色ボケのガッシュ   作:ぜがるん

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ギャグ回。




 

 

 

 しおりの家の前にいた。コルルと、余。そして清麿の三人で。

 ‎退院早々申し訳ないが、あらかじめ清麿に同行を頼むつもりだった。だが、頼むよりも前に清麿は「俺も行っていいか?」と言ってきた。

 ‎余が不振な目を向けたのに気づいたのだろう。清麿は慌てて弁明するように「い、いやガキ二人じゃまずいだろ」と言った。

 ‎確かにその通り。しかしそれだけではないはずだ。

 ‎余は誤魔化されんのだ清麿。

 

 

 

 

 

 結果を言えば、コルルはしおりに受け入れられた。ただし、魔物の王を戦いについてはまだ保留だ。そう簡単に決められることではないのだろう。

 

 しおりは初め、魔物の存在を信じなかった。

 ‎だが、他の種族ならまだしも余とコルルは見た目は人間の子どもだ。魔物の存在を知らない人間からすれば、当たり前の反応だった。

 ‎決め手は、清麿が呪文を唱えたことだろう。余が止めようとした時には、既に遅く、清麿は唱えていた。

 ‎シン・ラウザルクの呪文を。

 

 当然、大きくなった余は清麿に意見したが、返ってきたのは「他の術はここじゃ無理だろ。それに、いつかはしないといけない事だった」という言葉。

 ‎確かにその通りではあるが、やはり不安であった。

 ‎しかし、それ故に余と清麿の距離が問題であったのだとわかったのだ。それでも、素直には喜べなかったが。

 

 そうして、成長した余を目の当たりにしたしおりはあっさりと魔物の存在を信じた。信じざるを得なかった。

 ‎そしてコルルの身寄りが人間界にはないということも理解し、コルルには自分しかいないと考えてから、コルルを引き取ることを決断した。

 ‎両親にはそう簡単に話せないらしく、機を見て独り暮らしを打診してみるそうだ。「今も殆ど独り暮らしだし、たぶんコルルがいても気づかれないとは思うけど」とも言っていた。

 ‎余は、しおりの両親にもコルルを受け入れてもらえたらと思うが、それは無理なことだろうか…。

 ‎

 ‎

 ‎

 

 

 

 

 「しおりさん、ここはなーー」

 ‎「…あ、なるほどね。じゃあここは…こう?」

 ‎「そうそう」

 

 

 おやつを頂いた後のことである。

 ‎「お兄ちゃんは天才なんだよ!」というコルルの発言から、それに乗った清麿の「よかったら勉強見ようか?」と壁を感じさせないセリフ。まるで、それが当たり前であるかのような空気で言った。

 ‎しおりが固まったのだ。

 ‎余も固まった。

 ‎いきなり何を言っているのかと。

 ‎しかし、あほ麿も何かおかしいと思ったのか、ハッとなったところでーーしおりがひと言。「じゃあ、お願いしようかな」と言って、事は始まったのだ。

 ‎しおりも、本気ではなかったと思う。おそらく、可愛いコルルに乗ってやったのだ。清麿が高校生の内容が分かるとは思ってなかったはずだ。

 ‎だが、清麿は天才麿でもあるのだ。高校の内容は愚か、特定の分野では、既に人間界の大学の内容をも理解している。未知の分野であっても、清麿ならばすぐに理解できる。

 ‎そんな清麿に死角は存在しなかった。

 

 予想外の清麿に最初は唖然としていたしおりであったが、しおりもムキになったのか、清麿に次々に難題を出した。しかし、それでも清麿が何でもなく答え、尚且つわかりやすく解説するものだから……それにしおりも真面目な性格なのだろう。

 ‎結果、二人の世界に入ってしまった。もう少しで一時間は経つ。それにしても、清麿としおりの距離が近いのだ。いや、しおりは最初は清麿の馴れ馴れしさに戸惑っていた。勉強に集中したのか、気づけば距離感はなくなっていたが。

 ‎おそらく、いや絶対気づいてないのだ。清麿め。

 

 「ガッシュ、これはどう?」

 ‎「よく、にあっておる。コルルは、かわいいから、どれもにあう」

 ‎「えへへー」

 

 余は何をしているのかと言えばーーコルルのファッションショーの観客だ。

 ‎しおりが取っておいた幼い頃の服を、コルルが着回している。本当楽しそうで、こちらまで楽しくなる。

 ‎そしてコルルは、時おり清麿としおりを見てはホッと、笑っていた。コルルの気持ちは分かる。清麿としおりの仲がいいところを見て、安心感を得ているのだろう。

 ‎その点では、清麿も良いことをしたと思う。しかしその先は余はもう知らんのだ。

 

 

 

 

 後日。

 ‎人いない空き地でコルルの術を試すこととなった。結局、コルル達は守られるだけではなく、闘うことを選んだ。自分達から戦うことはなくとも、他の魔物と対峙したときのために、戦う力がほしいのだと言う。それに、余を助けたいのだとも言ってくれた。

 ‎魔力を消せると言っても、この先安全とは限らないのだ。余も、ずっと守っていられるかはわからない。決断してくれてよかった。

 

 「ゼ、ゼルク!!」

 「アアアアアーー!!」 ‎

 

 しおりが呪文を唱えて数回目に、それは起こった。コルルの身体が十歳ほどまでに急激に成長し、爪に至っては刃物のように鋭く伸びていった。

 ‎清麿にシン・ラウザルクを唱えてもらい、額を合わせる。

 ‎しかし、コルルの心には干渉しない。魔力は使わない。それでは意味がないのだ。

 

 「コルル、落ち着くのだ。余の声を聞け。余を見ろ。余のことを考えろ。自分の意思を強く持て」

 ‎「ーーァァ……ガッ…シュ……?」

 ‎「うぬ、そうなのだ。おぬしが好きな余なのだ」

 

 逆立ち始めていたコルルの髪の毛が、元に戻っていく。瞳は理性の色を灯し始めていた。

 清麿のドン引きするような表情が見えたが、無視だ。あとで覚えていろ。

 

 ‎余にとっては、もう慣れたことなのだ。むしろ、懐かしさを覚えるほどだ。

 ‎…思えば、最後の方は本当に酷かった。

 …うぬ、‎このコルルは可愛いのぅ。

 ‎しかし、ここからが肝心である。きっとここが、境目であるのだ。

 ‎ガッシュはそう確信していた。

 

 「…うん、すき。…すき、ガッシュ。ガッシュガッシュガッシュガッシュガッシュガッシュガッシュガッシューー」

 

 ガッシュは小さく頷いて、コルルの耳元に口を寄せる。

 ‎コルルの耳に、ガッシュの吐息が掛かる。 小さな、可愛らしい悲鳴が上がった。

 

 ‎「余も、コルルが好きだ。だからもう…コルルは余のものなのだ。いいな」

 ‎「………うん」

 

 

 

 しかし、ガッシュの本当の闘いは、これからなのである!!

 

 

 

 


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