天竜人は地に落ちた。まがねちゃんはそう嘯く   作:kurutoSP

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まがねちゃんは神を知る

「するるる。呼ばれたのでVIPルームに行ってきます」

 

 タナカさんは電伝虫から聞こえるテゾーロの声に安堵しつつ、戦いの行方が気になりハラハラしていた二人、特にバカラに対して彼の無事を告げる。

 

「そう、でもあの女の目的は何だったのでしょうね」

 

 バカラはようやく落ち着き、あの不気味な女が何だったのかを考える。

 

 それを聞いたダイスは何故か笑顔だったが、タナカさんの顔は渋かった。

 

「分かりませんね。四皇、七武海、世界政府、海軍。私たちは味方も敵も多いですから何処からかの刺客だったのかも知れませんし、はたまた単なる狂人だったか。まあ、いずれにせよ死んでしまった今ではその目的など分かりません」

 

 バカラはそれを見て、あの女が何か目的があって動いているようには見えんかったのでタナカさんの考えすぎた考察を鼻で笑うと、その頭を掴む。

 

「死んだ女のことなんてどうでもいいのよ。それよりも分かっているわね?」

 

「分かっていますからその手を放してくれませんか」

 

「そう、テゾーロ様のことを任せたわよ。後、どうされていたのかも」

 

 タナカさんは解放され、ほっとし、同時に女はやはり怖いと思うのである。

 

「では私はこれで、二人はいつも通りカジノの警備と接客を任せます」

 

 タナカさんは自分が作り出した穴に消える。

 

 そして二人もそれぞれの持ち場に消える。

 

 だが、その場にはタナカさんがVIPルームから落ちてきた時に一緒に砂金と砂が混じったモノが落ち、ばら撒かれており、その砂が蠢き、人の形を作り出す。

 

「ふ~。あんなのと正面切って戦うなんて馬鹿のやることだよね~」

 

 その場にできた人は、いつもの笑みを浮かべるまがねちゃんになった。

 

「まったく、沸点が低すぎる。カルシウムが足りていないんじゃないのかな?牛乳飲まないと」

 

 彼女は自分の体につく砂金を払いのけると、部屋の奥に向かう。

 

 「まっ、いっか。彼らと協力体制を作れてたら良かったけど、無理して作るモノでもないし、これはまがねちゃんの大切な楽しみ。他の人に奪われたらたまらないモノ」

 

 彼女は楽しそうに歩く。

 

「さ~て、遊びは此処まで。此処での目的をそろそろ果たそうかな」

 

 彼女は衣装を変え、そして帽子を被りその顔を隠すとその場を離れ、一旦カジノに向かうのである。

 

 どうやら思いの外楽しかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「するるる。お疲れ様です」

 

「ああ、疲れたよ。久しぶりにくだらないものを見た」

 

 テゾーロとタナカさんはVIPルームの直されたテーブルに座り向き合っていた。

 

「それはそれは。それであの女はどうしたのですか」

 

 タナカさんは周囲を見渡しテゾーロに拘束されたてあろうまがねを探す。

 

「殺したよ。あまりに不愉快だったものだからな」

 

「するるる。まあ確かに不気味なやつでした。それで死体の方は?」

 

「そこら辺に埋まっているだろう」

 

 テゾーロはタナカさんの背後の黄金の床を指差し答える。

 

 そこでテゾーロはいつもの自分でないことに漸く気がつく。なぜ自分はあれほど不愉快の女をただ殺して埋めてしまったのだろうかと。

 

「しまったな。埋めたのはもったいなかったか」

 

「いえいえ。アレの処分はアレの所有者たるテゾーロ様の自由。何も問題ありません。するるる。ですがこちらに任せていただけるのであればきっと楽しめるように計らいますが」

 

「大丈夫だ。お前に任せよう」

 

 テゾーロは黄金の床を操作しこの部屋に沈めたであろうまがねの死体を探す。

 

 タナカさんは死体が出てくるのを今か今かと待つのだが、10秒20秒と時間だけが過ぎていき、その間床から出てくる者は何一つ無い。

 

 流石におかしいと思ったタナカさんは蠢く床から目を離し自分の背後にいるテゾーロの方を向いて腰を抜かす。

 

「……なめやがって」

 

 そこには殺意をばら撒き、憤怒の表情のテゾーロが座っていた。

 

「どこまでも人を舐め腐りやがる!絶対見つけ出して殺してやる!」

 

 ギロッとタナカさんを睨めつけるように見ると命令を下す。

 

「絶対に見つけ出せ、だが見つけても殺すなよ。即座に俺を呼べ。今度こそ殺してやる」

 

 慌てて駆け出すタナカさんを眺めつつ彼は確実に敵を殺す準備をする。

 

「今度は神の姿を見してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神か!」

 

 まがねちゃんは眼の前の光景にその変わらぬ不気味な表情を崩し目を見開いている。

 

「こっこんなことって」

 

 まがねちゃんの手からコインが落ち、地面に軽い音を立てるが、その音は他の音によりかき消される。

 

「キテルとは思っていたけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まさかジャックポットとは…!」

 

 まがねちゃんは大きな音を立て大当たりを知らせ、大量のコインを吐くスロットマシーンを見て、自分に神が舞い降りたと感動していた。

 

 彼女の神はずいぶん薄っぺらいようだった。

 


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