天竜人は地に落ちた。まがねちゃんはそう嘯く   作:kurutoSP

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まがねちゃんは止まらない

「これでチャラでいいんだよね?」

 

 テゾーロ一行がまがねはオープンした手札を見て固まっているところをじっくりと見て十分楽しんだので、その硬直している彼らに問いかける。

 

 彼女の声を聞いた彼らは漸く再起動して、タナカさんはバラまいてしまったトランプを慌てて片付けるが、ダイスとバカラは何をすればよいのか分からず、テゾーロの顔を伺う。

 

 二人に見られているテゾーロはというと、苦虫を噛み潰したような顔をしてまがねの顔を見ている。

 

「まさか無効だなんてつまらないことをゲームに置いて言うんじゃないよね?」

 

 テゾーロは更に顔をしかめる。

 

 テゾーロが何も言わなかったが、納得できないというのは誰が見ても明らかである。

 

 そして、バカラの力を知っているが故、まがねが何かしたのは明白であるため、トランプを片付け終わった後にタナカさんはそのでかい顔をまがねに近づけ凄む。

 

「するるるる。そのまさかですよ。あなたが勝つはずがない。何かイカサマをしたのではありませんか?」

 

 だから、このゲームは無効だと、その手に持つピストルを突きつける。

 

「ふふ、どこで私がイカサマをしたというの?」

 

「お前がトランプをひっくり返すときに決まっています」

 

 まがねを脅迫するようにそのこめかみにピストルを突きつけるが、彼女の表情は変わらない。

 

 それどころか、テゾーロを見て笑うのだ。

 

「ふふ、私は何もしていないんだけど。まあ信じられないならもう一度してもいいよ」

 

 彼女は悠然と微笑み彼らに再度勝負を持ちかける。

 

「でも、そちらは少しはサービスしてもいいんじゃないかな?」

 

「するるるる。何を馬鹿なことを」

 

 イカサマをした奴は問答無用で奴隷行きだと言おうとしたが、テゾーロがテーブルを叩いたことで続きの言葉は発されなかった。

 

「良いだろう。その勝負乗ってやろう。かけるものは、そうだな。更に額を倍にしよう。負けてもこれを上乗せするチャッチなまねはしないさ」

 

「金はいらない。そんなものはどうでもいい」

 

「っ…。どうでもいい?」

 

 まがねは雰囲気の変わったテゾーロを見て、言葉を選び直す。

 

「そっ、金なんてあってもどう仕様もないし、そんなもの、単なる価値を示すための代替品はいらないよ。それじゃあ何もできない」

 

 彼女はよりテゾーロを刺激する言葉をチョイスしていく。その顔にでる表情を見ながら、どの言葉が彼の本心をさらけ出せるのか興味本位で彼の心の壁を壊し、ズカズカと土足で彼の領域に踏み込もうとする。

 

「そう、金で買える物なんてたかが知れているもの。それじゃあ、本当に欲しいものなんて永遠に手に入らない」

 

「……………」

 

「ガッカリだな~。エンターテイナーを自称するなら、もっと価値あるものを…」

 

 テーブルがテゾーロの振り下ろした拳によって真っ二つにされた。

 

「黙れ。金がすべてを支配する。ここも、この新世界も、そして政府も、すべてが金に支配される!」

 

 黄金のテーブルにビリッと電気が走り、ドロリと粘性の高い液状になったと思ったら、形を変えテゾーロの振り下ろされた拳に纏わりつく。

 

「金がねえ奴は金のあるやつに支配される。金があればこの生命でさえ、この国でさえ買える。この世のすべては金に変換され、これ以上価値のあるものなどない」

 

 テゾーロの拳にまとわり付いた金は武器と化す。

 

「代替品?買えるものがたかが知れている?それは金が無いからだ。だから己の尺度を超える価値は、買えぬというモノは、金さえあれば実際は買える、何もかも。そこに例外などない、それがこの世の真実だ。なのに金のないやつはどいつもこいつも、買えないものがあると。そんなものどこにある」

 

 その凶器とかした拳が振り上げられる。

 

