CiRCLEのアルバイト生活 〜失いながら手にしたモノ〜 作:わらびもち二世
結局ファミレスに6人で来ることになった。
席順は俺の左に燐子、右に友希那、向かいがリサ、燐子の向かいがあこで、友希那の向かいが紗夜だ。
「客の視線が痛い・・・お家に帰りたい」
男1人だとこういう時に好奇の視線に晒されるから嫌なんだよな。
「ほらほら、いつまでもそんなこと言ってないでさ〜」
「リサの言う通りよ。たまに一緒するぐらいいいじゃない」
リサと友希那が俺に言った。
「だってお前ら目立つんだよ!俺は人に見られるのは苦手なんだ」
「意外ですね。竜二くんはあまり人の視線を気にするタイプではないと思ってたんですが」
「紗夜の言う視線とは少し違うの!」
ただ人目につくのと、好奇の視線に晒されるのは違うんだよ!紗夜さん!
そんな俺を見て燐子が、
「あの、竜二さん落ち着いてください」
「燐子?お前も共犯だからな」
燐子とリサが俺を強引に引っ張って連れてきたからな!ってか燐子って意外と力強くね?
「ご、ごめんなさい。わたし、竜二さんと色々話したくて・・・」
くっ!そんな悲しそうな声をしやがって!
「りんりんは久しぶりに竜二さんと話したかったんですよ」
はぁ・・・まぁ別にいいけどな。たまには色々と話したい事もあるし。それにしても今日はやけに眠いな。
「まあここまで来たからには仕方ない。諦めるとするか」
俺は諦めてこの場を楽しむことにした。
友希那と紗夜とリサは何やら話してたみたいだったから、俺は燐子とあこの方に話しかけた。
「そう言えば燐子、この前NFOの中でフレンド協力の申請来てたみたいだけど、気づかなくてごめんな」
NFOというのはネオファンタジーオンラインの略で燐子とあこがよくやっているネトゲの事だ。
「だ、大丈夫ですよ!あこちゃんと2人でやっていたんですけど、竜二さんもどうかなと思って申請しただけなので」
「りんりんと2人で今やってるイベントの素材を集めてたんですよ〜」
そう言えば今はイベント中だったな。最近はあまりログインしてなかったから忘れてた。
「そうだったのか、でも俺めっちゃ弱いから一緒に素材集めをやるのなかなか大変だぞ?」
「あの、竜二さんは弱くなんてないですよ?」
「だって俺たぶんそのイベボスにワンパンでやられるぞ」
燐子はこう言うが、実際あまりにも体力と防御力が低すぎて誰かと一緒にクエストをやる事はほとんどない。
するとあこが、
「だって竜二さん!防御力だけ意地でも上げないじゃないですか?!防具も揃えようとしないし!」
「はは・・は・俺、そこまでやり込む時間ないしさ。とりあえず攻撃力だけでもそれなりに上げれば、ボスは倒せるわけだし」
「ふ、普通はそれが出来ないからみんなステータスを満遍なく上げるんですけど・・・」
燐子がそんな事を言った。
実際に良い防具を揃えて、ステータスを満遍なく上げようと思うとかなりの時間がかかる。
だから俺は攻撃力特化にして他は一切上げていない。
「そうか?ともかく俺と行ってもあこ達がヒヤヒヤしながらプレイしなきゃいけなくなるぞ。ボスじゃなくても数回食らったら死ぬし」
「あんな凄い回避しながらプレイしてた竜二さんなら大丈夫ですよ!」
あこは驚いているが、意外と慣れれば誰でもできる。ただそのためには死ぬ覚悟でなんどもそのクエをやり直していかないといけない訳だが。
「あれは最初は死にまくって覚えるんだよな。だからもし一緒にやる時あるなら前もって言ってくれ。それまでに攻撃くらわないように仕上げとくよ」
「そ、そんな数日で簡単に対策出来るんですか?!」
「ああ。このスタイルでずっとやって来たからな。慣れって恐ろしいよな」
最初の頃はボスをノーダメで倒せるようになるまでめちゃめちゃ時間かかった!!
