天竜人は地に落ちた。まがねちゃんはそう嘯く   作:kurutoSP

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まがねちゃんは我慢できない

「ハッハッ」

 

 アラバスタの首都アルバーナのとある路地裏で一人の少女が必死になって逃げていた。

 

 逃げる少女はその端整な顔を苦痛に歪ませている。少女はかなり疲れ切っているのが誰の目にも明らかだが、少女は止まらない。時折後ろを気にしつつ、ただ前にある道をがむしゃらに走る。

 

 少女はよほど必死なのかその服のボタンが壊れその肌が外気に曝されているにもかかわらず、そのままその肌を露出させ走る。

 

 そんな少女は追跡者の姿が全く後ろにも前にもいないことを確認し、急いで民家の戸を開け入ると即座に閉めその扉によりかかるようにして息を整えると安堵しその体の力を抜き座り込む。

 

「鬼ごっこはもういいの?」

 

 聞こえるはずのない声に少女の顔は驚愕を露わにし、同時に急いでこの場から逃げようと立ち上がる。

 

「楽しかった?それとも嬉しかった?」

 

 だが、少女の体は扉を開けることは無かった。なぜならばこの場にいるもう一人の女性により立ち上がった彼女の首は扉に押し付けられたためだ。

 

 薄暗い民家に太陽の光が僅かに差し込み、少女の困惑、恐怖、疑問、そして首を押さえられることによる苦痛を豊かに表現している顔を照らしていた。

 

 そんな少女の顔を見つめる女性はその表情をよく見ようとその顔を近づける。

 

 光により少女の顔と露わになった女性の顔は不気味な笑みを顔に張り付けたまがねであった。

 

 まがねは一人の少女に壁ドンをしながら囁く。

 

「良い表情だね。ゾクゾクしちゃう」

 

 まがねに捕まる哀れな少女はくぐもった声を出しながら彼女に反抗するように手を振り上げるがその振り上げられた拳に力強さはない。

 

「あはははは。まだまだ元気だね」

 

 しかし、そんな少女の弱弱しい抵抗は意味をなさず、ただまがねにその両手を掴まれ頭上で拘束され、より身動きが出来ない状態になる。

 

 少女はそれでも精一杯の抵抗としてまがねを睨みつけ、体を揺らして拘束から逃れようともがく。

 

 そんな抵抗をまがねは阻止せず、むしろ愛おしそうに眺めるだけで邪魔はせず、暫く少女の好きにさせる。

 

「ふふ、汗臭い」

 

 少女が疲れでぐったりとし始めるとまがねは彼女の首元に顔を近づけあえて臭いを嗅ぐ音を鼻から出して羞恥を煽る。

 

 少女は彼女の行動にただ頬を赤らめそっぽを向く。

 

 そんな行動を楽しげに見るまがねは壁についていた手をそっと少女の体を這うようにゆっくりと下げていく。

 

 その動きは緩慢であり、少女にその動きを強く意識させる。

 

 少女の体がまがねの手が下へ下へと降りていくごとに隠しきれない恐怖が沸くのか震え始め、運動とは別の汗が少女の額から流れ始める。

 

 まがねは震える少女を自分の体で壁に押し付ける。

 

「怖い?震えが私にもしっかりと伝わって来てるよ。ふふ、痛いのは最初だけ、この手がずぶりとあなたを貫き血を滴らせるときだけ、後は気持ちいいよ。大丈夫、一緒にイってあげるから」

 

 まがねはそっぽ向く少女の耳元に顔を近づけるとぺろりと舌を出し少女の耳をなめる。

 

 少女は背筋を走る何かを感じ挟まれた体を何とかしてひねろうとする。

 

 長身のまがねは小柄な少女の行動をその体で押さえると、少女の両手を解放し、空いたその手は少女の顎に向かう。

 

「まがねちゃんはね、あなたの顔が見たいの」

 

 少女は頬を赤く染めて目をトロンとさせたまがねと向き合う。まがねの顔を直視する少女はその顔を即座に逸らそうとするも全く動かず、怯えを見せぬためにも目を瞑る。

 

 そんな少女の必死の行動の裏にある感情をしるまがねはより少女の顔をよく見るために少し手を上げ顎の位置を移動させることによりやや下を向いていた少女の顔が上を向く。

 

「最初は誰も怖いよね。安心して、まがねちゃんはこの世界じゃないけどイケメンさんにズブリとされた経験があるからさ。貴方はただ私に身をゆだねるだけでいいんだよ。でも、その顔を隠さないでね。ハジメての時のあなたの恐怖と痛みに歪むその綺麗な顔が見たいの」

 

 まがねは途中で中断させていた手の動きを再開させるために、目を閉じ外からの全てに耐えるように体を縮こまらせ少女の体からまがねは自分の体を少しだけ離すと、また少女の体にその手を這わせ、ゆっくりと降ろしていく。

 

