天竜人は地に落ちた。まがねちゃんはそう嘯く   作:kurutoSP

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短っ!


まがねちゃん流暇の潰し方

 まがねは暇だった。

 

 それもそのはず、クロコダイルは初めての仲間でどう扱っていいのか分からず、腹の内が読めないニコ・ロビンの警戒役として信頼できる仲間を配置しただけで、具体的にどうするか決めておらず、そして彼女を使わない最大の理由はもう既に計画を実行するだけの戦力が揃っていることである。

 

 つまり、クロコダイルは彼女の扱いに困り、結果放置という形になり、ニコ・ロビンに至ってはクロコダイルとの関係が見えず、彼女がどのくらいの権限を持っているのかも分からず、推測できるのは彼女が監視役で、監視役を任せる程度にはクロコダイルに信頼されているということである。

 

 だから、ニコ・ロビンも彼女に対して仕事を頼むわけにもいかないし、頼まなくてもクロコダイルが出来ない仕事を割り振ることもないので自分一人で何とかなってしまうのだ。

 

 だから、まがねは暇だった。

 

 だから、まがねは人を殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、やっぱ詰まんない」

 

 彼女は海軍の船の中佐に当てられた部屋で一人ベッドに寝転がり呟いていた。

 

「中佐程度じゃあ何も知らないか。あーあ、進展なし」

 

 本来の部屋の主はベッドの下に無造作に転がされ、その補佐官と思われる男性も床に転がされている。

 

 彼女がベッドで部屋の主の代わりに転がっていると、電伝虫が鳴る。

 

「およ?確かこれは電話のかわりだったかな。ひょいっと」

 

 彼女は無造作に受話器を取る。

 

『こちら海軍本部!そちらは巡回任務にあたっておられる〇×中佐ですか?』

 

 彼女はその言葉を聞き、良いことを思いついたのか鼻をつまみ、声を低くすると、

 

「こちら〇×中佐でありま……。どうした、補佐官?呼んではいないぞ。なっ!まっ待て」

 

 奪った拳銃をぶっ放す。そこで彼女は自分の素の叫び声も入れた。

 

『もしもし!』

 

 向こう側から焦った声が聞こえ彼女はますます演技にのめり込む。

 

「ぐっ。裏切りも…」

 

「やっ止めて。私は見逃してよ」

 

 彼女はそこで区切るとまた銃を乱射し、周囲の調度品を壊すとガラスを割り、外に凶器の銃を投げ捨て、受話器を下ろす。一人二役を演じた彼女は一仕事終えたように額をぬぐう。

 

「ふう。さーてと。楽しくなってきたー」

 

 彼女は近くにある書類もトランクに詰め海に捨て、ついでに補佐官の死体の服をはぎ取り、自分の服にその補佐官の血を付けた後、彼を海に捨てる。中佐の死体も帽子などの一部の分だけを残して海に捨てる。

 

 そして近づく足音を聞きながら、急いで正義のコートを羽織ると帽子をしっかりと被り、部屋の外に出る。

 

 既に部屋の近くにまで来ていた海兵が部屋から出てくる自分を見つける。

 

 まがねは海兵を無視して彼等が来る方とは逆側に、そしてより船内へと走っていく。

 

 その様子を見た海兵は止まるように命令する。

 

「おい、中佐殿がおられない!」

 

「連れてきた女も、血まみれの服しかないぞ!」

 

「補佐官は何処だ?」

 

 彼女の背後で騒ぎが拡大する。

 

「さてさて犯人は誰でしょうか」

 

 彼女は笑いながら、ポケットに入ってた補佐官の者と思われる手帳を床にわざと落とす。

 

 彼女は走りながら倉庫を見つけそこにいったん隠れる。

 

 そして彼女はこの船の見取り図を取り出し、そして彼女は倉庫が目当ての食糧庫であっていたことに自分を完璧と褒めながらも、コムギをバラまいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方海兵たちは、現場の惨劇と逃走したものが落としたもの、いなくなった補佐官などから彼女の嘘の真実を推測しつつあった。

 

「現場にあった服や帽子は中佐殿とその中佐殿がナンパした女性のものだと考えて間違いないと思われるがどうだろうか?」

 

「間違いないだろうな。付け加えるなら、二人とももう海に捨てられていると考えられるな」

 

「ふむ。何故捨てたのか分からないが、現場から逃げた一人の海兵とその海兵が落としたものと思われる手帳から犯人は補佐官で間違いないかと思われる」

 

「とにかくだ急いで犯人を捕まえるとして、女性はどうする。海軍の中佐が仕事中にナンパしたというだけでもばれたら頭が痛い問題なのに、その女性が海兵に殺されましたとなるとまずいと言うだけではないぞ!」

 

「さっきからひっきりなしになっている本部の対応も急いでしないと、私たちの首が飛びますよ」

 

「とにかく、本部には犯人の情報を上げて茶を濁しておけ!その間に我々は船を捜索だ」

 

 急いで万が一の場合の代理司令官を立て、中佐が殺されてから厳戒態勢に移行させていた海兵に捜索命令を出そうとして船が揺れる。

 

「なっ何だ?」

 

「おい、何の爆発音だ」

 

「敵襲か?」

 

「報告を早くしろ」

 

 船はあわただしくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消火しろー!船が燃えるぞ。急げ急げ」

 

 まがねは爆発した食糧庫を眺めつつ、食料班の服に身を包みつつに大声で火事を知らせる。

 

 それに反応した海兵が続々と現場に集まり、彼女は人混みに紛れてしまう。

 

 彼女はそのまま騒ぎを広げるため至る所で嘘を吐く。

 

「火事が武器庫で起きました!」

 

「火事が兵舎の一角で起きました!」

 

「火事が食堂で起きました!」

 

 それを信じ、そこに向かう者ども、逆に間違いだと指摘する者たち。

 

 だが誰も関係なく現場は混乱する。

 

「嘘の嘘、それはくるりと裏返る」

 

 嘘が真になり、船内の至る所でボヤが起き始める。

 

 混乱する海兵を尻目に彼女は悠々と人がいなくなった船外を歩き、船から出る。

 

「ああ、楽しかった。後は嘘を信じてくれるだけ。嘘も気づかなければうそじゃないって、まがねちゃんはそう思うのだなー」

 

 無邪気に笑いながら人混みに紛れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後火事の現場からは一人の焼死体が発見され、その死体には海兵のコートらしきものに階級を表す勲章が付いており、そこから服の持ち主であった補佐官が焼死体の身元であると推測され、本部には補佐官の裏切りと逃走不可能となり焼身自殺を図ったと報告された。

 

 海軍本部は中佐のミスとまさかの裏切りに頭を悩ませることになり、事件をマスコミなどにかぎつけられ傷が大きくなる前に調査を打ち切り、自分たちにとって都合のいい情報だけを流し、この一件を強引に終わらせた。

 

 何一つ真実がない嘘が真実とされ、その真実が更に嘘で塗り固められ世間に公表された。

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハ!さいっこう!嘘が更に嘘で覆いつくされるなんて、現実は小説よりも奇なりってことかな」

 

 新聞を見ながら凶女が笑う。

 

 その新聞には賞金首として麦藁のルフィが新たに載っていた。




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