空路終末旅行   作:月島 星

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霧雲

「これはちょっとやばいね。」

「日が落ちてきたな…早く降りる場所を探さないと。」

 

 

 二人は夕暮れの中、着陸できる場を探していた。しかし、下には廃墟と瓦礫が広がっているばかりで一向に道路などは現れなかった。日もかなり落ちてきており、いつ夕闇に包まれてもおかしくない。

 

 

「もーいっそビルの上に着陸しようよ。」

「絶対無理だろ…」

 

 

 そんなことを言い合ってるうちに、日が完全に落ちたようで階層の隙間から漏れる光が途絶えた。地上にはいくつか明りがついているが、ビルの明かりなのか街灯の明かりかわからなかった。

 

 

「あーもういっそビルに着陸すればよかった…ゆー何か見えるか?」

「…ない」

「え?」

「もう食べられない…もがもが…」

「くそ、こいつ寝やがった。」

 

 

 結局、周りに見えるものはないのでまっすぐ飛び続けた。建物の明かりも次第に少なくなりチトは引き返そうとする。ところが、しばらく行くと一本の明かりの筋が見えた。

 

 

「おいユーリ起きろ!あれ何か見るか?おい!」

「むにゃむにゃ…おはよーってもう朝?」

「あとで覚えとけよ…早く下見ろ。」

「あーい。」

 

 

 チトは注意しつつ高度を落とし、ユーリがスコープで下を見る。どうやら光の筋は道路の街灯のようだった。道幅もソードフィッシュが降りるのに十分な幅はあった。

 

 

「しめた!」

「よかったねちーちゃん、私が見つけたおかげだね。」

「お前は黙ってろ。」

 

 

 長い飛行で疲れていた二人は、すぐに寝支度をし道の上で夜を明かした。周囲で野営できる建物を探したかったが、ランタンで照らしても何も見えなかった。また疲労していたため捜索は明日にすることとした。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「うーん…ちーちゃん?」

「…」

『…』

 

 

 

 強い明りに目を覚ましたユーリ。チトやヌコからの返事はない。目が明かりに慣れてくると、上には雲の合間に見える太陽があった。来た方向を見ると、階層の断面が見えた。最上層は霞んで見えない。横を向くとチトもヌコもまだ寝ていた。

 

 

「いつの間にか階層の上に出たんだね…、ちーちゃん。」

「うーん…」

「って、なかなかちーちゃん起きないな。」

 

 

 昨日の長時間飛行のせいか、チトが起きる気配はない。暇なユーリが周囲を見て回る。やけに深い霧が視界を邪魔する。

 

 

「見えないなあ…。一人じゃ危ないけど端の方までなら大丈夫か。」

 

 

 道の端の方に行くと手すりがあった。手すりに手をかけたその時、強風とともに霧が晴れた。

 

 

「うわ!」

「どーした…ゆー…?」

「こっち来てみて!ねー早く!」

「ちょっと待ってよ…」

 

 

 ユーリがチトの手を取り引っ張る。手すりから身を乗りだし、下を指さすのでチトも見る。寝起きで重い瞼をどうにかしてあげる。

 

 

「うわあああああ!」

「これ橋だよ!飛び切りでかいやつ!」

 

 

 手すりのはるか下には階層の廃墟らしきものが霧、ではなく雲間に見える。雲は雲海のように下に広がっていた。確かにここは橋の上のようだ。驚いたチトが転げながら橋の中央へ戻る。橋は階層の何層分もの高さがあった。

 

 

「高すぎる。」

「どしたのちーちゃん?飛行機の上だと平気なのに。」

「それとこれとは違う…にしても高いな、なんの橋だ?」

『ハシ?』

「ヌコも起きたか。」

 

 

 橋の先を見るも雲がかかって見えない。朝食ののち、先まで探検することになった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「でかい橋だねちーちゃん。横幅もかなりでかいし、そんな怖がらなくても落ちないよ。」

「それはわかってるけど、…あ。」

 

 

 割と歩いてすぐに、雲の中から何か出てきた。

 

 

「これは、車?」

「車は車でもトラックだな。積み荷は乗ってないか…」

 

 

 そういうと、チトは運転席の方へ行く。

 

 

「あ!」

「ちーちゃん!?」

 

 

 橋が途切れていた。足を踏み外したチトは、落ちる寸での所で橋の鉄骨に手をかける。

 

 

「っく…。」

「ちーちゃん!手伸ばして!」

 

 

 ユーリが手を伸ばす。

 

 

「ん?」

 

 

 しかしすぐにユーリは何かに気付いた。頭の上のヌコもすぐ気づく。

 

 

「ちーちゃん!下見てしーたー!」

『シタ!』

「絶対に嫌だぁー!早く手ぇ―のばせぇー!!」

「だーかーら!下って!もう…」

 

 

 ユーリは次の瞬間、ポケットから出したレーションの袋を下へ投げる。食べ物を投げるユーリに驚いたチトは、レーションにつられ下を向く。レーションはすぐに床について軽い着地音を出す。

 

 

「あ、床。」

「この高さは下りても大丈夫でしょ。」

 

 

 すぐ下に床があった。この橋も階層都市ように2重構造になって要る様で、下の床はまだ残っていた。高さも飛び降りて大丈夫なようだ。チトが鉄骨から手を放すと、すぐに足がついた。

 

 

「死ぬかと思った…」

「良かったねちーちゃん。」

『ヌイー。』

 

 

 その後チトは上に上がり、二人はトラックを調べた。トラックの運転席側のタイヤが落ちていたため、止まっていたようだ。念のため腰ひもを付けて運転席に入るユーリ。

 

 

「なんかあったか―?」

「お、これは食べ物?」

 

 

 ダッシュボードから何か見つけた。レーションのような紙箱に何か丸い筒の銀袋が入っていた。

 

 

「これはどこかで見たな…えーと」

「こひだっけ?」

『コヒ?』

「そう、それそれ。食べ物のことはよく覚えてるな。でもどこで見たっけ?うーん。」

「そんなことより飲もうよ!ちーちゃん。」

「そうだな。」

『ソウダナ。』

 

 

 湯を沸かし、コップに袋から出した黒い塊を入れる。

 

 

「おお…」

「いい香りだね、ちーちゃん。」

 

 

 珈琲の深い香りが雲間にも広がった。

 

 

続く

 

 




 作者です。英国機に乗っているのにに紅茶じゃないと思ったあなた!(誰も思ってない)英国ではコーヒーも人気なんだぞ!泥水っていうな!

〇英国とコーヒー
 そもそも、英国におけるコーヒーは17世紀ごろはコーヒーハウスという喫茶店が普及しており、そこでコーヒーがよくの飲まれていた。その後インドとの貿易で茶が大量に輸入されるようになってから紅茶が代わりに普及した。しかし現在でもコーヒーの消費量はに日本よりも多く、いまだ根強い人気がある。(ソースは作者)

 なんだこの豆知識コーナー。コーヒー豆だけに(激寒)

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