CiRCLEのアルバイト生活 〜失いながら手にしたモノ〜   作:わらびもち二世

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こころメインの回です。
CiRCLEのアルバイト生活を書き始めの時に既に書いていた話です。
タイミング的にはここら辺かなと思って投稿しました!


過去編5 お嬢様との非日常。

 

俺は攫われたこころを助けに廃ビルに来ていた。

何故こんな事態になったかは後々説明しよう・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・間一髪だったな」

俺はこころを抱き抱えたまま安堵していた。

「竜二!」

こころが俺に呼びかけて来る。

 

「はぁ・・・無事かこころ?」

「私よりも竜二は大丈夫なの?!腕が血だらけじゃない!」

こころが少し慌てた声でそう言った。

俺は脆くなっていた天井が崩れて来て、咄嗟にこころを庇った時に怪我をしてしまったみたいだ。

 

「見た目より酷くないし、まー大丈夫だろ?このくらい」

実際にあまり深い傷ではなかったから大丈夫そうだ。

 

「本当に大丈夫なの!?早く病院に行かないと!」

こころは泣きそうになりながら心配そうにしていた。

 

「わかったから落ち付けって!後で黒服の人たちにでも連れてってもらうから」

「竜二がそう言うなら・・・わかったわ」

なんとか落ち着いてくれたみたいだな。

 

「こころを攫った奴は縛り付けておいたし、後は隆三さんに連絡してなんとかしてもらうから俺たちさっさとここから出よう!」

俺はさっきまでこころを狙っていた誘拐犯と一悶着あったわけだが、幸いにも怪我もなくなんとか出来たのは本当に幸運だったな。

 

 

「そうね!早く出ましょうっ」

そうして俺はこころを抱き抱えたまま廃ビルを出るために歩き出した。

 

「ごめんな?こころ。俺がもっとしっかりしてればこんな事態になる事にならなかったのにさ」

「どうして竜二が謝るの?助けてくれたのだから、お礼を言うのは私の方だわ」

何も事情を知らないこころは不思議そうにしていた。

 

「ありがとうっ!竜二」

「・・・本当に無事でよかったよ」

俺はこころが怪我一つせずに無事だったことに安堵した。

 

「でもやっぱり竜二は凄いわっ」

こころが目をキラキラさせてそんな事を言った。

 

「ん?なんだよいきなり」

「だって私、竜二なら絶対来てくれると思ってたもの!」

こころはこんな事態になったのにも関わらず、いつもの調子で俺に言った。

 

「お前は自分が危険な目に遭ったってのになんでそんな笑顔なんだよ・・・」

こころの精神は誘拐程度じゃ揺らがないんだな。

 

「そんなの当たり前よ?私、竜二が来てくれると思ってたから何も心配もしてなかったわ」

何故だかこころは俺のことをかなり信頼してるっぽい。

 

「よくそこまで俺の事を信じれるもんだな」

「・・・?当然よ?だって竜二はいつも私を助けてくれるじゃない?」

なんか俺がおかしなこと言ったみたいな感じになってる訳だが!

 

「それでも、ただの学生の俺がこんなところに助けに来て、殺されるとか思わなかったのか?相手は拳銃とか持ってたし」

隆三さんから聞いてたからよかったものの、何も知らなかったら流石に危なかったかもしれない。

 

「ううん。だって竜二は私のヒーローだもの!どんな時だって必ず助けてくれるわっ!」

こころはとても嬉しそうにそう言った。

 

「ったく、相変わらず大袈裟だなこころは」

こう言う所がこころの良いところでもあるけどな。

 

「う〜ん?竜二は私が入学してから今までいつも私を助けてくれたじゃない?・・・・・・今考えるとなんでなのかしら・・・?」

こころは不思議そうに首を傾げていた。

 

「ま、あまり深く考えるなよ」

「え〜!別に教えてくれてもいいじゃないっ!」

こころが少しだげ膨れた顔をしていた。

 

「別にいいだろ?理由なんてどうでも」

「そう?なら別の話にするわっ」

相変わらず切り替えが早くて助かる!

