仮面ライダートラベラーズ 切り札とメダルと放浪者 作:フラスコブレイド
1つ、映司は剣崎の秘密を知る!
2つ、剣崎も映司の過去を知る!
そして3つ、2人は似た者同士の仮面ライダー!
久々のベッドが気持ちよくてつい寝過ごしてしまった。
映司が起こしてくれなかったら永遠に寝てたかもしれない。
「剣崎さん、とても気持ちよさそうに寝てましたから…」
「ありがとう…映司……」
「朝ごはん食べたら行きましょう」
「そうだな……んーっ」
ベッドから降りて支度をした。
俺たちは昨夜屑ヤミーたちと戦った場所に来た。
日中でも人気が無い場所だった。
戦った痕跡がいくつかあって、俺の血の跡がほんの少し残っていた。
「手がかりとかあればいいんですけど……」
映司は辺りを見回す。
そんな時、俺は何かを感じた。
「誰だっ!」
「えっ!?」
「おや、バレてしまったか」
男の声がして、近くの物陰から人が現れた。
彼は眩しいくらい白いスーツを着ていた。
男の姿を見た途端映司の表情が変わった。
「……財団X!?」
「我々を知っている……ということはお前は仮面ライダーか」
「知り合い……じゃなさそうだけど……財団?」
「財団X……表向きは科学研究財団を名乗っているんですが…本当の顔は様々な組織に援助をして、その見返りに技術を受け取り強力な兵士を生み出そうとしているんです」
「要は悪の組織ってことか」
「そういうことです」
「流石だ。よく知っているな。私の研究は個人的なものだがな」
「何?」
「これだ」
そう言って男はスーツのポケットから何かを取り出した。
それは……紫色をしていた。
映司の顔がさらに変わる。
「それは…………どういうことだ!」
「コアメダルを知っているのか?…そうか、お前が『オーズ』か」
男は表情を一切変えず淡々と話す。
「まさか……紫のコアメダルまで複製したのか!?」
「なるほど、最上魁星のことも知っているようだな……これは面白い」
なんだかどんどん話が進んでいっているような気がする。
「……ちょっと話に付いていけないんだけど……」
「何が目的だ!」
「王をこの現代に復活させる。その為にはオーズが必要だ。力づくで連れて行かせてもらう」
男は別のポケットから銀色のメダルのようなものを取り出す。
男の額に銀色の丸いものが現れる。中心には貯金箱に付いている小銭を入れる穴があった。
男がその穴にメダルを入れた。
すると男から何かが現れた。
「えっ?えっ?どういうことだ?」
「あれがヤミーです!」
「え?昨日のようなやつじゃない本来のヤミー?」
「そうです!」
男から現れたヤミーはすぐに生き物の姿になった。
あれは……カバ?
「できるだけ人のいないところに誘導しないと…!」
昼前で人通りの多い街中で暴れられたらパニックになる。
「あいつの狙いは俺です。だから俺がヤミーを…」
「危ない!」
突然カバのヤミーが飛びかかってきた。
見た目に似合わず身軽な奴だ。
避けようとしたが身体が思うように動かない。
「何でっ!?」
「重力操作で俺たちの動きを制限してるんです!」
「嘘だろ!?」
「変身!」
ヤミーの攻撃が当たる直前、眩しい光が辺りを包む。
「うっ!」
思わず目を伏せてしまう。
「はァっ!」
光が収まると映司の姿はなく、ヤミーは後方に吹き飛んでいた。
映司がいた場所には黄色と黒の戦士がいた。
「映司…?」
そうか、あれが映司の仮面ライダーとしての姿か。
財団Xの男は『オーズ』と呼んでいた。
オーズは顔面から光を放ちながら高速でヤミーに接近し、両腕の爪でヤミーを引き裂く。
ヤミーの方は光に怯んでしまいオーズの攻撃を許してしまう。
「流石はオーズ。やはり1体では難しいか」
男はさらに銀色のメダルを取り出し新たなヤミーが生む。
空を羽ばたく鳥のような姿をしている。
「本当に俺を攫う気なんだ…っ」
オーズが羽ばたく鳥のヤミーを見上げる。
心なしか焦っているように見える。
かくいう俺も危機を感じていた。
鳥のヤミーが上空から風を起こす。
「うわっ!」
敵味方関係なく吹き飛ばすような強い風だ。
俺は吹き飛ばされる。
「剣崎さんっ!」
映司の声が聞こえる。
「いってぇ〜…」
ちょっと頭を打ったようだ。
微かに人のざわめきが聞こえる。
「人のいる場所には近づけさせたくないけど…狙いはこっちだし、そんなことはないか……」
また突風が来る。
「わっ!」
強烈な風と重力操作によって身体が全然動かない。
オーズもカバのヤミーの相手で手一杯のようだった。
あの鳥のヤミーを落とせばどうにかなるか……。
「そういえば……どうしてあの鳥のヤミーは落ちないんだ?」
よく考えればそうだ。
この辺りの重力場がカバのヤミーによって強くされている。
それなら範囲内にいる鳥のヤミーも落ちてくるはず。
「一定の高さから降りられないのか……?」
なら鳥のヤミーを叩き落とせばチャンスになるかもしれない。
けど……どうやって?