けどいつのまにか操作が上手くなったのか、ある程度やればくらわずにクリア出来るようになったわけだ。
「竜二さんさえよければあこの余っている防具上げましょうか?」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも大丈夫だ。やっぱゲームは自分で時間かけてキャラを強くしてくもんだからな」
ゲームとは言えどせっかくここまで自分でやって来たからにはこのまま行けるとこまで行ってみたいしな。
「そうですか〜。そう言うことならわかりました!」
「気持ちだけ受け取っとくよ。サンキューな」
「はいっ。何かあればあことりんりんになんでも言ってくださいね!」
俺たち3人はしばらくゲームの話で盛り上がっていた。
そんな俺を見てリサが、
「ちょっと竜二〜?ゲームの話ばっかりしてないで、アタシ達の話も聞いてよ〜」
どうやら痺れを切らして俺に話しかけたみたいだ。
「えー!だってゲームの話するの楽しいじゃん。なぁ燐子?」
「はい!楽しいですよね!いつまでも話せそうです」
「ごめんね〜燐子。友希那も紗夜も話したがってるからさ〜。少し借りてもいい?」
「あ、はい!私は大丈夫ですよ」
燐子!断ってくれてもよかったのよ!
「おいリサ!俺は物じゃないぞ!!」
まったく!せっかく燐子とあこに癒してもらっていたのに!!
「リサ姉に竜二さんを取られたー!」
もっと言ってやれ!あこ!
「こらこら〜!誰も取らないって〜」
そうこうして、友希那と紗夜が待ちぼうけてたみたいだったから俺は2人の方を見ながら友希那に話しかけた。
「それで、どうしたんだよ?友希那」
「わ、私じゃなくて紗夜が話したい事があるそうよ!」
「み、湊さん!?さっき湊さんが竜二くんと話したい事があるって言ってましたよね!?」
なんでそんな罪のなすり付け合いみたいになってるんだ。
「まあまあ、なんでもいいから話そうよ」
リサが2人の間に入って答えた。
すると紗夜が、
「そう言えばこの前、日菜を家まで送ってくれたみたいですね。ありがとうございます」
「あー、パスパレの事務所行ったときだな」
あの時は珍しく少し大人気ないこと言っちまったからな。反省中だ。
「へえ。竜二パスパレの事務所に行く事なんてあるんだ〜」
リサが驚いていた。
「たまたまだよ。行く事なんてほとんどないぞ。この前はマネージャーが帰りにみんなを送れなくなったから頼まれただけだよ」
でも多分一度頼まれたって事は次からはもっと頼まれることになるんだろうな。
「相変わらず竜二は色々な所にいるわね」
友希那。俺もたまにはゆっくりしたいんだぞ?!
「なぜ俺の周りにはガールズバンドが多いんだ!!」
「竜二さんモテモテですね!」
あこ。ハーレムなんて現実には存在しなかったんだ。あれは幻想郷だったよ。
「あこ、男1人ってのはそんなにいいもんじゃないぞ」
「竜二さんも色々大変なんですね」
「まぁパスパレもアイドルだから、何かあってからじゃ遅いし、多少はな?」
「その、日菜が送ってもらって帰って来たときに竜二くんの事、ずっと話していました」
日菜が俺の事をか。どんな事を言ってるのやら。
「あいつ変なこと言ってなかったか?」
「いつもと同じです。天才だとか凄いんだとかそんな感じですね」
「日菜はいつもそんなこと家で言ってんのか・・・」
まさかいつもそんな事を言っていたとは。
恥ずかしいからやめて!!
