田舎に帰るとやけに自分に懐いた褐色ポニテショタがいる 作:SHV(元MHV)
「ふ~……」
少々熱めの湯船につかり、ゆっくりと息を吐く。
仕事が終わってから強行軍での帰郷は思ったよりも体にダメージとして残っており、風呂に入ることで全身に染みた疲れが抜け出ていくのを感じる。まあ錯覚なのだが。
「それにしても……」
まさか田舎に帰ると我が従兄弟がポニテになっていようとは。
『にーちゃん!』
(超かわいい)
天真爛漫という言葉がそのまま当てはまるようなその愛らしい姿が目に浮かび、思わず口に出さずとも心に感動が響く。
「うーん……なんだかなぁ……」
しかしその所感に思うところがあるのも事実。
如何に可愛い従兄弟とはいえ、
(さすがになんかヤバイ(?)気がするんだよな。いやイトコはかわいいもんだけども)
心を打った振り向き様の笑顔を思う度、心臓の鼓動が加速したように感じる。跳ねるように、踊るように。
そんな考えを常識と照らし合わせながら懸命に自分の考えを
「にーちゃん入るねー」
「ん、おー(うおーきたー)」
気の抜けた返事をしながら内心ではどっきどきの瞬間である。
脱衣所のガラス戸を開け、ひたと足音を鳴らしながら入ってきた圭の姿に俺は安堵する。
「にーちゃんさ、まだ出ないよね?」
艶やかに輝く日焼けた褐色の肌と白い陶磁器がごとき肌のコントラストにくらりと来たりはしていない。していないったらしていない。
そんなことより俺が注目するのは圭の股間だ。よし、ついてる。
(あ~~~~~~~ッ、ついてるこの安心感)
濡れ羽色の黒髪が湯気にさらされ輝くが、そんな俺の情動を気の迷いだと断じられるのがあの股間についてる万国共通男の子のモノだ。
「おー、まだしばらくはいるぞ」
「やった~♪」
先に俺が風呂から出て取り残されるのが寂しいのだろうか。うむ、やはりこの感情は一種の父性愛のようなものだ。圭も俺に対して特別な感情など抱くはずがない。
とはいえ俺の目線は髪を洗う彼の黒髪へと向かう。
(やっぱ髪が長くても、ポニテがかわいくてもな~。男の子なんだな~コイツは)
そう、紛れもなく男の子。さきほど目に焼き付けた可愛いお稲荷さんがその証拠である。
ゆえに洗い終わった圭が同じ湯船に入り俺の膝上に乗ってもなんら問題はないのである。
(いやーーーーーー、よかったよかった)
「わーい」
無邪気に膝の上ではしゃぐ圭。俺はその様子を実に微笑ましく見守りながら遊んでやる。
「にーちゃん見て俺水飛ばせる」
「ははは、俺のはもっと飛ぶぞ」
手を握り、湯船の水を飛ばす圭に大人としての威厳を見せつける。
「えー友達の中で一番なんだけどなー」
そう言って何度も水鉄砲にトライする圭。そうだ、こんなにも無邪気な子供じゃないか。
なんだか可愛いなどと思ってしまったつい少し前の俺よ反省しろと言いたい。やはりあれはポニテの魔力だったのだ。
そう考えたとき、俺はふと圭のうなじに目を奪われる。湯に濡れ、輝く黒髪から目を離せなくなる。
(しっかし……髪長いなーほんとに……。男でもこんなサラサラになるんだな)
かつて付き合っていた彼女が髪ひとつ洗うのにやたらとシャンプーやらコンディショナーやらと拘っていたのを思い出す。どれも同じだろうとリンスインシャンプーを使うのを進めて怒られたのが懐かしい記憶だ。
きっと圭の髪はそんな手入れなどしていないのだろう。
自然の、あるがままの輝き。今の時期でしか出せない一種の
──気づけば、俺の手は圭の髪をいじり、それをめくった先にある薄っすらと浮かんだ背骨へと目がいっていた。
サラ、と髪をめくり辿るように背骨へと指を這わせる。まるで壊れ物を扱うように。
──ビクリ、と圭が動いた。
背骨を撫でる俺へと、どうしてか急に風呂のせいで頬を赤らめた圭が振り向く。
「に……にーちゃん……くすぐったい……」
ドクンッ
その振り向いた仕草に、俺はどうしていいかわからなくなる。
今の音が心臓の音だと、俺は少し時間を開けてから気づいた。
「え……あ、わり……」
音はまだうるさい。
──ドクッ、ドクッ、ドクッ──
俺はその鼓動が下腹部まで達しない内に、急いで湯船から上がる。
「あ、あ~~~~やっぱ俺出るわ」
「えーーーーなんで!」
──ドクッ、ドクッ、ドクッ──
加速した鼓動が止まらない。なぜだろう、ひどく喉が乾く。逆上せたのだろうか。
(なんだ今の……)
──ドクッ、ドクッ、ドクッ──
不機嫌に、いや、少し驚いて俺を見上げる圭。なぜだか、その顔が今は見れない。
俺は精一杯の言い訳として──
「いや、ちょっと……のぼせたかも」
そう自分に言い聞かせながら、俺は見られずに済んだ昂りを抱えて途方に暮れるのだった。
とりあえず急ぎで書き上げた。寒い(´・ω・`)
ほんっっっっっっとイラスト描けるのすごい。ていうかびみさんのいるコミティアへ行ってこの尊さを届けたい……!!
でもきっと会ったら某漫画の地蔵みたいになる。