勘違いヒーロー、誕生。 作:さらだ
大いなる力を得るために先代シンケンレッド、薫との勝負を開始したジョー。だがそこへザンギャックが襲来し、衝撃の真実が明かされる。特務士官バリゾーグがかつての先輩シドだった。
第20幕 いざ、参る!
side トオル
ゴーカイガレオンに着いて、マーベラスとジョーの治療に取りかかる。おれがマーベラスの傷具合をみていると、さっきの姫さんと爺さんがおれに薬を渡してきた。
「刀傷によく効く薬だ。落ち着くまでには動かすな」
爺さんは医療をかじっているようなので手伝ってもらった。
マーベラスはスタミナ切れだからしばらく休ませたら元に戻る。頭の半分はお宝とメシのことだ。起きるなりメシを用意しろというだろう。うん、肉食えば治るなんて麦わらのゴム少年くらいしか知らないが。海賊の船長ってモンはそういう体質なのだろう。ってことは、おれも船長になれば、肉食えば治るのか?いや、個人差を考えても……まあどうだっていいか。とりあえずハカセにマーベラスのご飯を頼んだ。普通はお粥がいいのだが、こいつの場合、肉があれば治るだろ。そして、ジョーには頭に包帯を巻いた。ジョーは風に当たってくると言い、そのまま外へ出ていった。今はそっとしておいた方がよさそうだな。奴なりに想うことがあるのだろう。
おずおずとハカセが姫さんに尋ねた。
「あの、どうして……?」
「人として当然のことをしたまでだ。勝負となれば容赦はせぬ」
姫さんは背筋を伸ばしてそう答えた。堅物な姫さんだと思ったら、意外と甘っちょろいことを言うんだな。姫さんの純心さが心に刺さる。なまじ、自分が結構悪どいことをしていると自覚がある分、深く刺さる。
夜中。皆が寝静まったころ、ヒソヒソと声が聞こえた。今日の夜寝番はおれだ。目を閉じているだけで、頭は起きている。
「姫、私の見立てではあの中にレンジャーキーが隠されているかと……いかがでしょう。ここはひっそりと」と小声で爺さんが姫さんに囁く。へぇ。それが目的でわざわざここに来たのか。だが、爺さんは姫さんにパシリと扇子で頭を叩かれていた。
「丹波。私はもう少しこの海賊衆を見守りたい気分になっている」
姫さんは半畳ほどの畳の上で正座し、優しい眼差しでそう言った。
おれはむくりと起き上がって姫さんと爺さんをみた。「お主、寝ていたのでは」といきなり起きたおれを警戒するように見た。爺さんは姫さんをかばうようにおれを睨み付ける。おれは頭をかきながら、はァとため息をついた。
「そうカッカすんなよ、コノヤロー。」
「……お主、どこへ行く」
「野暮なこときくなよ。アレだ、散歩だ。今夜はお月さんがでてるからな。」
「お主は仲間が心配ではないのか」
暗闇の中でも、姫さんがおれから目をそらさずに言っていることが伝わる。
………《仲間》か。おかしいな。おれは手を組んだだけ。ただの居候だ。でもおれはこんな夜中に出かけようとしている。懐にはちゃんとモバイレーツとジャンプキーがしまってある。白衣のポケットに手を入れ、姫さんに向き合い言った。
「………大体な、姫さん。守りてェモンってのはなァ、 守りてェなんて思わなくても守れるんだよ」
自然とぽつりとそんな言葉が口からこぼれた。…………どうやらおれは随分ぬるくなったみたいだ。自分が宇宙に悪名を轟かせていた事を忘れるくらいに。おかしいな。おれはモブAのポジションに収まろうとしていたのに。どうしてこう面倒ごとにわざわざ突っ込もうとするのか。
「……丹波。私の記憶では今夜は月など見えぬはずだが」
「えぇ。雲が覆っておりますな」
「……まったく海賊衆はどうしてこう、ひねくれておるのか。海賊が血も涙も通っておらぬなど虚言であったな。あの海賊衆なら……」
