仮面ライダートラベラーズ 切り札とメダルと放浪者   作:フラスコブレイド

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前回の3つの出来事
1つ、剣崎一真が森の中をさまよう!
2つ、そんな剣崎の前に火野映司が現れる!
そして3つ、剣崎と映司は一緒に森を抜けることにした!


第2話 不穏な街と都市伝説と屑ヤミー

俺たちは森の中をさまよっていた。

一向に抜けられず迷った。

木漏れ日から方角を確認しているが思ってた以上に広すぎた。

「広いですね……」

映司の顔に疲労が浮かぶ。

もうお昼頃だろう。太陽がほぼ真上にある。

「地図とか無いし…あっても役に立たないだろうな……」

俺もバイクを押しながら呟く。

ガス欠さえしてなければバイクで移動できるんだけど……。

「剣崎さん、何か聞こえませんか?」

映司が突然立ち止まる。

「何か?何か聞こえるのか?」

周りを見回すが木ばっかりだ。

「こっちかな?」

映司は進んでいた方向とは違う方へ駆ける。

「あっちょっと!?」

俺も慌てて後を追う。

 

「抜けられた……?」

映司の後を追っていくうちに森の景色がどんどん変わり、とうとう抜けることが出来た。

「なんとなく人の声がすると思ったんですよ」

「すごいなー!」

俺には聞こえなかった。映司はすごいやつだと感心した。

しばらく歩くと大きな街にたどり着いた。

正直な話、俺は人の街は久し振りだった。

そういえばこんなに賑やかだったっけ。

「とりあえずご飯ですね」

「そうだな。お金はあるのか?」

映司は服のポケットに手を入れた。

「あった」

映司がポケットから取り出したのは派手な柄の布。きっとパンツだ。

同時に何か赤いものが地面に落ちた。

「何か落としたぞ。なんだこれ」

それは赤い何かの破片だった。鳥のような絵が描かれている。

「あっ!ごめんなさいっありがとうございます!」

映司が慌てて俺の手から赤い破片を取ろうとする。

俺が見ても何か分からないのでそのまま映司に返した。

「大事なものなんだな」

「え、あ、はい。そうです。とっても大事なものなんです」

赤い破片を見つめる映司の目は複雑な色をしていた。

「そ、それよりお金ですよね。あー俺これだけしか持ってないですね……」

映司は手に持ったパンツを開く。

中には小銭がいくつか入っていた。

「俺、お金あったかな……」

俺もズボンのポケットから財布を取り出す。

中身を見てビックリした。

日本円しか入ってなかった。

「あっ……両替してなかった……!」

「ええっ!?もしかして日本円ですか!?」

「流石にここじゃ日本円使えないよな……」

「銀行に行きましょう!銀行で現地のお金と両替してもらいましょう!」

「そ、そうだなっ!」

俺たちの目的地が銀行になった。

 

「良かったですね」

「本当に良かった……安心したら腹が減った……」

「とりあえず食事が出来るところを探しましょう。あ、あそこに食堂がありますね」

無事に銀行で所持金を現地のお金と両替できた。

俺たちはそのまま小さな食堂へ入った。

メニューを見ても何が書いてあるのかサッパリ分からなかった。

映司は何とか読めるみたいで店員を呼び、メニューの説明をしてもらっていた。

なんというか映司に助けられっぱなしのような気がする。

映司がいなかったら俺は今頃あの森を未だにさまよって野生動物狩りでもしてたかもしれない。

何かの形でお礼がしたい。

「あ、剣崎さん来ましたよ」

俺たちのテーブルに料理が運ばれてくる。

とても美味しそうな匂いだ。今すぐにでも食べたい。

「それじゃ食べるか」

「はい」

「「いただきます」」

 

「映司?」

「包帯のおばけ?」

「え?」

食事の途中、映司は隣の席の親子連れを見ていた。

親子が何を言っているかは分からないが映司にはその内容が気になるようだ。

「映司?何かあったのか?」

「えっ?あ…少し気になる話を聞いたので……」

「気になる話?」

「そこの親子連れなんですが、子供に言い聞かせるため…でしょうか『悪い子は包帯のおばけが連れていく』と」

「包帯のおばけ?都市伝説か何かか?」

「だと思いますけど……」

映司には何か引っかかるようだ。

 

ガソリンスタンドでバイクに給油している間、映司は店員や他の客から話を聞いていた。

真相を確かめたいのだろうか。

俺に出来ることはあるのか……?

