この小説も、お気に入りが100人突破しました。皆さまいつもありがとうございます。お気に入りだけではなく、感想、評価もして頂くと非常に嬉しいです(^-^)
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「………ん…?」
なんだか耳元が騒々しい。それになんか眩しいし。なんだ、人が気持ちよく寝てるというのに邪魔をするな。こんなに気分が良いのは久し振り───
「…ッ!!」
ガバッと飛び起きた。
そして耳障りな音が聴こえる方へ振り向く。目線の先にあるのはもちろん目覚まし時計だ。起きなければならない時間を、既に30分以上オーバーしていた。
そうだ。母さんは朝からヨガの教室へ行くと言って、既に家に居ないんだった。
これはまずいとすぐさま学校への支度をし、家から飛び出した。朝ご飯なんて食べてる余裕はない。
「あっ…」
しかし家を出た瞬間に『あるもの』を忘れた事に気がつき、すぐさま家に戻った。『あるもの』とはもちろん野球のエナメルバッグだ。
そのバッグの中にはグローブ、スパイク、練習着など様々なものが入っている。これらの準備をするために、昨日夜遅くまで起きていたから寝過ごしてしまったんだ。
学校のカバン、そしてエナメルバッグを担ぎ、オレは学校へと走り出した。
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「はぁ…はぁ…」
ようやく学校へと辿り着いた。
いや、エナメルバッグは本当に持ちにくいし重いんだ。これを担いで走るだけで相当なトレーニングになるに違いない。
相当急いでいたつもりだったが、オレが下駄箱に到着した瞬間にチャイムが鳴り始めた。このチャイムが鳴った直後にはもう朝礼が始まるので、もうどう足掻いても間に合う事はない。
「はぁ…クソッ。中学の頃なら…」
確かに、中学の頃なら間に合っていたかもしれない。前にも思ったが、やはり体力の衰えは確実にあった。これから走り込みをしなきゃいけないな。
なんて事を考えていたら、オレはある事に気付いた。
「このバッグ…なんて説明しよう…」
学校カバンの倍以上はあるエナメルバッグ。それも朝礼が始まってる中、遅刻しながらこんなバッグを担いできたら皆になんと言われる事か。
『野球部』に入ったんだよ。
とは言い辛い。
ほぼ女子校のような聖秀の何処に野球部があるって?と笑われるに違いない。オレだったら間違いなく大笑いするな。
いやこれは結構重要な事だ。
ここでオレが『野球部員』として笑い者にでもなってみろ。確実にあいつらは野球部に入ってくれなくなるだろう。
茂野先輩はオレと同じクラスの高橋、山本、野口の3人を野球部に誘おうとしている。今この3人が野球部についてどう思っているかはさておき、オレのように笑い者になるなら野球部なんか入りたくないと思うに違いない。これは当たり前の思考だ。
「…体操服を入れてるバッグ?いや、こんなでかいバッグに体操服入れる馬鹿がどこに居るんだ。うーん…どうすりゃいいんだ…?」
阿呆らしい悩みだが、オレは至って真剣だ。しかし何にも良い案が思い浮かばない。すると、頭を抱えながら悩んでいると急に後ろから声をかけられた。
「こんな所で頭を抱えて…何か悩み事ですか?」
「ヒッ…!」
ビックリした…なんだこの人。気配を感じなかったぞ。いや…そんな事より…
この人、外国人だ。どこの国の人かな…アメリカとか?
恐らく英語を担当している先生だろう。初めて見たな。まぁ確かに下駄箱で頭を抱えている生徒を見かけたら変に思うよな。
「いやあの…オレは…」
「ん〜?」
ニコニコしながらオレのことを見てくる。ああ、もう!面倒事が次から次へと!
…いや、これは寧ろチャンスじゃないか?
「あの!これ、落し物です!先生が預かってもらいませんか?」
「私に?」
「はい!」
もうこれしかない!この先生に預かってもらって、授業が終わったら回収しに行こう。なに、後で事情を適当に説明すればいいさ。今は時間がないからはやく教室へ向かわないと。
「がってん承知しました。では、私が責任を持って預からせてもらいます。この荷物に心当たりのある生徒がいたらこの私、『
は?や、山田一郎?
