私とアリサが二日酔いから復活したのは丁度お昼ご飯の時間だった。
店主からお店の制服を貸りて外に出れる格好になった。
店から出て、空を見たアリサはこう言った。
「――オルーナを見つけるのははご飯を食べてからにしましょう」
賛成。此処、アイリオスに来て二日目最初の頷きだった。
ご飯を食べに宿に戻るとジェネッタが迎えてくれた。
「おかえりなs…うわっ!?凄い顔してますよお客さん!?」
「ただいま、とりあえず消化の言い食べ物頂戴」
「わ、わかりました!」
ジェネッタ凄く驚いてたなと思いながら、アリサの顔を見る。目の隈が凄い。
その後、ジェネッタが持ってきてくれたスープを飲んでいると、アリサが話しかけてきた。
「とりあえず、これを食べ終わったら体を拭いて、服を買うついでにオルーナたちを見つけるわよ」
了解と、頷く。まだ体から酸と酒の匂いが漂うから早く拭きたい。
一度部屋に戻り、ジェネッタからお湯の入った桶を貰い、体をタオルで拭う。
――さっぱりした。
部屋から出るとロビンとベルガが疲れた顔をして廊下を歩いてた。
「ああ、クーさん、宿についていたのか。此方はオルーナさんを探していたんだが…」
「話、聞く。そこ、探す、居ない」
「と、こんな感じでアイリオス中を走り回ったんだが見つからなくてな」
「ハウンド、仲間、手伝って、もらう。それでも、成果、なし」
「人海戦術も通じなかった、アリサさんはどうやって見つけてたんだ…?」
どうやらオルーナの方向音痴の才能は伊達では無いらしい。
ロビンとベルガが部屋に入った後、しばらくしてアリサが部屋から出てきた。
「――よし、オルーナを探すわよ」
でもどうやって見つけるのだろうか?人海戦術もダメだったらしいし。首を傾げる。
「あー、実はあの子と別れた時用に用意した道具を使うの。これを使うとオルーナが持ってる道具が反応して、それに気づいたら魔法を打ち上げるようにオルーナに言ってあるのよ」
――魔法かー、まさかとは思っていたが魔法あるのかー。
「まあ、この方法でも三割の確率で居ないのよね」
筋金入りか…
「取り合えず、外に出て道具を使うわよ」
宿の外に出てアリサは道具を右手に持った。防犯ブザーに似ている形状だ。
その道具に付いている紐をアリサが引っ張る。
しばらくすると、遠くの方で炎が撃ちあがった。
「あっちの方ね、行くわよ、クー!」
そう言いながらアリサが駆け出していく。
それに遅れないように私もついて行く。
大通りを走り、時には橋や屋根の上も走る。
路地を暫らく走っていると行き止まりが見えてきた。どうしようか迷ってアリサの方を見ると、腰に掛けてたロープを手に持ち。
――木箱や窓枠を足場にしながら登っていき、ロープの先にあるフックを屋根に引っ掛け行き止まりの家を乗り越えた。
私もやらないといけないのか?という疑問が出てきたが、身体能力が上がっているのを思い出し、壁を駆け上ってみることにした。
――木箱を踏み台に跳び
――窓枠に足を掛け
――反対側にある家の壁に向かって跳び
――家の壁を蹴って屋根を掴む――!!
――出来た。体を屋根の上に上げ、あたりを見渡してアリサを探すが見当たらない。
見失ってしまったk「何一人で行動してるのよバカオルーナ!!」「ごめんなさいー!」
…声が聞こえた方に行ってみる。
「クーの服を汚しちゃったから服を買いに行ったのは分かるけど一人で行くなって何度も言ってるでしょう!?」
「ううぅ」
「はぁ、全く。お腹が空いてるでしょう?迷惑掛けた人たちに謝りに行くのはご飯を食べてからにしましょ?」
「ごめんなさぃ…」
声が聞こえてきた辺りの通りを見下ろすとアリサがオルーナの腰にロープを付けている所だった。
屋根を軽く叩いてアリサに気づかせる。
「あ、クー!ごめんなさいね変な所通っちゃって。そして悪いんだけど大通りまで誘導してもらいたいの!」
そのお願いに対し、屋根を軽く二回叩いて返事をする。
遠くに大通りがあるのを確認してから、そちらに誘導する。
――大通りに出たので屋根から飛び降りる。普通に着地が出来た。自分が思っているより身体能力が強化されてるようだ。
「さて、オルーナを見つけたし宿に戻りましょ」
アリサの見ている所で飛び降りたが特に反応がない…ここではこれが普通なのだろうか?
