CiRCLEのアルバイト生活 〜失いながら手にしたモノ〜 作:わらびもち二世
あれは離れた街まで撮影の仕事でバスで通ってだ時の話。
今日も仕事が終わって夕方頃、いつもの人気のないバス停でバスを待ってるそんな時だった。
雨が降ってきて向こうから走ってくる人が見えた。多分男の人だろう。
しばらくするとその人がバス停に来て雨宿りをしていた。多分傘を持って来てないのだろう。
「・・・・・・・・・」
もしかして、私が白鷺千聖だと気付いて止まったのかと思ったが、どうやら違うみたいだ。
男の人と2人きりになるのは苦手な私だけど、この人は何故か嫌な感じが全然しなかった。
そもそも私の事を意識してさえいないような感じだった。
横目に少しだけ顔を伺ってみた。見た感じ私より少し年上の男性なのだろう。
不思議な雰囲気な人だなと思った。雨を見ていると言うよりも、何処か遠くを見ているようなそんな瞳に吸い込まれそうだった。
まるでこのまま、何処か遠くへ消えてしまいそうな儚さで、そんな彼と私は少し話をしてみたいと思っていた。
「あの、よければこれ。使いますか?」
私は勇気を出して話しかけてみた。
「ん?ああ、ありがとう。でも大丈夫だ。ここから走っていけばすぐだから。それに俺が借りたらそっちが濡れちまうだろ?」
さっきの表情とは一変して、すごく優しげな表情で答えてくれた。
「いえ!私はここからバスなので、またここに来た時にでも返してくれればいいですので」
「・・・・・・そっか。じゃあありがたく使わせてもらうな。ありがとう」
「えっと、もしよければ名前を聞いても?」
「あ、悪い!そうだよな。傘借りるんだから名前くらい言わないとな。朝倉竜二って言うんだ」
「朝倉さんですね。私は白鷺千聖っていいます」
「白鷺さんだな。よろしく。しばらくはこっちの方に厄介になるからここのバス停をこの時間通るときもあると思う。その時に傘を返すよ」
私は驚いた。白鷺千聖と名乗っても何も反応がなかったからだ。そこまで有名ではないにしろ、全く知らない人と出会う事はなかったからだ。
「そうだったんですね。私もしばらくはこっちに仕事で来ているので帰りはよくこの時間のバス停にいますから」
「へぇ。そうなのか、まだ若いのに仕事なんてすごいな」
「い、一応学生なんですけど!バイトみたいなもので・・・・・・」
何故が咄嗟に嘘を付いてしまった。芸能人という目で見られたくなかったのかもしれない。
「そうか。まぁどっちにしろ頑張れよ。俺はそろそろ行くな〜」
「はい。それではまた」
不思議な人だった。ここまで真っ直ぐ目を見て話してくれる男性は今まで出会ったことはなかったし、下心がなくとても綺麗な瞳をしていた。
あまりの瞳の美しさに私の方が少し緊張してしまっていた。
朝倉さんに傘を貸した日から3日経った。
今日も雨は土砂降りだった。でももしかしたら今日会えるかもと期待している私がいた。
「よ!白鷺さん!3日ぶりに会ったと思ったらまた土砂降りかよー」
本当に会えるとは思っていなかったから驚いた。
けどそれよりもまた雨の日に会ったことが何より可笑しかった。
「ふふっ!そうですね。よければその傘まだ使ってくれても大丈夫ですよ」
これでまた会うことが出来ると思うと何故だか少し嬉しくなってる自分がいた。
私は何故だかこの人は悪い人ではないと確信していた。
「本当に助かる。次こそは返すからな」
「はいっ・・・あの!もしよければその、朝倉さんはこっちに来てなにをしている方か聞いても・・・?」
朝倉さんが何をしてる方かせっかくだから聞いてみることにした。
「俺か?そうだな。一応仕事でこっちに来てるんだ。短期のバイトみたいなものだけどな」
どうやらまだ若そうに見えるけど社会人だったみたいだ。
最初の雰囲気が大人だったからか、余り驚かなかった。
「そうだったんですね。その・・・朝倉さんはテレビとかってあまり見ませんか?」
私は少しだけ自分の事も話したいと思い始めていた。
「テレビか?そうだな。あまり見ないかなぁ。どうしたんだ急に?」