おれはゴーカイガレオンを後にした。そんなおれを姫さんと爺さんが生暖かい眼で空を見上げていたなんて知るよしもなかった。
符抜けていることに気づいたからちゃんと勘を取り戻さねェと。さてさてちょっくら“出稼ぎ”にでも行きますかね。
ところ変わって、ザンギャック艦隊。ちょっくら時間を食っちまったが、まだ間に合うだろう。いやァ、こうも簡単にザンギャックの艦隊に侵入できるとは。拍子抜けだな。ジャンプキーを取り出し、ぬらりひょんの変身を解除する。ジャンプキーがあってこその成果だな。
人のよさそうな笑みを浮かべて、皇帝殿下、ワルズ・ギルに近づいた。「貴様どこからわいてきた!?」はいはい、黙ってください、コノヤロー。注射を取り出し、問答無用とばかり、ワルズ・ギルの腕を取った。
「傷がうずくーー!注射はイヤだァァァァァ!!」
…………ハイ、落ちたー。この薬はよく効くが睡眠の副作用があるんだよな。さっきまで注射にびびっていたヤツがおとなしく眠っている。うん、脈もよし。皇帝殿下はしばらく目を覚ますことはないだろう。と言っても三日くらいだがな。治療が終わったので皇帝殿下の側にいた側近の奴に請求書を突きつけた。
「……な、なんだこの金額は!?」
何ってこれくらい当然だ。だれが皇帝殿下を治療したと思っている。わざわざこちらから出向いた交通費も含めて、もろもろの金額だ。そんな風に追い詰めると、しぶしぶながら支払いに応じてくれた。さっすが、宇宙帝国。資金が潤ってるな。
おれが支払いを計算していると、ひとりの怪人がこの場から出て行こうとしていた。あいつはジョーが相手にしていた剣士か。緑の怪人がどこへ行くのかと問う。
「答える必要はない。ボスのご命令がないからな」
「飼い犬はご主人の言うことしかきかないのね」
呆れたとでも言いたげに緑の怪人はつぶやいた。今のは聞き捨てならない。
「犬はエサで飼える。
人は金で飼える。
だが、壬生の狼を飼うことは何人にも出来ないってな!」
ジャンプチェンジ!斎藤一に変身。今日は特別だ。新撰組時代の斎藤さんだ。近くにいたゴーミンに斬りかかる。悪、即、斬!
「お、おまえはッ、まさか……」
「全員かかれ!!侵入者だァァ!!」
「何者だ、貴様!」
もう一度ジャンプチェンジ!空中で回転しながら着地と同時に木刀をたたき込む。
「宇宙一馬鹿な侍だコノヤロー」
___その日、ザンギャック艦隊の中を白い頭をした鬼のように強い男が血の雨を降らせた。これは後に【白夜叉の襲来】として語り継がれ、その鬼の正体は謎に包まれた。一説によると、白夜叉は悪名高い《死の外科医》ではないかと唱える歴史研究家がいる。
数十年後、とある惑星の教科書におれに関する記述があり、冷や汗を流すことになることをおれはまだ知らない。
side マーベラス(ゴーカイレッド)
翌日の朝、ジョーの置き手紙が発見された。【一人でけじめをつけたいことがある】そう書かれていた。派手にやられたようで背中が痛む。ソファから起き上がり、仲間たちに声をかける。
「連絡してみましょう」
「やめとけ。あいつが一人でって、言ってんなら放っておけ」
「でも、マーベラス。トオルもいないし………」
「あいつらなら大丈夫だ。絶対帰ってくる。
それよりも____メシだ」
皿に山盛りに乗せられたメシを取る。右手にホットドック。左手に骨付きチキン。「無理をしない方が。まだ動ける状態ではないはずです」うるせェ。肉にかぶりつく。「大丈夫!いつも食べまくって元気になってたから」と茶化すルカの手を払いのけた。邪魔すんな、メシが食いずれェだろ。
「一つ聞いてよいか」
「なんだ」
「どうしてあの男が戻るといえるのだ。大丈夫と確信できるのだ」
「決まってんだろ」
____ゴクリ
肉を飲み込んで答えた。
