勘違いヒーロー、誕生。 作:さらだ
ケモノを心に感じケモノの力を手にする拳法
《獣拳》
獣拳に、相対する二つの流派あり
一つ! 正義の獣拳 激獣拳ビーストアーツ
一つ! 邪悪な獣拳 臨獣拳アクガタ
戦う宿命の拳士たちは日々、高みを目指して、学び、変わる!
なんやかんやでゴーカイジャーに居座ることになった。まさか自分が宇宙海賊になるなんて考えたこともなかった。だが、三食寝床付きだと前向きに考えることにする。今日のお昼はハカセが準備するらしい。お嬢さんのアイムもエプロンをつけてその手伝いをしている。ジョーは筋トレ、マーベラスはダーツ。おのおの好き勝手にしている。だからおれも今週のジャンプを読んでいる。ひゃー、わくわくするな!
おれがうきうきしながらジャンプを読んでいると、ルカが何やら騒いでいる。機械がトラブったらしい。フライパンを持ったままのハカセをひっぱり、修理を頼んでいる。
「ねー、ハカセ。画面が動かなくなっちゃったんだけど。やって」
「いまソーセージが焼けたところで……」
「やって!」
「ね、マーベラス。遊んでないでこれおねがい」
ルカに強い口調で頼まれたハカセは近くにいたマーベラスにフライパンを預けようとするが、マーベラスはダーツの矢でソーセージを突き刺し、食べてしまった。それをみたアイムが「マーベラスさん、お行儀がわるいですよ」とたしなめるが、海賊にマナーをたたき込むのは難しいと思う。「気にすんな。メシ食ったらお宝探しに行くぞ」と、どこ吹く風だ。……やっぱりな。やつの頭の中は1にメシ、2にお宝。3は知らん。
「鳥、占い」と食べながら、おそらくペットのナビィにあごで促す。
「もー!鳥じゃないって言ってるのに」と、このしゃべる鳥は文句を言いながらも「Let's お宝ナビゲート!」といい、“占い”とやらを始めた。あちこちに体をぶつけ、「汝ら、虎の子を訪ねるといいぞよ………ってなかんじ!」と言った。
虎の子を探しにいった彼らを見送り、おれはゴーカイガレオンに残った。ジャンプをまだ読み終えていないからな。適当に「んじゃ、おれ留守番する」といい見送った。いまはソファーを占領し、ごろごろとジャンプのページをめくる。ときおりナビィが「トオルは行かなくてよかったの?」というから、「いいか、ジャンプには少年たちの夢が詰まっているんだ。だからおれはそれを見届けなければならない」とかっこつけていった。ナビィは「そーなの?」と信じていた。結局ナビィも一緒になっておれとジャンプを読んでいた。ふむ。この鳥、やるな…………!
すると、彼らが虎猫を抱えて帰ってきた。なぜに猫?どうやら彼らは虎の子を虎猫と勘違いしたらしい。
「あしたはトオルもついてくるんだからね!」と、今日一日ジャンプを読んでいたことがルカにばれてしまった。
夜中にハカセとすれ違った。「おやすみーってまた読んでるの?」とあきれた目で見られた。失敬な。ただ読んでるだけじゃない。
「これはイメトレだ」
きょとんとした顔をするハカセ。
「ジャンプを読むことでおれは敵と戦うときのことをシミュレーションしているんだ。おれの戦い方は特徴的でね、(キャラの特徴を)知らないと何もできなくなって格好の餌食になってしまうからな」
最もらしく言ってどや顔をして見せた。ハカセは「そっか」といい、去ってしまった。さておれも寝るとするか。
side ハカセ(ゴーカイグリーン)
振り返るときょうは一日無駄に過ごした気がする。昼食の準備をしていると、ルカにそれを中断させられ、マーベラスにつまみ食いされるし、ザンギャックにはうまく立ち向かえなかった。結局虎の子も見つけられなかったし。アイムはなんか拳法を始めたみたいだけど、ぼくにはいまさら無駄だよ。素質がちがうんだよ。
思い出すのは今日の戦闘のこと。ジョーが強いのはわかる。だって暇さえあればトレーニングしてるし。なにもしてないマーベラスやルカだって強い。はァ。やっぱりぼくには無理なんだよ。
見張り台で空を眺めているとルカがやってきた。
「何してんの?」
「………べつに」
「あっそ。……あ!さっそく1コみっけ。この星の流れ星もきれいなのよね」
「流れ星を見つけに来たの?」
「そ。寝る前に10コくらい見つけないと」
「10コって……ロマンチックじゃないなァ、願い事多すぎだよ……」
「まァね。お!今度は2コめ」
「よくそんなに見つけられるね」
「こどもの頃からやってるから。なんていうの、空全体を捉えて集中するっていうか、結構難しいのよ。おかげでずいぶん目が早くなったけど」
ぼくは、はっとしてルカをみた。
「あたしが力で男に勝つのは難しいじゃん。だからお宝探すにも、邪魔者ぶっ倒すにも、目の早さが命なのよねー」
………知らなかった。ルカがそんなことしてたなんて。ふとみると、マーベラスがダーツのときに身につけている腕輪が目に入った。持ち上げてみると、お、重い。マーベラス、船にいるときはこんなのつけていたんだ。ぼくが知らなかっただけで。
そういえば、トオルも何かトレーニングみたいなことしてるのかな。ぼくはトオルをみつけた。と同時に呆れた顔で「おやすみーってまた読んでるの?」と言った。
トオルはソファーに寝転がりながら、ジャンプという彼お気に入りの漫画雑誌のページを捲っていた。.........どうみても寛いでいるようにしかみえない。彼は今日一日ナビィといっしょにそれを読んでいたみたい。なのにまた読んでる。ルカにばれたのに懲りないなんて。.........
いやいや、トオルだって何かトレーニングしてるかもしれないし、聞くだけ聞いてみよう。
「これはイメトレだ」
ぼくがきょとんとした顔をすると、続けて言った。
「ジャンプを読むことでおれは敵と戦うときのことをシミュレーションしているんだ。おれの戦い方は特徴的でね、知らないと何もできなくなって格好の餌食になってしまうからな」
なんだかそう言ったトオルがとてもカッコよく見えた。一見ただ自堕落に過ごしてるように見えるけど、頭の中じゃそんなこと考えてたんだ。そっか。みんな、ぼくが知らないだけで努力してるんだ。
翌日、ぼくは昨日知り合った拳法家のところへいった。
「ぼくにも拳法教えてください」
「………無駄なんかじゃないのか?」
「何もしなかったら、ぼくはおいて行かれるだけだ。でも、今からでも始めたなら、ぼくも変われるかもしれない!」
じっとマスターの目を見つめる。
「………よし。皆で修行始めるぞ~。ニキニキのワキワキだあ!」
ニキニキ?ワキワキ?よくわからないけど、ぼくも修行だ!