前のまえがきの真名についてですが、この子達はうちの共通オリジナル過去持ち主です。
基本うちのサイトは名前変換小説(夢小説とは言い難い)サイトなので
悪ノ召使~すべてを知りながら黙っていた少年~
昔々、あるところに青の国がありました。
その国を治める王と王妃は素晴らしい人格者で、国民達から慕われていました。
赤の国から嫁いできた王妃の髪は真紅で、王の濃紺の髪とは対照的であった。
ある時、王妃が王の子を身ごもりました。誰もがそれを祝福しましたが、生まれてきたのは双子の兄妹でした。
その頃、双子は災いを招くとして、どちらかが殺されてしまうのが通説でした。
しかし、王と王妃にはそれが出来ません。
しかたなく、王妃ゆずりの赤い髪をした兄の方は王妃が嫁ぐ時に連れてきたメイドに生まれた子だということにして、信頼のおけるそのメイドに育てさせたのでした。
二人の子は、その名を青藍と久遠と言いました。
なにも知らない二人は、それぞれすくすくと育ち、優しい子へと成長しました。
しかし、母である王妃が流行病で死に、王もまた自身が死の間際となったとき、王は息子である久遠のみを、自分の元に呼びました
「おうさま。いかがなさいましたか?」
「落ち着いて……聞いてくれ。
……お前は……メイ、ドの子で……は、ない。お前の本、当の母は……王妃で、父は……、この私、だ」
「……え……?」
「お前と、青藍は……双子の、兄妹……な、のだ。
今まで黙っていて……すまな、かった」
「そ、んな。うそです。ぼくはおうさまの……こど、もじゃ、ありません!」
「……本当、なんだ。詳しく話してやりたい、が……わ、たしにはもう時間、がない。お前を、育て……母、だと、言ってくれた、メイドに、真実を……聞いてくれ」
「おうさまは、ぼくの……おとうさま……なの、ですか?」
「そうだ。……父、といえる資格など、とうに……ない、が。久遠。お前に、頼みたいことがある」
「なんですか?ぼくはなにをすればよいのですか!」
「……青藍を。あの子を、守って……おくれ。
私が、いなくなれば……大臣、達が私欲を肥やそうと、するだろう。
……彼らから、優しい……あの、子を守って欲しい」
「青藍、さまを?」
「そう、だ。……勝手な事ばかりいう、自分……勝手な親で、すま……ない」
「そんなことありません!ぼく、青藍さまをおまもりします!だから、だからしなないでください、おうさま!」
「……ありが、とう。素晴らしい子に、育ってくれた……な、久遠。こちら、に、おいで……」
「おうさま?」
「最期、に……お前に真実、を告げられて……よか、った。久遠……愛しい、我が息子……よ……。お前を、初めて……この腕に……だけ、て……」
「……おう、さま?……おうさま?っ!おうさま!いやです、おうさま!…………っ、おとうさま!」
沢山の民に嘆かれて、王は永遠の眠りにつきました。
そして久遠もまた、自分を育ててくれたメイドから、母と父が、危険を冒してまで双子であった自分達を生かしてくれていたことを聞かされ、まだ見ぬ王女青藍を守ろうと、幼いながらに誓ったのでした
泣いている幼い王女。
「ふぇ……っく。ひっく。……ふ、ぁぁあ、おとうさま……、おか、さまぁ……ふぇぇ、ん」
「……なかないでください、青藍さま」
「……ふ、ぇ?……あなた、だぁれ?……っく」
あどけなく自分を見る弱々しい瞳。
「ぼくは、久遠といいます。きょうから青藍さませんぞくのめしつかいになりました。よろしくおねがいしますね、青藍さま」
「くお、ん?……久遠、わたしににてる」
「……そうですね。青藍さまとぼくはとてもよくにています」
言いたくなった。
でも、幼い姫に大人がしようとしたことを知られたくない。
自分をまっすぐ泣きながらでも見る幼い姫を見て約束だからじゃない、大切な妹だから
守ると。
そのために自分が泥をかぶろうと
「くお、ん。おとうさまがしんじゃった、の。おかあさまも、ふたりとも、いなくなっちゃったの。
久遠、わたし……ひとり、ぼっちなの
ふたりとも・・わたしがきらいだったのかな?