 一方、自分の抵抗が何一つ通用しないどころか自分の隠していた本心が暴かれていき、このどうしようもできない状況に半ば諦めを抱いていたが、それでも少女はかつて自分を救ってくれた男性とその男性が抱く思いを思い出すことによりその心を奮い立たせ、その怯えを映した瞳を隠す瞼を開き、その瞳を怒りで染め上げまがねを睨む。

 

 その行動は少女を完全に理解していると言ってもよいまがねに対して意味のないことだが、少女にとって意味のある無意味でもやらなければならない行為であった。

 

「このくそ女が。何があろうともお前の言う通りになんかなるものか!」

 

 少女はこの暑いアルバーナにおいてまがねに必死に抵抗していたため、軽い脱水症状を起こしており、叫ぶようにして言う少女の声は枯れ果てていた。

 

 だが、少女の声には今までの力ない抵抗とは違い、しっかりとした強い力がこもっていた。

 

 少女の変化を敏感に感じたまがねは少女の顔を固定していた手を外すと、いつの間にか赤く染まり熱を発する頬を覚ますようにその手で仰ぎつつもその強い意志の宿る瞳を見つめる。

 

「ああ、いいよ!最高だよ。まがねちゃんはあなたに惚れちゃった」

 

「気持ちわりーな」

 

 少女の大人しい見た目に似合わない荒々しい言葉がその口から出る。

 

 少女はまがねから感じる嫌悪感が強くなったことに体がまた震えそうになるが、自分を奮い立たせるために口をまた開こうとするが、その口は何かにより湿ったまがねの指により塞がれる。

 

「それ以上言うと今すぐにでもあなたを食べたくなっちゃう」

 

 熱い吐息が少女の頬にあたる。

 

 塞いでいた指は直ぐに外されるがその指は暫く少女の目の前をさまよい、少女の視線がその指に集まっていることを確認するとゆっくりとその指を自分の唇にそっとつける。

 

「乙女って好きな人とこうして間接キスして気持ちを抑えたり高ぶらせたりするらしいね。アホだなーと思っていたけど、案外悪くないね。ね?」

 

 少女は怒りと恐怖を感じながらも、まがねのオンナの表情を見て、戸惑いつつもこんな場で意識するのがおかしい感情が少女の頬を赤くさせる。

 

 少女がまがねに翻弄され、このままではまずいと思い雰囲気に呑まれ出来なかった質問をする。

 

「何で……」

 

「およ?何かな。もしかして、まがねちゃんの愛が疑わしく思っちゃったのかなー?大丈夫大丈夫、この思いは本物さ」

 

「何であなたはここにいるの!」

 

 少女はふざけている様にしか見えないまがねに対して、少女の仲間以外知りようのない()()()の臨時拠点に先回りされていたことをどうしても聞いておきたかった。

 

「ん?そんなことどうでもいいじゃない。ここはあなたとまがねちゃんの……」

 

「ふざけないで!ここが何処か知っているのは私の仲間だけよ。それに」

 

「それにどうして他の仲間がいないのかってことかな?」

 

 少女は自分の質問が先回りされ、続きの言葉を飲み込む。

 

「分かりやすいなー。はあ、興ざめだなー。そんなどうでもいいことよりも今を楽しもうよ」

 

 少女はまがねのおざなりの反応に嫌な予感を覚える。

 

「仲間に何をした!」

 

「んー?別に邪魔だったから殺しちゃっただけだよ」

 

 まがねは光を取り込む窓にかかるカーテンに手を伸ばすと、シャッと引き、部屋全体に光を取り込む。

 

「っ!」

 

 少女は光に当てられ、部屋の床に倒れ伏す仲間たちの姿を見て息を呑む。

 

「みんな!どうしたの。起きてよ」

 

 少女は必死に痛む喉を酷使して仲間に呼びかける。だが、少女の呼びかけに反応する仲間は誰一人いない。

 

 それでも少女は最悪の事態を信じられずに仲間に駆け寄ろうと、もう疲れ果て動かない体のどこからそれほどの力が出るのだろうかと言う程の力でまがねの拘束から逃れようとする。

 

 まがねはその様子を楽しそうに眺めながらも少女の邪魔をする。

 

「もう無駄だよ」

 

 優しく少女にまがねは残酷な事実を告げる。

 

「うるさいうるさいうるさい!」

 

 それでも少女はまがねの言葉を信じない。そんな事実は嘘に決まっていると否定する。

 

 そんな少女の思いが届いたのか、仲間の一人がゆらりと立ち上がり武器を構える。

 

 仲間は傷一つなく軽く服が汚れている程度であった。

 

 少女は立ち上がり無事だった仲間の姿に挫けかけていた心を再度奮い立たせる。

 

「おや?仕留め損ねちゃっていたのかな?」

 

 少女の視線を追って後ろを向いたまがねを見て、少女は最後の賭けに出る。

 

「ん?そんなに私にしてほしいのかな?そんなに求められるとまがねちゃん濡れちゃう」

 