思った通り、朝倉さんはテレビをあまり見ない人のようだ。
「実は私・・・芸能活動をしているんです。この前は嘘を言ってしまいすみません」
「へぇそうなのか!そりゃすごいな。まさか芸能人だったとは」
朝倉さんはすごく感心しながら驚いていた。
「あんまり有名ではないんですけどね」
「でも学生やりながら頑張ってるんだろ?なら普通にすげーと思うぞ」
しみじみと私にそんな事を言った。
素直にここまで言われるのはあまりないからか、
少し気恥ずかしかった。
「そこまで言われるとなんだか気恥ずかしいですね」
「そういうもんか・・・?よしっ!じゃあ次にあった時には今度こそ傘返すし、その辺の話も聞かせてくれよ」
朝倉さんもどうやら私に興味を持ってくれたみたいだ。
「その・・・もし今度会ったら少しだけ相談をしてもいいですか・・・?」
普通なら相談出来ない事だけど、ここでたまたま会った朝倉さんになら相談してみるのもいいかもしれないと思っていた。
「おう。なんでも話してくれればいいぞ。それじゃそろそろ俺は行くから。じゃあなー」
それから2週間が過ぎた。もしかしたらもう会えないかもなんて諦め始めていた頃だった。
「よ!今度は結構久しぶりだな。2週間ぶりくらいか?」
急に声をかけられて驚いた。でも何より朝倉さんが約束を守ってくれたのが嬉しかった。
「あ、朝倉さん?!もう会えないかと思っていました!」
「ははは!ちゃんと傘返しに来たぞ!それに芸能活動の話も聞かせてもらってないし。ささ!悩みでも聞かせてくれよ」
無邪気に笑う朝倉さんは少し子供っぽかった。
「あの、あんまり楽しい話じゃなくても良いでしょうか?」
「全然いいぞ。なんでも話してくれ」
「実は・・・最近私、アイドルグループの活動をしていたんですが、ステージで大きな失敗をしてしまって、活動休止してしまったんです」
「そうだったのか。じゃあ今ここに通ってるのは別の仕事か?」
「はい。私は昔から子役などをやっていて、少しだけ仕事ももらえているのですが、他のメンバーはそうじゃなくて、でも私以外のみんなは活動再開を諦めてないんです。私は努力するだけでは絶対に出来ないと思ってるんです。あの、私って間違ってるのでしょうか?」
「・・・難しい質問だな。俺も芸能界のことはよくわかんないけど、昔からやってる白鷺さんがそう言うなら確かに間違ってはないんだろう。でも諦めずに努力する事も間違ってない」
朝倉さんはすごく真剣に考えていた。でも答えは出ていないみたいだ。
「ならいったい私達はどうすればいいのでしょうか・・・?」
すると朝倉さんはとても真剣な顔をして、
「もし1人だったらそう言う時またリスタートするにはかなり厳しい道のりだよな」
「1人だったらですか・・・?」
「ああ。だってアイドルグループって事は1人じゃないんだろ?」
「はい。私を含めて5人います」
「そうか。なら俺は大丈夫だと思うな」
大丈夫と言い切るのが腑に落ちなかったけど、きっと何か考えがあるのだろうと思った。
「その、理由を聞いてもいいですか?」
「他のメンバーがどういう人かは知らないけど白鷺さんが悩むくらいなんだから、決して悪い人達ではないんだろう?あと、メンバーの中に白鷺さんがいるなら俺は大丈夫だって思う」
今の話を聞いて納得したわけではなかったけど、そこまで深く考えてくれる事に少し驚いていた。
「いえ、私なんて全然です。確かにメンバーはみんなとてもいい人たちばかりで、でも・・・私はみんなを見限って次に行くことばかり考えてしまうんです。薄情ですよね」
「そんな事ないって、それに、見限ろうとしてる奴はそんなに悲しそうな顔はしない。それに、俺は白鷺さんが頭のいい人だと思ってるから大丈夫だと思うんだよな」
私は冷静を装ったつもりでいたにもかからず、
まるで心を見透かされているみたいだった。
「私は・・・卑怯なだけですよ」
「卑怯でいいんだよ。人間なんて人それぞれ。馬鹿みたいに諦めの悪い奴もいれば嫌ってほど冷静に考える奴もいる。でもさ、だから人が集まると面白いものが生まれるんだと思う」
