天竜人は地に落ちた。まがねちゃんはそう嘯く   作:kurutoSP

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まがねちゃんはかたる

 乾いた国、その国は人々が協力し合い、乾いた大地でも力強くいき、活気が絶えない国でした。

 

 ただ、そんな国も一人の男の謀略により、国には人の怒号と武器の奏でる音で満ち溢れてしまったのです。

 

 しかし、そんな負の音に満ち溢れたこの国に人々がその身を削って奏でる以外の音が最初はゆっくりと、されどその音はしっかりと地面を伝わり戦場に響き始めました。

 

 その音は誰もが国を思い傷つけ合うそんな悲惨な戦場とは離れた王家の墓の方面から聞こえてきました。

 

 それはまず、微小な振動となり、人々の体を揺らすのです。

 

 だから戦場から少し離れた人々はその地響に武器を振るうのを止め、発生源の方を意識し、その大きくなる振動に戦うのを忘れ始めました。

 

 そして誰もが驚愕し、その手に持つ武器をおろし、落とし、重低音の中にカシャリカシャリと軽やかな音を新たに奏で始めました。

 

 彼らの目にはどんどんと盛り上がる大地が見えていたのです。

 

 大地の盛り上がりは成長していき丘の様になったかと思うと、ひび割れ、地面の上に建てられていた建造物を崩壊させ、丘の頂が裂け、そこから何かが天高く昇っていくではありませんか。

 

 人々はその光景に驚愕をし、そして誰もが口を閉ざす。

 

 打ち上げられたのはボロボロになり気絶しているこの国の英雄クロコダイルでした。

 

 誰もが理解できない中、彼らの耳に雨の音と王女の悲痛な叫びが聞こえます。

 

 誰もが隣のものの顔を見て、誰もが欲しかった雨に心を揺さぶられ、誰もがその声の主を見上げるのです。

 

 ここに国中を巻き込み大量の血を流した内戦が、偽りの英雄に奪われた雨を再び取り戻すことによって終結したのです。

 

 人々は喜びあい、憎しみ悲しみを水とともに流し、抱き合います。

 

 これは王女が苦難の末、国を救い、それを手助けした海賊たちは王下七武海という巨悪を打ち滅ぼし、英雄となったのです。

 

 これで王女様と海賊の救国の物語は終わりを迎えたのでしたとさ。

 

 おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おしまい?

 

 そう、救国の物語はここでお終い。まあ、もしかしたら英雄たちと王女様の間でまだ何かお話が続いているのかもしれないかもしれけど、まがねちゃんはしょーじきそんな感動物語も英雄譚にも興味はないのだよ。

 

 そして、この救国の物語自体も、まがねちゃんは人々が多く死ぬ、悲鳴が満ちる、絶望に彩られる、無意味なことをやって馬鹿している人々を見られればいいのであって、結果何てどうでもいいの。

 

 え?それなのに何かこそこそ細工していたって?やだなーもう、何事も楽しむには準備が必要ってもんでしょ。私は戦争の過程を楽しみたいだけだよ?それにこれはまがねちゃんの始める物語の序章に過ぎないのに、引っ掻き回して爆笑する以外やることなんてないんだな~。

 

 まあ、この国が救われず、気づいたら救おうとしていた心意気が全てこの国をほろぼすこういだったて気づいた姿も見てみたかったけど、それだと私の目的が果たせない。

 

 あ!だからあなたに協力していたのは嘘じゃないよ。まぎれもないまがねちゃんの本心。

 

 でも、私を満たせるのは貴方じゃないんだよね。だから私はあなたに協力してこの組織とあなたの力を貰うことにしたんだ。ふふ、この力は凄いね。まがねちゃんも正面からあなたとの戦闘して勝つのは難しいし、かといって嘘で絡めるのも正直不可能だと思ってたから、今回の彼等の活躍は本当にありがたかったかな。

 

 ふふ、英雄か、ああ、本当に彼等は英雄だよ。警戒心が高いあなたが隙を見せるのはそんなにないし、この戦争で何個もの罠を用意しといたけどすべて無駄になっちゃた。

 

 とっ、無駄に話しすぎちゃった。

 

 ありがとうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アラバスタ王国にクロコダイルが打ち上げられ、戦争が終わった夜。そのクロコダイルを捕まえた海兵の一団が護送のために軍艦まで護送していたの。しかし、その部隊が何時まで経っても護送完了したという報告があがらず、連絡を取ろうにも彼らからの連絡が途切れてしまっている。

 

 スモーカーにこの国のことを頼まれたたしぎは確認しに行ったところ、砂に埋まり、ミイラとなった海兵の体の一部が広がる光景だった。

 

