「爆弾を使おう。」
「いやダメだろ。」
燃料の補給施設のまえで、チトとユーリが立ち話をしていた。施設には大きなタンク、隣にポンプかなにかの大きな機械が錆びて並んでいた。
「燃料に引火するでしょ。」
「でもこれあかないよー?」
ユーリが錆びたバルブを回そうとするがびくともしないようだ。バルブの周りには貫通しなかった銃撃痕があった。
「あーもうだめ。おなか減った。」
「おいユー寝るな。」
ヌコも燃料を飲めないとあきらめたのか、飛行機に引き返していた。その飛行機の燃料も心もとないので、早急に補給したいところである。目の前に燃料があるのに補給できず、かゆいところに手が届かない思いをしているチト。
「あ、」
「ちーちゃんなんか思いついたの?」
「砲弾ならいけるかな?」
「あー、あれって弾だけなら爆発しないやつもあったね。」
今までの旅で爆薬や火器にお世話になった二人。ふとそのようなことを思い出した。
「でも…」
「この辺って武器落ちてないね。」
二人の周りの建物は荒んではいるものの、戦争があった痕跡はなかった。着陸した飛行機の後ろに続く道路も、穴一つ空いていない。
「探すか。」
「建物の中にしまってあったりするしね。」
二人は補給施設の先へ続く道を歩き始めた。
*
「そういえばさ。」
「なに?」
「砲弾だけでいいの?見つけるのは。」
「いいよ。」
ユーリが歩きながら質問した。不思議そうな顔で別の質問に切り替える。
「ちーちゃんが投げるの?」
「無理だろ。」
「じゃあどうするの?」
「飛行機から落とすんだよ。」
「おぉ…」
ユーリが関心した顔でうなずく。
「その方が危なく…」
「ちーちゃんあれ倉庫じゃない?」
チトの説明を遮るように、ユーリが道路の先を指さす。開けた場所に起きな建物が見える。
「お前人の話を…」
「いいから行ってみよー!」
*
「暗いな…」
「うぅ…ちーちゃん何か見える?」
建物の中に入った二人。照明はなく中の様子はわからなかったが、ランタンを持って壁沿いに進んでいた。
「うん?」
「ど、どうしたユー?」
「壁に何か柔らかいものが…」
「えぇ!?」
驚いたチトがランタンを向けると、ユーリの手の先に何か白いものが見える。
『ヌイ?』
ヌコだった。スイッチの沢山ついた機械の上に載っていた。驚いていたチトが胸をなでおろす。
「なんだヌコか~」
「ちーちゃん怖がりだなぁ。ヌコ電気点けれる?」
『シャッターナラアケレル』
「ん?とりあえずやってみて。」
「おい、大丈夫なのか?」
『ヌヌヌヌヌヌ…』
ヌコが機械の中に入り鳴いている。音が聞こえるのはラジオからだが。しばらくすると四方の壁の下から明かりが漏れてきた。壁だと思っていたのは大きな窓であった。外を覆うシャッターが開くにつれて、外の光が差し込み中の様子が映し出される。
「おぉ…壁だと思ってたけどこれ窓だったのか。」
「ちーちゃんあれ!」
倉庫の中には戦車が並んでいた。ユーリは思わず戦車に向かって走り出す。
「すごいな。」
「これも倉庫なのかな?いや工場?」
「よく見ろユー。それぞれ形が違う。」
「どゆこと?」
「これは戦車の博物館じゃないかな。」
「はくぶつかん」
『ハクブツカン』
戦車の砲身にぶら下がって遊んでいたユーリのヌコが繰り返す。どうやら芋がわかってないようなので、戦車の周りを捜索していたチトが説明する。
「私もよくは知らないが、同じ種類のものを集めて飾ってる場所だよ。」
「だったら食べ物の博物館がよかったなー。」
『タベモノアルゾ』
戦車の上についていた、機関銃の大きな弾倉から顔を出すヌコ。
「お前はいいなー。」
「これは説明が書いてあるのかな?」
戦車の前にはそれぞれ白い板に文字が書いてあった。読めない文字も混じっていたが大体読めるようだ。戦車の横のは砲弾もガラスケースに入れて飾ってあった。玉の下に小さな説明板があった。
「えーっと、てっこう弾、・・・・に穴をあける。・・に鉄で、できている。・・さく薬はない。…これだな。」
手近に手ごろな物が落ちてないので、小銃の銃床でガラスを割ろうとユーリを探すと先の方で手を振っていた。
「あ、ちーちゃんこっち来て!この字なんて読むんだっけ?」
「お前に読める時なんかあったか?」
「失礼な…まあ読めないのが多いけど。」
ユーリが文字に興味を持つことに不思議がるチト。目的の砲弾も見つかったので、少し手伝ってやることにした。
「これこれ」
「えーっと、よん・・・せんしゃ。」
「違う違うこっち。」
別の文字を指さすユーリ。目で追っていたチトが読み上げる。
「ちと。…ん?」
「チト??ちーちゃん?」
『チト』
「え?」
「…」
「この戦車ちーちゃんって言うんだ…。そうだこの字日記に書いてあったね。」
「いや、き、きっとこれは何かの途中の文のはずだ…」
「いやあれ。」
ユーリが戦車を指さす。大きく威厳のある戦車だが、どこか精悍さを感じられた。
「ただの戦車だろ。」
「いや横、横。」
ユーリは指さしたのは戦車の砲塔の側面だった。そこには白い大きな文字で”ちと”と書いてあった。それを見ているとユーリが突然笑いだした。
「あははは…ち、ちとだってぇ…!ちーちゃんって戦車だったんだぁ。あははは…」
「…」
何が面白いのかわからないが、床に倒れて笑っているユーリ。チトは黙ってそれを見ている。
「うひひ…! あ、ごめん、こっちも見ないでぇ…思い出しぅひゃひゃひゃ…」
「こ、このー!」
ついにしびれを切らせたチト。近くにあった戦車についていた巨大なレンチを頭の上に高く上げる。驚いたユーリが逃げ出す。
「くそぅ!こいつ!」
「ひぃ!あぶぅ危ないよちーちゃ…あっ!ははは思いしぃ…わははは!」
しばらく建物の中からは、怒号と悲鳴交じりの笑い声が響いていた。
続く
作者です。飛行機を生かした作品にしようとしたら戦車要素が増えました。どうしてこうなった。
〇友情出演した戦車
最初にユーリがぶら下がっていた戦車さん:シャーマン ファイアフライ(試作型)
ちとと書いてあった戦車さん:4式中戦車 チト(試作型)
チトがレンチをとった戦車さん:アキリーズ対戦車自走砲
展示してあった砲弾:120mm高速徹甲弾(APCR)
追記:でっかいレンチは通称リトル・ジョーという戦車の履帯張力調整用のレンチです。どうでもいいですね。