茂野吾郎を甲子園に連れて行きたい   作:破壊王子

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この小説はMAJORの二次創作です。

夏が近づいてきましたね〜


【第11球】顧問の先生

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

 

 

 

 チャイムの音が聴こえる。授業終了の合図だ。

 どうやらまた眠ってしまっていたらしい。まぁこんな数学なんて社会に出て使う機会がないから覚えなくてもいい…なんて考えてる時点でオレは社会に出れるかどうか怪しいんだけど。

 

 今日も7限必死に耐え抜いた。いつもなら後は帰るだけだけど今日は違う。そう、久し振りに野球の練習だ。別に練習が好きってわけじゃないけど、今だけは少しだけワクワクしてるのを否めない。

 

 さあ、ホームルームが終わったら山田先生の元へ行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 ホームルームが終わり、オレは山田先生の元へ向かおうとした。

 

 が、いかんせん何処に居るのかわからない。というわけで先ずは職員室にやってきた。先生がいる場所=職員室とは今も昔も考えは変わらないからだ。オレはコンコンと扉を2回ノックして職員室の中へと入った。

 

 

「失礼します。えっと…山田先生いらっしゃいますか?」

 

「ああ、山田先生ね。ちょっと待ってなさい」

 

 

 体育の先生だったかな。名前はなんだっけ?まあとにかくその先生がそう言った。しかししばらく経っても山田先生はオレの元へと現れない。

 

 

「おい秋浦。山田先生いらっしゃられないようだ」

 

「えっ」

 

 

 居ないのか。

 

 うーん…それは弱ったなぁ。バッグがないと何にもできないぞ。

 

 

「わかりました。失礼します」

 

 

 でも居ないんじゃ仕方ない。色々と探して回ろうかな。

 そう思って静かに扉を閉めようとした。しかしその時、あと10センチ程で閉まり切るところで体育の先生に止められた。

 なんだか勝手に怒られると勘違いして、体をビクッと反応させてしまった。急にどうしたんだ?

 

 

「秋浦、探すなら中庭を調べてみなさい。山田先生はよく中庭で休んでらっしゃるから。じゃあな」

 

 

 そう言い残して体育の先生は自分で扉を閉めた。なんというか…なんともアッサリしててすぐに言葉が出なかった。

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

 既に聞こえないだろう先生に向かって一応小声で礼を言った後、オレは山田先生を探しに中庭に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 中庭に辿り着いた。聖秀(ウチ)の中庭は校舎で囲まれているけど、中心部は原っぱのようになっていてカラダを休ませるのにはもってこいの場所だ。それに今はまだ9月ではあるけど、心地よい風が吹いていてなんだかオレまで眠くなりそうだ。

 

 そんな場所に1人、体を寝かせて休んでいる人がいる。顔は新聞紙を被せているので確認できないが、あのスーツ…そして真横に置いてあるエナメルバッグ…間違いない、アレは山田先生だ。

 

 目の前まで歩いて行くと、先生はオレを待ってたかのようにすっと上半身を起こした。そして驚きもせずオレの方を見ながら笑みを浮かべている。

 

 

「そろそろ来る頃だと思っていましたよ、秋浦くん」

 

 

 え?

 

 なんでまたオレが先生の元へ来るってわかったんだろう。オレはただ、『落とし物を拾った生徒』としてこのエナメルバッグを渡しただけのはずなのに。

 

 

「あの…なんでオレが来ると?」

 

「……フフッ!ハハハハハッ!」

 

 

 急に先生は笑い出した。なんだ?オレは可笑しな事なんて言ってないはずだけど…

 別にイライラしたりはしないけど若干怖いぞコレ。

 

 笑いが収まると、先生はさっきまで顔に被せていた新聞紙をクルクル丸め始めた。

 

 

「いや失敬。ああ、『なんで』と言いましたね。いやこれは単純な話ですよ。貴方は自分の道具(・・・・・)を取りにきただけ。そうですね?」

 

 

 先生はそう答えながらオレのエナメルバッグの一部分を指差す。その瞬間に謎は解けた。いや、こんなもの謎でもなんでもなかった。

 

