「ゆー、起きろー。」
「おはよー、ちーちゃん。」
窓から外を見ると、日が高く昇っていた。昨日と違い雲もなく外が明るい。チトはすでに、雪に埋まった建物の下へ行く準備を整えていた。ユーリもレーションを頬張りながら身支度をする。
「あれ、ヌコはどうしたの。ゆーと一緒に寝てたよね?」
「あいつ、たまーにどっか行くよね。」
ヌコのことは気になったが、ユーリも準備が整ったので下の探索をすることになった。チトがランタンを付け先に階段を下り始める。階段の横には扉、おそらく人用の昇降機があったが、今は動いていないようなので階段を使う。
「ちーちゃん案外暗いとこは平気だよね。」
「でも先が見えないのは怖いな… ってうおお!」
「ちーちゃん?!」
チトが急に体勢を崩したのでユーリがとっさにリュックをつかむ。
「って、ちーちゃんここ最後の段じゃん。」
「もう床についたのか…?段があると思って足を出したら床でびっくりした…。」
どうやら建物の一番上の階の床まで降りれたようだ。目の前に暗闇が広がる。外見通り建物の内部はかなり広く、ランタンの明かりでは壁まで見通せない。
「とりあえず壁まで行きたいな…」
「ん?今なんか音が…」
「えっ!」
驚いたチトが耳を澄ます。あたりが静寂に包まれる。
「なんだ、何も聞こえない…ってうわああ!」
「電気がついた!」
急に電気がついたのでチトは驚きのあまり倒れ、ユーリは小銃を構える。先ほど音が聞こえたほうから何か出てきた。ユーリはとっさに銃口をそちらに向ける。
『ヌイー』
ラジオから声がする。照準器越しに白いものが見えた。
「何だヌコか…お前がやったのか?これ」
「ってユーリ!これ…」
明りに照らされた建物の中には、数えきれないほどの棚が見えた。棚の一つ一つは二人の背丈よりも大きい。壮大な光景に二人は息を呑む。
「…すげえ。」
『スゲー』
「とりあえず、何かないか探そう。」
二人は二手に分かれて棚の森の探索に移った。
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しばらくして二人が棚の森を抜けて、合流する。ユーリはどこからか見つけてきたカートを押していた。
「ちーちゃんの方は何かあった?」
「何か、よく分かんない瓶だけだった…。って随分持ってきたな、ガラクタばっか。」
カートには、よくわからない機械の部品など山積みにしてあった。山の上にはヌコが乗っている。ユーリはその中から一つ、機械を取り出してチトに見せる。機械は四角い箱の先に板のようなものがついていて、板の淵には戦車の履帯のような鎖の和が巻き付き、そこに鋭い歯が並んでいた。
「見てこれカッコイイよ!」
『カッコイイ』
「なんか危なさそう…、捨ててこい。」
「やっぱ武器かな?」
「早く捨てろ。」
「ちぇ。」
結局、よくわからない瓶だけを持って下の階へ行く。瓶は知らない文字で書いてあったため、何が入っているか分からなかったが、どうやら粉のようだ。降りた先に玄関と思しきシャッターが閉まっていた。広いわりに高さは無いようだ。シャッターは頑丈そうで、立ちふさがるように無数の机が並んでいた。
「なんか机の上に機械が並んでるね。」
「電気はついたけど動いてないみたいだな。」
二人は機械を調べる。機械には小さいモニターとボタンが沢山ついていた。それのほかに引き出しがあったが、多くが閉まっているか空いていても空だった。
「何も入ってないな…。」
「ちーちゃん見て見て!なんだろ?」
ユーリは薄く小さな円盤状の金属を山のように持っていた。手からいくつかこぼれ、床に落る。甲高い金属音が広い建物でよく響いた。
「うーんどこかで見た気が…多分これは『お金』ってやつじゃないか?前、本で見た気がする。」
「なにそれ?」
「物がほしいときに交換するものらしい。」
「こんなの貰ってもうれしくない…」
『タマガイイ』
「なんにせよ、昔は価値があったらしい。よくわかんないけど。記念に一つ持っていくか。」
チトは黄色に輝く穴の開いた硬貨を手に取る。
「綺麗だね、ちーちゃん。」
「やっぱ、これが一番価値がありそうだな。」
ポケットにそれを仕舞うと、二人は捜索へ戻る。
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上に比べ下の階は棚は少なかったが奥に倉庫がある様だった。倉庫もかなり広く、歩き回りつかれた二人は先に休憩を取ることにした。チトがお湯を沸かしていると、瓶を眺めていたユーリが何かに気付いた。
「ちーちゃん、もしかしてこれってお湯に混ぜて飲むんじゃない?」
「なんでわかる?」
「この絵見てよ。」
瓶には、湯気が出るコップに瓶から粉を入れる絵がついていた。
「ゆー冴えてる。」
「早速やってみよう!」
二人は沸かせたお湯をスチールカップに移し、瓶を揺らして少しだけ白い粉を入れる。ナイフでかき混ぜると粉が溶け、湯が白濁した。お腹がすいたユーが先に飲む。
「…おいしい」
「なに味?」
「なんかこう…、あったまる味。特別おいしいわけではないけど、」
続いてチトも口を付ける。
「ほんとだ、味はあんましないけどおいしい。」
「これなんかに混ぜるやつだよ、絵のお湯も色ついてるし。」
「これでも十分だよ。お湯よりおなか一杯になった感じがする。」
「そうだね。」
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その後、倉庫の奥でレーションや缶詰の箱を見つけたため機体に運ぶことにした。なぜか爆薬や弾丸もあったが予備は十分あったので置いてきた。レーションなどの箱は多く、すべては機内に入りきらなかった。仕方なく飲料水のタンクを翼下のロケット発射用レールに括り付け機内に空きを作った。幸い、飲料水のタンクは円筒形で抵抗も少なく、二つあったためバランスも悪くなく飛ぶのに支障はなさそうだ。二人でエンジンをかけ、機体は離陸した。
「食べ物も補給できたし上へ行くか。」
「いいんじゃない?あ、そうだヌコ。」
『ヌイ?』
ユーリがポケットから何か取り出した。重い金属音がする。
「20いっぱい持ってきたぞ。」
『アリガテェ』
「またそんなもの持ってきて…」
チトはスロットルを上げ、操縦桿を引く。ソードフィッシュはゆっくりと、しかし着実に高度を上げていった。
続く
作者です。作中の粉はヤバいものじゃありません。コーヒーに入れる粉ミルク、いわゆるクリーミングパウダーです。お湯で溶かすと案外おいしい。(注意:空腹時に限る)
〇前回、飛ばした追加装備について
本来、機体下部魚雷用パイロンはないが機体下に大きめの増槽が付いている。翼下には本来MK1では強度不足で付けられなかったロケット発射用レールがついている。これは終末戦争後に作られた新素材によって強度・耐熱性が上がったためである。車輪には氷雪地や不整地用の頑丈なそりが追加されている。整地で干渉しないよう、そりの位置は車輪から少し高めである。
あとユーリが持ってた機械…もといチェーンソーは武器ではない。(サメ映画を除く)