空路終末旅行   作:月島 星

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価値

「何にも見えないね、ちーちゃん。」

「弱ったなぁ。」

 

 

 二人は霧の中にいた。新たな階層に難なく上がった後、当てもなく飛行していた。しかし、ユーリが近くに都市のようなものを見つけたというので、半信半疑ながらチトは、都市のあるという方角を目指した。だが行く手を濃霧が阻む。

 

 

「ほんとにこっちなんだろうな。」

「多分。ってちーちゃん前!まえ!」

『マエ!』

「おうぅ!?」

 

 

 霧の中から何か現れた。かなり大きい。チトが慌てて操縦桿をいっぱいに引き、機体を半回転させ回避する。いきなりの高機動飛行にユーリが驚いて黙る。

 

 

「 …あーびっくりした。失速して落ちたらどうするのさ、ちーちゃん。」

『オチルー』

「こいつはこれぐらいの機動じゃ落ちないよ。でも今のは危なかった。」

 

 

 ソードフィッシュは速度が遅いのが引き換えに、操作性や機動性がかなりいい。これが幸いして回避はうまくいった。先ほど当たりかけたのは建物のようで、わきを抜け先へ進むと次第にあたりの霧も晴れてきた。いくつも建物が見える。どうやら都市についたようだ。

 

 

「ほんとにあったな。」

「信じてなかったの?ひどーい。」

 

 

 広めの道路を見つけ、二人は着陸した。降りると建物の高さが際立つ。階層の半分ほどもある建物も多い。

 

 

「どうしよっかちーちゃん。補給施設はなさそうだよ?」

「とりあえず霧が出てた方へ行こう。」

「なんで?」

 

 

 しばらく霧の方へ進む。近づくと霧の中から少し下に、広い道路のようなものが出てきた。だがそれはすでに道路ではなく川だった。元が道路だったためか浅い。川幅はかなり広く、わずかだが流れもある。

 

 

「霧の原因はこいつか。」

「大きい川だね。」

『カワー』

「浅くてちょうどいい。洗濯でもするか。」

「えーやだー。めんどー、」

 

 

 結局、チトが洗ってユーリが飛行機まで持って行って干すことになった。薄着になった二人だが一応、靴と最小限の道具の入ったリュックを持つ。さすがに溺れることはないので一人で川に入った。手際よく洗い、ユーリがさっそく持っていく。

 

 

「寄り道すんじゃねえぞー」

「わかってるわかってる。」

 

 

 だが、案の定しばらくしても帰ってこなかった。

 

 

「あいつ…しょうがない自分で持っていくか。」

 

 

 一人で洗った洗濯物を持っていく。翼の張り線やロケット用レールなどに引っ掛けて干していると、ユーリが戻ってきた。

 

 

「なんかすごいものがあったよ!」

『アッター』

「どこ行ってたんだよ。まず手伝え。」

「えー、いいから…」

「あ゛?なんか言ったか?」

「いいえ、干します。」

 

 

 さすがに懲りたユーリが干し始める。チトは川に戻り洗濯を再開した。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 しばらくしてすべて干し終わり、ユーリが言っていた建物へ行く。かなり立派な建物で、門の前には例の石像が二人待ち構えていた。

 

 

「これも寺院なのかな?ヌコわかる?」

『シラナイ』

「何にせよ入って確かめよう。乾くまで暇だし。」

「やったー!」

 

 

 重厚な石の階段を上がり、入り口から中に入る。そこは吹き抜けの大広間であったが、やはり荒れ果て何もない。武器以外は。

 

 

「やっぱみんなこんな感じだよなぁ。」

「この奥は何かあるかな?」

『イコー』

「おいゆー、危ないからあんま先に行くな。」

「なんかすごいのがあった!!」

「え?」

 

 

 チトが慌てて奥の部屋へ行く。そこには金属の巨大な扉があった。ユーリが取っ手を引っ張るがびくともしない。

 

 

「あーかーなーいー!」

『アケレル』

「マジで!」

「マジか。」

『マジ』

 

 

 ヌコは扉の近くの小さい穴に手を入れた。

 

 

『ヌヌヌヌヌヌヌヌヌ…』

 

 

 するとすぐに轟音とともにゆっくりと扉が動き出す。驚いた二人が少し離れて見守る。部屋の中が見えた。広い部屋の中に、何か山のように積んである。しかもたくさん。

 

 

「これなんだろ?」

「紙? 本…じゃないな。」

「でも文字が書いてあるよ。」

「この字どこかで見た気が…あ!」

 

 

 ポケットから例の硬貨を出すチト。

 

 

「ところどころこれと同じ字がある。」

「つまりこれって全部お金…?」

「すごい。」

「これってお金の倉庫だったのか。」

 

 

 チトが感動している横でユーリが何かしだす。しばらくして煙が上がってきた。 

 

 

「おいユーなにしてるんだ。」

「燃やそうかと。」

『クエナイモノニカチハネー』

 

 

 山から少し取った束を集め、そこへ火打石で火をつけようとしていた。

 

 

「多分これだけたくさんあるってことは、この黄色いのの数百倍?いやもっと価値があるんだぞ。」

「どうせ交換するものもないし、価値なんてないよ。」

『クエナイモノニカチハネー』

 

 

 以前どこかで会ったような展開だ。だが今回は持って行っても誰の役に立ちそうはない。

 

 

「まあ使えないしいいか…いっぱいあるし。」

「案外、怒らないんだね。」

「でも火事か酸欠になりそうだし燃やすのはやめろ。」

「ちぇ。」

 

 

 燃え始めた焚火を踏んで消すユーリ。ほかの部屋にも扉があったので見て回った。しかし、ほかには黄色く輝く金属の棒のようなものが、紙幣と同じように山になって積んであっただけだった。暗くなったので、今夜はここで寝ることになった。

 

 

「もしかして、あの黄色いのレーションだったんじゃ?」

「絶対ないでしょ。」

『ナイゾ』

「お湯で溶かせば…」

「無理だろ」

『ムリダロ』

「あ、あとさっき思いついたんだけど、あのお金の山案外役に立つかも。」

 

 

 ユーリが山を片っ端から崩し始める。近くの台車で山を押して寄せ集め、ひとつにまとめた。作業が終わったのか、ユーリが山へ潜る。

 

 

「何してんのさ。」

「ここで寝るとあったかいんじゃない?かまくらみたいだし。」

「ほんとか?」

 

 

 続いてチトも潜り込む。確かに暖かい。

 

 

「おお…確かによさそうだな。」

『キモチイイ』

「案外これにも価値はあったね。」

「そうだな…」

 

 

 よほど気持ちよかったのか、二人が眠りに落ちるまでに時間はかからなかった。

 

 

続く

 

 




 作者です。お札風呂は夢だよね。(しらんがな)

〇機体のカラーリングについて
 機体の基本色は白であるが、上の翼と機体上部には灰色と青の迷彩が塗られている。機内の塗装は深緑色である。
 機体と翼には、原作でユーリがかぶってるヘルメットと同じ十字架が黒で書かれている。操縦席の下には白字で『正』の字が3つ書いてあるが、撃墜マークなのかはたまた別のマークかどうかはわからない。尾翼には部隊番号なのか大きい赤い字で7と書いてある。

 ぶっちゃけ、機体解説のネタが先に尽きそう。(誰も読んでないから無くていい定期)

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