CiRCLEのアルバイト生活 〜失いながら手にしたモノ〜 作:わらびもち二世
俺がルミナと隆三さんと出会ってから1ヶ月が経った。
今日になってようやく俺はルミナの歌と演奏を聴くことが出来た。
俺が知らなかっただけで、ルミナはどうやら世界的なアーティストだったみたいだ。
なのにもかかわらず、事務所には所属していないらしい。
それなのに世界的に評価されているアーティストだった。
「ルミナ!お前・・・すげえな。初めて聴いたけど感動したぞ」
無事コンサートも終わって、俺はルミナを楽屋に迎えに来ていた。
「当然ですわ!もっと褒めてもいいんですのよっ!?」
相変わらずですわ!口調で少しバカっぽいが演奏と歌は誰もが引き込まれる程素晴らしかった。
「まさかお前の歌と演奏にここまで感動させられるとはな」
「言い方が引っかかりますわね・・・」
ルミナは少しだけ何か言いたそうにしていた。
「まあ・・・?わたくしは天才ですのでっ!・・・・・・って、それより竜二?貴方もせっかくなのですから、なにか楽器に触れなさい。なんなら・・・わたくしが教えて差し上げますわよ?」
少し誇らしげにしていた。
まあ確かに天才と自分で言えるだけとモノを持っているからな。
「でもなぁ、あのピアノとバイオリン見せられたらなぁ。」
あんなん見せられたらいきなりピアノやバイオリンをやろうとは思えんだろ!
「煮え切りませんわね・・・・・・」
ルミナは少し呆れていた。
「んなこと言っても、今まで音楽にまったく触れて来なかったんだからしゃーないだろ」
「そうですわね・・・、ならまずは明日わたくしと一緒に楽器屋にでも行ってみるのもいいかもしれませんわね?」
「楽器屋か、行ったことないし少し興味あるかもな」
「じゃあ明日一緒に行きますわよっ」
ルミナは嬉しそうに答えた。
コンサートからホテルに帰宅した。
そして次の日の昼頃にとある楽器屋に来ていた。
どれも馬鹿みたいに高いな。
俺なんかがこんなもん買ってもらってもいいのか・・・?
「どう?何か気になる楽器はありまして?」
「うーむ、なんかどれも俺が弾いてるのを全然想像出来んな・・・」
俺は色々な楽器を見ていた。
ピアノ、バイオリン、サックス、フルート、他にも色々あったが、どれも自分が演奏しているところが想像出来なかった。
「ん?ルミナ、あれなんてどうよ?」
俺は小ケースに入っている楽器に少しだけ目を奪われていた。
「どれどれ・・・って、エレキギターじゃないっ!もっとこう・・・優雅な・・・朝倉家にふさわしい楽器を選んで欲しいのですけれど?!」
「だってカッコいいじゃん!それに俺に似合う楽器だとあれくらいしかなくね?」
ルミナの言いたいこともわかる。
けど俺にはこういう楽器の方が似合うと思った。
「はぁ・・・まあ、確かに竜二には似合いますわね・・・」
ルミナは少し呆れていた。
「ならこれで決まりだ!」
「仕方ありませんわね・・・。竜二!?やるからには全力でやるんですのよ!?いいですわね・・・?」
少し呆れていたけど、なんとか納得してくれてみたいだ。
「わかってるよ・・・ルミナの演奏を見て色々勉強させてもらうよ。」
俺は音楽には全然触れてこなかったから、ルミナの演奏以外はほとんど聞いたことがない。
「良いですわっ。いつかわたくしのような演奏を聴かせてくれるのを楽しみにしてますわよ?」
「ハードル高いなっ!?・・・まあなんとか頑張るよ・・・」
ったく・・・簡単に言いやがって。この天才さんは。
「ええ。それならあのギターを買ってきますので、待っててくれるかしら?」
「ありがとう。いつか必ず金は返すよ」
いつまでもルミナのヒモになってるわけにはいかないからな!!
