色ボケのガッシュ   作:ぜがるん

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手が勝手に進んでました。


そう簡単にはいかないのだ

 

  

 

 

 

 「おかえり、きよまろ。いいかおになったな」

 ‎「うるせえ…くそぅこんなつもりじゃなかったんだけどなあ…」

 

 夜の六時前。

 ‎家の前で待っていると、清麿が帰ってきた。

 ‎「水野待ってろ……!」と自信満々に学校へ行った清麿はどこにいったのか、帰ってきた清麿の顔は、幾つか傷を作っていた。

 ‎予想はつく。大方、大して筋力のない今の清麿では、思考に身体が追いつかなかったのだろう。

 ‎しかし、険のとれた顔を見るに、憂いがなくなったのはわかる。実に晴れ晴れとしている。

 

 「ガッシュ、来週から学校に行くよ。改めて…ありがとうな」

 ‎「ぬ。わたしは、たいしたことは、していないのだ。きにするな」

 

 中田先生とも話が出来たようだ。きっとこの様子ならば、クラスメイトと仲良くなるのもそう遠くはないだろう。

 

 「清…麿?その格好…」

 

 仕事が済んだのだろう。清麿を茫然とした様子で見つめている母上殿が立っていた。

 ‎清麿が、母上殿の方へ一歩踏み出した。

 

 「おふくろ、俺さーー」

 

 余が聞くのも野暮と言うものだ。

 二階の清麿の部屋を見上げると、コルルが不安そうな目でこちらを見ていた。

 ‎コルルのことを母上殿に話さないといけない。ずっとではないにしろ、コルルの本の持ち主が見つかるまではここに置いて貰うしかないのだから。

 

‎ ガッシュはてくてくと、一足先に家へと戻った。

 ‎

 

 

 

 

 

 「水野が可愛すぎるんだが」

 「よも、すずめにあいたいのだ。しかしきよまろ、べたぼれだな」

 

 母上殿が腕によりをかけた夕食を食べ終え、風呂に入った後、清麿の部屋で清麿が唐突に言った。目が真剣なのだ。

 ‎コルルは母上殿と入浴中だ。母上殿には、実は此処に来る途中でコルルとは、はぐれてしまっていた、という風に話しておいた。

 ‎イギリスにいる父上殿には、話を合わせてもらうために、電話で全てを話した。余が魔物であることも。人間界で戦いが起こることも。そして、余のことも。

 ‎清麿のことは話していないが。

 

 「ああ、うん。昨日まではどうでもよかったのにな…本当、なんだよあいつ…」

 

 相当に重症なようだ。今の清麿にとっては、突然生まれたに等しい感情なのかもしれない。それ故に戸惑っているようにも見える。変なことをしなければいいが。

 ‎まあ、その内に落ち着くだろう。

 

 「柔らかった…ガッシュ、俺水野を抱きしめてしまったんだ」

 

 既に変なことをしていたか。さすが色麿。余の想像など容易く越えてくる。

 

 「おちつけ、きよまろ。まずは、おちつけ。ろくなことにならんのだ」

 「いや、俺は冷静だぞガッシュ。…俺はもう決めたんだ。俺は水野を裏切らない。俺は未来の俺のようになったりしないぞガッシュ…!!」

 ‎「そうか。うぬ、がんばれ」

 ‎

 それからも清麿は「俺には解る。解るんだ」とかいい続けていた。だが、清麿。おぬし気づいているか。解ると言ったとき、目、ぐるぐるになってなかったのだ。何が解ったのだ。

 

 でもまあ、清麿の気持ちも分からないこともないのだ。

 ‎だって、コルルが可愛すぎたもの。

 ‎純粋、という言葉がが形になったかのようだったのだ。

 ‎学校へ行く清麿を見送って部屋に戻ったところ、コルルは目を覚ましておった。涙目でキョロキョロと視線を這わしている姿は、庇護欲を誘った。今の見た目は余の方が小さいが。

