~AM 5:00 某所~
まだ朝日も昇り切らぬ早朝。夜と朝との気温差で多少霧のように靄が立ち込める秋の空が広がる下で銀髪の少女が一人緊張の面持ちで歩く。たまにすれ違う新聞配達のバイクの運転手や早朝ジョギングをしている男性など、彼女のその美しさに振り返る、こんなにかわいくて美人な女の子がこんな時間に歩いているなんて普通は学生でも見ない。ジョギングしているにしてはヒールを履いているためそれもない。では、彼女は一体なぜこんな時間に歩いているのか。
それは、彼女――――雪音クリスが持っているメモ用紙を見ればわかる。記された住所はこの付近で細かく記されてるのだがいかんせんわからない。ようするに、迷子ということだ。何時ぞやの兄妹のことを言えないなと赤面しつつ立ち止まっては紙を横へ、斜めへと回しながら右往左往する。その姿は外見もあいまって実におかしい。
事実、その姿をみて笑う男が一人。クリスはその男に詰め寄り、
「あのさ、せめてどこのマンションか書いておくのが普通じゃないのか?返答しだいでアタシはあんたを全力でぶん殴るけど」
「第一声が非常に物騒なんだけど」
誰のせいだと思ってるんだ、と言いかけてクリスはため息をつく。この男と話しているとどこか調子を乱されていつものような強気な自分が急に引っ込みだすから手におえない。こいつはアタシに対しての何かしらの術でもつかっているんじゃないかと本気で思うクリスだが、向けられた笑顔になにも言えなくなるので言いようがない。故にため息に混ぜて全て吐き出したあと要件を告げる。
「腹減ってる。なんかくれ」
あまりにも間抜けな目的に自分でも笑えるほどに下らなかった。相手はちょっと間を置いた後「わかった」と笑って前を歩く。その背中を見ながら後ろからついていくと住所に記されているマンションへとたどり着いた。エレベーターに乗って目指す階は6階。沈黙が流れるなか少しだけ気になったことを聞いてみる。
「おまえ、なんであの時間にあの場所にいたんだ?」
「あ~、定期健診でね。診てくれる人が今日は調べものが多いからって昨日呼び出されて。で、色々とやって帰るころにはもう朝日が昇ってたってわけ」
「なんか・・・・ハードだな」
「もう慣れたから大丈夫。さ、ついたよ」
エレベーターを降りてそこからまっすぐ進み、約10m行ったところで止まる。オートロックを解除して部屋に入ると割と広く、一人暮らしをしているにしては広すぎるくらいの部屋だ。キッチリ整理整頓されており清潔さが窺える。
「ちょっと待っててね、今つくるから。あ、テキトーに座っておいて。それから、シャワーはあっちね」
「な、なんんでシャワーなんだよ!?」
こいつ、まさかそういう目論見かと思考して赤面しながらんやわんやするクリスに雄樹が何か吹くような音と共に慌てて現れる。手には栄養ドリンクが。ますます怪しい。
「ち、違うって!さっきからしきりに服の匂い嗅いでたでしょ?だから昨日お風呂入ってないのかなって思ってさ」
なんだ、そんなことかと自分が気にしていたことを思い出すと同時にクリスは一度も振り向いていないのに真後ろにいた自分の行動を把握していることに気づき驚く。ヘラヘラしているが、此奴・・・・ただ者じゃない。少しながら警戒心のようなものを抱くクリスだが、雄樹から見ると今のクリスの様子は拾われてきた子猫のように「フシャー!」っと威嚇しているように見える。なのでまったく気にする様子もなくキッチンへと戻っていく。「大きいかもしれないけど着替えは置いておくから」と細かな気遣いも忘れないあたり“そういう気”は微塵もないらしい。
・・・・・それはそれでショックだが。
まあ、それはいいとしてありがたく使わせてもらおう。
「覗くなよ!」
「だからしないって!」
♪
魔弓イチイバル。雪音クリスの所有する本来のシンフォギア。ネフシュタンの鎧をクウガにより封印されたクリスは昨日その姿を晒し、響と翼、雄樹と対峙した。しかしそれは彼女にとって親とも言うべき存在であるフィーネとの決別を意味してしまうこととなる。度重なる失敗に今一度チャンスをもらったクリス彼女の期待に応えることができずにフィーネに捨てられた挙句その命を狙われてしまう。命かながら逃げているところで限界がきたクリスは雄樹からもらったメモ用紙を手にここまで来たという次第である。