「剣崎さんお待たせしました」

「やっぱり気になるんだな」

「え?」

「その『包帯のおばけ』の噂。なんか心当たりあるって顔してるし」

「え?そ、そうですかぁ?」

声が少し裏返っている。やっぱりそうなんだ。

「俺も手伝おうか?」

「へ?」

「映司に助けられてばかりだし、お礼したいしさ」

「で、でも…」

「これも人助け……だよな。英語なら辛うじて片言で話せるし」

「人助け……そうですね。ならお言葉に甘えましょう」

映司が少し笑顔になった。

「情報は多いほうがいいよな」

「ええ。剣崎さんは公共施設の方がいいでしょう。多少の英語でも話が通じるでしょうし」

「そうだな。あ、それと」

「どうしました?」

「映司の話が聞きたいな。映司、何か知ってるんじゃないのか?」

「………分かりました。信じてもらえるかどうかは……」

「俺は信じてるよ。映司のこと」

「剣崎さん……」

「給油も終わったし行くか!」

 

思ってた以上に『包帯のおばけ』の噂は広まっていた。

いろんな人に聞いてみても皆が同じようなことを話してくれた。

暗闇から小さな金属の音を鳴らしながら現れる。

悪いことをした子供を暗闇へさらう。

包帯をぐるぐる巻いた黒い影。

言葉を発さずうめき声のようなものをあげる。

でもこれだけでははっきりしない。

映司の知っている情報も合わせた方がいい。

待ち合わせ場所にした喫茶店で映司を待つ。

しばらくして映司が現れた。

「映司、こっちこっち」

「あ、剣崎さん早かったですね」

「案外早く終わったんだ」

「そうだったんですか」

「けっこう噂広まってるみたいで、都市伝説にしちゃあちょっと情報が一致しすぎてるというか…なんというか…」

「…やっぱり剣崎さんの方も」

「ということは…?」

「ええ。俺の方もです」

映司は迷うように黙ってしまった。

「映司、言いたくないならそれでも……」

「…いえ、剣崎さんにも知っていてもらいたいんです。俺、『包帯のおばけ』の正体を知っているんです。あ、最初に言っておきますがこの街には初めて来ましたし、『包帯のおばけ』の噂を広めたのは俺ではありません」

「分かった、続けてくれ」

「ありがとうございます。『包帯のおばけ』の名前は『ヤミー』です。ヤミーは人間の欲望から生み出される怪人です」

「怪人……」

「はい。ヤミーは宿主となった人間の欲望を満たすために行動するのです。ただその行動はかなり飛躍してしまうのです。『食事がしたい』という欲望なら無差別に食べ物を宿主に食べさせたり……。大抵はその姿は昆虫や鳥などの何らかの生き物の姿になるんですが……」

