~AM 12:00 ショッピングモール~
「はぁ~、楽しかったぁ。こんなに遊んだの学生の時以来かも」
満足そうにみゆきがオープンカフェの椅子に腰かける。テーブルの中央に日除けのパラソルを立て、円系のテーブルに設けられた椅子は三つ。みゆきから時計周りに辿り雄樹、クリスの順だ。みゆきはカフェオレ、雄樹はコーヒー。クリスはオレンジジュースを注文しての休憩タイム。テラスの向こう側には休日ということもあり人でごった返しているが悪くない気分だとクリスはジュースを一口。
「どうクリスちゃん。息抜きにはもってこいでしょ?」
急に話を振られてびっくりするものの、嘘をつく理由はないので悪くないと一言。それも少し照れくさくなったのか聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソッと呟く形になってしまったがちゃんと二人は聞き取ったようで互いに顔を見合わせて笑顔を浮かべる。
「もう、クリスちゃんかわいい~!」
「バ、こら!危ねーだろうが!って、抱き着くな暑苦しい!」
「いいじゃないの。ああ、かわいい~!」
じゃれてくるみゆきを邪険に扱うクリスだがそんなことは知ったことかとみゆきは抱き着いて頬ずりうるという行為をやめない。最終的には手におえないと諦めることで強引に自分を納得させるがそれでもやはり鬱陶しいのにはかわりないようで、ワナワナと震えながら一応年上であることを考慮し拳を抑える。此奴、かなりメンドクサイ。距離感というものがないのかと疑問を抱くもああ、そういえば此奴の先生だったなと納得する。雄樹にしろ此奴にしろ、距離感という概念がないのだろうか。
ふと、視線を変える。そこには青い髪を靡かせ、煌びやかに撮られたアーティスト風鳴翼のコンサートを告知するポスターがあちらこちらに貼ってあった。シンフォギア装者としか印象のないクリスにとって、その姿は新鮮だった。同時に、思い出す。
そういえば、綺麗な歌声だったな。と。
「・・・・翼ちゃんのライブ、今日なんだよ」
「行かなくていいのか?」
「こっちの約束の方が先だからね。それに翼ちゃんの歌はまた後でも聴けるし」
だから今日はこっちが最優先とサムズアップ。それをジッと見て、
「なあ、それ何なんだ?」
「ん、コレ?」
「それ。いつもやるけどさ。癖かなんかか?」
「・・・・これには、いろんな思い出があるんだ。ね、先生」
「そうね。コレは、私にとっても、雄樹君にとっても。大切な思い出や時間が沢山詰まったものなの」
そう話す二人の顔は本当に優しいもので。どちらかと言えば、見惚れていたに近い感じでクリスは二人を見る。それと同時に、羨ましいともおもった。
「これはね。自分が満足した、納得のいったことをした時だけにするものなの。意味合いは人によって様々だけどね。・・・・なんだか不思議なのよ。コレを見るだけで、本当に安心するんですもの」
やがて視線は雄樹へと向く。そう言えば、彼は自分の前に立った時はいつだってこの仕草をしていた。敵として命を狙った時でさえ、拳ではなく言葉と想いで自分と向き合ってきた。この仕草とともに。それがあったから今自分はこうしてここにいる。バカげているとは思うがそれが以外と悪くないと思う。こんな時間とは絶対に無縁と思っていたからこそクリスはその空間に戸惑いと罪悪感を感じていた。
同じようにテーブルの下で作ってみる。・・・・うん、なんかよくわからないけど・・・・
「・・・・そう、だな」
安らぐのは、わかる気がする。大事そうにそれを手で包み、ハッとなってかぶりを振る。何をやってるんだ自分は。恥ずかしいったらありゃしない。それに気が付かれたようで二人してまた笑いあう、今度はにやにやに近い笑い方で此方を見てくる二人と視線があう。
「そ、そんなことより早く行こうぜ!つ、次はあそこなんてどうだ!?」