 

「そういえば昨日初めて知ったんだけど、竜二って香澄と仲が良かったのね。私知らなかったわ」

あ、そうか!香澄とこころって同じ年だしよく考えれば接点あるのが普通だよな。

 

「あー、そう言えば言ってなかったな。確かに香澄とは仲が良いぞ」

よくよく考えたら香澄とこころって絶対仲良くなれるだろうな。なんつーか、感性が似てると言うか・・・

 

「私はてっきり、竜二には友達が居ないと思ってたのに!」

「お前いきなり酷いな!!」

いきなりなんてこと言うのこの子は!

 

「だって、いつも大体私といたじゃない?」

こころは不思議そうにそう言った。

 

「確かに香澄たちとこころくらいしら話せる奴はいないけどな!?」

「香澄以外にも友達がいるの?」

失礼な奴だな!!

 

「なんだ?知らないのか?香澄が作ったバンドがあってそのメンバーとは仲が良いんだ」

「・・・?バンドって何かしら・・・?」

そうか、こころはバンドを知らなかったか。

とことん興味ないことには無関心だな。

 

「・・・そこから説明するのか。うーん。まぁグループで楽器演奏したり、歌ったりするみたいな・・・?」

少し適当になったが、まあこころにはこのくらいの説明の方がわかりやすいだろう。

 

「みんなで歌ったりするのね!すっごく楽しそうじゃない!」

どうやらバンドに興味を示してくれたらしい。

 

「そそ、だからその香澄がやってるバンドのメンバーとは仲が良いんだ」

「そうなのねっ。私もバンド?をやってみたいわっ」

こころがバンドをやってる姿があんまり想像出来んな。

それはそれで面白そうではあるが・・・

 

「ははは・・・じゃあ一人じゃ無理だな。学校で仲間見つけるといい」

こころには人を惹きつける魅力みたいなのがあるし、メンバーは見つかりそうな気がするな。

 

「メンバーなら竜二が居るじゃない?」

こころが俺の方を見るなりそんなことを言った。

 

「俺にはバンドやれるほどの時間がない」

本当は時間がない事もない。

けどせっかくだからこころが作るバンドってのにも興味があった。

 

「いつも私と居る時間はあるのに・・・?おかしいわ・・・」

「そ、そうだけど!とりあえず自分で探してみろよ。もし見つからなかったら手伝ってやるから!」

「そうねっ?まずは自分で探してみることにするわっ」

俺たちしばらくこころを抱えたまま出口に向かって歩いていた。

 

・・・・・・・・・

 

「ねえ竜二・・・」

こころが珍しく真剣な顔をしている。

 

「ん?どしたこころ?」

「なんでさっきの人は悪い事しようと思ったのかしら・・・?」

こころは少し悲しそうにしていた。

 

「どうして、だって世界には楽しいことがたくさんあるのに・・・」

いつも無邪気なこころも今回の件に思うところがあるらしい。

 

「・・・そうだな。こころが思うよりこの世界には悲しい事が多い、俺たちには見えないとこで誰かが苦しんだりしてるなんて事もある」

こころが真剣な眼差しで俺の答えを待っていたから、俺も真剣に答えた。

 

「でも竜二は私を助けてくれたじゃない!一緒にいる時はいつも笑顔をくれたし、私にとっては誰よりもヒーローよ?・・・なのになんで竜二がそんなに悲しそうな顔をするのよ・・・?」

そうか、俺は気がついたらそんなに辛そうな顔をしていたのか・・・

 

「こころには俺がそんな風に見えてたのか・・・けど俺はそんな大した人間でもないぞ?こころを助けれたのだって偶然知り合ったから出来た事だし」

「偶然なんて絶対に嘘よっ!私にだってそのぐらいわかるわ?」

俺は驚いた。こころがこんな風に大声で俺に意見する事が今までなかったからだ。

 