 野球をやっている人ならわかるかもしれないが、エナメルバッグには名入れ刺繍ができるものがある。つまり自分の物だとわかるように名前を付けられるのだ。

 オレのエナメルバッグはそのタイプであり、がっつりとローマ字で名前が刺繍されてある。なので先生はオレがこのバッグを渡した時から、これは元々オレのモノだとわかっていたんだ。

 

 

「なんだ…初めから気づいてたんなら言ってくださいよ」

 

「ソーリー。貴方が急いでいたので」

 

 

 先生が謝ってくれているが、元はと言えば悪いのはオレだ。朝遅刻しないでちゃんと学校に来ていれば、注目されないで教室の隅っこにバックを置けていたんだ。

 

 

「それより…聞かせてもらえませんか?なぜ私にバッグを預けたのかを」

 

 

 なんだか説明し辛い。いや正確に言うと、馬鹿馬鹿しいと笑われるのが嫌だから説明したくない。

 

 でもこればっかりは仕方がない。きちんと説明するのが筋ってもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ほう…なるほど…」

 

「一応…そうなんです」

 

 

 しかし先生はオレの話を聞いても笑わなかった。聖秀(ウチ)の教師をしているということは、男子が数える程しか居ないということも理解しているはずだ。

 寧ろ笑うどころか、顎に手をつけながら何かを考え始めた。それも真剣に。何を考えてるんだろう。

 

 

「ならば部室が必要ですね?いいでしょう、私が手配しておきます」

 

「えっ?」

 

 

 考え込んだ後、先生はそう答えた。いきなりすぎて少し脳の処理が追いつかなかったけど、とにかく部室を用意してくれるらしい。

 なんともありがたい。バッグを預かってもらっただけでなく、部室まで用意してくれるなんて…いい先生だ。

 

 オレが頭を下げて礼を言っても、「かたじけない」と笑っている。少し日本語の使い方がおかしいが、そんな些細な事など気にならない。

 

 

 

「あっ」

 

 

 急にズボンの右ポケットが揺れだす。携帯のバイブレーションが作動したんだ。メールが来たんだろう。

 

 察した先生は、確認してどうぞ?と言わんばかりに手でジェスチャーしたので、オレはその場でメールを確認した。聖秀(ウチ)は携帯電話の持ち込み・使用が可になってるので他の先生に見つかっても問題はない。まあ今ここにはオレと山田先生しか居ないけど。

 

 

 

 

 

『17時に 屋上に 来い! 俺は 野暮用を 済ませて 行く!』

 

 

 

 メールの送り先は茂野先輩だった。

 

 

 なぜ屋上に?わからないけど17時まであと10分ちょっとしかない。今から向かうしかないか。

 

 

「すいません山田先生。オレ用事があるんでそろそろ行きます」

 

「構いませんよ」

 

 

 先生はまだ中庭で休まれるらしい。なんでもオレの他にも先生を訪ねてくる人がいるみたいだ。

 さっきみたいに寝っ転がり、新聞紙を顔に被せたまま、オレに手を振りながら見送ってくれた。

 

 山田先生にはまた今度会ったら、しっかり礼を言わないといけないなと思いつつ、オレは急ぎ足で屋上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────

 

 

 

 階段が…キツイ!

 

 朝の登校ダッシュといい、最近体力に関して不安を覚えることが多く見られる。

 正直野球ってピッチャー以外は1、2試合くらいじゃ大して疲れないけど、キツイ練習を乗り越える為には体力が必要になってくる。朝に走り込みでもした方がいいかな…なんて考えているとようやく屋上へ着いた。

しかしそこには茂野先輩や藤井先輩の姿は無く、居たのは見知らぬ女の子だけだった。

 

 見知らぬ女の子といってももちろん不審者などではない。聖秀(ウチ)の生徒だ。全く顔に覚えがないな…2、3年か?まあ聖秀は女子が多すぎるから知らない人が居てもなんの不思議もない。

 その女の子は跳ねた茶髪をクリクリと指で巻きながら、オレをじ〜っと見ている。

 

 

「アンタ、誰?」

 

 

