田舎に帰るとやけに自分に懐いた褐色ポニテショタがいる 作:SHV(元MHV)
https://twitter.com/ferea86/status/1003126920051978241?s=19
元ネタ②
https://twitter.com/ferea86/status/1003127071474794496?s=19
いや~遅れてすんません( ̄▽ ̄;)
ちょうどオカルトハーレムとの兼ね合いで中々時間が取れませんでした。
夏の焼けるような暑さにさらされながら、俺は木陰で水着への着替えを済まし、脱ぎ散らかした圭と大輝のシャツをリュックにしまって木に引っ掻けると、我先にと川へ特攻していった
待っていたのか、すぐにその後ろ姿が見えてきた。当然と言えば当然だが、都会で日差しを避け涼しい環境に逃げてきた俺と、夏の暑さに負けずはしゃぎ遊び回ってきた圭及び大輝とでは大きな違いがある。
──言うまでもなく、それは印象的な日焼けだ。
圭と大輝の肌を飾る白色と褐色のコントラストは、まるで彼らがシャツを着ているかのような錯覚さえ起こした。しかしそれもよく見れば、子供であるがゆえの薄い肌にわずかに浮かんだ汗が珠を作り、引き締まった体の線が否応なく俺の視線を縛り付ける光景が待ち構えている。
「イエーイ!」
冷たいせせらぎを前にハイテンションな圭。俺は圭のうなじを遠目に見やりつつ、ついでに周囲を観察しながらひとまず危険はないかと安心する──のは早かったかもしれない。
「……っつーことで、男なら度胸試しだろ!」
ドン、とまるでどっかの国民的漫画の印象的効果音さえ伴いそうな勢いで、大輝が俺の顔を見て告げた。
その表情にありありと浮かぶのは自信。そう、彼らは今俺が見下ろす場所から飛び降りようと言っているのだった。
俺は魚も泳ぐ川を見下ろしながら、思わず口から「え~……」と正直な気持ちを漏らす。
ここに着くまで、俺がイメージしていたのはもっと沢などの浅瀬を伴った川だった。あっても膝下程度の深さの川で大輝とはしゃぐ圭を眺めようと楽しみにしていたのだが、まさかいきなり飛び込みに参加させられるとは思っても見なかった。
無論飛び込みの経験がないわけではない。それなりに泳げるし、多少体も鍛えているので何かあってもこいつらを守ってやれる自信はある。とはいえ見下ろした川までの距離は約三から四メートルといったところ。川の深さも分からない俺からすれば、ここから飛び込むことは怪我人必至の状況にしか思えない。
「結構高くねーか……? ってお前飛ぶのか!?」
はしゃぐ圭と大輝をどうやって説得しようかと考えていると、振り向けばそこには入念に柔軟をして体をほぐす圭がいた。
「? うん」
俺の言葉にケロっとした様子で返事をする圭には、まるで危機感というものがない。
「ケガとかしたらどうすんだよ?」
「しないしなーい!」
「え~! 圭のにーちゃん飛べないのか~!?」
「うっせー!」
大人として冷静に子供達の浅慮を指摘する俺だったが、返ってくるのはどこかこちらを嘲るような大輝の言葉。
……いや、圭の返事はむしろ楽天的すぎて心配になってくるくらいなんだがな。
その様子から何度か経験があるのはわかるんだが、今後もこういったことを続けられて怪我などされたらと考えると、こちらも気が気ではない。
だがそんな俺の心配を無視するかのように、圭はイタズラっぽく笑って駆け出す。
「なっ、おい……っ」
俺はそんな無防備な圭がまるでどこかに行ってしまいそうで怖くなり、咄嗟にその手首を掴む。
だがしっかり掴んだはずの腕は振り向いた圭の乳首に目がいった瞬間に振りほどかれ、逆に俺の手は圭によって捕まりそのまま引っ張られる。
「だいじょーぶ!」
「えっ、ま……っ」
ガシィッ、と掴まれた腕を振りほどくことはできず、俺の体は軽やかに踏み込む圭に吸い寄せられるようにして、小さな崖から飛び降りていた。
「お……っ」
下腹部が慣性の法則に従って持ち上げられるまるで漏れるようなその感覚に悶えつつ、いつの間にか握り直された圭の掌をしっかり掴みながら、俺は勢いよく水柱をあげて川へと落下した。
──足先から飛び込んだ俺の体は、自然と川の奥深くへと引き込まれる。
暗さと明るさの同居した、人が住むのとは別の世界。その様子に不思議な落ち着きを覚えながら、俺は息を吐きつつ完全には見えない真下を眺める。
(意外と深いんだな……じゃなきゃ飛び込まないか)
さすがにそこまでバカじゃないと、俺はついさっき疑った圭と大輝の二人へ内心で謝罪する。
(あれ? 圭? 落ちた時に手が離れたのか……)
口から漏れた気泡を目の端で捉えつつ、俺は不意にさきほどまであった掌の感触が喪失していることに気づき現実に引き戻される。
それでもどこか現実離れした幻想の空間で、俺は姿を消した圭の姿を探す。
そうして何度か周囲を観察していると、不意に俺の眼前へ、ゆら、と揺れる黒髪が漂ってきた。
それを追うように、視線に追い付くようにして振り向いた俺の前に──圭がいた。
ほんの少し近づけば、唇同士で触れ合えそうな距離。俺はそんな圭に強烈に惹かれながら、彼が口許に浮かべる言葉を自然と読み取る。
──びっ──く──り──し──た──?──
小魚に囲まれた周囲の風景が、まるで俺と圭を祝福するかのように泳いでいた。
そんな突拍子もないことを考えてしまうほどに、間近で見せられた圭のはにかむ笑顔は俺の脳裏へ焼き付いた。
──び……っ──くりした──
俺は残りの空気を口から溢れさせながら、先に川から上がっていく圭の後ろ姿を見つめて自然と深い場所から脱出させられていた。
──目の前に突然現れた少年が──
川から上がり、しきりに笑うふたり。
──圭が──あまりにも──
そこまで考えて、俺は不意にアイツらが笑う理由がこちらにあることに気がついた。
(……? なんだ? アイツら)
疑問符を浮かべる俺は、不意に下半身が涼しいことに気づく。
見下ろせば、そこには紐もほどかず器用に脱げたトランクスタイプの水着があった。
それに気づいた俺から逃げるように、圭と大輝が走り出す。
「きづいた!」
「にげろー!!」
「お……っ!」
恐らくは犯人であろう圭が笑いながら逃げていく。それと並走するようにして大輝が駆ける。
「オマエらーーーー!!」
俺は叫びながら水着を直しつつ、つい先程まで浮かんでいた考えをほんの少し思い返す。
──あまりにも、なんだっけ──
一瞬のみ浮かんだ、とても大切なことだった気がする圭の姿。
ここでの夏が終わりを迎えるまでには、まだ少し時間が残っていた。
お待たせしやした。今回は大ゴマを使った大胆なイラストが印象的な回でしたね。
気がつけば、自分もフェレゴリさんと知り合って約半年。
色々ありましたが、何よりもこんな素敵な出会いがあったことが一番印象的です。
今後もフェレゴリさんへの応援、みなさんよろしくお願いします。