「____おれとあいつだからだ。初めて会った瞬間に運命は決まった」
おれは数年前のことを思い出していた。
ナビィとともに降り立った星はすでに焼け野原だった。この星もザンギャックに滅ぼされたか。
「裏切り者を赦すな。捕まえろ!」
遠くの方でザンギャックたちが騒いでいる。一人の兵士が戦っていた。なんだ、あいつ。やるな。
「ザンギャック同士でおもしれェことしてんな。手かしてやる」
足で刀をはじき、そう声をかけた。満身創痍ので体で男は、声を絞り出した。
「………宇宙海賊か。おれを助けても金はふんだくれないぞ」
「んなもんはいらねェ。おれがほしいのはおまえだ」
背中を預け、おれたちはザンギャックに応戦した。おまえの剣の腕と、その眼が気に入った。だから、おれは男を海賊に誘った。
「おれの首をみろ。気が変わるだろ。これは、発信器になっていて常に奴らが追ってくるはずそうとすると、電撃が放たれて下手すればしぬ。」
ふん。そんなものがどうした。それがあるせいでできないのなら、壊せばいい。おれは両手でそれをつかみ、にやりと笑った。
「馬鹿か、おまえ」とごちゃごちゃ言うが知るか。要はこれをこわせばいいんだろ?手に力を入れて引っ張った。ガチャンッと音をたてて、それは破壊された。
「おれには夢がある。宇宙最大のお宝を手に入れるっていう夢がな。その夢を掴む旅におまえを連れて行きたくなった」
「……つきあうぜ。夢の経てまで」
それがおれとジョーの出逢いだった。
おれがそのときの話をすると、「………そんなことがあったんだ」としみじみとルカが言い、「なんだかうらやましいですね」とアイムが言った。
サムルァ~イの女が立ちあがり、言った。
「おまえたち地球がどうなろうと関係ないはずだろう?」
「あァ。関係ねェな。これはおれたちの戦いだ」
「その怪我では無理だ。手を貸そう」
女がそう申し出たが、必要ねェ。
「いらねェお世話だ。おれの背中を守ってくれる奴がちゃんと来る」
ジョーは絶対戻ってくる。それにトオルもなんだかんだ言っていい奴だ。いまはいないが、あいつのことだ。何か考えがあるんだろう。好きにさせておけ。おとなしくやられっぱなしなのは性に合わねェ。気に入らねェ。おれたちには仲間がいる!仲間のためにおれたちは戦ってんだ!
しばらく戦っていると「遅くなってすまない」とジョーがやってきた。
「べつに。いい肩慣らしになったし」とルカが肩を回しながら言う。
「ちょうどあたたまってきたところです」とアイムがほほえむ。
「どうせならもう少し遅く来ても……いてて」ハカセが強がっていう。ったく、締まんねェな。
「「「「「ゴーカイチェンジ」」」」」
派手にいくぜ!
地に伏したザンギャックをみて身構える。いつもならこのタイミングで巨大化するはず。だが、そうなる気配がしない。おれたちが首をひねっていると、トオルが建物から降り立ち、告げた。
「しばらくザンギャックの艦隊は動けねェよ。」
ハカセが「どういうこと?」と尋ねる。返ってきたトオルの返事に拍子抜けした。ワルズ・ギルに注射を打ったらしい。3日くらい眠り続ける所謂劇薬を。それをきいたハカセは開いた口がふさがらないというように口をパクパクとさせていた。つまり、トオルはトップの皇帝の馬鹿息子を叩くことで下っ端が動けないようにした。それが怪人の巨人化を防いだことになったのだろう。
「あの馬鹿な皇帝殿下はおとなしくしてるがいまごろザンギャックは後処理で大変だろうし、いちいち地球にかまってる暇はない。しばらくは地球も平和ってところか。」
ニヒルに笑いながらおれたちに言う。さすが《死の外科医》だな。こんなブッ飛んだ行動するのは宇宙を探してもトオルしかいない。
よし。全員揃ったところでメシだ。今日も肉を頼むぞ、ハカセ。