「面白い・・・ものですか?」
「諦めきれずにただがむしゃらに努力してる人がいたら、白鷺さんが細かくどうやってやればいいか教えてあげればいい。そうすれば足りないところを補えるだろ?」
朝倉さんは当然のように答えた。
「でも私は努力を否定するような酷いことを言ってしまったんです。今更みんなにどんな顔をして会えばいいのか」
「だから言っただろ?そこまでグループの事を悩めるやつをみんなが嫌ってるわけない。まずは白鷺さんの正直な気持ちをぶつければいいんだ。諦めるかどうかはそれから考えればいい」
朝倉さんはまるで親がが子供に言うかのような優しい声で私に答えてくれた。
この時、私はとても大切な事を教えてもらった気がした。
諦めるにしても、みんなと一から頑張るにしてもまずは上辺だけではなくてきちんと私の気持ちを伝えなければいけないんだと気付いた。
「朝倉さん・・・」
この人は会ったばかりの私のためにこんなにも真剣に考えて悩んでくれて、そんな気持ちに応えるためにも前に進もうと私は決意した。
「ならさ!もし仲直り出来るか不安なら俺が一緒に付いて行ってさ、白鷺さんはこんなにいい奴なんだぜ!ってみんなに熱弁してやるよ!」
さっきの発言とは裏腹にとても無邪気に答えた。
私にはそれが少し可笑しくて。でもそんな優しさが何より嬉しかった。
「ふ、ふふっ・・・!朝倉さんが一緒にですか?みんなびっくりすると思いますよ?でも、ありがとうございます。今自分がなにをすべきかわかったような気がします」
「そっかそっか!それなら良さそうだ!実は俺、今日でこの街離れるんだよな。最後に役に立ててよかったよ。それじゃ白鷺さん!アイドル頑張れよ!気が向いたらテレビ見るからなー!いつか会ったら竜二って呼んでくれ!そんじゃあなっ」
朝倉さんはすごく嬉しそうな顔をして、私の挨拶を待たずにそのまま歩き始めていった。
きっとこのまま二度とこの人には会えないんじゃないかとさえ思った。
「あの!待ってください!せめて・・・連絡先だけでも教えてくれませんか!?」
精一杯の勇気を出していった。
「・・・俺の連絡先か?ああ。別にいいぞ。やったぜ!アイドルの番号ゲット!!」
また少し冗談っぽく子供みたいな反応をしていた。
「ふふっ!なんですかそれは。朝倉さんは恩人ですから、いつか必ずお礼をします」
「別にお礼なんていいよ。けどいつか会った時は敬語もやめてくれよ!それじゃ今度こそ本当に行くから、じゃあな〜」
朝倉さんがそのまま歩き出した。
本当にまた会えるのだろうか。その背中はとても遠くに見えた。このまま私の手の届かない所まで行ってしまうような錯覚さえした。
このままだと本当に何処かに消えてしまいそうで、きっと彼との会話もいつかの遠い思い出になってしまいそうで。
でもそれだけは絶対に嫌だった。
また彼と話して、今度はもっと楽しい話をしたいと思っていた。
だから私は・・・・・・
「竜二くん!!!」
「・・・・・・なんだ。さっそく呼んでくれたのか?千聖」
少し離れた竜二くんは振り向かずにそのまま答えた。
「また、また!絶対に会いましょう!!約束よ!?」
私は今の精一杯の気持ちを込めて言った。
何かを考えているのか、少しだけ沈黙があった。
「・・・・・・ああ。約束するよ」
そのまま背中越しに手を振って歩いて行った。
彼は約束を守ってくれる。そんな気がした。
いつも見てくださっている方々、ありがとうございます!
久しぶりにお気に入り登録者数を見たら100超えていました!!
正直めっちゃ驚きました!笑
とても嬉しいです!
いつも楽しく色々な方の作品を読ませていただいている側で、自分で投稿していくのは今回が初作品なのでここまでの人に見てもらえてるというのが嬉しいですね!
話はまだまだ長くなると思います。ちなみに僕の推しは誰でしょうか!?
きっとバレていないはず!コメお待ちしています!笑
それでは、これからも末長くお付き合いください!