「私も竜二くんの演奏は素晴らしいと思っています。なのでそんなに変な話ではないと思うのですが」
「紗夜の言う通りよ。竜二はもう少し自信を持ちなさい」
友希那と紗夜はこう言うが、別に自信がないわけじゃない。ただ俺は俺を過大評価してないだけなんだがな。
「まぁ日菜の言うことに関しては反論するのも面倒だからいちいち言わないけどな」
「ともかく来年の竜二の晴れ舞台。Roseliaも一丸となって応援するわ。楽しみにしてるわよ」
どうやら友希那達にもGuitar spiritの話は伝わってるみたいだ。この分じゃ皆に伝わってるんだろうなぁ。
「ありがとよ。いい演奏出来るように頑張るよ。友希那たちも頑張れよ」
「ええ。私たちも頑張るわ」
友希那が優しく微笑んで答えてくれた。
なんか・・・急に睡魔が・・・・・・
そんな俺たちのやりとりを見てリサが、
「友希那って竜二にはなんか優しいよね〜」
「リサ!?そんな事ないわよ!私は誰に対しても態度を変えたりしてないわ」
「でも友希那さん!明らかに竜二さんと話してる時は口調が柔らかいですよ!」
あこが友希那に言った。
「それを言うなら紗夜もそうじゃないかしら!?」
「わ、私は竜二くんの事を同じギタリストとして尊敬しているので当然です!白金さんもいつもより楽しそうに話しています!」
友希那に話を振られた紗夜は、今度は燐子に話を振った。
「あの、私は!ただゲームの話とかわかってくれるので!あこちゃんと一緒で話しやすいんです!」
「そうだねっ!りんりん!あこも3人で話してる時はすっごく楽しいんだ〜!」
・・・・・・・・・
「相変わらず竜二はモテモテだね〜!竜二?」
リサが竜二に問いかけるけど返事がなかった。
「り、竜二さん!あの、そんなに近くに来られるとその・・・・・・あれ?眠ってます。・・・疲れていたんですね。きっと・・・」
竜二は燐子の肩にもたれかかったまま寝てしまっていた。
そんな竜二を見てリサが、
「竜二毎日夜更かししてるって言ってたからな〜。ゲームばっかりやってないか心配だよ」
「燐子?少し重たいかもしれないけれど、竜二をそのまま寝させてあげてくれない?今日は少し無理に誘ってしまったし、休ませてあげましょう」
友希那は燐子にそのまま寝かしてあげるように提案した。
「あ、はい。私は全然大丈夫です、それに・・・竜二さんの寝顔・・・かわいい」
燐子は自分の肩に寄りかかってる竜二の顔を見てそう言った。
「いつもダルそうにしてるもんね〜!写真とってひまりに送ってあげようかな!」
「リサ姉後で怒られるよ!?」
「宇田川さんの言う通りです。竜二くんに怒られますよ?」
「え〜!じゃあさ!ひまりに送らなければいい?撮ってここにいるみんなにだけ送るから!ね!?」
あこと紗夜に反対されたけど、リサは諦めなかった。
「今井さんがそこまで言うなら仕方ないです。後できちんと送ってくださいね」
「紗夜さん切り替え早いです!!あ、でも!後であこにも送ってね!リサ姉」
紗夜とあこも写真をもらえるならそれでいいらしい。
すると友希那が、
「あこ?少し静かにしなさい。竜二が起きてしまうわ。・・・こうして見てると、本当に何も抱えてなさそうな無邪気な顔ね」
友希那は隣で眠っている竜二の少し長くて目が隠れてしまっている前髪を掻き分けてから優しい声でそう言った。
「そうですね。竜二さんは、あまり自分の事を話したがりませんから」
燐子も少し寂しそうな顔でそんな事を言った。
「そうね。いつも人の事ばかりで自分の事を蔑ろにし過ぎなのよ」
「湊さんの言ってることもわかります。悩みの一つも言ってくれませんから」
友希那と紗夜が話しているところにあこが何かを思い出したかのように言った。
「あこ、前に竜二さんにどうしてRoseliaや他のバントのみんなにそこまで手助けしてくれるのか聞いた事があるんです」
「へ〜!そんな事があったんだ。聞かせて聞かせて!」
