「……後輩が欲しい」
壁に凭れて呟く菫色の宝石。
彼の名はアイオライト、硬度は七。
「俺達の後輩なら沢山いるじゃないか」
「そうじゃなくて!!もっと可愛い後輩が欲しいのさ!」
「最近は新しい子、生まれてないからねぇ」
その横でのんびりとした口調で話す橙色の宝石。
彼の名はオレンジサファイア、硬度は九。
「じゃあ、緒の浜にでも見に行くか?ライト」
「うん。今日こそ新しい後輩が生まれるかも!」
どんな宝石が生まれても良いようにと布を持っていく。
うっかり触れて割ってしまったら一大事だ。
「さあ、可愛い後輩を探しに行こう!!」
「張り切ってるねぇ」
───────────
「あー…ダメかぁ」
「大丈夫かと思ったけど……動かなくなったな」
緒の浜についた時、宝石が落ちるのを見た。
慌てて駆け寄ったがその子が動くことはなかった。
「これは…サファイア?」
「ルチルのとこへ持っていこう」
「同属だから兄さんが起きるかも知れない」
持ってきた布に宝石をそっと乗せていく。
全て回収して立ち上がった。
「これで全部だね」
「それじゃあ帰ろうか、ライト」
そう言った俺達の目の前に予兆の黒点が現れた。
「月人…!?」
「報告に行くより倒した方が早いかな」
一旦、布を置いて刀を構える。
現れた月人はいつもと違う武器を持っていた。
「何だろう、あの球体の武器……」
「
先端につけられた球体は仲間の一部だった。
取り返そうと月人に斬りかかる。
「なっ!?」
ドンッと音をたてその球体は爆発した。
凄まじい衝撃に体が砕け、あちこちにヒビが入った。
「サフィ!!」
「ライト、学校まで走って先生を呼んできてくれ!」
「でも…!」
「俺のことはいいから早く!!」
さっきの爆発を目の前で受けたせいだろう。
こんな風に砕かれたことは今まで一度もなかった。
「ライト、後ろだ!!」
「……ッ!?」
月人が放った矢がライトを砕いた。
バランスを失った体は、そのまま地面に崩れ落ちた。
「サフィ……ごめん。後は頼んだよ」
「ライトッ!?」
「待てよ、お前等……ライトを離せ!!」
砕けたライトを月人は器に入れていく。
ライトを取り戻すために俺は武器を振るった。
ヒュンッ!!
月人の矢が当たる。
パキンッと音をたてて俺の腕が地面に落ちた。
「待て!!──待ってくれ、頼む…なぁ……」
落ちた腕も月人に回収された。
足にはヒビが入って立てなくなっていた。
月人が笑いながら迫ってくる。
このまま……俺も月へ連れていかれるんだろう。
意識を失う前に俺が最後に見たのは
相棒が月人に連れ去られていく姿だった。
「……ッ」
「サフィ!よかった、目が覚めましたか?」
「ル…チル?」
「気分はどうですか?」
「……」
「ああ、失った両腕の代わりに」
「貴方が持っていたサファイアを接合させてもらいましたよ」
そう言われて自分の腕を見る。
青いサファイアがそこに付けられていた。
「なあ、ルチル。──ライトは?」
「ライトは……彼は月へ連れていかれました」
やっぱり、アイツ月へ連れていかれたのか…。
何処か自分の体に穴が開いたような不思議な感覚だ。
「──部屋へ戻っても、大丈夫かな」
「ええ、でも陽の光はしっかり当てるんですよ」
接合したばかりの腕を馴染ませなければいけない。
それは分かっている。
……けれど、今は一人になりたい気分だった。
───────
「一人部屋になっちゃったな……」
俺とライトは十歳しか違わない。
昔からずっと一緒にいた相棒で兄弟のようなものだ。
「守れなくてごめん」
──月までこの声は届かないだろうけど。
「あの時、最初から先生を呼びに行けばよかった」
「それなのに俺は……」
考えれば考えるほど自分が嫌になっていく。
気付いたら体にヒビが入っていた。
「ああ…欠けてるとこもある。怒られるなぁ」
起きたらルチルに直してもらおう。
今は、このまま眠ってしまいたいから…。