュリーは学年度末パーティーに参加していた。あの夜からハリーには謝り続けられたりと面倒な事は少しあったが、今はハリー自身もパーティーに参加し、他の生徒達に見られまくっていた。しかしちょうどダンブルドア先生が前に立って話し始めた為、みんな静かになって聞いている。

 

 

「それではここで寮対抗杯の表彰を行う事になっとる。得点は4位、グリフィンドール345点。3位、ハッフルパフ352点。2位、レイブンクロー426点。そしてスリザリン、472点」

 

 

 その言葉にスリザリンの生徒達は嵐のような歓声を上げた。ハリー達や他の寮の生徒達はかなり不満そうである。

 

 

「しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 

 

 ダンブルドア先生の言葉に部屋全体がシーンと静かになった。ダンブルドアはえへん!と咳払いをして口を開いた。

 

 

「駆け込み点数をいくつか与えよう。先ず、ロナルド・ウィーズリー君。素晴らしいチェス・ゲームを見せてくれた事を称えてグリフィンドールに50点を与える。次に、ハーマイオニー・グレンジャー嬢。火に囲まれながら冷静な論理を用いて対処した事を称え、グリフィンドールに50点を与える。3番目にハリー・ポッター君。完璧な精神力と並外れた勇気を称えてグリフィンドールに50点を与えよう。そして、敵に立ち向かう勇気と同じくらい仲間に立ち向かうのにも勇気が必要じゃ。そこで儂はネビル・ロングボトム君に10点を与えたい」

 

 

 これによってスリザリン寮生は驚愕し、他の寮生達は轟音の様な歓声を上げた。しかしダンブルドア先生はそれを手で制した。

 

 

「最後に、これら全てをたった1人でやり遂げ、魔法使いの先生すら騙す程完璧な変身魔法をこなした・・・パチュリー・ノーレッジ嬢に、儂は100点を与える事とする。従って、飾り付けをちょいと変えねばならんのう」

 

 

 ダンブルドア先生が杖を振って部屋をグリフィンドール・カラーにすると同時にパチュリーは不可視と防音の魔法を発動し、小悪魔のいる自室に転移した。部屋に転移してからしばらくずっと遠くからグリフィンドール寮生の歓声が聞こえて来た。その夜はヴワル大魔法図書館でパチュリーは小悪魔と一緒に小さくも楽しいパーティーを行った。


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