アリサと涙目のオルーナと一緒に宿に戻る。
―ジェネッタの宿―
宿に戻るとロビンとベルガが話しかけてきた。
「おかえり。オルーナさん、服は買えたかい?」
「思ってたより、見つかるの、早かった」
「ご迷惑かけてごめんなさい!服は買えました!」
そういってオルーナは鞄から服を取り出す。
――今にも動きそうな魚が描いてあるシャツだ。
「「ブッッ!」」アリサとロビンがそれを見て水を吹き出した。
「ちょっとそれ有名な画家の絵じゃない!?」
「服に絵を描く珍しい画家なのは知ってましたがアイリオスに作品があったとは!?」
「え、でもこれ古着の店で見つけて結構綺麗だったから買ったんだけどー」
「なんでそんなところにあるのよ…」
オルーナから貴重な服を貰った。「間違っても着ちゃダメよ」とアリサに言われたので大事に保管しよう。
アリサがジェネッタにオルーナの分のスープを注文し、食べている間に訓練をしようという話になり、宿の庭でロビンと訓練を一通りやった。訓練の途中、ご飯を食べ終わったらしいオルーナが暇つぶしに手の甲で炎と氷を二つ同時に回してたのに目を奪られ、鳩尾に良い拳をもらったのが記憶に残っている。
「いやはや、昨日ギルド長に『今日から七日間であいつを世界樹でも通用できるようにしろ』と言われて無茶なと思いましたが、これなら大丈夫そうですね。途中残念なところもありましたが」
『七日間で通用するようにする』そんなようなことを言われたなと思い出し、気づいた。此処、地球と同じで、七日で一週間なのか。
そんな、重要なのか重要でないのか判りにくい情報のことを井戸の水で体を流しながら考えていると、アリサに呼ばれた。
「実は聞きたいことがあったの、ギルドのリーダーとしてメンバーの今までの経歴を軽く教えてもらってたの。
あなたのことも教えてくれない?」
そんなアリサのお願いを受け入れる。信じてもらえるかは疑問だが…。
「じゃあまずは、アイリオス出身?」
いいえ。その質問に対し、首を横に振る。
「やっぱりね、じゃあ次の質問。他の種族――セリアンやルナリア、ブラニーを知ったのは昨日が初めて?」
「?アリサさん?そんな質問に意味はあります?」
ロビンは疑問に感じたが、私にとっても、彼女にとっても、意味がある。
はい。首を縦に振る。
「!?嘘ですよね!?アースランの国にはどこの町や村でも年に一回は確実に他の種族の方が立ち寄ったりするんですよ!?」
「――へー」
ロビンがものすごく驚き、オルーナが興味をもった声をだす。
「じゃあ次の質問。監禁――家に閉じ込められたりしてた?」
いいえ。
「え、てっきり監禁されてるのかと思ったのだけど…違うのね」
「じゃあ、何で、他の、種族、知らない?」
「――ねえ、アリサ。私から質問してもいい?」
アリサやベルガが疑問の声を漏らしていると、オルーナがアリサに声をかけた。
「え?いいわよ?」
「ありがと、じゃあ私から質問ー。此処、アイリオスに来るまで世界樹のこと知らなかった?」
「え、どの種族の子どもでも知ってるようなことじゃないの」
いいえ。
「嘘!?」「ほんとですか!?」「一人、森、住まい?」
「じゃあ、次の質問するねー、異世界から来てたり?」
――はい。
「え、オルーナ、その『いせかい』って何かしら?」
「俺も初めて聞きました」
「異世界っていうのはねー、簡単に言えばどんなに歩いても、海の向こうに行けるようになったとしても、空を飛べるようになったとしても、絶対にたどり着けない物凄い遠くにある所かなー?論文で見たことあったけど、まさか本当に有るとはねー」
「遠い、所から、来たのか。大変、だったな」
――思ってた反応と違う。もっと騒がれると思ったのに。
「口を開けたままぼーっとしてどうしたのよクー。これで質問は終わりよ?」
え、もっと聞かれるかと思ってたんだけど。そう思い、ほかのメンバーを見回してみる。…特に興味は無いようだ。
「もう聞きたいことは聞いたし、夕ご飯が近いわよ?」
――ご飯の時間ならしょうがないな。ご飯を食べるジェスチャーをする。
「じゃあ、ジェネッタの美味しいご飯を食べましょう」
こうして、私の中で一番驚かれるであろう情報は、あっさりと受け入れられ、
台所から流れてくる美味しそうな匂いに忘れ去られるのであった。
――夕食として出てきたのはステーキだった。鉄板の上で肉が焼ける音がする。
付いてきたソースを肉の上にかけると、それが鉄板の上で肉の油と反応し跳ね上がる。
肉にフォークを刺し、ナイフで切り分ける。中は程よい赤みがかかっており、とてもジューシーだ。
一口大に切り分けたそれを口に入れる。
――美味い。ソース味と肉本来の旨味が混ざり合い絶妙な美味しさを表現している。
この美味しい肉を食べているうちに金属同士がぶつかり合う音がする。
食べきってしまった。まだこの美味しさを味わいたいと思っていると、ジェネッタが声をかけてきた。
「お客さんお客さん、まだお替りありますよ?」
すぐに鉄板をだしてお替りを要求する。
「はいはーい!少しお待ちをー」
気づけば四皿分のステーキを食べていた、テーブルを見渡していると五皿分のステーキを食べてた猛者がいる。