「まぁそう言うな。それに、俺も人を傷つけて来たことがたくさんある」

「竜二が?そんなの全然想像出来ないわ・・・」

こころは意外だったのか、少し難しい顔をしていた。

 

「でも事実だ・・・俺は運良く家族と呼べる大切な人達に出会ってたくさんの事を教えてもらったから今があるだけなんだ」

「・・・そうだったのね。じゃあその大切な人に出会って竜二は変わったのね・・・?」

こころは安心してくれたみたいだ。

 

「そうだ。だから、もしかしたら俺もこうなってたかも、なんて考えちまうとな・・・素直に喜べないのかもな」

多分こう言う生き方をして来た人は善悪のラインが曖昧になってしまっているんだろう。

俺も生きるために仕方ないと割り切って色々悪さをして来た。

だからこそ少しだけ自分に重ねてしまうのかもしれない。

 

「私にとって竜二は世界一格好いいヒーロー!きっと世界だって変えられるもの!誰がなんと言おうと私にとってはヒーローなのよ!」

こころは俺の辛そうな顔を見て、否定するように俺に言った。

 

「はは・・・サンキューな。でも俺は、本当に心から人を笑顔にできるのは俺のような人じゃないと思うんだよな」

「そんなことないわ!竜二はいつも私を笑顔にしてくれてるじゃないっ」

こころはこう言うが、俺に出来るのは側にいてやることくらいで他に出来る事も少ない。

 

「そうか?でも俺は俺の手の届く範囲内でしか助けれない。不器用だからな?色々な人を笑顔になんて俺には荷が重すぎる」

もっとたくさんの人を心から笑顔に出来るような人って言うのはきっと俺みたいな人間には無理だ。

 

・・・・・・・・・

 

「だからさ・・・お前なら出来るんじゃないか・・・?」

俺は唐突にこころに言う。

 

「え・・・」

こころは俺の言葉の意味が理解出来てないみたいだった。

 

「こころは本当に純粋な瞳をしてる。自分が大変な目にあったってのに俺のことやまだ知らない色々な人の事考えてる・・・」

俺にはこころほど、他人をここまで愛せる奴なんて知らない。

 

「そんなの普通よ?だって、みんなが笑顔なら私も笑顔になれるもの」

こう言う事を当たり前のように言ってのけるこころだからこそ出来るんじゃないかと俺は思う。

 

「そうだな。こころなら、俺みたいに不器用なやり方じゃなくてもっと純粋に色々な人たちを笑顔に出来るんじゃないかって思うんだ」

むしろこころにしか出来ないと思ってる。

 

「私が?竜二みたいになれるのかしら・・・?」

自信がないと言うよりは、想像出来ないのか、少し困り顔だった。

 

「俺みたいじゃなくて、こころならもっと色々な人を笑顔にできると思うぞ」

こころは否定するが俺もこころには沢山笑顔を貰ってる。

 

「こころの言うヒーローみたいなの目指してみたらいいんじゃないか?ま、無理しない程度にだけどな?」

こころは知り合った時からヒーローとか好きだったもんな。

 

「私がヒーローに・・・?私!なりたいわ!世界を笑顔にしたいもの!それに、竜二をもっと笑顔にしてあげたいもの!」

やっと理解が追いついたのか、とても嬉しそうに俺に答えてくれた。

 

「じゃあそれを夢にしてみたらいい・・・」

そして俺たちは無事廃ビルを出る事ができた。

近くに迎えに来てくれてる、黒服の人たちが駆けつけてくれた。

 

「こころ様!竜二様!大丈夫ですか!?」

「私は大丈夫よ!それよりも竜二が怪我をしているの!」

「見た目より軽症なんで大丈夫です。こころを頼みます。あと、もしよかったら俺を病院に連れて行ってくれると助かるんですが・・・」

深手じゃないとは言え、このまま血を流したまま家に帰れるはずもない。

 