それにしても、とクリスはシャワーの湯の温かさに浸りながら思考する。あの男、警戒心という概念がないのかと疑いたくなるほどに緩い。昨日戦った敵をまんまと部屋に招き入れ、挙句シャワーまで貸す。そしてその敵の為に朝食をつくるとか本当にイカレテいるとしか思えない。
イカレテいると言えば、あの立花 響という少女もそうだ。融合症例第二号、ガングニールの奏者であるあの少女もこの男と同じでとびっきりに狂っていやがる。どうしてこう続けざまにポンポンヘンな奴が出てくるのかとため息をつき思い通りにいかないなとつぶやいてみる。それはこの現状にたいしてなのかいまだに整理のつかない自分自身に言ったのかは本人でさえわからない。
ひとしきり躰を洗ったあと湯船にはられた湯につかる。温い温度が身体の芯に染みわたりなんとも心地いい。こんな感覚は久しいなとちょっとウキウキしながらもう一度一息。今度はため息ではなく深呼吸だ。
躰の芯から温まった後、湯船からでて用意されたタオルで躰をふき着替える。下着は・・・・まあ、しょうがないので着けていたものを着け、ワイシャツを着る。案の定、デカい。もともとこっちは16で向こうは19の男。体格差があっても当然かと鏡をみてくるりと回ってみる。ふわりと浮かぶ裾がスカートのように舞い、静かに落ちる。漂う自分とは違う初めて嗅ぐ臭いに新鮮さを感じて思わずクンクンと鼻を動かす。その動作にハットなって恥ずかしくなり赤面して額を壁に打ち付ける。
何をやってんだアタシは~!!
そうやってしばらくして落ち着いたあとリビングへ。かぐわしい匂いが食欲と腹の虫を刺激してやまない。
「あ、ちょうどできたけど・・・・なんか額がものすごく赤いけど大丈夫?」
「な、なんでもねーよ!」
ムスッとして座布団に座る。目の前に用意されたのは・・・・ナポリタン。朝からナポリタンかと思ったが耐えきれないのでとりあえずフォークを握って食べる。その味は――――うまい。かなりうまい。そう思うと、手が止まらなかった。
もの凄い勢いで吸い込んでいくクリスに作った雄樹も「おお」と驚く。よほど腹が減ってたんだろう。
さて、自分も食べようか。
♪
~AM 9:00 リディアン音楽院~
「本当ですかァ!?」
響いたもの凄い大声に学園内にいたハトというハトが一斉に飛び立つ音が聞こえた。もしかしたら校舎も揺れたかもしれない。いくら新設のものとはいえ、古くからあるものも多くある為それが壊れていないか少し心配な翼はふさいでいた耳から手を離して鼻息あらく目をキラキラ――――いや、ギラギラさせている響を見る。その横では済ました表情の未来が、耳をふさいでいないのになぜこの大声の中で平気なのかと目を向ければ耳から栓を取り出したのを見てそういうことかと納得する。流石幼馴染だと感心しつつ翼は話を続ける。
「ああ。たまにはこういうのもいいだろうと思ってな。小日向もよかったら来てくれ」
「はい、是非!」
「今日は半日でしかも翼さんのコンサートのプレミアムチケットまで貰えて・・・・今日は幸せだぁ~」
あとはノイズさえ出てこなければなとひそかに考えて翼と「後で会おう」と別れる。うきうき浮かれる響をみて微笑ましくなる未来はクスリと小さく笑う。
「どうしたの?」
「最近響の様子が明るくなったなって」
「そうかな?自分ではいつもこんな感じだけど・・・・あ、でもユウ兄といる時と普段ではやっぱりテンション違うかな~」
・・・・そろそろ自分も勝負しないとヤバいかと思考しつつたしかに変わりつつある響の中の“何かしら”に警戒する未来。無自覚なところが恐ろしい。
「でもでも、未来といる時ともテンション違うよ?なんて言うか、こう・・・・落ち着く!」
「そう。私は嫌だな、響のテンション」
「え・・・・?」
「ウ・ソ」
ガーンという効果音でもつきそうな顔でショックを受ける響に悪戯っぽく笑う。こういう時、響を弄るのはおもしろい。コロコロ表情を変えていろんな一面を見せてくれるこの友人が未来は心の底から大好きだ。だが、故に譲れないものもあるので、
「・・・・私、負けない」
「なにに?」
「世間の風に」
「それは苦労しそうだね~」
「今日も平和だなぁ…」
さて、今日は楽しい一日になりそうだ。
てなわけで日常回。久しく戦闘続きでやってなかったからこんなのもいいかなと
そして者共よろこべ萌えシャツだぞ。クリスたんの萌えシャツだぞ、お風呂シーンだぞ。脳内にて再生したまえ。
「申し訳ありません、このようなあとがきで(^u^)」
想像したあなたは一週間ニーサンの刑にしょうけどいいよね?答えはきいてない!