茂野吾郎を甲子園に連れて行きたい   作:破壊王子

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この小説はMAJORの二次創作です。

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【第12球】強行手段

 

 

 

 

 

「15分振り…ですね秋浦くん。一緒に甲子園目指して頑張りましょう!」

 

「や、山田先生…?」

 

 

 野球部の顧問となったのは、先程まで一緒に居た山田先生だった。この人野球の経験があったのか?

 

 

「改めて挨拶させてもらいます。私は山田一郎。ここ聖秀学園高校の英語教師です。ああ、野球の経験は無いので技術的なアドバイスは期待しないで下さい」

 

 

 経験無いのかよ。

 

 しかし顧問の先生というのは大会にエントリーする為には確実に必要になってくるし、それが山田先生なら良かった。いやまあ先生なんて誰でも良いんだけど、個人的に嫌いな先生だったら微妙にやる気が下がるというかなんというか…

 

 しかし山田先生ならなんの文句もない。むしろどっちかといったら嬉しいかな。

 

 

「ノゴローくん。現在野球部員はこれだけ…ですか?」

 

「だから名前切るとこ違うっつーの! …今はこれだけだよ」

 

 

 そりゃビックリするだろう。野球は最低でも9人いないと出来ないスポーツだ。マネージャーの中村先輩を除くと、今いる部員はたった3人…センターラインも固めることすらできない。

 

 聖秀に今在籍している男子生徒は、転校してきた茂野先輩も含めても合計で9人。茂野先輩は来年の入学生にも期待しているんだとは思うけど、もし誰も入って来なければこの9人でやっとギリギリ試合が行える。

 でもオレのクラスにいる野口、山本、高橋の3人はまだしも、残りの2年生がそう簡単に入部してくれるとは思えない。いきなり野球をやれなんて言っても首を縦に振るわけないし、ましてや彼らは来年受験生だ。こんな無意味なことに油を売ってる暇はないと思われても何も不思議じゃない。

 

 

 しかしそこは茂野先輩に任せよう。この問題を解決できるのは先輩しかいない。

 

 

「困りましたね。では先程の話は…」

 

「大丈夫だって!俺がなんとかするから頼むぜ先生!」

 

 

 先程の話?

 

 なにやら茂野先輩は何か山田先生に何か頼んだみたいだ。今出来ることなんて何かあるのか?

 

 

「……わかりました。ノゴロー君がそこまで言うなら私は顧問として尽力するだけです」

 

「だから…いやもういいぜノゴローで」

 

 

 あ、そこ諦めるのか… まあノゴローって響き良いしね。オレも今度どさくさに紛れて言ってみようかな。でも殴られたらどうしようか。

 

 

 というかそれよりオレは早く練習したいんだけど、早く下へ降りて………

 

 あれ?そういえば………

 

 

「あの、すいません。そういえば練習って何処でやるんですか?」

 

「ああ?んなもん勝手にグラウンドですりゃ良いだろうが」

 

 

 オレの問いに茂野先輩が即答える。

 良いだろうがって本当に良いのか?野球の練習はそこそこの広さがないと出来ないと思うけど、聖秀のグラウンドはそんなに広くないし、放課後は女子ソフトボール部とか陸上部とかで使われてると思うけど。

 

 

「良いわけないでしょ。他の部だけでもぎゅうぎゅう詰めなんだから野球部の練習スペースなんて確保できるわけ、ないない」

 

 

 中村先輩が呆れながら手を左右に振って答える。いやまあその通りだろう。

 

 それに道具も必要になるはずだ。ボール、バット、ベースとか色々と。やる事はまだまだ沢山ありそうだ。

 

 

「まあそれは一旦置いておくとして、まずは部員を集める事ですね。

 私は私に出来ることをやります。ですがノゴローくん、肝心なのは貴方です。わかっていますね?」

 

「…ああ、もちろんわかってるよ。心配すんなよ先生、人をやる気にさせんのは俺の得意分野なんでね」

 

 

 茂野先輩の答えを聞いた後、先生は屋上を後にした。なんでもやる事があるとの事だ。さっき茂野先輩と話していた事に多分関係してるんじゃないかな。

 

 場に残されたのはオレを含めて4人。でも何をすればいいのか…練習も出来ないし、他の男子生徒はもう帰ってるだろうし。

 

 

 

「とりあえず、今出来る事は何もねえ。俺は先に帰らせてもらうぜ」

 

「え?ちょっと待」

 

 

 オレは茂野先輩を呼び止めようとした。本当にやるべき事はないんですか、と。

 でも言いかけた後にすぐにやめた。このまま意味なく茂野先輩が帰るとは思えないからだ。多分、何かやる事があるから帰るんじゃないかな。

 

 

「なんだ?球也?」

 

「いや…なんでもないです」

 

 