 少女はまがねの体に抱き着き拘束する。そして立ち上がり剣を振りかざす仲間に向かって叫ぶ。

 

「今よ」

 

 少女は必死にまがねに抱き着き、仲間の補助をする。

 

 そして剣が振り下ろされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 煌めく剣は無駄のない動きで腕を裂き、血を滴らせる。

 

「ああ」

 

 まがねは赤く染まり始める自分の体をみて笑みを深める。そしてまがねはゆっくりと倒れる()()()()を支える。

 

「今のあなた最高においしそう」

 

 まがねは仲間に腕を斬られ茫然とする少女を余すことなく見ている。

 

 仲間に斬られた少女は信じられないと言った表情で仲間を見つめる。

 

 余りの出来事に少女は体の痛みよりも感情のショックが上回り、茫然としつつも仲間に問いかける。

 

「どうして?」

 

「ふふ、そう言えばどうしてここが分かったのかってきいたよね?」

 

 少女は近くから聞こえる声にようやく自分がまがねに支えられていることに気づく。そして同時に少女はまがねの言葉がするりと入ってきて知りたくもない事実を予想させる。

 

「やっ、いや!聞きたくない」

 

 仲間に腕を斬られる前まで心を奮い立たせ、気丈に振る舞っていた少女はもうそこにはいない。

 

 まがねは脆く崩れ去る少女の心を更に壊すために言葉の続きを言う。

 

「それはね、彼が私に革命軍についてぜーんぶ教えてくれたんだ」

 

 仲間の裏切りという事実はギリギリで保たれていた少女の心を壊すには十分な一撃だった。

 

 放心する少女をに対してまがねはずっと彼女の体に当てていた手を強く押し当てる。

 

 少女はお腹に当たる手の感覚に意識を取り戻し、その手の存在に死の恐怖を取り戻す。

 

「今のあなたは最高!」

 

 まがねの手は少女に突き刺さる。

 

「あっ、え?」

 

 少女は熱くなるお腹、口から出る血、その何もかもが自分の生命を脅かすものだが、余りにもあっけなさ過ぎて理解できなかった。

 

「あなたは死ぬんだよ」

 

 少女はまがねの言うことを信じられない。

 

「うそ、だって私は」

 

「まがねちゃんは嘘をつかないのだ。だってほら」

 

 まがねは少女に突き刺さった己の腕で内臓をかき回すように動かす。

 

「あっ、がぐ」

 

()()()()()()()()()()()、そんな嘘がありえるのかな?」

 

「痛い!やめ、止めて、()()()()()()()()もうやめて!」

 

 まがねはその言葉に笑みを深くし、腕を少女から抜く。

 

嘘の嘘、それはくるりと裏返る

 

「え?」

 

 少女のケガは全て綺麗になくなる。されど壊れた少女の心は治らない。

 

 まがねはそんな何が起きているのか理解できていない少女に更に残酷な仕打ちをする。

 

「あれれ?けががないね。まがねちゃんが嘘を吐いちゃったことになっちゃうな~。困ったね~。仕方ない、もう一度」

 

 少女の体にまがねの手が突き刺さる。

 

 同じ痛みが少女を襲う。

 

「あっそうだ!君もやりなよ」

 

 少女の仲間が彼女の腕をまた斬りつける。

 

 既に心が折れた少女は痛みに絶叫する。

 

 少女はすでにか弱い女の子になり果て、仲間が自分を傷つけることに怯え、ひたすら止めるように懇願するも、彼は止まらない。

 

 少女の悲鳴、血と涙が部屋に充満する。

 

「ああ!最高」

 

 まがねはその様子を眺め、高ぶる気持ちを自分を慰めることにより発散していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女がこと切れて少しして、まがねは濡れた下着を履き替え気分を新たにしたところで、自分が得た新しい人形に向き合う。

 

「最高のショーだったよ。どれだけ懇願し、救いを求める仲間を切り捨てるあなたは実によかったよ」

 

 まがねは泣いている物言わぬ男に語り掛ける。

 

「ふふ、今更泣くなんて、やっぱり人間って面白い」

 

 まがねは感情豊かな人形を見つつも、電伝虫を取り出す。

 

「まあ、革命軍の連絡は以前命令していたとおりにしてよ」

 

 まがねは人形に再度命令を下すと部屋から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 革命軍にちょっかいを出し終わったまがねはクロコダイルが最後の指令を出すレインベースへと向かう。

 

「これで、革命軍は敵対する者の存在を知る。さあ、どうでるかな?楽しみだなー」

 

 彼女は麦わらのルフィに代わる何かを革命軍にさせようとしていた。

 

「上手くいけばよし、駄目で元々だし、革命軍に求める役割はここじゃないしね」

 

 彼女は他の人形にも命令を出す。

 

 彼女は自分が打った手がどうなるか楽しみにしつつも、今日の途轍もない快楽を思い出してしまう。

 

「あっ、また感じてきちゃった」

 

 彼女はまた人を殺すのである。

 

 

 

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