――ベルガだ。
彼女は私の視線に気が付き、視線が重なり合う。
――同志よ
いつの間にか私たちはお互いに立ち上がり握手をしていた。
これを見ていたアリサとロビンが溜息を吐いた。
そしてアリサとロビンの視線が交わる。
――苦労しているのね――
――あなたもこうなりますよ――
なんだか仲が良くなったみたいだ。
ちなみにオルーナはジェネッタに肉の焼き加減や、ソースの作り方を聞きに行った。どうやら気に入ったらしい。
夕ご飯を食べ終わった後はもうやることは無くなり、おやすみと言いながら各自部屋に戻っていく。
私も部屋に戻るとしよう。
部屋で寝る準備を終え、眠ろうとすると、ノックの音がした。
扉を開けると、オルーナがアリサと一緒に立っていた。
「夜遅くにごめんなさいクー、オルーナがどうしても聞きたい事ができたみたいで」
「ごめんねー、寝る前に疑問が頭に浮かんできて寝れないのー」
アリサが眠たそうに話し、オルーナは少し興奮気味だ。
廊下に立たせたままなのもあれなので、部屋に入れる。
「で、聞きたいことって何なのよ、私眠りかけてたんだけど」
「アリサが居ないと私迷子になるよ?」
「それは解っているから早くクーに質問しなさい」
「はーい。えっと、まず最初に聞きたいのは、アイリオスに来る前に何か実験とかしてたのー?」
思い出してみる。――確か仕事を終えて家でテレビを見てたはずだ。首を横に振る。
「クーの実験ミスによる事故ではないのねー。じゃあコッチでの事故かな?だとしたら――」
オルーナが一人で考え始めた。一人でブツブツ言いながら部屋を歩き回っている。
どうしようかと思い、アリサの方を見る。
――立ったまま船を漕いでいる。
そのまま立ったままにするのは忍びないのでベッドに寝かせる。…寝顔がかわいい。
「――の可能性もあるか。ねぇクー?次の質問していいー?」
オルーナの考えがまとまったらしい。頷いて了承する。
「えっと、異世界の魔法ってここよりレベルが低いー?」
――困った質問が来た、喋れるのならそもそも魔法が無い。と言えるのだが…。
ジェスチャーで伝えるのには厳しいか?
私の困った顔で何か察したのか、オルーナが話しかけてくる。
「あれ、もしかして同じくらいなのー?」
返すジェスチャーが思いつかない。一様、首を横に振っておく。
「え、これも違う。――まさか、魔法が、ないの?」
――頷く。
「え!?どうしたら魔法なしで暮らしているの!?魔法が無いと作れない物も結構あるのに!!」
魔法は地球で言う科学のようなものなのだろうか。
「ねえねえ!教えて!今から紙とペン出すから絵を描いてどんなのがあるのか教えて!!」
どこから紙とペンを出したのかすごく気になるし、絵はそんなにうまくはないのだが…。
――あのキラキラした目を裏切れない…!!
こうして、異世界生活二日目の夜はオルーナの質問に絵で答えて過ごすのであった…。
「んー、ふぁぁあぁぁ…。ん?」
アリサが起きた時、誰かの声と、何かを書く音が聞こえた。
そちらを見てみると。
――目の下に隈が出来たクーが一心不乱に絵を描き続け、その隣でオルーナが女性がしてはいけない顔でクーに質問をし続けている。
「――――」
言葉が出ない。
クーの目を見ると、私が起きたのに気付いたようで、助けを求めている眼をしていた。
それを見た私は気を取り戻す。
「――っは!?オルーナ!?何やらせてるの!?」
「クー!すごいの!!あたしが求めている情報を的確に絵に描いて教えてくれるの!!!」
タスケテ
「そうじゃないわよ!?もしかして寝なずにずっとやってたの!?」
「すごいの!あたしが知らないことも異世界にあるのね!!」
「話を聞きなさい!!」
アリサがオルーナを説教し始めた。オルーナはまだ興奮している。
ああ、アリサが止めてくれたからこの地獄の作業も終わりか。助かった…、助かった…!
――こうして、異世界三日目の朝は、徹夜明けで始まった。
異世界
異世界という単語を聞き、疑問を浮かべる人は多いだろう。
ここでは異世界について説明しよう。
まず、異世界という言葉が出来たのは二十年前と、結構最近である。
とあるブラニーがルナリアの子供が魔法で遊んでいるときに『もし、魔法が無かったら』と考え、想像してみると今とは違う風景が浮かんできたのが考え方の始まりである。
それを友人のアースランに話すと。『もしかしたらこことは異なった常識がある世界なのかもな』と言った。『異なった世界』これが異世界という単語の始まりだ。
この話が段々と広がると、学者たちが言い出した。
「異なった世界の常識を知ることが出来れば世界樹の探索に役立つ可能性があるのではないか?」と。
こうして、異世界という言葉は学者や研究者なのど狭い範囲ではあるが広がったのである。
今では、異世界の研究が進み、少し前に大規模な実験も行われた。が。
実験は失敗。実験に携わった研究者の服が消えるという結果となった。
実験は失敗に終わったが、失敗の原因を見つけ次第、実験を行う模様。
研究はまだまだ続くようだ。
アイリオス週刊新聞より抜粋