「畏まりました!この度はこころ様の危機を救って頂き誠に感謝を申し上げます!本当にありがとうございます」

黒服の多分女性の人が俺にめっちゃ頭を下げてお礼を言ってきた。

 

「い、いいですよ!そんなに頭を下げないでください!とりあえず病院に連れてってくればそれで大丈夫です!」

「ありがとうございます!すぐに病院にお連れします!」

どうやらわかってくれたみたいだ。

こんなSPみたいな人に頭下げられるのもなんか心苦しい。

 

「竜二?明日はちゃんと学校を休むのよ?」

こころは車に乗るなりそんな事を言った。

 

「わかってるよ。それじゃこころ、また回復したら学校でな」

俺は窓越しにこころに答える。

 

「ええ!楽しみにしてるわ!竜二!また明日ねっ」

こころは黒服の人たちとそのまま車を乗って帰って行った。

俺も後ろに停めてあったもう一台の車に乗せてもらう事にした。

 

「竜二様、今回はこころさまの護衛のご依頼を受けて頂いて本当に感謝しています」

さっきの黒服の女性が運転しながら助手席の俺に再度お礼を言ってきた。

 

「いいですよ。隆三さんに依頼された仕事でしたし、それも今回ようやく犯人が捕まったんで無事終わりました」

つまりはこう言う事だ・・・

 

俺はもともと理由があって花咲川高校に通っていた。

その理由は俺がしている隆三さんのとこの仕事の関係で、今回は学校に潜入して弦巻こころの護衛をすると言う任務みたいなものだった。

学校にいる間でも危険が及ぶかもしれないとの事で潜入することになったわけだ。

弦巻家にも黒服を着ているSPみたいなのがいるが、今回は相手が結構危険な相手だったらしく、弦巻家から隆三さんに護衛の依頼が来たらしい。

 

そう言う訳でさっきのその仕事は無事完了したわけだ。

こころが入学してから数ヶ月、やっと張り詰めた空気から解放された。

 

「護衛以外にも色々とこころ様の面倒を見ていただいていたのでなんと感謝を申し上げたら良いか・・・」

「全然気にしなくてもいいですって!こころを世話したかったのは自分の意志ですし」

ちなみに仕事の事はこころには秘密にしている。

元々そう言う条件で仕事が来たからだ。

 

「ありがとうございます・・・!」

黒服の人が感謝しているのはそう言う理由でもある。

 

「あの、ひとつお伺いしても・・・?」

なにやら俺に聞きたい事があるみたいだ。

 

「はい。なんでも聞いてください」

「今回の一件が終わったら、竜二様は学校を辞めてしまわれるのでしょうか・・・?」

一応仕事も終わったから学校に通う理由もない。

隆三さんには通っても良いとは言われているが俺は少し迷っていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「もしよろしければ、年齢の事は口外しませんのでそのまま通って頂くことは出来ませんか・・・?このまま辞めてしまわれるとこころ様がきっと悲しむと思うので・・・」

この人の言う事はわかる。いきなり事情も言わずに辞めるとなると色々と悲しむ人も数人頭に浮かぶ。

 

「正直、ずっと通うかは約束は出来ません。けど、もし学校を辞めてもこころの事は助けてやりたいとは思っていますよ」

これが俺の正直な気持ちだった。

ずっと通うかは正直未だわからない。けどこころの事は助けてやりたいとは思っている。

 

「今はその言葉だけで十分です。竜二様、ありがとうございます」

なんとか納得してくれたみたいで俺も安堵した。

 

話していたら病院に着いたため、俺は一人で車を降りることにした。

 

「着きましたね。それじゃ、俺は怪我の手当てしてもらいます。車で待っていてください」

「はい。それでは駐車場でお待ちしていますので!お気をつけて」

 

そのまま俺は病院に入って行った。

香澄たちに会ったら怪我の事をどう言い訳しようかを考えながら・・・




ようやく投稿出来ました!
メインの話を1話進んでから1話過去編、たまに竜二編みたいな感じのストーリー形式で投稿していこうかと思っています!

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