かみさまはわたしがきらいなのかな
どうしてわたしのたいせつなひとばかりいなくなっちゃうのかな?」
「……はい。しっています。でも、……でも、これからはぼくが青藍さまのおそばにいますから」
「……久遠が?いっしょに、いてくれるの?ほんと?」
「はい。ぼくが、おとうさまとおかあさまのかわりに、青藍さまをおまもりします」
「ありが、とう。久遠……」
「これからよろしくおねがいします、青藍さま」
「……うん!よろしくね、久遠!」
こうして、久遠は青藍と出会いました。しかし、久遠は青藍に自分と彼女が双子である事を告げることはありませんでした。
その日から、久遠は青藍のそばを離れず、青藍を守り続けました。父親との最後の約束を守るように。
勿論、久遠自身もまた、青藍を愛しく思っていました。
幾年もの年月が流れました。
久遠と青藍は14歳になり、青藍はとても美しく優しい少女になっていました。
久遠は本人は気づいていないが柔和で中性的顔立ちで
しかし、かつてまだ幼いからと青藍から政治を進め、国を治める力を取り上げた大臣は、私腹を肥やし続け、
今尚、青藍に国の王族の資格であるそれらを返すことはしません。
青藍は大臣からの言葉を信じ続けていました。
国は豊かであり、国民は誰もが平和で楽しく過ごせている、という悪意に満ちたその嘘を。
久遠はすべてを知っていました。
大臣達の手により、国は荒廃し、民が悲しみ続けていることを。
そして、青藍に婚約の話が持ち上がりました
「青藍様には早すぎます!まだ僅か14歳なのですよ!?大臣!」
「五月蠅いわ!召使い風情が我らに口を出すな!」
「青藍様のお気持ちは無視なさるおつもりですか!」
「黙れ!財力ある青の国と交友関係を持てば、金ももっと手に入る!」
「そのお金はすべてあなた達の懐に入るのに、ですか!?民には一銭も与えないおつもりなのでしょう!」
「き、さま……っ!王女のお気に入りだからといって調子に乗るなよ!今すぐここで殺してやってもよいのだぞ!」
「構いません!そのかわり貴方を殺す覚悟で抵抗させて頂きます!」
「く……!ま、まぁよい!どうせ婚約は決まったことだ!今更貴様がなんと言おうと覆ったりはせんからな!」
「……青藍様は、あなた達の道具ではないのに……!」
悲痛な叫びも虚しく、王女青藍は白と婚約を結ぶのでした。
「ここが緑の国なの、久遠?」
「はいそうですよ。お忍びですから、あまり見回れませんが……ここらだけなら、大丈夫です」
「本当!?お城の外に出られたのなんて初めてね!」
「そう、ですね」
白と婚約してすぐ、久遠と青藍、そして護衛でもあるひとりの黄の兵士・アキトはお忍びで緑の国の国境付近にいました。
アキトだけは久遠が青藍の兄だということを知っていました。
青藍は、今まで大臣達によってお城に幽閉状態だったので、外の世界を見るのは初めてです。
「久遠、見て!あれはなにかしら?」
久遠は喜びはしゃぐ青藍を見て寂しげに笑いました。
お忍びなんて何度もできるものではないし約束したといっても女が男の召使を嫁ぎ先に連れて行くなど許されるはずもありません。
別れが近づいていると思っていました。
「~~♪~~~♪~♪♪」
「すごーい……!」
「確かに、綺麗な歌ですね」
「姫様はこの歌、お好きですか?」
3人の前に現れた緑の少女はとても美しい声で歌を紡いでいました
「初めまして。貴女の名前は?」
「え?お、女の子……?」
「こら、突然話しかけたら駄目ですよ!」
「いいえ、気にしないで?」
「あ、ごめんなさい!私、青……じゃなくて、リンっていうの。とっても綺麗な声だから、凄いな、って」
「ありがとう、リンさん。私はミドリっていいます」
「ミドリ、さん?」
「はい。……そちらのお二人は?」
「僕はレオン。こっちはアキトです。よろしくお願いします、ミクさん」
「アキトだ。よろしく」
「レオンさんに、アキトさん。よろしくお願いします」
黄の国の王女は、顔は広まっていなくとも、その名と、久遠というとてもよく似た召使いがいることはよく知られているため、二人は偽名を使いました
「それにしても、リンさんとレオンさんはとても良く似てますね。兄妹なんですか?」
「よく言われるけど、違うの。凄く似てるんだけど。でも、一番大事な人なの。私のいちばん大好きな人。」
「僕もです。僕も、リンが一番大事ですよ」
「そんな風にお互いを思い合えるなんて羨ましいです。仲がとても良いんですね」
「二人とも俺は!?」
「やだなぁ、アキトも大切だよ?」
「……まぁ、そこそこには?」
「レオンひでえ!」
「もー、レオンってば!」
「ふふふ……。私、アカリっていう妹みたいな子がいるんです。
あなた達みたいに、もっと仲良くしたいわ
あの子うまく甘えてくれなくて」
それは皮肉にも、白がお忍びで緑の国を訪れる、僅か3日前のことでした
「……リン様。王族になど産まれなければ、貴女もミドリさんのように自由に生きられたのでしょうか」
そして時は進み、大臣達は青藍を丸め込んで緑の国へと侵略を開始しました
「青藍様……。なぜ、緑の国への侵攻を許可なさったのですか?」
「ミドリさんの、ことが頭に浮かんだの。
大切な……久遠や、アキト以外で初めて出来た大切な友達なのに!
