勘違いヒーロー、誕生。 作:さらだ
これは一匹狼の浮浪医師の話である。
ザンギャックの侵攻により宇宙医局は弱体化し、命のやりとりをする医療もついに弱肉強食の時代に突入した。その危機的な医療現場にの穴埋めに現れたのがフリーランス…………すなわち、一匹狼のドクターである。
たとえば、この男。
群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼の武器だ。
はぐれ(ヤブ)医者、トオル。またの名を【死の外科医】。
side トオル
朝からハカセが新聞を持って騒ぎたてている。懸賞金が上がったらしい。オメデトウ、君らもザンギャックに目をつけられたんだね………(遠い目)
やつらは、なかなかしぶといからこれからも長いつきあいになると思う。これはおれの経験談から基づいてる。倒しても倒しても沸き上がってくるゴーミン兵ども。おれの懸賞金に目がくらんだ賞金稼ぎたち。ジャンプキーがなかったらどうなってたことやら…………おれはどっかの戦闘民族みたく、わくわくしねーし、番傘は持ってねーんだよコノヤロー。
「この額なら結構どころか、もうすぐ赤き海賊団と並んじゃうよ……」
「赤き海賊団というと、昔マーベラスさんがいらっしゃったという……」
「たしか、あっちは__」
バサッとハカセが持っていた新聞は、マーベラスによって取り上げられた。マーベラスは「そろそろ次のお宝探し始めようぜ。おい、鳥。」と定位置のいすに腰掛けた。
「もう、鳥じゃないってー。Let’s お宝ナビゲート!レンジャー、レンジャー、デンジャラス。皆に危険が迫ってるー。……あれ、なんかオイラいつもとちがう」
そうか?いつも通りよくわからない占いだが。ナビィがあっちこっちにぶつかったせいで物が錯乱している。ただ、新聞のマーベラスの手配書に刺さったダーツの矢を見て、妙な胸騒ぎを感じた。
お宝探しのために全員外に出かけることになった。あれ、なんでこんな所にバナナの皮が落ちてんだ?いまどきこんな雑ないたずらに引っかかるやつなんているわけな___「オワッ!ちょ!いてー」………訂正、いました。ハカセが尻餅をついて転んでいた。
「よォ、マベちゃん」
どこからか声をかけられた。瞬間、マーベラスの顔色が変わる。
「「「「「マベちゃん?」」」」」
きれいにマーベラス以外の声が重なった。階段の上部を見上げると、サルがバナナを食べていた。………マーベラス、サルと知り合いだったのか。内心そんなことを思っていると、それを口に出したハカセはマーベラスに頭をつかまれ、おれはぎろりと睨まれた。どうやら顔に出てたらしい。
「相変わらずふざけてんな、バスコ」
「あ、ばれちゃった?おれのこと。覚えていてくれてたんだ。」
チャラけた口調の男がサルの背後からあらわれた。あいつ、どっかで見覚えがあるような、ないような。…………?
「マベちゃん、いま船長やってんだって?えらくなったもんだねェ。」
「……あんたのおかげでなァ。こんなとこまで何しにきた」
「決まってんだろ、宇宙最大のお宝!あるんだろ、この星に。このおれがあきらめるわけないっしょ」
「………そうだな、あんたはそういうやつだった」
マーベラスはそう言うなり、いきなり発砲した。だが、サルによってその銃弾ははじかれる。チッと舌打ちをして、今度はサーベラスを振りかざした。どういうことなのか状況が読み込めないおれたちに、何故か巨大化したスゴーミンがでてきた。バスコは「じゃね、マベちゃん」と去って行く。おいおい、この始末おれらがするのか?勘弁してくれよコノヤロー。
ゴーカイガレオンに戻るなり、マーベラスはバスコについて問いただされた。不機嫌な様子でだんまりだったが、ジョーやルカたちにつめられ、白状した。
「バスコ・ダ・ジョロキア。赤き海賊団を裏切って、壊滅に追い込んだ男だ。この船で一緒に旅をしていた仲間は三人。おれとバスコと、そして船長のアカレッド。宇宙最大のお宝を手に入れるため、宇宙に散らばってたこいつを集めていた。レンジャーキーを探して星から星へ。ザンギャックとやりあうこともあったが、まァ楽しい冒険の旅だった。だが、______」
そうして一同でマーベラスの回想が始まったのだが、語り終えたときには見事に船内の空気は重苦しくなっていた。下手に冗談もいえないな。結論的にいうと、バスコが裏切って、アカレッドに助けられ、アカレッドとの約束のために宇宙最大のお宝を見つけるらしい。それが裏切ったとはいえ、かつての仲間だったバスコに何か思うことがあるのだろう。マーベラスはさっきからますますだんまりである。
すると、この重苦しい空気を助長するかのように曲が流れ出す。
こ、これは……!