それにこの流暢な日本語…突っ込みたい所は山ほどあるけど、これ以上ここで道草を食っていると担任の先生に怒られそうだ。
「ま、まぁよろしくお願いしますね。オレは行きますんで」
そしてオレがこの山田先生にエナメルバッグを渡し、教室へ向かうとしたら。
「ジャパニーズボーイ!待ってください!」
と呼び止められた。なんだ急に英語になって。
「名前。教えてもらえますか?」
「あ、すいません。オレは秋浦って言います」
「……そうですか。では、行ってどうぞ」
なんだ…?今の変な間は。
しかしそんな事気にしてる暇はない。はやく教室へ向かわないと。
オレは山田先生の視線を背中に感じながらも、教室へ向かって走り出した。
「…さて、念の為にバッグの中身を見てみましょう。
……これは……」
「
─────────────────────
あれからオレは走って教室に向かったがもちろん遅刻には変わらず、担任の先生に怒られた。まぁそれは寝坊したオレが悪いから仕方ないかな。
それからはいつもと同じように授業を受け、昼休みの時間になった。
「球也、昼ご飯食べよ〜」
「そうだな」
野口達に昼ご飯を誘われた。まあ誘われたと言っても、ただ教室で4人が固まって弁当を食べるだけなんだけど。いつも通り。そういつも通りの日常だ。
だがその中で、1つだけいつも通りの日常ではなかった。
その1つとは───
「よっし!腹減ったな!俺もここで一緒に食っていいか?」
「ちょっ!?」
茂野先輩…いつの間に来たんだこの人。
そのまま彼はオレたち4人の輪に強引に加わった。野口、山本、高橋の3人は決して嫌がってるわけではないが、根っからの体育系の茂野先輩相手に多少の困惑は見られる。
茂野先輩は、そのまますぐにでも野球部の勧誘に入ると思ったが、そうではなかった。たわいもない話をし、どんどんと3人との距離を縮めようと頑張っていた。そして頃合いと思ったのか、先輩はやっと勧誘の話にのりだした。
「なぁ、お前ら。やっぱり野球部に入るつもりはねーか?球也はやる気になってくれたぜ?」
「え…?球也が?」
山本は不思議そうにオレのことを見る。いや、山本だけではない。野口と高橋も山本と同様にオレのことを見ていた。
不思議がるのも仕方ない。野球部に入ったなんてコイツらには一言も言ってないからだ。
「なんだ球也。コイツらに入ったこと言ってなかったのか?」
「…ええ、まあ」
「? まあいい。どうだお前ら、体験からでいいんだ。野球は楽しいぞ!知ってるだろ甲子園。みんなで甲子園を目指そうや」
苦笑いをしながら3人は目を見合わせている。しつこい茂野先輩に、いい加減嫌気がささないのか?さすわけないか。こいつら3人とも人が良すぎるからな…
「じ、じゃあ…とりあえず体験くらいなら…ね?」
「そ、そうだね」
高橋の言葉に、野口と山本もまた苦笑いしながらそう答える。茂野先輩は、「ほんとか!?」と一歩前進したことに喜んでいた。いやいや、喜ぶのはまだ早いんじゃないかな。
昼休みもあと10分。
茂野先輩は、とりあえず3人の前向きな返事を聞けたことに満足して帰って行った。そういえば2年の藤井先輩以外の人はどうなんだろう。
「俺、グローブとか持ってないけどいいのかな」
「俺なんかルールすらよくわからないよ」
「……」
3人は俺が思っているより、だいぶ野球部に興味をもっていたみたいだ。この学校生活がつまらないと感じていたのはオレだけじゃなかったらしい。
高橋に至ってはエアバットで素振りをし、若干楽しみにしてるような様子まで伺えた。
しかし───
オレは不安で仕方がない。この3人は野球の経験、というより『野球部の経験』が無い。茂野先輩は本気で海堂を倒して甲子園に行こうとしている。だとしたら、茂野先輩のワンマンチームじゃ恐らく勝ち進めないだろう。
だからまず、オレ達は『普通のチーム』になる事が大前提だ。これは思ったより難しく、未経験者を普通のレベルにもっていくまでには相当な時間がかかる。
しかし今から始めたとしても、来年の夏まであまり時間がない。つまり猛練習が必要となる。その中で、『野球の経験』かつ『野球部の経験』がないこの3人には辛いのではないか?コイツらが多少やる気を出してくれたのは有難いが、少し厳しい言い方になるけど〝お遊び〟でやるくらいなら最初っから入らない方がいい。
そう、野球は楽しいだけじゃないんだ。むしろ苦しい時間の方が長い。勝った時の喜び、その喜びの為に何十時間、何百時間と練習を繰り返すんだ。
でも言えない。そんな事。
茂野先輩のあんなに嬉しそうな顔を見た後じゃ。
3人がオレの言葉でやる気を失くす、それが1番悪いケースだ。
…とりあえず、『体験』とやらまで様子を見よう。
しかしその『体験』とは、オレが思っていたのとは違っていたんだ。
はい、第10球でした。
ここまで小説を進めてきましたが、一人称の進め方が思っていたより難しいと常々思っております。何かおかしな所がありましたらご指摘して下さると有難いです。
次の話もよろしくお願いします。