達が、苦しんでるのに助けられないなんて、そんなのいや……」
「青藍、様……」
「……ごめんね久遠……」
「……いいえ。何があっても僕は青藍様をお守りしますから」
久遠は口を噤み続けました。
ミドリの死を知っても・・
自分には、本当は手に入れるはずの王位も権力もない。
そう自分を慰めました。
自分が一人の人間としてミドリを気に入っていたことを
気づかないようにして
緑の国を攻め始めてから月日が流れた、とある日。
とうとう国民がクーデターを起こします
「久遠!大変だ!」
「なんですアキト。騒々しい」
「国民がクーデターを起こした!戦争で疲れてる兵士達には止められない!」
「なんで、すって?……っ、青藍様!」
「大臣達はあらかじめ情報を手に入れて逃げ出してやがる!」
「……まさか、青藍様に国民の怒りの矛先をすべて向けさせるつもりですか!?」
アキトの言葉通り、城は誰もおらず、二人が青藍の部屋へと向かっているその時でした。
大臣の部屋の一つから、ふらふらと青藍が姿を現したのは
「青藍様!」
「姫様!」
「久遠、……アキ、ト。
私、誰もいなくて、大臣の部屋に行ったら書類が転がって、て読んだ、ら……。
国の皆から、いっぱい、いっぱい、憎まれてて。沢山の、お願い事、あったのに私、なにも、知らなく……て」
涙を流すことさえできず、悲痛な表情をした青藍がそこにいた。
「お読みになったのですか!?民からの嘆願書を!?」
「そ、れと、緑の国も。全然、悪い国じゃなく、て……。
それなのに、緑の国の人、いっぱい犠牲になってて……!
ミドリさんが……!ミドリさんの、大事な友達の国、壊しちゃった……!」
心が声に出すうちに自覚したのか涙がぼろぼろと流れてきていた。
「姫様……。……っ大臣のやつら……!」
「二人も……ごめんなさい、私いっぱい迷惑かけて、ごめんなさい……!」
「泣かないで下さい、青藍様!」
少しの間泣きながら謝り続けていた青藍は、少し落ち着くと、そのまま立ち上がります。
その瞳には強い光がこめられていました
「青藍様……?」
「今、誰もいないの、は……。クーデター、が起きて……皆逃げ出したから、なのよね?」
「は……い。姫様?何を……」
「アキトも、久遠も。逃げて」
「青藍様もご一緒に!」
「私はいかない。
いけないよ。
最後まで……皆から逃げ続けるわけにはいかないわ。
なにも見ない、知らないことだって悪だもの。最期くらい、ちゃんと向き合いたいの!」
「……青藍様……。……っ」
「だから、二人は早く逃げて!お願い!」
「……っ、もうしわけありません、青藍様!それは承諾しかねます!アキト!青藍様を頼みました!」
「久遠!?久遠はどうするの!?」
「久遠、お前なにを……!」
「……幸い、僕と青藍様はとてもよく似ています。服を変えてしまえば分かりませんよ」
「いやよ!そんなのいや!悪いのは私なの!青藍は何も悪くないじゃない!」
「……あなたが、ご自分を悪だと仰るのであれば、僕も同じ悪ですよ。
……僕だって同じ血が流れているのですから」
「…………え?」
「青藍様と僕は双子の兄妹ですから。青藍様は、大切な僕の妹です。……アキト。青藍様を頼みます」
「……っ、わかった。さぁ姫様、行きましょう」
「だめ、アキト!久遠、どういうことなの!?わたし、何も知らない!久遠が私のお兄ちゃんって、どういうこと!?」
「アキト、行ってください!……青藍様。言ったはずです。僕は、何があってもあなたを守ると。僕の、大切な妹ですから」
「いや、久遠!いや!」
「っ、姫様!……すみません!」
アキトは青藍の首筋に手刀を喰らわせました。
抵抗力が弱まった青藍を、アキトが両腕に抱えます
「い……や。久遠……い、や……」
「……さようなら、青藍、僕の大事な妹」