「家族に買ってあげるのですから気にしなくていいですわ・・・気にするなら演奏で返してくれればいいんですのよ・・・?」
「わかった。必ず演奏で返すよ・・・」
きっと、ルミナにとっては演奏で返すというのは気を使って言ってくれたんだろう。
けど、俺は本気でルミナを感動させられる演奏をしてやろうと少しずつ思い始めていた。
こうして俺たちはしばらく買い物をしてからホテルに戻ってきていた。
夜寝る前にルミナが部屋に訪ねてきたから、椅子に座って少し話しをていた。
「なんだかんだで竜二も朝倉家の一員らしくなってきましたわね」
ふとルミナはそんな事を言った。
「そうか・・・?でもまあ、ルミナには感謝してるよ。でも俺って役に立ってるのか・・・?」
今のところ名目上は隆三さんが仕事で不在の時のルミナの護衛みたいな事をしているが、実際はヒモみたいなもんだし。
「そんなことはどうでもいいんですのよ・・・それに、一緒にいてくれるだけでも十分役に立ってますわ」
少しだけ優しく微笑んで俺にそう言った。
「ルミナがそう言うならいいけどな・・・」
「ええ。貴方はきっと誰よりも優しい人・・・ですのでわたくしが立派な人間にして差し上げますわ・・・」
ルミナはたまにこんな事を口にする。
俺を立派な人間にしたいんだとかなんとか。
「立派な人間か・・・俺にはお前の考える事がわかんねえな・・・けど、いつかわかる日が来るといいと思ってるよ・・・」
実際俺には、ルミナは眩しかった。
何故そんな生き方が出来るのかまったくわからなかった。
けどそんな生き方に惹かれ始めている自分も居た。
だからこそ音楽に触れて少しでもルミナの事を理解したいと思っていた。
「いつかきっとわかる日が来ますわよ・・・。竜二は手始めに何か大きな夢を持ってみるといいと思いますわよ・・・?」
「夢・・・か。夢かはわからんが、ルミナ達としばらく居て俺も音楽で誰かを感動させられるようになれたらいいなとは思うようにはなったよ」
俺は今まで自分の事しか考えてなかったが、ルミナの音楽を聴いて、感動し、少し憧れた。
「ならそうなりなさい。せっかくわたくしがギターを買ってあげたのですから、有名なギタリストになってわたくしのようにステージに立ちなさい」
ルミナはどうやら俺に自分と同じくらいのアーティストになって欲しいみたいだ。
「道は険しそうだなー」
「時間はたくさんありますわよ?」
確かに時間は腐るほどあるな。
「そうだな。さっそく明日から猛特訓するか」
「わたくしは天才ですので!なんでも聞いてくださって構いませんわよ?」
ほんと相変わらずだな。いつか俺の演奏で驚かせてやりたいもんだ。
「なら色々教えてもらうよ。あ、それと・・・いくらお嬢様でも普通はですわ!って日本語は使わないからな?」
「ですわっ!?」
相当驚いていた。
きっと間違った覚え方をしたんだろうな。
「誰に教わったか知らねえけど、アホっぽく聞こえるぞ」
「なんですって!?まさかこのわたくしが日本語の使い方を間違えていたなんて・・・!」
「まあ今更治らないと思うけどな」
むしろ言葉使いが変わったらルミナっぽくないからそのままの方がいい。
「朝倉ルミナ一生の不覚ですわ!!」
「まあこんなアホっぽい奴でもあんな歌が歌えるんだから世の中わかんねえよな」
「ちょっと竜二!?酷いですわよ!」
「はははっ!」
「まったく!貴方そんなんじゃ友達出来ませんわよ!」
「お前な!海外で言葉もわかんねーのにどうやって友達を作ればいいんだよ!それにお前も友達いねーだろ!」
俺は今まで年の近いやつと出会うこともほとんどなかったんだ。それにルミナも隆三さん以外とは交流がない。
「り、竜二!?い、言ってはいけない事を言いましたわね!?」
「ってかお前って学校とか通ってなかったのかよ?」
「もちろん通っていた時期もありましたわ!今はアーティストとして世界を回っているのだからしょうがないんですのよ!」
少し言い訳っぽく聞こえたが、学校に通ってた時は流石に友達はいただろう。
「なんだよ・・・お前学校通ってたのか」
「こう見えても主席でしたのよ」
「それってすごいのか・・・?俺にはよくわからん」
学校に通ってない俺からしたらどのくらいすごい事なのかも全然わからない。
「竜二・・・?一年後にわたくしは日本に行こうと思ってますの」
「日本か・・・懐かしいな」
ルミナはイギリス育ちだが、日本には少しいたことがあるらしい。
「日本で・・・貴方は学校に通いなさい」
いきなりルミナはそんな事を言った。
「は?学校・・・?無理だろ!一年後って事は俺は戸籍上18歳だろ?ったく何言ってんだか・・・」
ルミナが作った俺の戸籍は今は17歳という事になっている。
「そんなのわたくしの力でどうとでもなりますわっ。とにかく!絶対に通ってもらいますわ!」
「おいおい・・・まじかよ。学校とかいいよ別に今更」
俺は別に勉強は自主的にできるし、そこまでして通う必要はないと思っている。
「だ・めですわ!竜二には学校でちゃんと友達を作って普通の生活を送ってもらいますわ」
「待てって!さすがに顔つきでバレるだろ!」
「竜二・・・気づいていませんの?意外と貴方は可愛い顔をしているんですのよ?きっと3.4歳くらいは誤魔化せますわ!なので一年後には中学の三年生から転入させます」
「なんで中学生なんだよ!高校じゃだめなのかよ!」
「竜二にいきなり高校はハードルが高すぎますわ!まずは中学で友達作りから覚えなさい!」
ナンテコッタ・・・もはや何言っても無駄だな。
「おま!無茶苦茶だな・・・。ルミナはどうすんだよ」
「安心なさい・・・?わたくしも音楽活動が落ち着いたら竜二と同じ学校に通いますわ」
どうやらルミナも俺と同じように戸籍を誤魔化して通う気満々らしい。
「そうか・・・。まあルミナには逆らえねーししょうがないか・・・」
世話になってるし、なにより一度言い出すと頑固だからなぁ。
「まずはギターを覚えなさい!そして一年後には学校に通いながら友達も作り、日本でトップのギタリストを目指すんですのよ?」
ルミナが当たり前のように言うもんだから、俺も少しだけそんな夢を持つようになっていた。
「へいへい。せっかく拾ってもらったわけだし、俺もルミナみたいなアーティストになれるように頑張るよ」
こうして俺はギタリストとしての第一歩を踏み出した。
竜二編はまた少し違った雰囲気が出てればなと思っております。
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