その後も、毎日のように多めの敵機と遭遇する日々が続いていた。
プロペラ機や古いジェット機が中心で、いずれも速度を重視した機種ばかりだ。
しかしパイロットの腕はというと、あまり良くないのが多かった。装備についても、高速な機体ではあってもあまり充実しているというわけではなさそうで、新米や腕の悪いのが中心、といった感じだ。
基地に所属する中では新米の雇われが一人墜ちた程度で他は問題なく撃退できている。
そんな中で所属するパイロットを集めての会議が行われる。傭兵も含めてだ。これは珍しいことで、今まではすべて何かしら大きな作戦がある時だった。
「最近敵機の襲撃が増えていることは、諸君も承知していると思う。
近々、敵が大攻勢を計画していると、ほぼ断定された。より前線の基地 では、すでに前哨戦が行われた。
これに対し我が軍は反攻作戦を行う。敵本命部隊に対し、こちらも大部 隊で迎撃、そのまま敵前線基地を攻撃する。」
当たりだ。
「この基地からも戦力を出す。日時は......」
ここからは特別なこともない。大きな作戦には何度か参加したこともある。敵と味方が多いだけで、そう変わったものでもない。
ただ、普段は私とリリアの二機だが、三機以下で活動しているパイロットは四機以上の編成にするらしい。同じ基地とはいえ、あまり他のパイロットと話すことはない。初めて関わる相手と部隊を組むことになるが......
傭兵の編隊など、戦闘になれば関係なくなることがさほどだ。
連携をとるタイプでないこと、うまくやれそうなことを祈ることにしよう。
――――――
「俺はナオフミ。」
「マドヴェイだ。」
「咲葉。」
「リリアって言うっす。」
部隊を組むことになった相手と顔合わせ。いつものリリアと、追加で2人だ。
ナオフミは人間、若い、あるいは子供にも見えるような男だ。
どこか軽薄そうな顔つきに笑っているようなしかめているような微妙な表情を浮かべている。そういう顔らしい。
透き通るように透明で純粋そうな眼をしているのが印象的だ。
マドヴェイは鶏の獣人、茶色の羽毛の屈強な身体の男だ。
鶏獣人特有の甲高く少し妙な調子の声の中に渋さと迫力を感じさせる不思議な響きの声をしていた。
「よろしく。」
ナオフミが手を差し出してくる。握手だ。挨拶を返して応じる。
その後はお互いに少し話して別れた。うまくやっていけそうだったし、二人ともそんなに連携をとって戦うタイプではなかったから少し安心した。
「それで、この後はどうするんだっけ?」
横を歩くリリアが訊いてくる。身体が小さいから少し早足気味だ。歩くペースを落とす。
「今日はこれで終わりだから帰るだけ。ちゃんと話聞いてたの?」
「あんまり……だって特別なこと話してなかったしぃ。飛んでって戦うだけっす。」
それはそうだが……、口を開こうとしたところで彼女の声。
「そんなことより、結構時間あるし今からその辺出かけないすか?」
「その辺って、どこに、何をしに?」
「だからその辺に、ぶらぶらしに。」
「えぇ……」
「いいじゃないっすか、帰ったって暇でしょ?ちょっと付き合ってっす。」
暇というわけではない、休息をとるのも大事だ……とも考えたが、確かにすることもないし、ずっと寝てもいられない。
「ん……わかった。」
「いえい!」
「どことも知れないその辺に、リリアが面白い事を見つけて連れてってくれるのを期待しとく。」
彼女はほんの一瞬固まったように見えた。結局返事はなかった。