 茂野先輩は恐らく不思議に思いながらも、中村先輩と一緒に帰った。ベタベタと中村先輩がくっついているのを若干邪魔そうに。

 

 残るはオレと藤井先輩だが、やる事もないし『バッティングセンター』に寄って帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 次の日オレはいつも通りの時間に起き、家を出た。

 

 すると登校の途中に後ろから声をかけられた。振り向くとそこには、砕けた敬礼のポーズをしている茂野先輩がいた。どうやら先輩の家はオレの家から近いらしい。オレ達はそのまま話しながら学校へと向かっている。

 

 

「球也、お前ポジションどこだ?」

 

「オレは基本内野ですね。セカンドが1番得意…かな?」

 

 

 オレは、一応内野は全て守った事はある。その中でも得意、というかマシなのはセカンドだ。ショートやサードも守れない事はないのだが、いかんせんオレは送球に難がある。肩が弱いわけではない。問題なのは送球時のコントロールだ。

 セカンドはファーストに近いからあまり送球が乱れないが、ショートやサードとなると、捕球してから投げるまでの流れを一連の動作にしなければならない為、よく悪送球していたのだ。これは中学時代の話だが、今も恐らく変わっていないだろう。

 

 

「そうか…いやお前には出来ればショートを守ってほしかったんだ。やっぱりショートってのは守りの要じゃねーか」

 

 

 確かにショートというポジションはかなり重要なポジションだ。出来れば守備力のある選手に任せたいという話はもちろん理解できる。

 

 

「別にショートでも構いませんよ。あんまり得意じゃないけど、他の素人にさせるよりはだいぶマシだと思います」

 

 

 叶う事ならセカンドが良かったけど、恐らく素人だらけになるチーム状態でそう贅沢は言えないな。まあオレは元々バッティングでアピールするような選手だから、ポジションはどこだって同じ話だ。

 

 オレがショートでいいと了承すると、茂野先輩は嬉しそうにしながらオレの背中をバンバン叩く。前も思ったけど、茂野先輩は力が強い。一瞬息が詰まりそうになったよ。

 

 

 

 その後も、自分達がどんな選手なのかや、素人を集めてどんなチームにしたいか等を話しながら向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はあッ!!?」

 

 

 オレは思わず声を上げた。今は昼休み中だが、教室に居た全ての人がビックリしながら俺の方を見ていたと思う。

 

 だけど1番ビックリしてるのはオレだ。茂野先輩からこんなメールが来たからだ。

 

 

『明日、つまり土曜日に練習試合をする! 相手は横浜帝仁(よこはまていじん)高校!そこで俺たち聖秀が勝ったらお前ら全員野球部に入れ!

 ユニフォーム、グローブ、スパイクとかは渡すから、全員放課後に屋上へ来い! 茂野吾郎 』

 

 

 何考えてるんだあの人は!いきなり練習試合!?

 しかも相手は横浜帝仁って…去年県大会でベスト4まで勝ち進んだ強豪じゃないか。

 

 

「れ、練習試合?これが体験ってやつ?」

 

「───!?」

 

 

 オレは野口の一言により思い出した。そういえば昨日の昼休みに、茂野先輩は『体験からでいい』なんて言っていた。これがその体験なのか?素人にいきなり試合させるなんてどこが体験なんだ。

 

 とにかく止めなければ。いくらなんでも強引すぎる。もっと慎重に事を運ぶべきだ。

 

 

 

 

 放課後、オレは茂野先輩を止める為に急いで屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「茂野先輩!」

 

 

 オレは勢いよく屋上への扉を開け、そして早速茂野先輩にこれはどういう事なのか説明を求めようとした。しかしそこには茂野先輩ではなく、3人の男子生徒がいた。

 

 この人達…残りの2年男子生徒だ。名前はわからないけど、何回か見た事はある。

 

 

「お前、誰だよ。まさかお前も『お笑い野球部』の部員か?」

 

「…オレは秋浦球也って言います。1年で、一応野球部に入ってます」

 

 

 3人の真ん中にいる短髪の男は、オレを明らかに嘲笑っている。左のぽっちゃりした人は時計を何回も見ながらソワソワしているし、右の眼鏡をかけた人はそもそもオレに興味すらなさそうな印象を受けた。

 

 

「じゃあお前も茂野からあのふざけたメールが来てるってわけだ。野球部なんて馬鹿じゃねえのかアイツ。お前らもそう思うよな?」

 

「さ、さすがに野球はね…」

 

「ありえないね」

 

 

 真ん中の人が他の2人に同意を求めると、左側の人も右側の人もやはり野球部の事を良く思っていないようだ。茂野先輩はこの3人も入部させようとしているのか?