 ‎その後色々と説明して、余の大きさが大小変化しているのは、呪文のせいだということにしておいた。そして、その副作用で精神年齢が上がっているとも。

 ‎純粋なコルルはそれで納得した。「確かにガッシュはあのままだと戦うなんて、できっこなかったよね」と。余、小さい頃そんなにダメな子だっただろうか。

 

 コルルの今後についてだが…コルルには戦うことは別にしても、自衛の手段は手に入れてもらうつもりだ。

 ‎それに、今の余はコルルの魔法の特性を知っている。…いや、魔力を消す技術の習得が先か。あとは、コルルの心意気次第だが…何とかするしかない。

 ‎余は、コルルとこの人間界で長く過ごしたいのだ。あんな消え方は、絶対にさせない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の午前、もちのき銀行に立て籠った強盗を退治した。ジケルドで銃を抑え、その隙に余と清麿で一人ずつのしてやった。インタビューにも答えたので、清麿は新聞にもしっかり載るだろう。

 ‎前とは違い、スズメはそこにはいなかった。昨日の内に清麿が対処していたからだ。

 ‎

 ‎今回、前と違い、使った術はジケルドだ。そう。もう既にジケルドが解放されていたのだ。

 ‎解放されている術は四つ。

 ‎第一の術ザケル

 ‎第二の術ラシルド

 ‎第三の術ジケルド

 ‎そして、

 ‎第四の術シン・ラウザルクである。

 

 第四の術がバオウではなくなっていた。そして、続く第五の術はまだ読めない。

 

 ‎未来において、バオウは二つに分けていた。余が制御できたからと言って、子孫が同様にできる保証はないのだ。そのための策であった。

 ‎余の中にあるバオウを二つにして、半分を兄上に移した。これは、余と兄上が双子ゆえに成せたことだと父上は言っていた。

 ‎これから余の本にバオウの術は出るのだろうか。気がかりではある。しかし、どうすることもできないのが現状だ。

 ‎鍛え、早めに残りの術も解放していけたらと思っておる。

 ‎

 ‎「ガッシュ。どう?わたしちゃんとできてる?」

 ‎「うぬ、その調子なのだ」

 ‎「うん!!」

 

 シン・ラウザルクはデメリットが大きすぎる。二、三歳ほどの大きさから元に戻ったのはおおよそ一日。小さくなった後でも術は使えるようだが、威力が半分以下になっていたのだ。

 ‎今はよい。成長しきっていない魔物達相手ならば、それでも対処できるだろう。

 ‎しかし、いずれ通用しなくなる時が来るのは明白だ。清麿が能力を十全に使えていたら少しは違っていたかもしれないが、今の清麿の能力は限定的なのだ。

 ‎デュフォーが知ったら何と言うだろうか。肉体関係にある者達のことしか解らないなんて。

 ‎そう言えば、昨日スズメを助ける時に能力が発動していたと言っていたのだ。

 

 「ふぅ…」‎

 ‎「休憩を挟むようにな、コルル」

 ‎「うん。でもがんばるね!」

 

 もしかしたら、関係のある女性が近くにいるだけでも能力が使えるのかもしれない。清麿が知っている未来は、関係を持った女性と一緒にいると認識していた時のもののみだ。あながち間違いではない気がする。

 ‎というか、清麿は自分でも気づいているだろう。言わないだけで。きっと、恥ずかしがっているのだろう。

 

 「ガッシュ、場所が解った」

 ‎

 ‎ずっと、目を閉じて座っていた清麿が静かに言った。

 

 「そうか。では、少し清麿の頭の中を覗くが…構わんな?」

 ‎「ああーーシン・ラウザルク」

 

 ドシャアアアアアアアア

 

 目を開けると、目線が高くなっていた。じーんと感動を、と。そんな時間はないのだ。この状態は長くは続かない。

 ‎清麿の額に余の額を合わせる。すぐにイメージが流れ込んできた。

 ‎よし、もう跳べる。

 

 「…なあ、今のじゃないといけなかったのか?」

 ‎「うぬ、これが手早いのだ。では、行くぞ清麿」

 ‎「ーーああ」

 

