CiRCLEのアルバイト生活 〜失いながら手にしたモノ〜 作:わらびもち二世
俺は物心着く前には両親を亡くしていて、孤児だった。日本の孤児院から俺を引き取ったのは外国人で、そのまま幼き頃に海外に渡ってそこで働かせてもらっていた。
そして今日も一日の仕事が終わって人気のない道を帰る道中だった。
・・・・・・
「そこのアナタ・・・!わたくしの物になりなさい!」
いきなり金髪巻き髪の貴族のお嬢様みたいなやつに声をかけられた。背は高くてまるでモデルみたいなスタイルをしていた。見たところまだ成人はしてなさそうだ。
「なんなんだお前は、と言うか誰だよ」
「わたくしは朝倉家の当主!朝倉ルミナと言いますわ!父はイギリス人で母は日本人よ」
ですわ!とか使うお嬢様口調のやつって実在したんだな。ってかこいつ日本語変だ。
「ルミナ様。いきなりそのような事を言ってはこの方に失礼です。まずは順を追って説明しなければなりません」
傍に立っていたのは如何にもジェントルマンって感じの爺さんだ、姿勢も良く何より背も高い。
「あなたの数日間を見させていただきましたわ!屋根裏で生活させられながら色々と大人の良いように非合法な仕事ばかりさせられてるようね」
たしかに最近少し視線を感じてたけどまさかコイツらだったのか。
「ったく・・・お前らは暇人かよ・・・それで、警察に突き出すってことか?それならそれで構わないがな。寝れるところがあれば俺はそれで十分だ」
「なぜそんな事をしなければならないんですの?わたくしの物になると言うのはわたくしの偉大なる旅路にアナタにも付き合ってもらうという事ですわ」
つまりどういうことだ。コイツらは旅でもしてるのか。
「偉大なる旅路かなんだか知らねぇが、俺は俺で色々忙しいんだよ。いきなりそんな事言われても困る。それに俺には戸籍がない。実際の年齢も名前もわかんねーし、今ここで働けてるだけでもありがたいってもんだ」
「アナタ・・・随分と優しい性格をしているわね。アナタを利用している人たちはアナタがその非合法な仕事で得たお金で今も遊び呆けてるんですのよ?そしてアナタはただ少ない食事を与えられてるだけ・・・おかしいとは思わないんですの?」
「一般教養がない俺にもさすがに奴らが人間として間違ってるって事くらいは、本とかを読んで理解出来てるって。けど俺は俺の人生以外に興味がないからな、特に気にしちゃいない」
気にしてたらキリがないからな、俺は俺、他人は他人だ。
「彼等を理不尽だとは思いませんの?見たところアナタの年齢はまだわたくしと同い年くらいですわよね?憤りを感じませんの?」
正直自分の年齢なんて気にした事もないが、多分まだ未成年で通るだろう。
「他のヤツとの人生と比べたってしょうがないだろ?別に俺は今の自分に不満なんてないぞ」
実際、今までの人生で、知識、考え方、身体つき、色々なことが自分の中で糧になってる。
そんな自分を嫌いではないからだ。
「ますます気に入りましたわ・・・何が何でもわたくしと一緒に来てもらいますわ!アナタ名前は?」
「お前むちゃくちゃな奴だな!!名前か・・・・・・」
俺は雇われ先で呼ばれてる名前を思い出そうとしていた。
「もういいですわ!隆三!この者に名前を与えなさい!我が朝倉家に迎え入れます」
すると隣の隆三?の爺さんが困っていた。
「ルミナ様、急にそのような事を言われても困ります。迎え入れるにしても色々と手順と言うものがあるのですが」
「まったく・・・ならいいですわ!そうですわね・・・アナタ今日から朝倉竜二と名乗りなさい!そして今日からわたくしと一緒に来てもらいます」
・・・・・・
「まったく埒があかないな。なぁ隆三さんだっけか・・・?このお嬢さんは何を言ってるんだ。」
「説明させていただきます。現在ルミナ様は世界中を旅をしてるのです。色々な人々にルミナ様の音楽を伝えるため、各地を回っているのです」
「音楽?なんだそりゃ、俺とは無縁の世界じゃねーか。それに俺は他人なんかに構ってられるほど暇じゃないっての、そもそもなんで俺なんだよ」
俺じゃなくても適任なら他にいると思うんだが。
「アナタは普通の人が精神を擦り切れてもおかしくない状況にいるのにも関わらず、誰も憎まず疎まず、普通でいられているわ。それはきっと誰よりも綺麗な心を持っているからよ」
「俺が普通なわけあるか。生きるために法だって犯してきてるんだぞ。普通なら裁かれてもおかしくないっての」
自分が生きるためになんでもしていいわけじゃない。