HUNTER×HUNTER(劇場版)の主題歌だ。アニメのエンディングではイントロの入り具合もぐっときた。うぅ。メルエムとコムギを思い出して涙が出てきそうだ。音楽のせいか、マーベラスも悔しそうな顔をしながらも目にはうっすらと涙の膜がはっている。その【空気】に感化されてか、全員うるうるしてきている。
こんな状況を作り出すことに加担することになって申し訳ない。さきに謝っておく。おれは白衣のポケットからモバイレーツを取り出す。
「___あ、もしもし?」
「「「「「着信音かよ!!」」」」」
全員きれいにずっこけていた。おれは耳に当てて「間違い電話?いま取り込み中だから」といった。「なんで状況にぴったりなの!」とルカにキレられ、「紛らわしいので変えてください」とアイムに懇願された。せっかく気に入ってたのになァ………「………誰からだったんだ?」とジョーに聞かれたので「たぶん多串くん」と適当に答える。すると、険しい顔をしたマーベラスが「貸せ」というのでおれのモバイレーツを渡した。
「マベちゃんさっきぶり~。」
「………バスコか。ちょうど噂していたところだ」
「まじで?おれってば人気者~。今日はごめんね!途中で野暮用入ってさァ。明日暇ならもう一回お話しない?」
「暇じゃないが、あけてやる。さしでケリつけようぜ。」
ガチャっと切ると、おれに押し付け、「あいつに関しては手出し無用だ。」といい、去ってしまった。どうしておれの番号知ってるんだ?…………ハッ!これが噂の個人情報流出か?
「相手は曲者っぽいけどだいじょうぶかなァ……」
「信じて待つしかないのでしょうか」
「……譲れないものってのがあるからな」
「しょうがない!明日もあたしたちはお宝探しだ。もしかしたら、たまたま途中で、ばったり偶然誰かさんに会ったりするかもしれないけどね」
ルカが得意気に言うと、さっきまで沈んでいた様子のアイムやハカセがぱあっと笑った。皆がマーベラスを心配している気持ちが今の中途半端なおれには少しまぶしく見えた。おれはそっとその場から一歩退き、静かに見ていた。
side マーベラス
バスコからの呼び出し場所へ向かった。砂埃が舞い、見覚えのあるシルエットとサルがいた。
「やァ!マベちゃん。よくきたねェ」
「そのなめた口、今すぐふさいでやるよ」
「……できるかなァ?マベちゃんってばさァ、相当アカレッドに懐いてたけど、どこまできいてんの?」
「なんの話だ」
「実はあの人、おれらに黙ってたこと結構あるみたいなんだよねェ。例えばこれのこととか。」
レンジャーキー!?どういうことだ。なぜ、バスコが持っているんだ!?
「あのころ三人で集めてたのは、全部じゃなかったってこと。やっぱり知らなかったみたいだねェ。じゃ、これはどう?」
そう言い、バスコはレンジャーキーをラッパに指す。「レンジャーキーにはこういう使い方もあるってね」バスコがラッパを吹くと、レンジャーキーが実体化した。
「ほら、大事な勝負だからさァ、さしじゃないじゃん、なんてツッコミはなしね。おれさ、正々堂々戦うの苦手なんだよ。知ってんだろ?」
そうだった。昔からそんな戦い方してたな。バスコはヘラヘラ笑っている。
おれが歯を食いしばっていると、「わっかりやすい悪役だな。ぶっちゃけすぎだろ」とトオルの声が聞こえた。
パッと後ろを振り向くと、「こんなところで会うなんて偶然だね」とハカセが笑い、「……レンジャーで、デンジャラスなものを探していただけだ」とジョーが言う。
そして「新しいレンジャーキーがあるならゲットしないとね」とルカが猫のように笑う。アイムもルカと一緒になっていたずらが成功したかのように笑っていた。
……おまえら、勝手にしろ。派手にいくぜ。
「「「「「ゴーカイチェンジ」」」」」
レンジャーキーが実体化すると、やりづらい。いつものザンギャックより苦戦しているようだった。それでも攻撃は効いているようで、レンジャーキーは元に戻った。バスコ、これで終わりだ!
「残念!おしい。」
は?おれが呆けていると後ろから爆音が響いた。「おれが持っていたレンジャーキー、5つじゃなかったんだなァ、これが。」とニヤニヤした顔でバスコが言う。みれば、次々とやられていく仲間たち。ふと、トオルをみると、サルを相手に奮闘していた。
「くっ……!サルを相手にするとは……この前、各方面へ頭をさげたってのに、また同じ目に遭うじゃねーか、動物愛護団体とかに。おれだって好感度とかあるんだからな!?いや、そもそもおれ指名手配されてるから好感度とか関係ねーか?わかるかサル。人間社会は複雑なんだよコノヤロー」
トオルはそうブツブツ言っている間にあっという間にサルに捕まったらしい。くそ!おれ以外、全員捕らえられた。こっちは手も足も出せない状況に追い込まれた。人質をとりやがって、相変わらず姑息な手段を使いやがる。
「さっきのレンジャーキーはマベちゃんにあげるよ」
こいつ……!まさか、はじめからおれの仲間を………!
「ぴんぽーん!前に言っただろ?_____何かを得るには何かを捨てなきゃって」
待て!バスコォォォォォ!!船に乗って飛んでいくバスコに叫んだ。バスコはおれを嘲笑うかのごとく去っていった。
だが、おれの手元にあるのはバスコから取ったレンジャーキーだけだった。