意識が落ちる寸前、青藍が見たのは優しく微笑む久遠の顔でした--
たったひとり、青藍のドレスに着替えた久遠は、玉座の間で国民達を待っていました。
赤い髪を染め粉で青く染め、瞳に色ガラスを入れて・・
しばらくして扉を蹴破るようにしてなだれ込んできたその先頭には、青を身に纏う女剣士の姿がありました
「青藍王女!覚悟!」
「この、無礼者!この私に向かって愚かな!さぁ、跪きなさい!」
久遠は、青藍が望んだ悪の王女を演じ、そして捕まりました。
地下牢に幽閉された久遠は何一つ弁明しません。
幽閉されて少し経って、涼風が地下牢へとやってきました
「見張りの者からお前がなにも食べないと聞いた。なぜだ」
「こんな、質素で黴臭い食事が、王女である高貴な私の口に合うとは思いませんので」
「……もうひとつ訊こう。なぜ、そんな演技をしている?」
「演技?何を仰っているのかまったくわかりませんわね」
「ごまかさなくていい。あの後城を調べた。
大臣やその臣下の者の部屋からは沢山の機密書類が出てきたが、王女の部屋からは一枚も出てこなかった。
更に、城のメイド達の日記も片っ端から読んだ。
だが、大臣達への悪口雑言は沢山書かれていたのに、王女に対してはなんの恨みも書かれていなかった。
それどころか、王女への感謝や愛情に溢れる思いが綴ってあった」
「そ、れ……は」
「そして、お前は男だな?捕らえた時にお前の身体を掴んで気づいた。
あれは女の骨格ではない。王女には顔のよく似た召使いがいたと聞いた事がある。お前はその召使いではないのか?」
「……そこまで分かっているのなら、もう隠す意味もありませんね。青藍様も、きっともう遠くまでお逃げになられたでしょうし。あなたの仰る通り、僕は青藍様の召使いです。久遠と言います」
「久遠、……か。お前はなぜ王女の身代わりになった?」
「その前に教えて下さい。この事を知っているのは?」
「私だけだと思う。メイド達の日記は読んですぐに焼き捨てたからな」
「そうですか。……僕は、いえ王女青藍は恐らく処刑が決まるでしょう。その時は僕が青藍様であるとして、そのまま刑を執行してください」
「何をいう!?王女は悪ではなかった!そしてその上、お前はその王女の身代わりだ!殺せるわけが無いだろう!」
「そんな世迷い言が、今の怒れる国民達に通用すると思いますか?」
「だが、しかし……!」
「それに、青藍様はともかく、僕は充分に悪ですよ」
「……なに、を」
「僕は国民達が苦しんでいるのを知って、それでも何も言いませんでした。何もしませんでした。青藍様を悲しませたくなかったからです」
「……なぜ、そこまで王女を?」
「……自分の唯一の片割れを愛さない兄がいると思いますか?青藍様は僕のたったひとりの肉親です」
「なんだと!?では、……っ!」
「もう話すことはありません。あなたは何も知らなかった。私こそが悪虐非道の王女青藍です」
そう言って、全てを拒絶した久遠は、処刑のその日まで一言も口を開くことはありませんでした。
そして、処刑の日。
迎えに来た涼風に向かって、久遠は柔らかに微笑みました。
そのまま、久遠は堂々と処刑台に向かいます。
その刹那、涼風が耳元で囁きました
「王女は探さぬ。だが、大臣達は必ず、ひとり残らず捕らえて処刑にかけよう。だから……っ」
「ありがとう、ございます……」
ささやかれた言葉に小さく返してから、久遠は処刑台に上がりました
「なにか、言い残すことはないか?」
涼風が聞いたちょうどその時、教会の金が三時を告げました
【久遠のおやつはなんでも好きだけど、ブリオッシュが一番好きだわ!】
久遠は小さく微笑みました。
「あぁ、おやつの時間だわ」
ガシャン
妹を最期まで守り抜いた兄は、その顔に微笑みを浮かべて逝きました
【もしも、生まれかわれるならば……】