天竜人は地に落ちた。まがねちゃんはそう嘯く   作:kurutoSP

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まがねちゃんは壊しちゃう

「あ~楽しい」

 

 自分が追われる立場だと理解できているのか、まがねの服装は地味なものからチャラチャラしたものに変わっていた。

 

 そんなまがねは片手に牛乳を入れたコップを持ちながら楽しそうにいろんなゲームを観戦し、時にヤジを飛ばし、時に嘘を囁き場を盛り上げる。

 

 しかし、周囲に黒服の人間が増え、何かを探しているのを見つけると、

 

「懐も温まってきたし、そろそろ動こうかな」

 

 まがねは更に場を盛り上げると、その場をそっと離れ、ゆっくりと従業員の一人に近づきその意識を狩り、裏に引きずり込む。

 

「全くここは監視の目が無駄に多くて面倒くさいな~」

 

 彼女はみぐるみを剥ぎ、服を着こむと、従業員の息の根を止めるため、自分の服をワザと乱暴にされたように着せ、その上から心臓をナイフで一突きにした。

 

「うん!会心の出来。タイトルは哀れな金持ち」

 

 芸術芸術と楽しそうに言いながら、彼女は堂々と船の奥へと潜り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだか!」

 

 テゾーロはイラついていた。自分の島で未だネズミ一匹見つけることが出来ないことに。

 

「すみません。ですがもう少し程お待ちください」

 

 頭を下げるタナカさんを見てテゾーロは落ち着きを取り戻すため、一旦深呼吸をする。そして何故彼女を見つけられないか、そして彼女がどこにいるのかを考える。

 

「奴の狙いは何だ」

 

 その問いにタナカさんは答えられない。

 

 その姿を見て、テゾーロは再度イラつく。

 

「まあいい、客に紛れているなら時間がかかるのも仕方ないだろう。だが、奴の目的が逃亡なら許すわけにはいかない。全ての船を調べろ!」

 

「客にはなんと?」

 

「サービスで船体の掃除をするなりなんなり言え!それでも拒むやつには力をチラつかせろ。取り逃がすことだけは阻止しろ!」

 

「他の目的の場合は?」

 

「金か?泥棒なら分かっているよな」

 

「賭けの用意をしておきますか?」

 

「いや、見つけてからだ」

 

「了解しま……、失礼します」

 

 電伝虫が鳴り、話を止めて席を立つ。

 

 暫くして戻ってきたタナカさんは朗報だと目に見えて分かる表情をしていた。

 

「客の死体が見つかりました」

 

「奴か」

 

「ええ、たぶんそうでしょう。見つかりにくい監視網の隙間に在りましたから間違いないモノかと」

 

「どこにあった」

 

「此処です」

 

 タナカさんはこの船の地図を取り出すと死体が見つかった辺りを指し示す。

 

「それと死体の服はカジノの景品で、この客は手帳にスケジュールなどを書いていましたので、カジノからこの目的地に移動する際に襲われたと思われます」

 

「なるほど。奴はこの私から逃げた後この方面に移動したと、こちら側は船などないし、ましてや脱出手段も用意していない。となると、用があるのは天竜人か金かだな」

 

 他にも施設はあるが、逃亡中の人物が娯楽施設に入るとも思えないので選択肢が自然とその二つに絞られる。

 

「だが、天竜人なぞに用がある人間などいるものか。なら金か」

 

 彼ら二人の話し合いの最中電伝虫が鳴る。

 

「するるる。何ですか」

 

 タナカさんが新しい情報でも手に入った可能性を考え即座に出る。

 

 暫くの間、タナカさんとその向こうにいる女性の部下からの報告を聞く。

 

「するるる。では引き続き監視を頼みますよ」

 

「何だった」

 

「いえ、部下から連絡が入りまして、先の広間の鬼ごっこの前に殺されていた部下たちの中にまだ息があったモノがいたようで、死に際に奴の目的を教えてくれましたよ。するるる」

 

「ほう。どこだ?」

 

「金庫はどこだ?と聞かれたそうですよ。するるる」

 

「そうか。ではいつも通りの手はずで今度こそ奴を仕留めろ」

 

 テゾーロは時間を確かめる。

 

「俺はこれからショーの時間だ。後はお前に任せる」

 

「するるる。お任せを」

 

 タナカさんに任せて彼は着飾る。

 

「ようやく待ちに待ったショータイムだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで資金は揃った。後は暴力と権力のみ」

 

 まがねちゃんは全身をこの世で最も尊い一族の血で赤く染めながらも笑う。

 

「まず、ここに死を、絶望を、混沌を、そして終焉をもたらそうか」

 

 死体の隣にテゾーロの部下がナイフを持ち映像電伝虫に移されている。

 

 テゾーロの築き上げてきたモノの崩壊が始まろうとしていた。

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