 清麿の顔が真剣なものになったーーと、マントの端を引っ張られる。

 ‎不安な顔をしているコルルがいた。

 

 「ガ、ガッシュっ!がんばってね…!!」

 ‎「うぬ、ありがとうコルル」

 

 随分と小さくなった頭を撫でる。すると、コルルはパッと離れていってしまった。

 

 「ガッシュ」

 ‎「ぬ、すまぬのだ。では」

 

 そして、余と清麿は目的の地へと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本が燃えている。

 ‎ここにまた、一つの戦いが終わり、敗れた魔物がまた一人魔界へと帰るのだ。

 

 「ヒヒヒヒ…」

 

 半透明になったゾフィスが、笑い声を上げた。嘲るような声だ。口端は醜く歪んでいる。

 

 「お前達のことは知らないが…ココを救いに来たんだろ。でもなぁ、ココはもうこの先一生救われることはないのさ」

 

 ゾフィスの前には、清麿が立っていた。

 ‎清麿が、拳を降り下ろす。しかし、消え行くゾフィスには当たらず、地面へと突き刺さる。

 

 「私はもう消える。元の心のやさしいココちゃんに戻っても、私と一緒に行った悪行の記憶の数々が残るのさ。ざまあねぇなぁ!ヒヒヒ」

 

 清麿が、拳を叩きつける。

 ‎ゾフィスは更に大きく笑った。

 

 「ーー清麿、そこまでにしておけ。ココの記憶はもう大丈夫なのだ。余計なものは消した」

 「…そうか」

 

 「は…?」

 

 ゾフィスが呆気に取られていた。

 ‎ココを清麿に任せ、余はゾフィスの元へ歩く。

 

 「数ヵ月の記憶がないだけで、元のココに戻るのだ。おぬしの思うようには往かなかったな」

 「えっなっあっ…く、くそがあああああ…!!」

 「もう、時間もないのでな。一人で消えるがいい。…ああ、それと」

 

 今の余は王ではないのだ。

 ‎これくらいは良かろう。

 

 「一つ、土産に教えてやろう。王になった者はなーーーー」

 

 

 

 

 

 

 「では、行くぞ清麿。そろそろ戻る」

 ‎「ああ、じゃあ頼むぞガッシュ」

 ‎「うぬ」

 

 絶望したゾフィスを置いて、目的の場所へと跳ぶ。

 

 「えっ?…ま、魔物!?何でここに!!ーーーーえ」

 

 跳んだのは、シェリーの家だった。まるで城ように大きな家だ。

 ‎ブラゴはいない。外に出ているのだろう。好都合だ。

 

 「ココ…?」

 

 信じられないものを見たかのような反応だ。清麿がそっと前に出た。

 

 「シェリー。ゾフィスは魔界に帰った。ココもゾフィスと出会った以降の記憶はない。……だから、安心してほしい」

 

 清麿は茫然としたシェリーにそっとココを渡した。

 ‎というか、名前言ってよかったのか清麿。

 

 「じゃあな。ーーガッシュ」

 

 もう、いいのか。

 ‎もっと話してもよいと思ったが、清麿は未来で関係を持った女性とあまり関わりたくないようだ。スズメ一筋を通すらしい。

 ‎しかし、ぶっちゃけギリギリな感じなのだ。よかった。

 

 「まっ、まって…」

 

 清麿の服を掴もうとしたシェリーの手が空を切る。

 また、いずれ会うこともあるだろう。そう、戦いの中で。

 ‎

 ‎マントに清麿を包んで、清麿の家へと跳ぼうとしてーーー途中で光に包まれた「ぐえっ」‎何か、ぽろっと落ちたような。

 

 

 「ガッシュ…!!おかえりなさいっ」

 「ぎゅむぅ」

 

 コルルがのし掛かってきた。よかった無事に帰り着けたのだ。

 ‎ん?のし掛かってきた…?ち、小さくなっておる。まさか…

 

 「あれ、ガッシュ…お兄ちゃんは?」

 ‎「 」

 

 清麿を、置いてきてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 ‎

 

 




ガッシュの一人称が変わっているのは仕様です。
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