「それはアナタに選択権がなかったからですわ。だから朝倉家の力で戸籍も名前も生きるためのすべてをわたくしが用意して差し上げます!なのでアナタもわたくしの旅に協力なさい!いいわね?」
・・・・・・
「お前はなんで俺にそこまでする?俺なんかと一緒に居ても得することなんて一つもないぜ?」
むしろ損することの方が多い。気まぐれで助けるには面倒すぎる人間だと自分でも思う。
「それはわたくしが決めることよ。それにアナタといればわたくしも新しい何かが見つかるきがするんですわ・・・もちろん強制ではないんですのよ?」
最後は断られるかと思ったのか、一瞬だけ不安そうな顔をしていた。
そんな瞳を見て俺は・・・
「はぁ・・・わかったよ。そこまでいい条件出されたらさすがに俺はついて行くしかなさそうだ」
「本当に?!じゃあ竜二!今日からは家族ですわね!」
「まだ竜二って呼び名には慣れないな。えっと、それじゃルミナだったか?よろしくな、あとそっちの人は隆三さんだったな。これから世話になる」
「こちらこそ、よろしくお願いします。私は朝倉隆三。私も昔にルミナ様のお爺様に引き取られて今は身の回りのお世話などをさせて頂いております。竜二様も朝倉家の一員になるという事なので私も誠意を持って接しますのでよろしくお願いします」
なるほど、隆蔵さんも名前無き人だったのか、それか事情があったのかどっちかはわからないが。
「ありがとう。こちらこそよろしくな。でも様はやめてくれよ?隆三さん。でも次期当主とかって普通はルミナのお父さんとかじゃねえの?」
「わたくしの父と母は数年前に亡くなってるのですわ。なのでわたくしが当主になったんですのよ?」
「そうだったのか・・・すこし無神経だったな。悪い」
しまった、少し考えればわかることだったな。
「気にしていませんわ。それに、これからはアナタも朝倉家の一員です。見たところまだ成人はしてなさそうな顔立ちですわね?」
「どうだろうな。自分の歳がわかんないってのも困ったもんだよな」
「ならわたくしと同じ17歳と言うことにしておきなさい」
17歳か。
「なんでもいいぞ。それより、具体的にこれからどうするんだよ?」
「まずはこの国を出ますわ。行き先はどこでも良いのです」
「どこでも良いって、言葉わかんねーだろ?俺は英語少しと日本語しかわかんねーぞ」
日本語は元々日本にいたし、英語は仕事の関係で少しだけだけど。
「何を言っているんですの竜二?音楽に言葉は必要ないでしょう」
「ルミナ様は音楽をとても愛してらっしゃるお方。なのでピアノ、バイオリン、歌、全てとても素晴らしい才能をお持ちなのです」
なるほど、確かにルミナには似合いそうな気がするな。
「ええ。音楽は素晴らしいわよ?言葉がわからなくても伝わるものがありますわ!なので安心なさい?」
「音楽ねぇ。なるほどな。でもそれじゃ隆三さんは何をしてるんだよ?」
隆三さんはあまり音楽をやるような人には見えないんだが?
「私は音楽に秀でてませんので、ルミナ様とはまた違うことをしております。主に身体を使う仕事です。潜入捜査だったり、依頼された対象の護衛だったり。警察の介入出来ないような危ない仕事もしています」
やっぱり隆三さんは武闘派だったのか。
「なるほど、つまり俺はそっちの方を手伝えばいいんだな?それなら出来そうだ」
「何を言ってますの!?隆三がやっているような危ない仕事を竜二にやらせるわけがないでしょう?竜二にはわたくしと同じ事をしてもらいますわ」
同じことってまさか俺にも楽器をやれと!
「おいおい。俺は楽器なんか出来ないぞ。どっちかというと身体を使う仕事の方が良い!」
「ダ・メ・ですわ!!アナタはこれから変わって行くんですのよ?!そんな事をしたら今までと同じじゃないの!なので、竜二にもまずは手始めに楽器を覚えて貰いますわ!」
「は!?なんでだよー!俺はピアノもバイオリンも出来ないぞ」
今までやろうと考えたことすらなかったのに少し無理があるんじゃないか?
「楽器なんてなんでも良いのです。これからの旅で気に入った物があれば始めてみればいいんですわ。それと、これからは竜二にはわたくしに従って貰います。わたくしが竜二を真っ当な人間にしてさしあげますので危ない事は金輪際させません!」
まぁ俺を養ってくれるのはルミナだからな。
やれと言われたらやるしかないよな。
「はぁ・・・まぁ、ルミナがそう言うなら俺は養ってもらう以上何も言えないな。よし!楽器でもなんでも初めてやる!」
これが俺の2人との出会いだった。
少しだけ過去のエピソードを書きました。
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