 

 

「あの…なんで野球部の事を良く思っていないのに、屋上へ来たんですか?そんなに興味がないならそもそも来なけりゃ…」

 

「ああ?それは茂野がしつこいからだよ。俺たちはアイツと約束をしたんだ。もし聖秀が横浜帝仁に勝つような事があれば入部してやる。だが、もし負けたら俺たちに二度と話しかけるなってな」

 

 

 

 ───なるほど。

 

 

 

 これが茂野先輩の狙いか。話し合いじゃ絶対に入部してくれないとこの3人に感じ、それでこの強行手段へと出たわけだ。

 

 確かにこうするしか手はない…が、本当にそれでいいのかな。そもそも帝仁相手に勝てる保証なんてどこにも無いのに。

 

 

「お前と茂野と藤井。 クックック…たったお前ら3人であの帝仁に勝てるわけねえだろ。まったくおめでたい奴らだ」

 

 

 ……色々な感情を抜きしてコイツはなんかムカつくな。歳上じゃなかったら確実に文句の1つでも言ってるやるところだ。

 

 けどそれはスマートじゃない。オレの一時の感情で茂野先輩の作戦が狂ったらそれは大事になるだろう。

 

 

 

「あの…すいません。メール見て来たんですけど…あ、球也」

 

「ようお前ら」

 

 

 野口、山本、高橋の3人も屋上へやって来た。しかしまだ肝心の茂野先輩は来ていない。

 

 

「よう1年。お前らも茂野達が無様に負けるところを見たいんだろ?」

 

「え?い、いやそんな事は…」

 

 

 3人は短髪の男にビクビクしながら下を向いている。

 

 

「隠さずに言えよ。お前らも本当に勝てるなんて思ってねえんだろ?ただコイツらを笑いに来ただけだって言っていいんだぜ?」

 

 

 「おいッ!」

 

 

 すいません、茂野先輩。先に謝っときます。

 

 オレはもう我慢できない。

 

 

 

「お前、さっきから威圧的に話してんじゃねえよ。みっともない」

 

「なんだてめえ…先輩に向かって」

 

 

 よくいるよ。こういう時だけ先輩ヅラする奴。

 たった1年早く生まれたってだけでこんなに偉そうにしやがって。昔のオレを見ているようで苛々するんだよ。

 

 

「何が先輩だ笑わせやがって。お前はさっきから───」

 

 

 

 

 

「やめろ!球也!」

 

 

 

 オレが短髪の男に食ってかかろうとしたら、後ろから声が聞こえた。振り向かなくてもわかる。茂野先輩だ。

 

 茂野先輩の後ろから藤井先輩、中村先輩が続いてやって来た。一人ずつダンボールを持っていて、茂野先輩がグローブ、藤井先輩がスパイク、中村先輩がユニフォームが入ったダンボールを持っていた。

 

 

「…へっ! 主役の登場ってわけか」

 

 

 また嫌味っぽい一言を放って、短髪の男は3歩ほど下がった。

 

 

「来てくれてありがとよ。田代、内山、宮崎。そして野口、山本、高橋」

 

 

 茂野先輩が一人一人に目線を向けながら名前を呼んでいたので、2年の名前がようやくわかった。

 短髪のムカつく奴は田代。ぽっちゃりとした人は内山。眼鏡の人は宮崎。多分これであっていると思う。

 

 

 茂野先輩は明日の試合について色々と説明し、グローブ、スパイク、ユニフォームなどをそれぞれ1人1つずつ持たせた。もちろん明日の試合で使うために。

 

 2年の3人は、田代先輩を筆頭に3つを全て受け取った後、すぐに帰ろうとしたが、最後に田代先輩がまた嫌味を言ってくる。

 

 

「茂野。野球は9人でやるもんだ。お前ら3人だけで勝てるほど…甘いスポーツじゃねえんだよ!」

 

 

 なんだコイツ。知ったような口を…

 

 そう言い残して田代先輩は帰ろうとしたが───

 

 

「待てよ田代」

 

 

 茂野先輩が田代先輩を呼び止める。

 

 

 

 

「確かに、お前の言う通りだぜ。野球は9人でやるスポーツだ。俺の言ってる事は甘いかもしんねえ」

 

「……」

 

 

 田代先輩は黙って聞いている。多分、茂野先輩の〝凄み〟に対して言葉が返せないんだと思う。

 

 

 

 

 

 

「だがな…それでも俺は負けやしねえ!ぜってー帝仁を倒してお前らを野球部に入部させてやるッ!」

 

 

「……チッ!」

 

 

 茂野先輩の威圧感に気圧された2年の3人組は、そのまま何も言わずに下へ降りていく。

 

 

 

 

 茂野先輩の〝決意〟そして〝闘志〟をその場にいた全員が感じ取っていたのは間違いなかった。

 

 

 




はい、第12球でした。

なにやらバラバラな聖秀野球部…1つにまとまる日はやってくるのだろうか…

次の話もよろしくお願いします。
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