「愛、友情、信頼。目に見えないものをあげつらえては買えぬと嘯く。すべて買える。愛も友情も信頼さえも、金だっ!金さえあれば買える。そう言うとどうだ、それは見せかけ、金がなくなったら離れる?どいつもこいつも何も理解していない。金があればいいだけだろうが!金さえあれば一生裏切らない愛と友情と信頼が手に入るのだぞ。逆に愛や友情、信頼を糧にしている奴らはごまんと見てきた。だが、どうだ。実際に俺が金で雇った奴隷どもに襲われると簡単にそれらを捨てる。それどころか俺が金をチラつかせれば裏切る。何が本物だ。何が偽物だ。笑わせてくれる。結局、金に跪き、支配される。この世の全ては金だ!それをくだらない?何も知らねえガキが吠えるな!」

 

黄金爆(ゴオン・ボンバ)

 

 その一撃はVIPルームを揺らす。

 

「これが金の力だ」

 

 テゾーロは自分の一撃を交わしたまがねを睨み、そして能力を使用して、部屋中の黄金を操り始める。

 

 一方のまがねちゃんはキレていきなり攻撃してきたテゾーロに対して少しほど挑発し過ぎたと彼の攻撃の一撃を見て判断したが、それでも彼女ももう止まる気などない。

 

「やっぱり下らない。金に支配されているのは果たして誰なんだろ~。フフフ、今のあなたの姿は…滑稽だよ。」

 

「黙れ!支配を、受け入れろ!ここでは俺は…神だ

 

 そしてその中心に佇むテゾーロは渦巻く黄金に囲まれ、誰も近づけない鉄壁を作作りつつ、まがねに向けて黄金の鋭い触手を何本、何十本と繰り出す。

 

 その様子は部屋が牙を剥くと言ったところだ。そして、この空間の攻撃、防御を支配する彼は今まで誰にも負けることなく、この黄金船では神を名乗るのも納得できるほどの圧倒的力を見せつける。

 

 そしてまがねに向かう触手の速度、本数、範囲どれをとっても生半可なモノではなく。彼女は避ける間もなく砂煙の中に消えゆく。

 

 部屋が揺れ、砕けた黄金と砂が飛び散り、空気を揺らす。

 

「金が…すべてだ」

 

 テゾーロはミンチになったであろう少女がいるであろう砂埃が舞う攻撃地点を眺め吐き捨てる。そして、タナカさんに指示を出そうとして、自分の直感を信じて黄金の盾を作り自分の前にかざす。

 

砂漠の槍(デザート・ランチャ)

 

 テゾーロの耳に少女の声が微かに聞こえたと思ったら、掲げていた黄金の盾に強い衝撃が伝わり、その腕が盾ごとよこに弾かれ正面ががら空きとなる。

 

「ほら。まがねちゃんの命は金じゃあ買えなかったでしょ?」

 

 いつの間にかテゾーロの目の前にいたまがねは体の一部が砂と化していた。そんなまがねちゃんは彼の攻撃が無駄だと嘲笑い砂のままの右手を彼に突き出し、スナスナの実の能力を開放する。

 

「っ!その能力は」

 

 テゾーロは少しだけ冷静さを取り戻した頭脳で、目の前で起きているあり得ない現象に驚きつつも、ダイスの報告とこの船にあるはずの無いサラサラの砂を思い出す。

 

「何故その能力を持っている!」

 

 彼の脳裏にアラバスタ王国での海軍の失態の情報が浮かび、それと同時に新たに発行された億越えの賞金首の顔を思い出す。

 

「それはクロコダイルの……」

 

砂嵐「重」(サーブルス・ペサード)

 

 驚愕、歓喜、焦り、全てを砂が覆い隠す。まがねちゃんの笑い顔も。




新技
砂漠の槍(デザート・ランチャ)まがねちゃんが考えた斬撃ではなく、貫通力を意識した攻撃。ぶっちゃけ、イメージとしては字そのまま、砂の槍を相手に投げる技です。
 メリットは斬撃よりも貫通力と威力があること。
 デメリット、避けやすい。槍を生成してから攻撃に移るのでどうしても攻撃の方向は読まれやすい。そしてあまり距離は出ない。

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