「これは………いったい」

 

 目の前の光景が信じられないたしぎは、既になれ、この国の砂の上の歩き方を知っているはずなのに、足元が崩れ、流れ、足を取られ、自分の体が揺れているように感じられた。

 

 砂から突きだした乾いた手の元に彼女はたどり着くと、膝をつき、その砂の上から空に向かって突き出された手をそっと触るが、既に限界だったのか、その瞬間、乾いた音を立てて指が、手首が折れ、砂になる。

 

 たしぎは目の前の光景が信じられず、その手を顔にもっていく。しかし、その手はしっかりと彼女が着けるメガネに触れる。

 

 彼女と一緒に来た海兵たちも上官のその姿にかける言葉が無かった。

 

 そしてそのまま時間が無為に過ぎ去っていくが、その間にも砂漠には風が吹き、目の前の光景を変えていく。

 

 一人の海兵が何かに気づき、走り出し、砂に手を突っ込み、かき分け、砂の中から軍服を取り出す。

 

 たしぎ以外の海兵はその服を見て、俯く。

 

 そして拾った彼も俯きながらそれを持ち、茫然とするたしぎに近づく。

 

「これを」

 

「…………」

 

「護送をしていた部隊の者が着けていたもので間違いありません」

 

 その言葉を聞き、この国に来てニコ・ロビンに相対しなすすべもなく地に伏した時、クロコダイルに地に伏しもがく自分を嘲笑われた時に感じていた自身の無力感が、そして張り詰めていた彼女の心が悲鳴をあげる。

 

「クロコダイルは?」

 

 それでも彼女は海兵としての正義にすがり、仕事を、自分の為すべきことをしようとする。

 

「…………いません」

 

「…………そう、ですか」

 

 吹き荒れる砂、その砂は全てを埋めてしまう。しかし、たしぎは降りかかる砂の中その服を握りしめ、顔のそばまで持っていく。

 

「…………どうして」

 

 震える声が、何時も生真面目で、男に負けないようにしている彼女とは思えない弱弱しい声がこの場にいる皆の耳に届く。

 

「どうして、私たちはこんなにも無力なんでしょうか」

 

 その言葉に死んでいった部隊に友がいた者、仕事仲間がいた者、先輩がいた者、同僚がいた者、全てが拳を握りしめる。

 

 たしぎは湿り気を帯びた自分の顔に張り付く砂に、服に張り付く砂に、自分の足を捕らえる砂に、視界を遮る砂に、正義を埋めるこの砂に、そのメガネを曇らせる。

 

「弱いからですか?それとも彼が強すぎるからですか?」

 

 彼女はこれ以上服を砂で汚さないように丁寧にたたむ。

 

「私たちに正義を騙る資格が無いのでしょうか?私たちでは何をしても無意味なのでしょうか?」

 

「「「…………」」」

 

「それでも、それでも悪に怯える人々を救う正義になりたい私は!」

 

 彼女は自由になった片手を振り上げる。

 

「正義になれない私は!私はどうすればいいのです!」

 

 振り上げたこぶしは何も起こさない。砂の大地にはその拳を振り下ろした後もその音も残らない。

 

 それでも砂が憎い。

 

 彼女の拳は止まらない。

 

 砂の流される音が周囲に満ちる。

 

 沈黙が捧げられる。

 

 そして彼女の拳が暫くして打ち付けた砂の上で止まる。

 

「力が欲しい。正義を笑う悪が憎い。正義を振りかざせないこの世界のルールが、悪を良しとしてしまうこの世界のルールが、自分が、全てが憎い」

 

 彼女は自分の刀を鞘から抜き、砂につきたてる。

 

「斬ります」

 

 彼女は立ち上がる。

 

「例え、何をしても悪を斬ります」

 

 彼女は突き立てた刀を墓標代わりにして、カラになった鞘を背負いその場を背にする。

 

「行きましょう皆さん。やるべきことがまだあります。悲しむのは終わりです」

 

 彼女は部下に命令する。

 

 命令された彼らはいつもと違うたしぎに違和感を抱いたが、それはこの現場のせいだろうと片付けたが、その曇ったガラスの下の目を見たならば誰科が彼女に声を掛けたであろう。

 

 しかし、誰も彼女の顔をしっかりと見ることは無かった。

 

 吹き荒れる砂が彼女の表情を隠してしまう。

 

「絶対、許さない。クロコダイル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかった。次はどこにいこうかな?」

 

 砂に紛れ、この国を去る彼女に気づける者がいなかった。

 

 

 

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