あこの話にリサは驚きつつも興味津々だった。
「その時の竜二さんは珍しく真面目に答えてくれたんです。その時たしか、こんな事を言ってました。
『俺はな、昔とある人に大切な言葉をもらったんだ。その人はな?俺にまず自分から人を全力で愛しなさいって教えてくれた。
自分にとって大事かなんて後からわかるからまずは出会った人々を全力で愛しなさい。
嫌われても恐れられても愛し続ければいい。
そうしたらきっと最後には貴方は出会った人々に愛される存在になれる。家族のようなかけがえのない存在にさえなれるから。
ってな。その人けっこう無茶苦茶な事言うだろ?でも俺は何故かその言葉に惹かれたんだよな。
愛すってよくわかんないけどさ、ただそんな風に生きられたらとも思ったし、その人が何を思ってそう言う風に生きてるか俺はずっと知りたかったんだ・・・・・・つまりこれが理由と言えば理由だな』
って竜二さんは言ってたんです。この後はいつもの飄々とした竜二さんに戻っちゃったんですけど」
皆あこの話を聞いて色々考えていたところに友希那が真っ先に答えた。
「今の話を聞くとその人はきっと、竜二にとって家族のように大切な人なんでしょうね」
「そこまで大胆な事を言える人ですから、きっと大きな器を持った人なんでしょう」
友希那の言葉に紗夜が答えた。
すると燐子が、
「竜二さんはRoseliaを大切な家族のように思ってくれてるんでしょうか・・・?」
「アタシはきっとそうだと思う」
リサは少し頷きながら答えた。
「あこはもう竜二さんの事をお兄ちゃんみたいに思ってますよ」
話が一息ついたところだった。
「ふあ〜・・・あ、燐子ごめん少し寝ちまってたみたいだ。」
どうやら俺は座ったまま燐子にもたれて寝ちまってたみたいだ。
「だ、大丈夫です。それに、少し役得でしたから・・・」
燐子は何故か少し顔を赤くしている。
「夜更かしばっかりしてるからだよ〜?夜ゲームばっかりしてるんじゃないの?」
リサよ!決めつけは良くないと思うぞ!確かにゲームもしてるけど!
「いいだろー別に、それよりもしかして俺の事待ってて帰れなかったのか?」
だとしたら申し訳ない事してしまったな。
「ええ。誰かさんが燐子の隣で気持ち良さそうに寝ているから、仕方なく起きるまで待っててあげたのよ?感謝しなさい」
友希那が少し悪戯っぽく微笑んで言った。
「まじか!起こしてくれてよかったのに!」
「あんな寝顔見せられたら起こせませんよ・・・」
紗夜・・・?俺はどんな顔をしてたんだ!まさか変な顔だったのか!?
「一体俺はどんな寝顔してたんだよ!!さすがに恥ずい!!早く出よう!今すぐ帰ろう!」
まさかこんなとこで寝顔見られるなんて!完全に油断してた。
「アタシ写真撮っちゃった〜!」
なん・・・だと・・・?
「おいリサ!なんて事しやがるんだ!今すぐ消しやがれ!」
こいつ!まさかそれをRoselia内で回そうとか思ってるんじゃないだろうな?!
「だーめ!それに、そろそろ帰らないとだし!」
「そうね。そろそろ遅いし帰りましょう。あ、リサ?後でその写真私にも送っておいて」
友希那ぁぁぁぁぁぁぁ!
「はぁ・・・なんで俺がこんな目に・・・しくしく」
「竜二さん!これも愛ですよ愛!」
あこは何楽しそうにしてるんだか。
「ふふっ・・・宇田川さんそれでは意味がわかりませんよ」
「お前ら何笑ってんだよー」
なんでみんなしてニヤニヤしながらこっちを見るんだ!!
「いや〜、これも家族愛って言うか〜」
「ふふっ・・・リサ?いいこと言うじゃない」
家族愛ってなに!?なんなのなんなの!?
俺が寝てる間になにがあったの?!
「意味わかんねええええ!燐子どういうことだ!?」
燐子なら答えてくれるはず。
「ふふっ・・・竜二さんは皆さんに本当に愛されてますね・・・って事だと思います!」
「お前もかぁぁぁぁ!」
こうして俺たちはファミレスを出で帰ることにした。
ほのぼのした話を書かれてればなと思っています!