カードさえあればどうにか出来るけど……全部日本だ。
あの時、落としたから。
「はぁ……はぁ……」
「剣崎……お前……お前は………アンデッドになってしまったというのか…………最初から……そのつもりで……」
過ぎたことを考えても仕方ない。
強い重力場と風の中、這うように移動する。
「いてて…目に砂が入る……」
それでもゆっくりと確実に近付く。
なんとかさっき吹き飛ばされる直前の場所まで戻ってこれた。
近くにあった何かの箱に掴まって立ち上がる。
「映司!」
顔を腕で覆いながら叫ぶ。
オーズはカバヤミーと組み合いながら俺の方をちらっと見た。
「そいつの相手は俺がやる!映司は飛んでる方を!」
「で、でも剣崎さん!」
「心配するなよ!それに俺は飛べないし!」
「分かりました。お願いします」
映司はカバヤミーに爪の一撃を食らわせ吹き飛ばす。
その間に素早くベルトのメダルを灰色のものに変えた。
重かった体が少し軽くなった。
「うおおおおおお!!!」
オーズが大きな腕と脚の姿に変わった。
ゴリラのように胸を叩くと鳥のヤミーが落ちてきた。
「すごい……」
見入ってる場合じゃなかった。
カバヤミーが俺に向かって突撃してくる。
それをなんとか両手で抑える。
「こいつ……力強いな……っ!」
「お前のような人間に何が出来る」
財団Xの男が無表情で俺を睨む。
「生憎、俺は何も出来ない『人間』じゃないんだよっ!」
右脚で蹴りを入れる。
カバヤミーがよろめいた。
「うぇあああああっ!!!」
左手で頭部を思い切り殴りつける。
少し痛覚が鈍っているからそこまで痛みを感じない。
殴った箇所が緑色になる。
それと手から変な音がした。
「あ、骨折れた……?」
微かな痛みが身体中を走る。
俺の中の何かがその痛みに反応する。
「流石にここはマズいって……」
深呼吸して落ち着かせる。
「お前は何なんだ。ただの人間ではないな?」
財団Xの男は俺に近づく。
「さっきも言ったけど俺はただの『人間』じゃないんだよ」
左手を隠して余裕を見せるためにヘラヘラ笑う。
これが空元気だってのは分かってる。
それでもこいつに俺がアンデッドだって知られるのは嫌だ。
カバヤミーが立ち上がる。その時、
「剣崎さん!避けて!」
後ろから映司の声がした。
「えっ?」
鳥のヤミーが後ろから飛んできた。
咄嗟に横へ転がる。
カバヤミーと鳥のヤミーがぶつかってメダルが飛び散った。
「なんということだ…」
財団Xの男は表情こそ変えなかったが想定外だと呟く。
「危なかったー……」
オーズが垂直にジャンプした。
着地の衝撃で重力というか引力というか…とにかくそういう類の力が働いて、2体のヤミーがオーズに引き寄せられていく。
オーズは頭と腕を構えてヤミーたちを待ち受ける。
「セイヤー!」
そして、頭のツノと大きな腕がヤミーたちに当たり、大量のメダルが辺りに飛んだ。
「なるほど今回は諦めよう。また会おう、現代のオーズ」
財団Xの男はその場を去ってしまった。
「剣崎さん!大丈夫ですか!?」
変身を解いた映司が駆け寄ってくる。
「左手以外は大丈夫だよ」
真緑に変色した左手を見せる。
「うわあ…それ……」
「ちょっと力入れすぎちゃったみたいで……」
「ちょっとでそうなるんですか!?剣崎さん、無理しちゃダメですよ!」
「はは…そうだよな。ごめんごめん」
映司は少し安心したような顔をして、散らばったメダルを集め始めた。
「そういや、この銀色のやつがセルメダルなのか?」
「はい。このセルメダルを利用してグリードはヤミーを生むんです」
「ということは…あいつはグリードなのか?」
「そういう訳ではないとは思うんですが……」
俺も右手だけでセルメダルを拾う。
「……とりあえず包帯を買った方がいいですね」
「そうだな……」
昼下がり、俺たちはひたすらセルメダルを拾った。
財団Xの手がかりを探る2人。
そんな中白服の人物の目撃情報を得る。
2人は敵の潜伏先へ突入する。
次回、第5話「アジトとヤミー軍団とアンデッド」