「俺が聞いた話だと『包帯をぐるぐる巻いた黒い影』だぞ?何かの生き物って感じじゃないな」

「おそらく『屑ヤミー』でしょう。何らかの生き物の姿にはならない下級のヤミーです」

「まあ『屑』って付くくらいだしな」

「それでここからが大事なんですが、ヤミーを生み出せるのは人間では無いんです。『グリード』という怪人によって生み出されるんです」

「『グリード』……強欲?」

「ええ。グリードは欲望を満たすことが出来ないんです。味は感じられないし、視界も色を失う。そして何より『メダル』で出来ているんです」

「は?メダル?メダルって…金属でできた?」

「そう、そのメダルです。メダルと言ってもかなり特殊な『コアメダル』と『セルメダル』で出来ていて…さっきのヤミーもセルメダルを人間に使うことで生まれるんです」

「うーん……ということはこの噂の出どころはどっかでグリードがその屑ヤミーを生み出してるってことか?」

「でもその筈は無いんです。だってグリードは……もういませんから」

「え?だって現に屑ヤミーはこの街の噂になってるんだぞ?」

「そうですけど………屑ヤミーを生み出すグリードなんてウヴァくらいだけど…もう………いや、もしかして……でも……」

映司はうつむいて考え事をしだす。

「映司?おーい」

「でもあの時の…だって……あれは……」

「よしっ!こうなったらその屑ヤミーを見つけよう!」

「……えっ?」

「それで捕まえて生み出したやつをおびき寄せよう!そうしよう!」

「こう見えて一応力には自信あるんだ。『暗闇から現れる』ってことは夜に出るんじゃないか?」

「あ、え、でも……」

映司が戸惑う顔をしているが気にしない。

「とにかく今夜外を歩いて屑ヤミーを探すぞ!」

「えぇ……本気ですか?」

何やら映司が本気で心配してくれてるようだ。

それはありがたい。でもそれは無用だ。

 

俺は………………もう死にはしないから。

 

 

所持金に余裕があったので俺たちは街中の小さなホテルにチェックインした。

英語で旅行ですか?とフロントの人に聞かれたので「そうです」と答えておいた。

部屋は広くはなかったがありがたい事にベッドが2つ。

風呂もついていた。

「久し振りにこういうホテルに泊まったなぁ……」

「俺もですね……誰かの家に寝泊まりさせて頂いたりしてたので……」

「しばらくここを拠点にするか」

「そうですね」

そうして夜まで部屋でテレビを見たりして過ごした。

 

夜、ホテルを出て街中を歩く。

昼間は人通りが多かったが夜になるとどこか違う場所へ迷い込んだかのように静まり返っていた。

きっと『包帯のおばけ』の噂のせいだろう。

映司は「誰もいなくて好都合です」と言っていた。

もうほとんど殴り合い覚悟なんだろう。

俺も出来るだけ怪我をしないように立ち回る必要がある。

ゴーストタウンとも思えてしまう市街地を歩いてた時だった。

チャリン、チャリンとお金のようなものが落ちる音がした。

もしかしてこれがメダル?

「近くにいるみたいです。気をつけてください」

「確かに何かの気配を感じるな…」

徐々に何かのうめき声が聞こえ、近付いてくる。

そして、

「ウオオアアア!!!」

黒っぽい人型の何かが暗闇から飛び出してきた。

しかも何体も。

「屑ヤミーです!」

映司が手近な屑ヤミーを蹴り飛ばす。

「こいつらが!?」

俺も近付いてきた奴に蹴りを入れる。

だが痛みを感じていないのか怯むことなく襲ってくる。

どんどん群がってきてキリがない。

「こんな数初めてですよ!?」

映司が焦っているようだ。

同時に何かを躊躇っているようなそんな気がした。

「これじゃ捕まえる以前の話だな!」

「こうなったらとにかく倒すしかないですよ!」

「……ああ!」

俺は本気を出すか一瞬迷ったが、流石にやめた。

投げたり蹴ったりして屑ヤミーを1体ずつ確実に倒していく。

もう映司の方を見る余裕はなかった。

だが少し油断していた。

屑ヤミーの攻撃が俺の頬に当たる。

「あっ!」

「剣崎さん!?」

触れると微かに熱を帯び、濡れていた。

もちろん傷口からは赤くない血が流れだす。

流石に地面に落とすわけにはいかずすぐに服の袖で拭う。

倒した屑ヤミーから銀色の何かの破片のようなものが落ちる。

屑ヤミーの数は徐々に減っていく。

そしてやっと屑ヤミーがいなくなった。

「はぁ〜…終わった……?」

「何とかいなくなりましたね…………そうだ、剣崎さん、怪我はされてませんか?…………え?」

「あっ……」

終わったことに安堵してしまって頬の傷を隠すのを忘れていた。




屑ヤミーを何とか退けた2人。
しかし映司は見てしまった。
剣崎の身体に出来た緑色の傷を。
剣崎は映司の信じるという言葉を信じ、自分のことを語る。
そして映司も自身の経験を語る。
次回、第3話「似た者同士」

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