 第一声がそれだった。いや人の事を聞く前に自分の事を言えよな。オレもそう言いたかったが、歳上の可能性もあるのでそんな事は口にできない。

 

 

「オレは1年の秋浦球也です。茂野先輩に呼ばれて来たんですけど…」

 

 

 オレが〝茂野〟というワードを口に出した瞬間、女の子の目がカッ!と見開いた。

 

 

「なに?アンタも〝ダーリン〟に呼ばれてここに来たの?」

 

「は?ダーリン?」

 

「うん。茂野吾郎」

 

 

 ……。

 

 まあ…この人と茂野先輩の関係は一旦置いとこう。それよりこの人も茂野先輩に呼ばれて来たって事はまさか…

 

 

「あの、貴方はまさか…」

 

「うん!マネージャー!私は2年の中村美保(なかむらみほ)

 

 

 やはりそうか。しかし部員も満足にいないのにマネージャーだけはしっかりと確保してたんだな茂野先輩…しかもこんなに可愛い人を。昨日の清水先輩といい、あの人まさかモテるのか?

 

 

「ていうかさぁ…アンタも野球部に入るの?」

 

「なんか問題でも?」

 

「逆逆。むしろ大歓迎〜 だっていっぱい集まればあいつ(・・・)要らなくなるでしょ?」

 

 

 あいつ…?

 

 オレが〝あいつ〟とやらをわかっていない中、タイミングよくその〝あいつ〟が扉を開けて入ってきた。

 

 

「来てたのか球也。それと…」

 

「ほーらやってきた。口だけのヘタレ野郎が」

 

 

 

 なるほどわかったぞ。

 

 〝あいつ〟とは藤井先輩の事らしい。口だけは達者な藤井先輩が中村先輩に噛みつくと思ったけど、力弱く睨んだだけで、なにも口を開かなかった。なんだか様子がおかしい。

 

 

「アンタみたいな口だけのヘタレが野球できるわけないでしょ?怪我したくなかったらやめといた方がいいんじゃない?」

 

 

 厳しい言い方だ。いや厳しいだけじゃなく、何となく怒りとか憎しみとかが込められている気がする。間違いない、この2人は何か因縁があるんだろう。何も言い返さない藤井先輩をみると、それは明らかだった。

 

 今の一言で場が静まり返り、気まずい雰囲気が立ち込める中、その静寂を破るようにあの男が現れた。

 

 

「わりーなお前ら。少し遅れちまった」

 

「ダーリンっ♪」

 

 

 扉を開けて入ってきた茂野先輩の腕に、中村先輩が抱きついた。クソ、羨ましい。

 

 

「おい茂野!なんで屋上へ俺達を呼んだんだ?」

 

 

 確かになんでいちいちオレ達を屋上へ呼んだのかは気になる。そのせいで多少疲れちゃったし。

 

 

「別に屋上って事に意味はねえよ。まああえて言うならわかりやすいから、だな」

 

 

 意味ないのかよ。

 

 

「そんな事よりお前ら、俺たち聖秀野球部の顧問が決まったぜ」

 

 

 え?顧問?

 

 そういえば部活として認められる為には顧問の先生が必要って話は聞いたな。

 でもまあ…よくもこんな人数すらも足りない野球部の顧問になってくれる物好きがいたもんだ。

 

 

「先生、入ってきてくれ」

 

 

 今来てるのかよ!

 

 茂野先輩が呼ぶと、階段をつかつかと上がってくる音が聞こえる。さあ、その物好きの顔を拝見させてもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうも皆さん。私が聖秀学園高校野球部の顧問を務めさせていただきます、山田一郎と申します。以後、お見知り置きを」

 

「………へ?」

 

 

 混乱しているオレを見た先生は、先程のようにニッコリと笑っている。

 

 

「15分振り…ですね秋浦くん。一緒に甲子園目指して頑張りましょう!」

 

 

 

 

 

 何はともあれ、こうしてオレ達聖秀野球部は一歩進んだのだった。




はい、第11球でした。

海堂戦は一体いつになったら始まるのでしょうか…

ではお疲れ様でした。
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