転生者達は決闘者   作:巫女好きの満月

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記憶喪失の少年

 

 全ての転生者がそれぞれの記憶を取り戻した日、日本からとてつもない大きな力が世界中に放たれた。その力を感じた各神話勢力の主神は3000年前にいたとある人物を思い浮かべ、三大勢力の首脳達は初めて感じるその力に畏怖した。

 その日、一人の少女は一人の傷だらけの少年を家族に迎えた。

 自分の名前以外の何もかもがわからないその少年は少女と同じ力を持っていた事から少女は自分と同じーー転生者だと思った。

 だが、話を聞いてみれば自分の名前以外のものは何も覚えていないということが真実だと知った少女は自分の貰った力の精霊の助言もありその少年を自分の家に住ませる事にした。

 

「……でも、記憶は一切戻っていなかったりして」

 

 ボソリと少女が呟くと少女の目の前で『人間を駄目にする事をコンセプト』としたソファでその通りにだらけきっている少年をジト目で見る。その様子を少女の後ろで見ていた精霊の少女は珍しそうなものを見る目で少女を見ていた。

 

「……どうした?」

「別にぃ?私のお気に入りのソファを独り占めしている事に私は別に何も思っていませんけれども」

「思ってるじゃないか」

 

 少年がそう言うと少女は顔を背けた。その様子を見た少年はどうすれば良いのか分からず、少女の後ろにいる半透明な少女に視線を向けるが少女は苦笑いで返した。

 それを見た少年はガクッと肩を落とす。そして、何かに気づいたのか少年は少女の腕を掴むと勢いよく自分の方へと引っ張った。

 

「えっ、ちょ……っ!」

「これで良いだろ?」

 

 少年が左に僅かにずれて、空いたスペースに少女を無理矢理座らせる。少女は少年と肩と肩が触れ合うほど近いことに少しだけ恥ずかしがるも直ぐに何時ものことか……と頭を抱えたくなるのをなんとか堪える。

 この少年、ある時限定で色々と鋭いくせにこういう時は鈍いと少女は思いながら少年に身体を預ける。

 

「何か……思い出した?」

「……何も思い出してないさ」

「……そっかぁ」

 

 一週間に一度、少女は少年に記憶が戻ったかどうか聞く。そして、その度に少年は何も思い出していないと答える。その言葉を聞くたびに精霊の少女は悲しそうな顔をするが、その理由を少女がいくら聞いたところで、精霊の少女は何も語らない。そのことを知っているから少女は何も聞かず、ただ少年の記憶が戻っていることを願いながら少年に質問を続ける。

 

「本当に謎だよね」

「そうだな」

 

 全てが謎に包まれた少年。それが、いま少女が知っている少年の全てだ。精霊の少女にお願いしてこの世界の戸籍などを調べて見たが、少年に関するものは何も見つからず。ならば、裏はどうかと少し危ない橋を渡ってしらべたがそれでも少年に関することは何も見つからなかった。

 唯一の手がかりとも言えるのは少女の隣にいる精霊の少女だが、彼女は何も言わずにただ少年の近くにいる程度。

 

「最近外に出た?」

「いや、全く、全然」

「少しは出たら?記憶の手がかりとかあると思うし」

「そうだな」

「というわけでこれから晩御飯の材料を買いに行くから付いてきてね」

「……分かった」

 

 渋々と少年が少女に言うと少女はよしっとガッツポーズを取り、「何を作ろうかな〜」と上機嫌に自分の部屋へと戻っていった。

 少年は少女の姿が完全に見えなくなった事を確認すると、今も少年を見ている精霊の少女に話しかけた。

 

「なぁ、オレについて何か知ってるのか?」

『やっぱり、見えているのですね』

「やっぱり?」

 

 少年が少女に気になった部分を聞き返すが、少女はそれに答えず先程の少年の質問に答える。

 

『貴方のことは知っています。けれど、教えることはできません』

「ふーん、そっか、なら良いや」

 

 少年がそう言うと少女は少し呆れたように少年を見て、『私も上に行きますね』と言ってからそのまま少年の目の前から移動した。

 その後ろ姿を見て少年は自分の右腕にある赤色の龍の形を模した痣をしばらく見てから着替え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、主婦の人たちは怖いな」

 

 少年がそう言うと少女は少年の手と自分の持つ籠を交互に見て呆れたように「そんなに持ってきて何を言うか」と言う。

 少年はそれに不思議そうな顔をして先程少女が見た場所を見るが、何もおかしいところはないと判断したのか少女に「どうした?」と聞く。少女はそれに何でもないと返すと少年に質問をした。

 

「ねぇ、『ユーリ』って本当に貴方の名前なんだよね?」

「あぁ、その筈だ」

 

 少年ーーーーユーリは自信なさげに少女に言う。自分の記憶が一切ないユーリにとっては『ユーリ』という『名前』が自身の記憶に関する唯一の手がかり。だが、ここ数週間自分の名前を探すも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………」

 

 だからこそ、日に日にユーリは自分について不安になる。

 そんなユーリの不安を感じ取ったのか少女は励まそうとするが、その前にユーリは「気にしなくて良いさ」と少女よりも前へと進む。

 

「帰ろう、ルカ」

「うん」

 

 差し出された右手を少女ーーーールカは掴む。その様子を微笑ましく見守る精霊の少女はやがて繋がれた手を見て寂しそうな顔をするがすぐに素の表情に戻し二人の後を追っていった。




次回予告


自分が誰なのかもわからないユーリ。居候している家の主であるルカが学校に行くことになり暇を持て余す。
そんな時、ルカは新たな転生者と出会いそしてユーリはーーーー。

「貴様、転生者か」
「えっ?」

次回、『魔術師VSドラゴン使い』
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