あたふたしながら振り返って指さす。その瞬間。その先の建物の階層、だいたい5階といったところだろうか。そこの窓ガラスが一気に吹っ飛んだ。その光景に一度唖然となる。
「ク、クリスちゃん!?」
「違う、あたしじゃねー!」
まさか、ノイズ!?そう思考が動いたが脳内ではじき出した答えはNO。それは、目の前にある黒い霧がそれを物語っていた。最初は爆発によるものかと思ったがそうではなく、それに巻き込まれた人達が次々に❝異形のものへと姿を変えていった❞。
あの霧はやばい。そう直感した雄樹はみゆきに逃げるよう指示する。
「二人は!?」
「大丈夫。だって俺クウガだもん」
「それ説明になってないっての」
え、嘘と驚く雄樹。此奴もしかして本物の阿呆なのかもしれないと頭を抱える。
「まあ、アレだ。ちょっと行って様子見てくるだけだからすぐにあたし等もそっち行くよ。どーせ一人じゃ手が足りないだろ?❝人助けするんにはさ❞」
クリスのフォローにサムズアップでありがとうと返す。フン、とそっぽを向いて行ってしまったクリスの後を追いかけるようにして変えだす雄樹。
「大丈夫!すぐに戻るから、先生は先にシェルターに行って!」
♪
~同時刻 同場所~
「始まったか・・・・」
そう呟いてカメラから下の様子を見る。人々は黒い霧に触れて異形のモノへと変わっていく中、その中を駆ける二人の影を見つけてそれを追う。変わらない姿をみてなるほどと呟き、ふと気配を後ろへと向けた。
「・・・・」
「グギグギうるさい連中だな…仕方ない。相手してやる」
まるでカメラのようなものを懐から取り出し、それを腰に当てる。そこからベルトが両サイドに伸び、しっかりと装着されたと同時に右腰に本のような形を催したものが現れる。それを開いてカードを一枚引き出し、右手の指三本でもって掲げる。
「変身」
カードを反転させ、両サイドに開かれていたバックルに装填。
〔KAMENNRIDE。DECADE〕
バックルを回転させ、閉じる。すると青年を中心とし、影のようなものが散ってそれが集まる。青年、門矢士を包むようにしてそれが一つとなり、バックルから現れたプレートがマスクに刺さる。額のクリスタルが緑色に輝きを放ち、スーツがマゼンダに染まる。
『お前らの大将がどこにいるか、白状してもらうぜ』
♪
「これは・・・・!?」
驚愕するクリス。まるで人間から理性という楔を取り払ったかのような行動にただただ驚くことしかできない。「危ない!」という雄樹の声で我に返ると彼に抱えられ転がったころだった。
「大丈夫!?」
「ああ。それよりも、コレはいったいどういうことだ!?」
「わからない。でも、これがノイズじゃないってことだけは確かかな」
腹部に手をやり、アークルを出現させる。それをみてクリスも自身のギアであるイチイバルを纏う。
「変身!」
クウガに変わり、駆けだす。倒すわけにはいかないので、とりあえず気絶にとどめようと腹に一発、だが、手ごたえがまるでないかのように相手は平然と立っているのをみてバク転して後方にさがる。
「おいおい、効いてねーじゃねか」
『このままじゃ。霧が会場まで・・・・!』
どうしようもなくなっている二人に、銃弾の雨が降り注ぐ。
〔ATTACK RIDE BREST〕
降り注いだ赤紫色の雨が次々に周囲の者を撃ちぬいていく。そこに降りてきた人物を見て、クリスは睨んだ。
「テメぇ・・・・!」
『よく見ろ』
そう言われ、倒れた人達を見る。そこには人間の姿をした市民が倒れていた。
『如何やら攻撃しても元に戻るらしい。が、これじゃ埒が明かない。話したいこともあるだろうから一旦退くぞ』
『でも・・・・!』
『守りたいなら言う事を聞け。今は互いの情報交換も必要だろ?』
仕方がない。少し考えた後で従うことにする。
黒い霧は依然猛威を振るっている。これがもしライブ会場にまで到達したら・・・・。最悪の結末を想像しながら、三人はその場を後にした。
てなわけでディケイド参戦です